日本が長らく参加するか否か逡巡してきた TPP 交渉問題もいよいよ最終段階に入りました。その意味するところは極めて明瞭なことですが、この段階で TPP に参加して交渉で良い条件を勝ちとるのが良いか、TPP には参加しないで後でTPP 参加国と各国別に条件を交渉して良い条件を勝ちとるのが良いかを決断することです。この機会を逃して後で団結し終わった TPP と交渉するのは最悪の選択になります。
振り返れば戦後の日本は、GATT という出来上がった自由化貿易体制に入れて貰い、その後はOECD という出来上がった先進国グループに入れて貰い、世界経済の一員になりました。その結果は、戦後の短期間に戦前では考えられない世界第二位の経済大国になれたのです。
GATT に入るときも貿易の自由化で日本の産業は厳しい国際競争に曝されて敗退する企業もありましたが、却って力強く成長する企業もありました。OECD に入るときも資本の自由化で厳しい外資の資本参入の圧力を受けましたが、やがて多くの日本企業は国際的企業に成長していきました。
貿易の自由化、資本の自由化のいずれの場合でも、当時は国内では激しい反対運動が起きましたが、それを乗り越えて現在の日本経済の繁栄があるのです。
GATT と OECD に共通した根本テーマは自由化でした。TPP も対象と態様に違いはあっても根本テーマは自由化です。この自由化では、いずれも国内に部分的には痛みを与えながらも、全体の国力増進に貢献したのです。
TPP は貿易だけに限らず広く経済社会の自由化を目指しています。国際的な自由化とは、それを通しての国内の自由化でもあります。国内の自由化とは国内の諸規制の緩和です。規制緩和はアベノミクスの三本の矢の一本です。その意味でも、TPP は日本経済が今求めていることに合致しています。
そうは言っても、自由化は一般的に言って先行者が有利ですから、そして自由化では常にアメリカが世界の先行者ですから、アメリカに有利になると判っている TPP に賛成できないと、TPP 反対者は言います。
しかし、先にも述べたように、GATT でも OECD でも既存のメンバー国は自由化の先行国ですから、彼らにとって日本の参加はより有利だと考えていました。日本側でも国際的組織に参加することが果たして好ましいか疑問視する意見もありました。しかし、参加して蓋を開けてみたら、逆に日本経済に好影響をもたらしたのです。
PTT に参加する前から交渉分野、交渉項目を推定して、その損得を小手先で議論するのは、もうやめようではありませんか。広い視野から国力増進に必要なものは何か長期的に考えましょう。
ご参考までに申しますと、ASEAN(東アジア経済統合)が今日まで進展してきたプロセスを見ると、参加各国が社会制度、政治制度、慣習と価値観などを柔軟に調整しながら進めてきたのです。ASEAN のすべての加盟国は、未だ TPP に参加していませんが、そのような交渉を経て、いずれ全ての国は参加するでしょう。
従って、日本は積極的に交渉に参加して、TPP は 成功例の ASEAN 方式に倣って交渉すべきだと提案したら良いのです。即ち「参加国の社会制度、政治制度、慣習と価値観などが多様であるので、TPP の交渉の中心課題は、これらの相違点を話し合いの中で縮める共同作業であると心得て、嘗ての日米構造協議のときのように、いきなり特定の数値を持ち出して YES OR NO の結論を要求するのは控え、時間を掛けて議論しよう」と。
(以上)
振り返れば戦後の日本は、GATT という出来上がった自由化貿易体制に入れて貰い、その後はOECD という出来上がった先進国グループに入れて貰い、世界経済の一員になりました。その結果は、戦後の短期間に戦前では考えられない世界第二位の経済大国になれたのです。
GATT に入るときも貿易の自由化で日本の産業は厳しい国際競争に曝されて敗退する企業もありましたが、却って力強く成長する企業もありました。OECD に入るときも資本の自由化で厳しい外資の資本参入の圧力を受けましたが、やがて多くの日本企業は国際的企業に成長していきました。
貿易の自由化、資本の自由化のいずれの場合でも、当時は国内では激しい反対運動が起きましたが、それを乗り越えて現在の日本経済の繁栄があるのです。
GATT と OECD に共通した根本テーマは自由化でした。TPP も対象と態様に違いはあっても根本テーマは自由化です。この自由化では、いずれも国内に部分的には痛みを与えながらも、全体の国力増進に貢献したのです。
TPP は貿易だけに限らず広く経済社会の自由化を目指しています。国際的な自由化とは、それを通しての国内の自由化でもあります。国内の自由化とは国内の諸規制の緩和です。規制緩和はアベノミクスの三本の矢の一本です。その意味でも、TPP は日本経済が今求めていることに合致しています。
そうは言っても、自由化は一般的に言って先行者が有利ですから、そして自由化では常にアメリカが世界の先行者ですから、アメリカに有利になると判っている TPP に賛成できないと、TPP 反対者は言います。
しかし、先にも述べたように、GATT でも OECD でも既存のメンバー国は自由化の先行国ですから、彼らにとって日本の参加はより有利だと考えていました。日本側でも国際的組織に参加することが果たして好ましいか疑問視する意見もありました。しかし、参加して蓋を開けてみたら、逆に日本経済に好影響をもたらしたのです。
PTT に参加する前から交渉分野、交渉項目を推定して、その損得を小手先で議論するのは、もうやめようではありませんか。広い視野から国力増進に必要なものは何か長期的に考えましょう。
ご参考までに申しますと、ASEAN(東アジア経済統合)が今日まで進展してきたプロセスを見ると、参加各国が社会制度、政治制度、慣習と価値観などを柔軟に調整しながら進めてきたのです。ASEAN のすべての加盟国は、未だ TPP に参加していませんが、そのような交渉を経て、いずれ全ての国は参加するでしょう。
従って、日本は積極的に交渉に参加して、TPP は 成功例の ASEAN 方式に倣って交渉すべきだと提案したら良いのです。即ち「参加国の社会制度、政治制度、慣習と価値観などが多様であるので、TPP の交渉の中心課題は、これらの相違点を話し合いの中で縮める共同作業であると心得て、嘗ての日米構造協議のときのように、いきなり特定の数値を持ち出して YES OR NO の結論を要求するのは控え、時間を掛けて議論しよう」と。
(以上)