“ヴィタミーナ”な生活

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半落ち

2005年10月06日 | 
国内の映画賞を総なめにした映画の原作。
私は映画を先に見ており、結末を知った上で読みました。

「妻を殺しました」
現職警官・梶総一郎がアルツハイマーの妻を殺害し自首してきました。
罪を認め、動機や経過を素直に明かす梶。
でも殺害から自首までの2日間の行動については、語ろうとしない。

半落ちとは「完全な自供ではない、不明の部分のある自供」のことを言います。

映画は時間軸に沿って話が進行しますが、小説では人物、取調べをした警察官の志木、検事の佐瀬、新聞記者の中尾などの登場人物によって章に分け、人間としての立場やそれぞれの思いを中心に描いています。

この小説はミステリーの分野に入るのでしょうが(宣伝文句が映画も小説も「空白の2日間の謎」だったもので)、その謎をめぐってハラハラドキドキ最後に感動、と思っていたら、それは違っています。
2日間の謎自体は「え゛~、そうだったの?」と驚くものではないのですが、作者が本当に言いたかったこと、なのでしょう。
この小説の魅力は、謎解きではありません。

映画でも小説でも私はある一つのことに大きな感動を得ました。
それは「やさしさ」
判事である藤林圭吾(映画では吉岡秀隆さんが演じていました)の父は、被告人梶総一郎の妻と同じアルツハイマー病。
その父を妻に預け彼は単身赴任の身。
妻に梶のことを話すと妻はこういいます。
「やさしい人なのだろうと思う。だから、殺した」
でも藤林は「妻が父を殺さないやさしさ」を選び、あえて懲役刑の判決を下します。

ただ、この小説の最後はいただけません。
空白の2日間、そのことで梶は生きていくことができる、と思うのです。
何もわざわざ、法律を犯してまで、あそこまでやることはないでしょう、と思うのです。
映画のラストは良かったのに・・・
作者を問い詰めたい気分です。
(具体的に書いていないので、小説はまだ、という方には、何言っているのかわからないですねぇ。)

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