プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

☆< 旅するダンボール >

2018年12月10日 | ☆映画館で見た映画。

面白かった!面白かった!面白かった!

全然行く気はなかったんだけども。
ドキュメンタリーって、ドキュメンタリーなりに大いに面白いものはあるけれど、
映画館でお金を出して見るものかというと……
そこまでではないイメージがあるじゃないですか。
しかもダンボールですよ、ダンボール。見る前からイメージが出来る気がして興味がわかなかった。

しかし12月7日のNHKの朝イチで、青木さやかがやっているコーナーの紹介によって
見に行きたくなった。
「笑えて泣ける」という風に言われてました。ダンボールで……泣ける?
なんだろう、それは。「泣ける」という紹介の仕方は好きじゃないけど、
もしかしたら予想とは違ったものなのかもしれない。


そしたらほんとに面白かったんです。


まずはダンボールアーティストの島津冬樹の活動の紹介。
この人は世界や日本のあちこちに旅をして、そこで使用済のダンボールを拾ってor貰ってくるらしい。
純粋にデザイン的に気に入ったものを。
ダンボールが好きで仕方ない男。
多摩美時代にダンボールで財布を作って学祭のフリーマーケットで売ってみた。それが始まり。

それを売りにして、大手広告代理店(映画では触れられないが電通)へ入社。1~2%の狭き門。
というと、けっこうガチガチのデザイナータイプを想像するでしょ。
だがしかし、本人、電通社員なんてイラチな感じは全くなく、のーんびりした人。

何人もの元・同僚や元・上司が映画に登場するんだけど(よく出てくれたなと思うよ)、
「ダンボールが山のように集まり、彼の机は不用品置き場だと勘違いする人もいた」
「顧客の要望を満たすというよりは完全にアーティスト」
「プレゼンの為客先へ行く途中で突然いなくなったと思ったら、
ダンボールを細い路地から拾ってきて、“それを持ってお客様の所へ行くつもりなのか”と訊いたら、
後だと無くならないですかね、とそこを心配している」
この辺りの描き方も面白かった。写真なんかも挿入して、段ボールに「あげる」と書いた
付箋を貼ってあった写真を見て噴き出したわ。

同僚も上司も同じ会社人としての彼にはまあ賛成はしてないわけだ。
会社人としては自由過ぎただろう。
「なんで彼が採用されたか不思議だった。ただ彼は人との距離を埋めるのが上手い」
という声もあった。

映画を見ててもそれはわかるよ。
見てていい感じ。ほのぼのする。相当オタクっぽくて変な人ではあるけれど。


――だめだ、すっごく微に入り細にわたって言及したいのだが、
それをしてると文章が終わりません。涙を呑んで内容は割愛する。
要は長崎県諫早市のききつ青果販売の「徳之島特産じゃがいも」のダンボールを
ふるさとへ里帰りさせよう!あなたのダンボールをこんなに愛している人がいますよ!
と伝えよう、という話。


映画に出て来る人みんないい顔してた。ほんとにいい顔してた。

ききつ青果の社長は、自社製品のダンボールを抱えて会いに来る島津冬樹に戸惑うわけだが
(当然アポイントは取った上でだと思うけど)
切々とそのじゃがいもダンボールに対する思いを聞くうちに、
色々ある自社製品のダンボールについて熱をこめて説明するようになる。
正直いくら自社製品でも、じゃがいもそのものとかミカンとかについてなら社長さんは語れても、
まさかダンボールについてあんなに語れるとは思わなかった。愛があった。

箱詰めしているのはききつ青果の熊本工場。
……ああ、だから詳しく説明してると終わらないんだってば!!
ダンボールを印刷している所、製版している所、と順次遡って行って、
ついにその箱をデザインしたデザイナーの人に辿り着く。もう定年退職している。

そしたらそのデザイナーの人がね……
あ、これは言わない方がいいのか。
ぜひみんなに見に行って欲しい。
もう、あったかくて幸せな気持ちになるから。

ダンボールの印刷風景も製版の版も手彫りのゴム印もみんな面白かった。
言いたいことは山ほどあるけど、以下の言葉で代用させます。
Special Thanks to:
ききつ青果
製造元:九州森紙業株式会社
製版:相互製版株式会社
デザイナー:丸尾人志
……わたしはお礼を言うべき立場なのか?でもありがとうといいたいんだもん。

ま、わたしはエコにほとんど興味がないので
最初と最後が「地球環境」「アップサイクル」というメッセージになるのは
正直若干不満なんだけどさ。まあ頭と尻尾をつけないと形にはならなかったろうね。
つけたからこそSXSW映画祭にも出品出来たんだろうし。

言いたいことの10%くらいしか言えてないなあ。残念だ。
電通の話なんてほんの一部なのに。
面白かった。ほんと面白かった。
ダンボールから財布を作るワークショップ、近くでやっていたらすごく行きたい!と思った。

しかしね。上映場所に入る前にこれが配られるんだけどね。






……これってどーですか。これをどうしろというのだ、観客に。
わざわざミニサイズを作ったんだろうし(右下のパンフレットが文庫本サイズ)、
こんなに愛おしいダンボールを捨てるわけにはいかないし、しかしどのように使えばいいのか。
使い道はあとで考えるとして、映画のあとに買い物しようとかご飯食べに行こうとかしていた人は。
邪魔くさくてしょうがないのではないか。
まあわたしはちょっと嬉しかったですけど。あったかい気持ちになった。


※※※※※※※※※※※※


考えてみれば、個人的にも今日は珍しく人間らしい売買のやりとりが出来た日だったなと思う。

映画に行く前にミニストップで「たっぷりプリンパフェ」を食べたんだけど、
わざわざ店員の人が「多かったらテイクアウトにするための蓋をお持ちしますから
仰って下さいね」と言いに来てくれたし(結果としてぺろりと食べたけど)、

郵便局の窓口では、珍しいほど明るい感じの人が「どっちが安いかな?こっちも調べてみますね」
といって、小包の値段を丁寧に調べてくれたし(その分時間はかかったけど)

映画館でパンフレットを買おうとしたら、「そのダンボールも袋にお入れしますか?」と
おにーちゃんが訊いてくれて、……でも大きさ的に袋に入るか超微妙なの。
「入りますかね?」とわたしは言ったが、おにーちゃんが「やってみます」と、
すごく丁寧な手つきで入れてくれて。結果的にジャストサイズでした。笑っちゃった。

仏頂面で生活することに慣れすぎている。
それが自分も相手も求めることだろうと決めつけている。
でも今日のように、そうじゃない対応をされて嬉しいのも事実なんだ。
難しいけど。人と人との繋がりが希薄になる一方じゃない未来があるのなら。

 

そして折しも、長年の間に溜まった箱を処分中。

 

 





結局、箱好きなんですね。

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