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「浦島説話」を読み解く

「浦島説話」の時代を生きた古代人の人間観を歴史学、考古学、民俗学、国文学、思想哲学、深層心理学といった諸観点から考える。

「スーパームーン」

2014-01-07 03:38:11 | インポート
月が地球に最接近した時に満月を迎える現象を「スーパームーン」というそうである。月や太陽の引力と地震との因果関係が指摘されてもいるが、潮の干満現象等のみならず、天体の運行は古来、人間の精神にも影響を及ぼすということは経験知として認識されていた。 月の引力によって引き起こされる「地球潮汐」作用は、地殻などの固い地盤にも影響を与えているという。「スーパームーン」の際には、その作用が最も大きくはたらくといわれる。
1月は元旦に続いて30日にも「スーパームーン」現象を迎えるという。
木星は、ほぼ12年で天を一周する。十二支は、古代中国の天文学で天を十二分したときの木星の位置の呼称であった。

浦島説話研究所

世界創世神話

2013-10-26 21:49:14 | インポート
「「昔、天地も未だ分れず、陰陽の対立も未だ生じなかったとき、渾沌として形定まらず、ほの暗い中に、まず、もののきざしが現われた。その清く明るいものは高く揚って天となり、重く濁ったものは凝って地となった・・・・・」これは淮南子や芸文類聚、天部などに見える、数ある中国の神話の中から日本の神話に似た話を採って纏めてある。・・・陰陽は天地間にあって万物を生じる根本となる二つの気。日月・男女・寒暖など」(坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋校注 日本書紀(一) p17 岩波書店 1997年)

720年に成立した『日本書紀』は三十巻で構成されている。その第一巻・神代が、世界創世の記述を古代中国の漢籍をもとに編纂されたことは動かし難い。なぜ、国史編者は、外来思想に依拠したのだろうか。大きな謎であると同時に、この問題は、『日本書紀』とは何かを問ううえでの一つの手がかりを与える。
対立する二つの要素の統合というモチーフは、「元型」という深層心理学の概念を用いることで説明することができる。「男女交合」というモチーフは、世界的にみられる普遍的な神話素なのである。その意味では、「数ある中国の神話の中」にも、「日本の神話に似た話」の中にも見出すことができる。たとえば、数的象徴としての「1」を、「陰陽合一の渾沌」として表現することもできれば、「夫婦の理」として表現することもできる。
国史編者も、「浦島説話」の原作者も、大きな構想力のもとに「1」を念頭においていたと理解する。

浦島説話研究所

ユング

2013-08-24 06:38:02 | インポート
「ユング(1875~1961)
スイスの心理学・精神医学者。チューリヒの連邦工科大学講師を長く務め、同大学にいたアインシュタインやパウリと交流があった。のちにバーゼル大学教授を一時つとめたが、おもに開業医として臨床的治療に従事した。
その体験から、人間の無意識には人類全体や古代の神話にもつながる領域があることを発見し、集合的無意識という新しい概念による分析心理学を構築。神秘主義や錬金術なども精力的に研究し、合理主義の枠内に収まらない人間の魂の問題を追求した」(平野勝巳 生きてゆくためのサイエンスー生命論パラダイムの現在― p49 人文書院 1999年)

浦島説話研究所

「科学的世界観」と「宗教的世界観」

2013-08-22 21:07:59 | インポート
「近代科学の初期の建設者たちが、錬金術あるいはそれと関係の深い占星術的世界観に深い関心をもっていたことは否定できない歴史的事実である。・・・たとえばケプラーは占星術に親しんでいた。彼の天体法則の発見には、新プラトン派的な三位一体論の神秘的解釈が重要な動機になっている。ルネサンス・プラトニズムは、ブルーノに典型的に現われているように、グノーシス思想や錬金術に深い関係がある。またニュートンはその晩年、ヨハネ黙示録や錬金術の研究に没頭したが、彼は世人の非難を恐れて、それらの研究を死に至るまで固く秘していたのである。現代の科学史は、先人たちが迷いこんだこのような脇道はすべて切りすてて、近代科学を前近代的な宗教的世界観とは全く異質な、歴史的に非連続なものとみる見方に立っている。そういう見方は、近代科学の勝利をうたい上げるという目的には適しているかもしれないが、その結果は、近代科学の本質は過去の精神史的遺産と全く断絶したところに成立つものであり、科学的世界観と宗教的世界観は本来相いれないものであるという見方にみちびくであろう。十八世紀の啓蒙時代以来、このような見方は現代まで通俗化した形でひろく受けいれられている。しかし、そういうとらえ方が西洋精神史に対する正しい見方であるかどうかは疑わしい」(湯浅泰雄 ユングとヨーロッパ精神 pp63¬~64 人文書院 1986年)

近代の精神は、「科学的世界観」と「宗教的世界観」とを分断した。
「暦」の根幹を成した古代中国の陰陽五行思想は、両者を内包していた。7~8世紀の時代を生きた人々にとって、この思想哲理は、宇宙の真理に通じる知にほかならなかった。当時の人々は、「科学的世界観」と「宗教的世界観」などと区分してはいなかった。両者は渾然一体のものだった。
今、「浦島説話」を前にして、当時の人々の世界観を共有しながら向き合う必要性を感じている。

浦島説話研究所

近代科学

2013-08-18 17:50:27 | インポート
「近代科学は、哲学が人間の本性あるいは人間の生の意味について問うことを実証不可能な非科学的思弁にすぎないとして拒否し、科学は「形而上学」であってはならないと主張する。その結果、近代科学は、ひたすら個々の事物のあり方に関する経験的実証と応用技術の開発にのみ没頭してきた。これに対して現代の哲学(たとえば実存哲学や現象学)は、そういう近代科学の営みを人間不在の学問であると批判し、哲学は諸科学の上に立って、その方法論的基礎を明らかにするより高次の学、いわゆる「諸学の学」であると主張しつづけてきた。両者はお互いの領域を守って、対話し交流しようとはしなかったのである。そういう哲学と科学の分裂と相互批判そのものが、近代世界の精神的病根の一つのあらわれだったのではあるまいか。現代科学は、何らかの形で人間性に対する思想的反省を忘れてはならないであろうし、現代哲学は、思弁と消極的批判の中にのみ安住していてはならないであろう。もしもこのような疑問に何らかの意味があるとすれば、フロイディズムがーたとえ不十分な形であったにせよー哲学と科学の間に橋を架ける新しい性格の学問として登場してきたことは、むしろ近代ヨーロッパの歴史的運命が生み出した必然の産物なのであって、われわれはそこに、病める近代精神の自己反省と、未来への模索の姿を見出すことができるのではないだろうか」(湯浅泰雄 ユングとヨーロッパ精神 p9 人文書院 1986年)

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