考えるための道具箱

Thinking tool box

CRMのいま(2)電通のダイレクトレスポンスビジネス。

2004-12-25 22:09:22 | ◎業
電通は資料提供による顧客獲得や通信販売を直接の目的とした広告戦略の支援システムを開発した。顧客の購買行動を促すための広告表現や広告媒体の効率的な利用計画を立案し、フリーダイヤルやインターネットアドレスを訴求する広告の効果を高める。来年1月から金融・保険、機能性食品、不動産など幅広い業種の広告主の戦略立案に活用し、広告受注に弾みをつける。

新システム「ドラムス」は、顧客の資料請求や商品購入を促しやすい広告表現をデータベース化。顧客の属性やし好、居住エリアなどのデータベースと、どの広告媒体を活用すると顧客の購買行動などを効率的に促せるかというデータベースも組み合わせて最適な広告戦略を分析、立案する。(日経産業新聞2004.12.20)


先回も触れたが、最近の新聞広告の多くは、保険・パソコン・健康食品などの通販商品でしめられるようになってきた。朝日新聞を例にみると、日替わりでDELLとHPの期限商品が告知されているような気がするし、いつのころかかラテ欄は小林製薬、サントリー、カゴメなどの健康食品・サプリメントの指定席となっているのではないだろうか。

そして、これらの企業が、けっしてブランドを貶めていないことからも明らかなように、「ブランド価値をあげるために、ときには(商品情報のない)イメージ広告が必要だ」という主張は妄言にすぎなかったし、むしろ、「正しい商品を、正しく売る行為」こそがブランドの基盤であるということがはっきり見えてきた。

電通のこの新製品は、ここ数年、先鞭をきってブランドブームを煽ってきた彼らの転向ともいえる。YES or NO といった問題でもないので、電通にも一部そういう機能が芽生えだしたという言い方が正しいかもしれない。彼らは、「時代の流れを先取りして」とか、「CRMとマスの融合」といった触れ込みをするかもしれないが、結局、最近黒々しだした新聞紙面にあらためて気づき、広告主企業の正しい主張にようやく目が覚めた、ということにすぎない。

このシステム、具体的には、すでに立ち上がっていた「統合マーケティング局ダイレクトレスポンス部」の実績をこの1年でまとめたというろころか。とはいえ、5億もの巨額を投じた、このシステムにGOサインをだす判断力や営業力、短期間で実現にこぎつける開発力はやはりエクセレントといわざるとえない。もしリリースどおりに機能することになれば、広告会社間での圧倒的な競争優位になるだろうし、いわゆる外注先の広告制作会社は、完全な非対称になってしまう。

前置きはここまでにして、この基本料金500万円のこのシステムの仕組みを期待をこめて予想してみよう。以下は、リリースからの抜粋だ。

レスポンス広告では、「この商品を買いたい」「詳しい説明を聞きたい」という顧客の具体的行動の獲得が目的であり、レスポンス率そのものを高めていくことがその目標となる。それを実現させるためには、レスポンスデータ分析によるレスポンス率の高い広告表現の企画とレスポンス率を高めるための効率的なメディアプランニングが最大のポイントとなる。
今回のレスポンス・ビジネス支援システム「drams(ドラムス)」はレスポンス広告に関する電通のこれまでの実績や知見を基に開発したもので、「メディアプランニング」や「クリエーティブ開発」はもちろんのこと、「レスポンス事業のシミュレーション」、「顧客データベースの構築」、「顧客の囲い込み戦略の立案」、「コンタクトセンターの計画・管理」まで、広告主のダイレクトレスポンス・ビジネスをあらゆる面で科学的にサポートすることが可能となる。


「メディアプランニング」という部分は、おそらくいままでの枠内で考えることができるだろうから、さほど難易度は高くないだろう。もしなんらかの新規性が必要であるとすれば、それは「クロスメディア」のあり方になる。
最近はOOHのような大物もしっかり押さえているようだが、大電通が今度はWEBやカタログといった細かい仕事にまで手をだしてくるのか?しかし、ここにメスを入れない限りは、仕組みは一貫しないということを考えると、積極的なコミットはありえる。これまで彼らは、WEBは「エンターテイメント」か「電子チラシ」に分化されるといった考えを唱えていたようだが、その中間領域(もしくは融合)の重要性(饒舌な商品情報)にようやく目を向けるのか。それとも精度の高いレコメンドシステムを開発できたのか。ただし日経産業の記事によると彼らが考えるクロスメディアはQRコードによる誘引といった程度のもので、たかだか底がしれているような気もする。
いっぽうカタログについては、ページあたりの売上で鎬を削る通販企業に一日の長がありこのノウハウは並大抵のことでは凌駕できない。結局は、「マスとWEBのセット提案」といったレベルにとどまらざるをえないだろう。これらを考えると、彼らが考えるクロスメディアはやはり記事にあるように「広告受注に弾みをつける」ためのつまに過ぎないということになる(※1)。

またリリース後半のDB管理やコールセンターについても、淘汰されてきたCRMの上澄みが有効利用できるだろうからまったく難易度は低い(レスポンス「事業」のシミュレーション、というコンサル的な役回りは気になるが)。

問題は、魂の部分の「顧客の購買行動を促すための広告表現」「クリエーティブ開発」である。なんだかんだいっても、メディアやシステムは「ハコ」の世界である。いってみれば、資金力さえあればなんとでもなる。しかし、「広告表現」はプライスレスである。ここに確固としたメソッドがあるのだろうか。それともいちおう言っているだけなのか。

「CRMのいま(1)JCBの10万種類のDM。」で考察したように、広告紙面をブロックでわけ、クリエイティブテストを経て精度があがったターゲット別のコピー/デザインを例によってパズルのように組み合わせるのだろうか。
コピーに絞って考えてみると、いわゆるアクションコピー(顧客を次のステップに誘引するための文言)をどういった表現にするのか?といった議論はわかりやすい。「今日限り」「500ページのカタログ進呈」など、価格・フック・期限などでパタン分類/構造化をするのは容易だろう。(※2)。

では、「ヘッドライン/ボディコピー」はどうか。欲望に点火できるテキストが、データベースから生成できるのだろうか。それとも、確実に松井証券の広告レベルのライティングができる専属のダイレクト・マーケティング・ライターを擁しているのだろうか。

この部分がどうしてもイメージできない。どなたか500万円の大枚をはたきアドバイスをうけ(※3)、その後このシステムの使用感を、とりわけクリエイティブの部分の評価をBLOGででも公開していただきたいものだ。
ただひとつ言えるのはこれらのテキストを制作できるのは、彼らが「クリエイティブ」の名のもと長年にわたって囲い込んできた、似非アーティスト集団ではないということだ。たとえば、駝鳥と雪山のミスマッチこそが広告の要諦と考えているような輩は、こんな面倒くさいことはやらないし、できない。ともすれば、「ターゲットのことを考えすぎてはいけない」といったあほなことを言い出す人種には、商品のスペックをコピー化する力量はないだろう。ただし、ダイレクトレスポンス部でコピーディレクターが要職にあり、彼の出自が、たとえば外資のダイレクトマーケティング代理店のコピーライターであれば、このシステムの効果が大いに期待できるかもしれない。ハコに中身をいれてこそ次世代のCRM、システム屋のCRMではなく広告屋のCRMと考えたい。

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2回にわけて「CRMのいま」を考えてきたが(あまり深くは考えてないですね)、CRMの要諦は、結局は「テキスト力」ということではないか。CRMの原点は「uratさん、今日はいい穴子が入っているよ。とっておいたんだよ」と言える魚屋のおやじのDBだが、なにより重要なのは「とっておいたんだよ」と言える魚屋のおやじのコミュニケーション力である。「( A )さん、( B )は、( C )が入っているよ。( D )だよ。」の、けっしてレコメンドシステムだけでは埋めきれない( D )、つまり饒舌で過剰で状況適応的なひと言をどう考えるか。ここに、さらに次の世代のCRMの答えがある。


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(※1)まあ勝手な放言をしたわけではあるが、彼らはなんといっても黒幕であり、なんとでもする会社だから、こういった蟻んこの予想は失笑ものだろう。しかし一方で、時代の「流行」にあわせて「この商品を買いたい」「詳しい説明を聞きたい」という顧客の細かい声に耳を傾け始めたというのも失笑ものではある。ただ昔はダイレクト・マーケティングの名教科書も残してたんだけどなあ。
(※2)しかしじつはこのことも、ダイレクトビジネス企業では命綱として何百種類ものノウハウが蓄積されているだろうから、オリジナルの強みを発揮するのは難しい。
(※3)「同システムを活用した広告戦略や事業戦略の助言は一件あたり五百万円からで、年間二百社以上の助言を手がける。(日経産業)」とのこと。しかし考えてみれば有数のダイレクトマーケティング企業は、500万も払って「アドバイス」を受ける必要はないだろう。では、それ以外の新規参入社?彼らにとって500万は相当な出費だし、当然だけど500万のあとに、本丸以上の尾ひれがついてくるわけで、これを受け入れる太っ腹が200社も存在するのか、という疑問は無きにしも非ず。

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↓ちょっと文章が倦ねすぎてますね。
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1 コメント

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Unknown (https://www.wellextreme.com/)
2022-03-20 03:16:27
コールセンターの業務効率化を図り、顧客満足につなげるためには、自社にCRMシステムを導入する必要があります。コールセンターにおけるCRMについて詳しく知りたい方はこちらのサイトをご覧ください。https://www.wellextreme.com/crm-for-call-centers/

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