音楽を前にして、鳥肌を感じる。たくさんの人が、そういう瞬間を知っているだろう。
僕の場合、それは、浜田省吾の『ON THE ROAD"FILMS"』に収められた「On the Road」や、ブルース・スプリングスティーンの『Video Anthology』の「Born to Run」のライブ映像で10万人は入っていると思われる会場の観客を目の当たりにしたときであったり、ipodから唐突に始まり流れる『Miles in Europe 』の「Milestones」で会ったりする。「Jupiter」の冒頭のアレグロ(ジョコーソ)の部分も、いきなり始まればヤバい。宇多田ヒカルの「Final Distance」だって、たとえ商業的とはわかっていても、そのdedicated toを思うと子を持つ親としては自然に体が反応する。オアシスやスピッツはもちろん、甲斐バンドにだってそういう曲はある。日本のポップミュージックの場合は、おおむね詩との関係に負うところが多い。
こうしてみると、鳥肌の音は、決してハイブロウなものではなく、どちらかといえば、わかりやすい音の場合が多い。シンプルな音階の限りある順列組み合わせから、たまたま身体に影響を及ぼすコンビネーションが生まれる。そのことは、なにも豊穣さのようなものだけに比例するわけではない。ときに、チープにみえる取り合わせからのケミストリーもじゅうぶんに起こりえて、むしろそういった場合ほうが印象的だ。
斉藤和義の新しいアルバム『紅盤』に収められた「ベリー ベリー ストロング~アイネクライネ~」は、まさにそういったケミストリーの賜物かもしれない。『紅盤』は、コラボレーションやカヴァーを中心とする企画アルバムで、浜田省吾の「君に会うまでは」やサザンオールスターズの「真夏の果実」(w/Bonnie Pink)、沢田研二の「ダーリング」さらには「Jealous Guy」が日本語でカヴァーされていたりと、ずいぶん楽しめる構成になっているが、1曲目に配された「ベリー ベリー ストロング~アイネクライネ~」は、斉藤のファンでもある伊坂幸太郎の短編小説を元に創作されたオリジナル曲で、じつは、このアルバムの中で出色と思える。そして、この曲が僕に鳥肌を与えた。
いつものいい意味での斉藤和義のチープさ満載の曲で、唄いっぷりも、「very very strong」ではなく、まさに「ベリー ベリー ストロング」なのだけれど、そのサビの「ベリー ベリー ストロング♪~」に転じる瞬間に確実に震える。アルバムの最後に収められた「ウェディング・ソング」も、これから披露宴で幾千人かを泣かせ続けるだろうといわれているが、その比ではないだろう。
「ベリー ベリー ストロング」は、いわゆる美しい唄ではないではない。一聴、雑な曲に聞こえるかもしれない。しかし、その具体的な言葉の連なりと相俟った曲の転じ方が、確実に何か、何か清々しいものをイメージさせる。なんだろう?それは、生きているといろいろあるけれど、まあいいことのほうが多いよ、といったことかもしれない。fight songのような側面もあるのかもしれない。そういった意味では、流行りの感動シンドロームのように、ほんとうにチープな演出だ。しかし、僕は、こと音楽については、そんなことにすら、打ちのめされてしまう。
少し、疲れすぎているからなのだろうか。『ハゲタカ』の芝野の台詞「鷲津ファンドです」に落涙してしまうぐらいだからなあ。
僕の場合、それは、浜田省吾の『ON THE ROAD"FILMS"』に収められた「On the Road」や、ブルース・スプリングスティーンの『Video Anthology』の「Born to Run」のライブ映像で10万人は入っていると思われる会場の観客を目の当たりにしたときであったり、ipodから唐突に始まり流れる『Miles in Europe 』の「Milestones」で会ったりする。「Jupiter」の冒頭のアレグロ(ジョコーソ)の部分も、いきなり始まればヤバい。宇多田ヒカルの「Final Distance」だって、たとえ商業的とはわかっていても、そのdedicated toを思うと子を持つ親としては自然に体が反応する。オアシスやスピッツはもちろん、甲斐バンドにだってそういう曲はある。日本のポップミュージックの場合は、おおむね詩との関係に負うところが多い。
こうしてみると、鳥肌の音は、決してハイブロウなものではなく、どちらかといえば、わかりやすい音の場合が多い。シンプルな音階の限りある順列組み合わせから、たまたま身体に影響を及ぼすコンビネーションが生まれる。そのことは、なにも豊穣さのようなものだけに比例するわけではない。ときに、チープにみえる取り合わせからのケミストリーもじゅうぶんに起こりえて、むしろそういった場合ほうが印象的だ。
斉藤和義の新しいアルバム『紅盤』に収められた「ベリー ベリー ストロング~アイネクライネ~」は、まさにそういったケミストリーの賜物かもしれない。『紅盤』は、コラボレーションやカヴァーを中心とする企画アルバムで、浜田省吾の「君に会うまでは」やサザンオールスターズの「真夏の果実」(w/Bonnie Pink)、沢田研二の「ダーリング」さらには「Jealous Guy」が日本語でカヴァーされていたりと、ずいぶん楽しめる構成になっているが、1曲目に配された「ベリー ベリー ストロング~アイネクライネ~」は、斉藤のファンでもある伊坂幸太郎の短編小説を元に創作されたオリジナル曲で、じつは、このアルバムの中で出色と思える。そして、この曲が僕に鳥肌を与えた。
いつものいい意味での斉藤和義のチープさ満載の曲で、唄いっぷりも、「very very strong」ではなく、まさに「ベリー ベリー ストロング」なのだけれど、そのサビの「ベリー ベリー ストロング♪~」に転じる瞬間に確実に震える。アルバムの最後に収められた「ウェディング・ソング」も、これから披露宴で幾千人かを泣かせ続けるだろうといわれているが、その比ではないだろう。
「ベリー ベリー ストロング」は、いわゆる美しい唄ではないではない。一聴、雑な曲に聞こえるかもしれない。しかし、その具体的な言葉の連なりと相俟った曲の転じ方が、確実に何か、何か清々しいものをイメージさせる。なんだろう?それは、生きているといろいろあるけれど、まあいいことのほうが多いよ、といったことかもしれない。fight songのような側面もあるのかもしれない。そういった意味では、流行りの感動シンドロームのように、ほんとうにチープな演出だ。しかし、僕は、こと音楽については、そんなことにすら、打ちのめされてしまう。
少し、疲れすぎているからなのだろうか。『ハゲタカ』の芝野の台詞「鷲津ファンドです」に落涙してしまうぐらいだからなあ。