からくの一人遊び

音楽、小説、映画、何でも紹介、あと雑文です。

Paper Plane - Status Quo

2021-12-31 | 小説

もう少しで年明けです。

今年も皆々さまにはお世話になりました。

来年もよろしく、です。(*´ω`)




Paper Plane - Status Quo



スカートとPUNPEE - ODDTAXI / THE FIRST TAKE



The Who - I Can't Explain



"Gabriel's Message" 日本語訳 字幕付きスタジオ居間 那須高原 - eastern bloom



(ちんちくりんNo,65)

 二階のかほるの部屋は広くさっぱりしていた。畳敷きの十二畳くらいだろうか。窓辺の左角に勉強机、その上には細長い笠の付いた卓上電気スタンド。後方には壁に密着したベッド。部屋の角に合わせているので、嵌っていると表現した方が適当なのかもしれない。嵌っていると言えば、まさに出入り口のドア横の埋め込み収納。壁いっぱいに木製の開き扉と引き戸がついている。恐らく前者が洋服ダンス、後者が押入れになっているのだろう。本の類は・・・、と思って見回してみたら勉強机から横に見る壁に背を寄せた向きで本棚があった。下二段がアルバムを立てかけられる程度、二、三段が雑誌とか教科書あたり、最上段が単行本とか文庫を入れられるくらいの高さで、中央が縦板で区切られている茶色いレトロな雰囲気が漂う木製の本棚だ。へえ。
 僕はかほるがどんな本を読んでいるのか興味津々で本棚に近づき、すらあと文庫本の棚を右から左へ、左から右へ軽く目視してみた。―と、目に留まった一冊があった。カフカ、"変身"て・・・。かほるは女子高生だ。昨今の女子高生がこういう不条理小説を読むなんて偏見かもしれないが、僕の中の常識では考えられなかった。いや、昨今であろうとなかろうと、昔からそのくらいの年齢の女の子が読む小説といったら決まっている。"不思議の国のアリス"だとか"悲しみよこんにちは"だとか、古いものになれば"風と共に去りぬ"だとか。日本文学だと太宰とか流行の村上春樹の作品あたりではなかろうか。僕は思わずそれを棚から引き抜いてかほるに訊いた。

「かほるはこういうの好きなの?」

「ああ、うん。まあまあ"好き"に入るかな」

 かほるは大きなスーツケースを開けて中身の確認をしていた。そもそも年頃の女の子が男のいる前で、あけっぴろげに下着なんかが入っているスーツケースを開けるだろうか。そうだ、かほるはもともとそういう奴だった。僕は眉をひそめた。

「何?」

 かほるはブラジャーを手にしながら僕の表情を読む。

「・・・ああ、これね。これ。だいじょぶよお、ちゃんと別の袋に入れて仕舞うから」

「そういう問題ではない」

「そうなの?」

 かほるは下着が入っているらしいクマさん柄の布袋にブラジャーを仕舞いながら、「ええと、なんだっけ」と話をもとに戻した。

「あ、ああ。かほるはカフカが好きなのかって」

「そうそう、それがいけないの?」

「いや、いけなくはないけど、昨今の女子高生にしては珍しいなって」

「へえ」とかほるは首を捻り、黒目を斜め上にあげる。

「薫りいこ」

「へっ」

「ヒロコさんが、よくそんな風の、もうどうにもならない、っての書くでしょ」

 薫りいこの作品はそれほど読んでいるとは言い難いが、ああなるほど、と思った。僕の読んだ薫りいこの作品はどれも人間の究極の絶望を書いた小説だった。その過程が非常に面白いのだが、読後感が充実した気分と嫌悪感とそういったものが綯い交ぜになった不思議な感覚の小説だった。カフカとは違うが読後感は同じだ。「なるほどねえ」そう言いながら、今更ながらかほるの意外な面を知って「明日までの時間」がもっと欲しいと思っている自分に気が付いた。
 それからは夕飯までテーブルの上に置いたポータブルテレビを観ながら二人で夕飯まで過ごした。時間を気にしながらも、こんな風に二人でゆったりと何もせずに過ごすのも初めてのことだなとつくづく思った。かほるとのこういう機会はもう二度と訪れないのかと思うと何だか胸に空洞ができたような気分になる。明日、俺はちゃんとかほるを送り出すことができるのだろうか・・・。
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Angus & Julia Stone - Grizzly Bear

2021-12-30 | 音楽
Angus & Julia Stone - Grizzly Bear



'79 篠島アイランドコンサート 吉田拓郎



Billie Eilish - Billie Bossa Nova (Acoustic)



Sade - Smooth Operator (Lovers Live)



ドレスコーズ【LIVE】「ボニーとクライドは今夜も夢中」(from『ID10+ TOUR』)



こうやって長年洋楽と邦楽を聴いてきて、やはり思ってしまうのが、ライブとレコード等の媒体を比べた場合、その質の差というものが、洋楽は「あまり感じないなあ」という感じで、対して邦楽は「レコード等ではあんなにサイコーの音や歌なのに、ライブだとなんでこうなの?」てな感じで、もしかしたら邦楽って機械の力に頼りすぎてんじゃないかなあ、って思ったりする。
ロックなんかだと、逆に粗削りなところがライブでは一種の味になっていて良いのだが、ソウルやジャージーな感じになってくると、やはり差があるなあと感じる。まあ、そう感じるのはそれだけ日本は録音編集や音響技術先進国だとも言え、それはそれで良いことなのだろうけど。
でも、日本もここ何年かはカラオケの影響なのか歌が上手い人が増えたね。良い良い。
ただ、みんな同じ声に聴こえてしまうのがね、残念だな。
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中野ミホ Nakano Miho Live / Hallelujah (cover)

2021-12-29 | 音楽
中野ミホ Nakano Miho Live / Hallelujah (cover)



Alcohol (Live)    The Kinks



Mr.Children 「Tomorrow never knows」 MUSIC VIDEO



Date of Birth - Time After Time



Lola Marsh - Wishing Girl (Official Video)



寝落ちしてました。

ここ一週間ほど、夜はエアコン点けっぱなし。

ああああ電気代があ・・・。(高いのよ、マジで)

三年くらい前までは、夏も冬もエアコン知らずの体だったんだけどなあ。👈遠い目・・・。

コメント (2)
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Garden City Life / carnation

2021-12-26 | 音楽
Garden City Life / carnation



Sharon Van Etten - Your Love Is Killing Me



Everybody's a Star (Starmaker) (Single Mix)



浪漫革命『ひとり』Official MV



湯川潮音 - Walking In The Air.



さて、今年もあと僅か。

・・・なのに年賀状書いとらんのよね。

また12月31日の除夜の鐘が鳴る前に、ポストへ走る?
コメント (4)
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Joni Mitchell - River (Official Music Video)

2021-12-25 | 小説
Joni Mitchell - River (Official Music Video)



Tatsuro Y - Fragile (Full Length Audio - Official Noisehive Video)



Mystery Jets - Campfire Song



「RIVER」南正人



(ちんちくりんNo,64)


 結局かほるは圭太と貢には、病気が悪化したこと、入院しなければならないということだけを話した。アメリカに行くことは話さなかった。それでも二人とも納得し、部室を出る間際に、圭太はこう言った。「気にせんでええで。ここももうそろそろ閉めよか思うとったんや。来年は卒業や。いつまでもここでたむろしていてもしゃーないしな。なあ、貢、海人もな」
 圭太の言う通りだ。いつまでもいてもしょうがない。貢は大学院へ進学、圭太は音響エンジニアとして大手レコード会社への就職が決まっている。僕だってもう来年のことを考えて動き出さねばならない。「ああ、潮時だね」僕は即座に応えたのだった。


お別れだね



 八月二十九日は雨が降っていた。とは言え、僕が午後下宿を出る頃にはほぼ小雨といっていい程になっていた。御茶ノ水駅を出て七瀬家へ向かう。明大通りを南に行き、駿河台下の信号を渡り、右へ行く。その先を行くと"アルムのおんじ"の古本屋がある。僕はそこを通り過ぎて二軒先の角を左に曲がり、ニ十メートル程行ったらまた左奥の道を行く。道路左沿い一軒、二軒…三軒目、煤けた板塀に囲われた二階建ての家の前で僕は立ち止まった。まるで田舎の旧家屋のような建物。中央には小さな屋根のついた格子戸、庭はそれ程の広さはないようだが塀の上から柿ノ木の枝が伸びていた。見上げれば、二階の軒下には木製の縦格子で四角く形作られたヴェランダが見える。これは戦前・・・、とすれば東京大空襲で奇跡的に残った家屋になるということか。両側ビルに挟まれすぐ後ろは"アルムのおんじ"の古本屋が入った三階建ての古いビルがある。それでもここは土地だけでも相当の価値がありそうだ。"七瀬"僕は門の表札を確かめてから格子戸に指をかけ、ゆっくりと横へ左腕を流した。

「古い家で驚いたでしょう」

 二階の部屋へと向かう階段を上りながら、前を行くかほるはこちらを振り向いた。「でも家の中は現代風だ」僕が応えると、ふふ、とかほるは「柱だけは残して、あとは部屋の内装からお風呂、トイレまで出来るところは全部リフォームしたからね」と言い、また前を向いた。階段を上る手前で一つの部屋の前を通りかかったが、ドアがやや開いていたので、内の様子が一瞬垣間見えた。―誰かの背中。誰、と思わず口にするとかほるは「ああ、ヒロコさん。ここは仕事場」不思議そうに僕の方を見た。お母さん?なら挨拶を・・・、僕が戻りかけるとかほるは「仕事中は駄目。特に今は新作に取り掛かっているから。大丈夫、夕食のときに会えるから。薫りいこに・・・」と僕をたしなめた。その物言いに、それじゃまるで、俺が薫りいこに会いたいがためにここに来たようで、嫌なんだけど、と僕は文句を言ったが、かほるはどこ吹く風で完全に無視されてしまった。
 ―明日の早朝にはかほるとお別れ、それを現実としてどう受け止めたらいいのだろうか。でも恐らく僕は「別れ」を信じていなくて、ただただ意味もなくにそう繰り返し、かほるに付いて階段を上って行っただけなのだと思う。
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