からくの一人遊び

音楽、小説、映画、何でも紹介、あと雑文です。

月に吠える

2016-07-30 | 音楽

我が家の柴犬コロくんは狂暴である。

なにが狂暴だというと、吠えるのである。

自分のテリトリー内は勿論のこと、動くものを確認すると道行く人にさえ吠える。

私はそのたびに彼に「ダメ!!」と叱るのであるが、一時的に収まるだけで私がその場を離れるとまた行き交う人たちに吠える。

機嫌が悪い時なんかは飼い主である私にさえ吠える時がある。

まったくどうしようもない奴である。

多分小さなころ、私たちの彼に対する”教育”が至らなかったことが原因であると思われるが、後の祭りで、今では立派な我がまま犬に育ってしまった。

悩みの種の一つである。


そんなコロくんであるが、何故か家族の中で次男にだけは一度も吠えたことがない。

一般的に(?)いくら飼い主であろうと、犬は食事中に近づくと敵意をむき出しにして吠えるものと認識しているが、次男にだけは近づいても吠えたことはない。

それどころか、食事を放り出して尻尾をふりふり次男の来訪を歓迎するのである。

私たちはその様子を眺めながら「何故なんだろう?」と首を傾げているのであるが、理由は今だに分からない。

ただ、一つだけいえることは次男はコロのことを理解しているんだろうなあ、ということだけだ。

彼はコロのなにをどのように理解しているのか謎ではあるが、きっと感覚的なものであろう。


そういえば、次男がまだ中学生のころこんなことがあった。

夜中、夜深い時間帯にコロくんなにを思ったのか、突然遠吠えを始めた。

私はもう寝床に入っていたし、まあ遠吠えなんかすぐ止むだろうとたかをくくっていたのだが、なかなか止まない。

5分、10分と我慢していたのだがやはり止まないため、近所迷惑になることを恐れてコロの様子を見にいった。

暗闇の中、廊下を伝い、サッシを開けて、「コロ!」と呼びかけようとしたそのとき、私は一瞬躊躇した。

コロの傍に次男が立っているのを認めたからだ。

彼はコロが遠吠えをしている方向、夜空の何かを見ていた。

何故次男が?なにやってるんだ?

私がそう思って見ている姿に気付いたのだろう、次男はゆっくり口に人差し指をあて、それから私に庭に下りてくるよう指示した。

私は彼の指示通り、庭に下り、彼らに近づく。

私が近寄り、次男に言葉をかけようとすると彼はそれを制し、夜空に浮かぶ月を指さした。

「大丈夫、もうすぐコロも大人しくなるよ」

彼は低くとおる声で囁いた。

「コロはあれに向かって吠えてるのか?」

「そう、もうすぐ雲に隠れる。そうすれば鳴きやむさ」

「何故、月なんかに・・・」

「分かんない、・・・でも今日は満月だからな」

「満月?」

「満月は故郷を思い出させる。そう思わない?」

そう言われて私はコロを見た。

コロは満月に向かって愁いを帯びた顔を上げ、まるで誰かに訴えかけるようにウォーン、ウォーンと鳴いている。

その姿に”伝えたくても伝えられない思い”を感じた。

「でも、満月なんて今日だけじゃないだろ?なんで今日に限って・・・」

「犬だって時にはセンチになるときがあるさ。特に今日の満月はきれいなまんまるお月さんだしね」

「・・・そうか」

「そうさ」

それから私たちはしばらくの間、夜空に浮かぶ満月を眺めていた。

そしてその満月が次第に雲に隠れていき、完全に姿を消すころにはコロの遠吠えも止んでいた。

コロはこれでもう十分だというばかりにそそくさと寝床に戻り、体を丸めて目を閉じてしまった。

「さてと・・」

コロのその様子を見届け、私たちも解散することにした。

「もう、コロも気が済んだってさ」

次男は片目を瞑り、私に笑いかけた。

コロの”遠吠え”はその後続くことなくその時一回のみであった。

これで、のべつ幕無し吠えることさえなくなれば良いのだが一向に直る気配はない。

先日次男が帰省したときにコロと仲良くなる”こつ”を伝授願おうと聞いてみたのだが、「俺にも分からない」とのこと。

聞いた私がバカだった。


これを書いている今、例によってコロは道行く人に吠えている。

そのたびに私はコロに”ダメ!”を連発している。

”ダメ”を出されたコロはしゅんとした面持ちでいったんは大人しくなる。

しかしもう大丈夫と思って私が離れるとまた吠えだす。

さきほどからその繰り返しだ。

いい加減疲れた私はコロの瞳をじっとみつめ、彼の心に訴えかける。

なあ、コロくん。いい加減大人になりましょ・・

お前ももう10歳なんだからさあ。





早川義夫 サルビアの花


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黒芝コロ

2016-07-28 | 日記


我が家の番犬コロです。
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かなたくんとのこと

2016-07-28 | 音楽
The Rolling Stones - Angie - OFFICIAL PROMO (Version 1)



かなたくんが我が家に現れるようになったのは次男が小学校6年生のころである。

たしか息子の友人の一人として紹介されたような気がする。

息子が”N崎かなたくん”と私に紹介したとき、ああ、あのN崎さんちの・・・、と私は眉をひそめた覚えがある。

なぜ眉をひそめたかというと、かなたくんのおとうさんは地域で有名な反社の人間だったからだ。

父ひとり、子ひとりの環境で育ち、父親は近所の人に会っても挨拶一つ交わさないはぐれもので、N組に所属しているとのもっぱらの噂だった。

なんで連れてきたんだと後で息子を問いつめたところ、友達じゃん、どうして駄目なのさと逆にたしなめられた。

私は職業の貴賎で人を選ぶなと息子たちに教育してきたので、大いに恥じ、子供に罪はないものなと思い直したものだ。


そんな環境で育ったかなたくんはうちで飼っている黒芝の”コロ”がお気に入りだった。

彼が初めてコロと対面したとき、コロは吠えなかった。

気性の荒いコロが初対面の人間に吠えないということはまずありえない。

だが、吠えるどころかコロは丸まった尻尾をふりふり彼に近寄り彼の顔をぺろぺろ舐めだしたのだ。

私は驚き、そしてかなたくんはきっと優しい子なのだなと思った。

それからかなたくんは息子の友達というより、コロの友達としてちょくちょく我が家を訪れるようになった。

月に2,3回、時には毎日のように学校帰りにコロの様子を見に来た。

私はそんな2人(?)をいつも微笑ましくみていて、私が声を掛けるとかなたくんは、えへっ、と笑い、「こんちわ」と挨拶をする。

挨拶された私も嬉しくなり、彼らの仲間に入ってコロと遊びながらかなたくんといろいろなことを話した。

家族のこと、学校でのこと、一人ぼっちであること、息子だけが普通に接してくれるんだと、とつとつと語ってくれた。

私はそんな彼が愛おしくなり、自分の3番目の息子のような気がしてしかたなかった。

真っ直ぐ育って欲しい、そう痛切に感じていた。

学校で暴力事件を起こしたと聞いたこともあったが、コロの前にいる彼はあくまでも純朴で素直な少年だ。

私は、自分の目で見、耳で聞いたことを信じた。


そんな関係が3年近く続いたころだろうか、中学の卒業式まであと三か月にせまったある日、かなたくんはコロの前で暗い顔を浮かべていた。

私はそれまで彼のそんな顔を見たことがなかったので、不安になり声をかけた。

「どうした、そんな深刻な顔して」

「うん」

「なんかあったのか?」

「・・・・・」

「俺には話せないことか?」

「いや、そんなことない」

「じゃあ話してみたら?」

かなたくんは私の顔を見てそれから目を伏せた後、こうぽつりと言った。

「千葉に行くんだ」

「えっ?」

「・・・・・・お祖父ちゃんのとこ行けってさ」

「誰が?」

「親父。・・・お祖父ちゃんのとこ行ってまっとうな人間になれってさ」

私は驚いた。驚いて、一瞬にして冷静になった。冷静になって彼の父親がどういう思いで彼に対してその言葉を口にしたのか理解した。

「・・・そうしたほうがいい」

「うん」

「はっきり言って今のお前の周りの環境は良くない。来年は高校生だ。将来を考えるなら今かもしれない」

「・・・・俺は捨てられたんだろうか」

「いや、そんなことない。お父さんだって、別れたくないさ。でもお前の将来を考えるとそうしたほうがいいと考えたのだろう」

「・・・・そうかな」

「そうさ、きっとそうに違いない」

「うん」

彼はそう返事を返すとコロの鼻先をかるくちょんと指先ではじいた。

コロはびっくりして目を丸くしながら彼を見つめていた。



それから後、かなたくんと私の特別な物語は、ない。

彼は卒業を迎えるまで我が家を訪れることなく、やっと卒業式を終えた日に息子とともにコロに最後のお別れをすべくひょっこりと現れた。

彼はコロを前にして照れくさそうにしてつぶやいた。

「バイな」

それがコロに対するかなたくんの別れの言葉だ。

あっさりしているくらい潔いコロと彼との別れの瞬間だった。


あれから5年が過ぎた今、私は写真を眺めている。

かなたくんと息子とコロが並んで写っている写真だ。

3人(?)仲良く満面の笑みを浮かべて(?)写っている。

この写真はかなたくんの手元にはない。

送ろうとも考えていたのだが、何故だか躊躇していた。

そろそろ彼のもとに返してやるか・・・・

最近やっとそんな気になって私は彼への手紙をしたためている。
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若者のすべて

2016-07-26 | 音楽

ヤナくんは虚弱体質な子だった。

小さいころからあらゆるスポーツを試みるも、体力がそれについていかず、挫折の連続だった。

そんなヤナくんが中学生になって選んだ部活動が柔道部。

先に入部を決めていたKたちは、小さなころからヤナくんのことを知っていたので反対したのだが”強くなりたい”というヤナくんの言葉に負けて入部を許すことにした。

柔道部は休部していたものをKたちが立ち上げたもので、先輩もいないことだしこれならヤナくんでも続けられるだろうというのも理由の一つだった。

入部したヤナくんは一生懸命頑張った。

一生懸命頑張ったが、やはり運動が不得手なヤナくんはみんなにはついていけなかった。

最初こそ、みな似たり寄ったりだったが、2年生になるころには、Kたちとの差はぐんと広がり、ヤナくんの役割はもっぱら”投げられ屋”になっていた。

”投げられ屋”とは文字通り投げられる役目を負い、調子の落とした選手の相手をして、調子を取り戻させるいわばブルペンキャッチャーのような存在だ。

毎日何十回となく他の部員の相手をさせられヤナくんは投げられ続けた。

特に、Kは好不調の波が激しかったのでよくヤナくんを練習台にしていた。


そんなある日のこと、社会科の教師であるN先生がKたちの練習を見に来た。

顧問の先生が用事で来られないので、柔道経験のあるN先生が代わりにきたのだ。

N先生の噂は知っている。高校時代県大会で優勝したほどの猛者だ。

Kたちは緊張し、普段にも増して激しく練習した。

N先生は最初はKたちの練習風景をのんびりと見ていたが、やがて抑えきれなくなり、選手たち一人ひとりに指導をしだした。

その中でヤナくんが気になったのか、ヤナくんに対しては特に厳しく足の運び方から手の掛け方、腰の動きまでみっちりと指導を始めた。

「そうじゃ、ない。そうじゃないといってるだろう」

そう言われるたび、ヤナくんは空を舞い、激しく畳に叩き付けられる。

ヤナくんが間違いを犯すたびにN先生は容赦なくヤナくんを投げた。

ヤナくんも負けじと起ちあがり、N先生の懐に飛び込んでいった。

それからヤナくんは何十回となく投げられただろうか、もういいだろう、そんな空気が見ている部員の間で立ち込めてきたとき、「それ最後だ」とN先生は叫び、一本背負いでヤナくんを担ぎ上げ、ヤナくんの背中を畳に激しく打ち付けた。

ヤナくんは悶絶し、転げまわるとやがて動かなくなった。

N先生はそれを見ると満足したのか「しばらく休ませてやれ」という一言を残して道場を後にした。


次の日、ヤナくんは退部届を顧問に出した。

それを聞いたKはヤナくんに理由を問いただすべく放課後体育館裏に呼び出した。

「なぜやめるんだ?昨日のことが原因なのか?」

体育館裏でKはヤナくんに務めて冷静に尋ねた。

「いや・・・」

「柔道がいやになったのか?」

「いや、違う。」

「じゃあ、なぜなんだ」

Kはヤナくんに対して冷静な態度を保ちつつ、詰め寄った。

するとヤナくんはしばらく考える仕草を見せ、それからため息をついて言った。

「・・・・ばかにしてるだろ・・・」

「えっ?」

「おまえらは、俺のことをばかにしている」

「・・・・・」

「俺は柔道を始めて一年も経つのに技の一つも習得できていない。投げられてばかりだ。特にK、お前にはよく練習台にさせられたよな・・・。俺はもう限界にきていたんだ」

「限界?」

「そう、限界さ。昨日のことはいいきっかけになった」

そう言われてKは言い返す言葉が見つからなかった。ヤナくんがそう思っていたなんて考えもしなかった。ヤナくんのことをよく知っているようでなにも分かっていなかった。

「・・・でも強くなりたくて入った柔道部だろ」

そう言うのが精いっぱいだった。

「ああ、そのはずだったんだけどな。俺にはやっぱり無理だったんだよ。・・・・・それに・・・・」

「それに?」

ヤナくんはKのその問には答えなかった。答えずにどこか遠くを見つめているような眼をしていた。・・・まるでどこかにいってしまうような。

「じゃあな、俺帰るわ。今日から帰宅部、気軽な人生さ」

ヤナくんは踵を返すとKの前から離れて行ってしまった。

Kはひとり残され、考えていた。

・・・・それに、って何なんだ。

考えても分かるはずもなかった。




それから数年後にヤナくんは病魔に襲われることになる。

筋力が極端に低下する筋ジストロフィーという難病で、それは遺伝的要素の強い病気であり、ヤナくんの父親も同じ病気で亡くなったということをその時はじめて知った。

Kは病院に見舞いに行こうとは考えていたが、中学時代の苦い思い出もあり、またヤナくんも自分の訪問を喜ばないだろうと勝手に決めつけ、ついに見舞いには行かずじまいになってしまった。

ヤナくんの最後の半年は壮絶なものだったらしい。

筋力が低下したためか痩せ細り、呼吸もままならないためにのどからチューブを差し込まれ、毎日「殺せ」と繰り返していたという話をどこかからか聞いた。


ヤナくんはもういない。

最近になってようやくKはヤナくんのことを偲ぶ気持ちになってきた。

あのときのヤナくんの本当の気持ち、思い、今なら分かるような気がしていた。

「それに」の意味も。



フジファブリック - 若者のすべて



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Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun (Official Video)

2016-07-24 | 音楽
Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun (Official Video)


シンディ・ローパーです。




この曲を聴くと元気になります。

明日は月曜日。

憂鬱な人もいることでしょう。

私は月曜日の前の日の夜は元気な曲を聴いて気分をリセットします。


今日は一日憂鬱な気分でした。

また明日から月曜日がはじまるのか、ってね。

で、この曲を聴いて気分を一新しました。

明日から共に頑張りましょうね、皆さん。
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