プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 吉田修一「路(ルウ)」

2024年02月19日 | ◇読んだ本の感想。
吉田修一は「横道世之介」の1作目と2作目を読んで、意外にほんのりしていると思った。
何しろ最初は後味悪い系というイメージだったので、実は今もこわごわ読んでいる。
そしたら今作もほの明るい系でしたね。
むしろ今までで一番明るいか。

最初新幹線の話から始まったので、これは台湾に新幹線を走らせるまでをがっつり書くのか?
と期待したが、正直その部分はおざなり。全然深まらない。
まあ経済小説を読みたいのなら池井戸潤を読んどけって話で(←嘘かも。読んだことない)、
吉田修一は人々の、ふわりとした距離感を書きたい人なんだろうね。
それは相変わらず心地よく書けている。上手いと思う。

気持ちよく読み終わったけど、登場人物が切り替わりすぎて少しうるさかったかな。
春香と人豪、春香と繁之は主人公だし恋愛小説だから当然いいとして、
勝一郎と人豪、勝一郎と中野赳夫の関係も物語に厚みを出すためにいいとして、
安西とユキ、陳威志と美青のパートは……まああったっていいんだけど、
あったことでリアリティは出たと思うけど、省略しても良かったかなあ。
ちょっとぶれた気がする。

陳威志と人豪をお友達にして、登場人物を減らすことも出来たよね。
……わたしは登場人物がなるべく少ない方が好きだから、ついそう考えてしまうけど。
ミニマリストか。

これは映像作品に向いてるなあと思いながら読み終わったら、
すでにドラマになってるんですね。

主役が波留というのはぴったり。
わたしは安西を、なぜか皆川猿時のイメージで読んでいた。
池上繁之は、今どきの若者ならまあ役者を選ばない。
勝一郎を演じた役者さんは知らない。見ればわかるのかもしれないけど。
ここは少し重みが欲しい役なんだけど、どうだったんだろう。
陳威志は横道世之介と重なって仕方なかった。

いつか再放送をするかな。再放送が大の得意のNHKだからするだろうけどね。
その時は見たい。



◇◆◇◆◇◆◇◆



この小説を読んでいて一番の旨味はどこかというと――一度だけ行った台湾のなつかしさ。
下手にマイナーを狙ってないところが潔いね。良くも悪くも。
出てくる地名がみんな観光客向けで、いちいち懐かしい。

何しろ台湾新幹線そのものがね。
わたしが行ったのは10年前。記憶があやふやなまま書くけど、
たしか台北の桃園空港着が19:00過ぎで、――夜に知らない町へ移動するのは
基本的にしないことにしているんだけど、翌日からのスケジュールを考えて
その日のうちに台北から高雄へ移動して高雄泊りにすることにした。

飛行機の到着は少し遅れた。ATMで現地通貨をキャッシングして、手に入れたお札を
飲み物を買って崩して。新幹線駅へ行って。ぴかぴかの駅舎を見る余裕もなく、
次の高雄行き新幹線のチケットを買う。
「ガオシュン」恐る恐る発音してみた地名が係員に通じて嬉しかった。
新幹線はすぐ出る。急いでホームで降りて、すぐに来た新幹線に乗り込む。

うわあ、日本の新幹線にそっくり!
当時、新幹線が開通して間もないというのは知っていたが、それについての感慨は
あまりなかった。日本の新幹線技術で作ったということも。
でも実際に見てみると、ほんとに似ていた。日本に戻ってきたかと思うくらい。

座席について、一息ついて。
ああ、しまった!お弁当を買って新幹線に乗り込もうと思ってたのに!忘れた。
お腹ペコペコだよ。高雄に着くのは22時近く。それまで食べ物がないなんて。

そこへ、移動販売のカートが。助かった!パンか何か買おう……と思ったが、
食事系は売っていなかった。せめてものお腹の足しになりそうなのがジャガビー。
こんなに美味しいものがあるのかと思った。
スナック菓子なのにまるでフライドポテトじゃない?

高雄左営駅到着。地下鉄で美麗島駅へ。
こんな時間なのに美麗島駅の有名なステンドグラスアートを見過ごすことは出来ず、うろうろ。
その後、23時の道をホテルに向かって10分ほど歩く。

街並みがとても地元に似ている。ここはほんとに台湾か?と思う。
空間がねじ曲がって、地元に帰ってきてしまったんじゃないだろうか。
人通りはないけど危険そうな感じはまったくしない。
それでもホテルに着いてほっとしたのは事実だけど。


淡水行ったなあ。電車で行くと、終点近くは川沿いを走る。川の向こうに山。
山がきれいに目の前に立つ。アゲの店に向かう坂道。坂道が暑い。
肝心のアゲはあまり好きじゃなかった。

六号夜市も。公園で歌っているカラオケも。ルーローハンも。
行天宮も。魚丸湯も。みんな、なつかしい。


また行きたいな。台湾。

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