世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

種の保存対策は難しい

2009年09月04日 | Weblog
昨年の話ですがナショナル・ジオグラフィック・ニュース (http://www.nationalgeographic.co.jp/index.php)によれば、コンゴでゾウ大虐殺が行われており、その原因は中国で象牙取引が急増しているからだと伝えていました。(2008.8.29)

昔から中国では象牙を加工した装飾品は広く愛好されていましたが、象牙製品は高価なので大衆の手に届くものではありませんでした。しかし、近年の経済発展で豊になって中国の中産階級にも象牙製品が買えるようになったので象牙価格が高騰し、上記の象の大量密猟につながったわけです。

経済発展の結果、需要が増加して価格が急上昇する現象は、既に希少産業資源の市場で起きていますが、それが種の保存に関わってくると、産業問題としては処理し切れない難しい問題となります。

絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引は、ワシントン条約で禁止されていますが、その動機は地球上の珍しい動植物を存続さたいという点にあります。そして、種の保存運動の思想的背景には、西洋的には動物愛護の精神があり、東洋的には動植物は人類と同じ生き物であるとの宗教的感情があります。

従って、ワシントン条約で制限される国際取引には、象牙、鼈甲のような動物の体の一部が含まれるだけでなく、生きている動植物そのものも対象になります。更には、クジラの場合のように、取引だけではなく捕獲行為そのものを制限しようとする運動も起きています。

西洋人は日本人が可愛い小鳥を焼鳥にして食べるのを残酷だと感じる人がいるそうですが、西洋の市場で切り落とされた動物の頭が並んでいるのを見た日本女性が、その残酷さに卒倒したという話もあります。

民族により人間の趣味、嗜好は異なりますし、動植物に対する民族の感情も異なります。こう考えてみると、種の保存対策で国際的合意を得るのは誠に難しいと思います。

写真は、ワシントン条約で国際取引が禁止されているタイマイ(海亀)の剥製です。日本では江戸時代から櫛、簪の素材として珍重されていました。
(以上)
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