明治の人々は和魂洋才で日本の近代化を成し遂げたと言います。しかし、それ以前の千年以上もの間、日本人は中国文明、即ち漢の時代に成立した文明から学んで日本の文明を築いてきたのです。即ち、長い間、日本は和魂漢才で国造りをしてきたのです。
文明の伝播には平和的に摂取する場合と、征服などで強制的に甘受させられる場合があります。幸いに日本は征服されたことはなかったので、和魂漢才の時代は、平和的に、更に積極的に取り入れてきました。遣隋使、遣唐使がその証拠です。
それに比べて、明治の和魂洋才の時代は和魂漢才の時代よりも押しつけられた傾向が強いものでした。なにしろ英国、米国、ロシア、フランスの軍艦で脅かされて開国したのですから。しかし、一旦西欧文明を取り入れようと決意した後は、日本人は極めて積極的に受け入れに努めました。政府要人の大半が参加して2年弱にわたり欧米を視察した岩倉使節団はその証拠です。
他の文明を学んで己がものにすることは、容易に見えてなかなか難しいものです。それにも拘わらず、明治の近代化、即ち和魂洋才の活動は、欧米の単なる物真似行為だと批判する意見があります。
しかし、国として他国を総合的に物真似することは、当時は世界史的に初めての経験であり、また日本が物真似のプロセスで創意工夫をこらしたのも創造的な行為でした。
しかし、如何にせん、和魂漢才は1000年余でしたが、和魂洋才は100年余でしかありません。後者はその習熟期間がかなり短いのです。習熟期間の長かった漢才は身について本物になっていますが、洋才は未だ借り物の状態です。着物は日本人の誰が着ても様になりますが、洋服は未だに西洋人のように似合うとは言えません。着物も文明も似たところがあるのです。
西欧列強のアジアへの進出に際して、清朝末期の中国のように柔軟性に欠けた頑な自己過信の行動は西欧列強の侮りを招きましたし、他方、イスラムから西欧的世俗化へ一挙に転換を図ったトルコは未だに国内に亀裂を抱えています。
外来文明を受け入れる体質は和魂漢才の時代から日本の伝統でしたから、日本は西欧文明を割とスムーズに受け入れてきた方です。しかし、今もて囃されるているグローバリゼーションとは、西欧化を更に加速せよと言うものです。和魂洋才の仕事が未だ十分に終えていない内に、更にもう一段の西欧化です。
近頃、WTO、TPP、EPA、FTAなど訳の分からない横文字が氾濫していますが、これらは今まで日本人が進めてきた和魂洋才のスピードでは間尺に合わないぞ、もっと速く進めと言っているのと同じです。ここで日本は息切れしてしまうか、もう一踏ん張りして和魂洋才の才能を発揮して乗り切るか、問われているのです。
蜀の諸葛孔明の有名な「出師の表」ではないですが、今がまさに危急存亡の秋(とき)なのです。
(以上)
手持ちの写真がない場合は文章だけになることをご了承下さい。
文明の伝播には平和的に摂取する場合と、征服などで強制的に甘受させられる場合があります。幸いに日本は征服されたことはなかったので、和魂漢才の時代は、平和的に、更に積極的に取り入れてきました。遣隋使、遣唐使がその証拠です。
それに比べて、明治の和魂洋才の時代は和魂漢才の時代よりも押しつけられた傾向が強いものでした。なにしろ英国、米国、ロシア、フランスの軍艦で脅かされて開国したのですから。しかし、一旦西欧文明を取り入れようと決意した後は、日本人は極めて積極的に受け入れに努めました。政府要人の大半が参加して2年弱にわたり欧米を視察した岩倉使節団はその証拠です。
他の文明を学んで己がものにすることは、容易に見えてなかなか難しいものです。それにも拘わらず、明治の近代化、即ち和魂洋才の活動は、欧米の単なる物真似行為だと批判する意見があります。
しかし、国として他国を総合的に物真似することは、当時は世界史的に初めての経験であり、また日本が物真似のプロセスで創意工夫をこらしたのも創造的な行為でした。
しかし、如何にせん、和魂漢才は1000年余でしたが、和魂洋才は100年余でしかありません。後者はその習熟期間がかなり短いのです。習熟期間の長かった漢才は身について本物になっていますが、洋才は未だ借り物の状態です。着物は日本人の誰が着ても様になりますが、洋服は未だに西洋人のように似合うとは言えません。着物も文明も似たところがあるのです。
西欧列強のアジアへの進出に際して、清朝末期の中国のように柔軟性に欠けた頑な自己過信の行動は西欧列強の侮りを招きましたし、他方、イスラムから西欧的世俗化へ一挙に転換を図ったトルコは未だに国内に亀裂を抱えています。
外来文明を受け入れる体質は和魂漢才の時代から日本の伝統でしたから、日本は西欧文明を割とスムーズに受け入れてきた方です。しかし、今もて囃されるているグローバリゼーションとは、西欧化を更に加速せよと言うものです。和魂洋才の仕事が未だ十分に終えていない内に、更にもう一段の西欧化です。
近頃、WTO、TPP、EPA、FTAなど訳の分からない横文字が氾濫していますが、これらは今まで日本人が進めてきた和魂洋才のスピードでは間尺に合わないぞ、もっと速く進めと言っているのと同じです。ここで日本は息切れしてしまうか、もう一踏ん張りして和魂洋才の才能を発揮して乗り切るか、問われているのです。
蜀の諸葛孔明の有名な「出師の表」ではないですが、今がまさに危急存亡の秋(とき)なのです。
(以上)
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