ニューヨークで起きたアメリカ同時多発テロ事件(2001.9.11)から14年経た今年の11月13日、パリ市街の中心部で起きたフランス同時多発テロ事件は、今世紀の人類が抱える難病が如何に深刻かを知ることになりました。
「イスラム国」からのテロ攻撃は、現在のところ軍事攻撃をしている米国、フランス、ロシアに向けられてますが、「イスラム国」はキリスト教圏に敵対しているので、攻撃目標は、これら三国に限りません。更にキリスト教圏に友好関係の国々をも攻撃対象としています。
パリのテロ襲撃があった時に、偶々開催されていた経済金融のG20会議が真っ先にパリのテロを強く非難する声明が発したことで、その可能性は高まりました。加えてこの事件で「イスラム国」はシリアで戦うよりは、パリ市街地をターゲットにしたゲリラ的なテロの方が効果的と理解しましたので、テロ戦線は全世界に広まる可能性が高まりました。
大量の難民がシリアから流出して止まらないので「イスラム国」は強力で勢力を拡大していると誤解されていますが、実情は有志連合とロシアの空爆で「イスラム国」は指導者要人を次々殺害されて、彼等はいま劣勢に立たされています。しかし、窮鼠猫を噛むの喩えで大したことは無いと考えるのは間違いです。
9.11はニューヨークの心臓部を狙い、11.13はパリの中心部を狙いました。アルカイダもISも用意周到に準備して相手の核心部を衝いたのです。当時のブッシュ大統領も今のオランド大統領もテロ攻撃を「戦争」と言いました。メディアはテロを戦争というのは大げさだという態度ですが、核心部を衝くのは脅しではなく本気で勝負を挑んでいる証拠です。
パリの同時多発テロは、シリア難民が大量に押し寄せて難渋している欧州に、更に追い打ちを掛けることになりました。この二重苦は原因と結果が結びついたもので、シリアの戦闘が難民のルートを伝わって飛び火したようなものです。
シリアからの難民流出を最終的に止めるには、シリア人が安心して暮らせる状態に戻さねばなりませんが、現段階では、取り敢えず内乱を治める手段が爆撃の強化だけであり、その目処は立ちません。
ここで思い出すのは、米国の歴史家ハンティントンが20世紀はイデオロギーの衝突だったが、21世紀は文明の衝突になると言ったことです。その意味は西欧文明の膨張に対して非西欧化という反逆が始まるというものでした。
反逆の一つはイスラム文明から、もう一つは非西欧の旗手を目指す中国からですが、最初の頃はハンティントンはイスラム世界からの反逆を警戒していましたが、後になると中国からの反逆を警戒するようになりました。
しかしながら、中国からの反逆は近世西欧社会が築いた自由資本主義体制の変革を求めるものであって、イスラム世界との対立のように宗教対立を含むものではないので、政治経済のリアリズムで解決可能ですが、イスラム文明との対立は宗教の対決があるので、妥協は極めて難しいものがあります。
文明は種々の文化を含みます。どのような文化でも、その中核をなすのは宗教です。とすれば文明の衝突とは、宗教の衝突ということになります。人類は、宗教的対立を政治の場ではなく、心の世界で妥協する知恵を働かせねばなりません。
(以上)
「イスラム国」からのテロ攻撃は、現在のところ軍事攻撃をしている米国、フランス、ロシアに向けられてますが、「イスラム国」はキリスト教圏に敵対しているので、攻撃目標は、これら三国に限りません。更にキリスト教圏に友好関係の国々をも攻撃対象としています。
パリのテロ襲撃があった時に、偶々開催されていた経済金融のG20会議が真っ先にパリのテロを強く非難する声明が発したことで、その可能性は高まりました。加えてこの事件で「イスラム国」はシリアで戦うよりは、パリ市街地をターゲットにしたゲリラ的なテロの方が効果的と理解しましたので、テロ戦線は全世界に広まる可能性が高まりました。
大量の難民がシリアから流出して止まらないので「イスラム国」は強力で勢力を拡大していると誤解されていますが、実情は有志連合とロシアの空爆で「イスラム国」は指導者要人を次々殺害されて、彼等はいま劣勢に立たされています。しかし、窮鼠猫を噛むの喩えで大したことは無いと考えるのは間違いです。
9.11はニューヨークの心臓部を狙い、11.13はパリの中心部を狙いました。アルカイダもISも用意周到に準備して相手の核心部を衝いたのです。当時のブッシュ大統領も今のオランド大統領もテロ攻撃を「戦争」と言いました。メディアはテロを戦争というのは大げさだという態度ですが、核心部を衝くのは脅しではなく本気で勝負を挑んでいる証拠です。
パリの同時多発テロは、シリア難民が大量に押し寄せて難渋している欧州に、更に追い打ちを掛けることになりました。この二重苦は原因と結果が結びついたもので、シリアの戦闘が難民のルートを伝わって飛び火したようなものです。
シリアからの難民流出を最終的に止めるには、シリア人が安心して暮らせる状態に戻さねばなりませんが、現段階では、取り敢えず内乱を治める手段が爆撃の強化だけであり、その目処は立ちません。
ここで思い出すのは、米国の歴史家ハンティントンが20世紀はイデオロギーの衝突だったが、21世紀は文明の衝突になると言ったことです。その意味は西欧文明の膨張に対して非西欧化という反逆が始まるというものでした。
反逆の一つはイスラム文明から、もう一つは非西欧の旗手を目指す中国からですが、最初の頃はハンティントンはイスラム世界からの反逆を警戒していましたが、後になると中国からの反逆を警戒するようになりました。
しかしながら、中国からの反逆は近世西欧社会が築いた自由資本主義体制の変革を求めるものであって、イスラム世界との対立のように宗教対立を含むものではないので、政治経済のリアリズムで解決可能ですが、イスラム文明との対立は宗教の対決があるので、妥協は極めて難しいものがあります。
文明は種々の文化を含みます。どのような文化でも、その中核をなすのは宗教です。とすれば文明の衝突とは、宗教の衝突ということになります。人類は、宗教的対立を政治の場ではなく、心の世界で妥協する知恵を働かせねばなりません。
(以上)