考えるための道具箱

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◎『クリエイティブ人事  個人を伸ばす、チームを活かす』 (曽山 哲人・金井 壽宏/光文社新書)

2014-07-26 01:11:37 | ◎書
会社における共同幻想の創り方という観点では、至上の本である。だから、共同幻想について疑いのある人間にとっては得るものがない、となる。その延長上で「サイバーエージェントだからできるんだよ」という感想がでてくるのもうなずける。

別の観点は、急成長したベンチャーにありがちなことだが、よくわからない山師のような渡世人のような人材をたくさん抱え込んでしまい、そういう人たちを適正化ないしは合理的に排除していくための陰の制度とバーターで陽の制度を泥縄でつくっていった、というところか。端的なものが、「退職金制度」と同時に用意された「ミスマッチ制度」で、問題社員を退職勧告、もっと言うと依願退職に持ち込む流れをあらかじめルール化しておくというものだ(もっとも実際はそんな簡単にすむ話ではないと思うが)。フリーライダー対応と言ってはいるが、おそらくベンチャー荒らしマネージャー社員対応でもある?あくまで推測にすぎない一例だけれど「CAだからやらざるを得なかったんだよ」という部分はあるんじゃないかな。

そんな感じなので、「個人を伸ばす チームを活かす」とは謳っているが、動機付けの方法とか新規性のある人事制度を学ぶための本ではない。この本で読み取らなければならないのは、あらゆるところから溢れ出てくる問題への諦念とそれらを乗り越えていく不屈の修正力ではないかと思う。
実際にCAに限らず仕事場は、問題――それも人と人との関係を起因とするproblem、trouble、affair、defectへの対応の反復だ。

曽山も言うように「目の前にいる人に対して課題を指摘するのは、相手がどんな職種や肩書の人であろうと一番しんどい」ことに対峙していく。それはもう人間がやっている会社である以上はつきもので、なんらかのincidentは2日一度くらいは起こるものだとあらかじめ勘定にいれておいたうえで、いちいち塗りつぶしていくしかない。

これを対処療法に過ぎないと言ってしまうのはきれいごとで、やはり問題は毎日おこると心を備え、毎日起こるものだからとりあえずの答えを出し、ダメならダメでコレクトし続けていく泥臭い活動の先にしか正解の可能性はない。きれいな答えなんか嘘だ。レジリエンス?この部分にこそ、金井先生がコミットする意味があったということなんだろう。

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