【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

新NISA(健全な利用が望まれる)

2024-01-27 16:30:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
2024年から新NISAが始まりました。新NISAでは従来のNISAのように非課税期間が限定されていないので、じっくりと投資のタイミングを見極めることができます。
30代の人が今後何度もやってくる株式市場の低迷期にコツコツと投資をしていけば、老後を迎えるころには年金や退職金と並ぶ老後の生活の糧になることは間違いないでしょう。

そんな新NISAですが、これとは違う方向にいってしまう危険性をはらんでいます。

◆年間の投資額が大きすぎるのでは(損失を助長することに)

新NISAの非課税限度額1800万円は最短5年で到達できます。せっかちな人であれな、「5年後には配当で暮らす」「5年で資産を倍にする」となるでしょう。この考えが打ち砕かれるのは株式市場の歴史からして明らかです。5年間も投資の絶好機が継続するというのは「奇跡」です。

やはり、限度額に到達する期間は最低でも20年程度にすべきだと思います。「退職金を手に入れたシニアにもチャンスを!」は危険ですので、制度上そのようなことはできないようにしておくべきです。

◆短期売買に利用される(プロ級の投資家による制度趣旨に反する活用)

成長投資枠年間240万円、プロ級の投資家であればこれを巧みに活用するでしょう。「買って」「売って」をしても翌年以降に上限の1200万円は復活します。プロ級であれば毎年5割程度の売却益120万円を得ることは可能です。これが非課税とは旨味がありすぎます。さらに、家族分のNISAも活用すれば相当な利益を獲得できます。

このような制度悪用(?)を避けるため、投資後一定の保有期間(例えば5年)を設けてその分の売却益や配当のみを非課税とすべきです。

◆海外に資金が流れる

新NISAの投資対象は国内に限られていません。現時点で「積立投資枠の主流」は米国を中心とした外国株式で運用する投資信託となっています。NISAの制度趣旨は株式による資産形成であることからすればこれでいいともいえますが、やはり「国内企業(産業)の支援育成」も目的としてもよいのではないかと思います。税の優遇を通して海外に資金が流れるのは残念なことです。

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★陰謀論
新NISAを政府による陰謀であると論じる人がいるようです。「日本郵政」「日本電信電話」「日本たばこ産業」と政府が保有する(株主である)上場企業がありますが、新NISAによってこれらが集中的に買われるとは考えられません。陰謀論、その論拠は何でしょうか?

★結局は宝くじ(こちらも非課税)と同じ
株式投資で得をしている人の割合は1割、損をしている人は1割、そして残る8割がプラスマイナスゼロといわれています。1割の人の利益は1割の人の損失に相当するということです。そもそも、こんなことで得た利益(儲かっても次は損をする)に課税されてはたまったものではありません。結局、新NISAは宝くじと同じです。優遇税制ではありません。

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株式投資は宝くじと同じ(NISAの恒久化)

2022-12-27 18:30:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
2024年からNISAが恒久化されるとともに投資枠も大幅に拡大されることが決まりそうです。そうなれば非課税となる投資枠は、多くの国民にとって「一生かけても」使い切れないものになることでしょう。

株式投資をしている人で儲けているのは10%にも満たないようで、いわゆる「億り人」になれるのは宝くじの「一等」に当選するのと同じくらいの確率です。

今までの証券税制は、「たまたま儲かった年」は高税率で課税され、損をした年は「株式投資は自己責任」「株式投資は余裕資金でするもの」と弱小投資家にとても冷たいものでした。NISAはこの「たまたま儲かった年」に課税をしないものに過ぎません。NISAにおいても損をしたからといって、その損失を他の所得と通算するなどなんら税制上の手当て(救済措置)はありません。また、配当が非課税になるといっても、多くの投資家が受け取る年間配当額は10万円に満たない場合がほとんどで、「年金や小遣いの足し」であることから非課税にしてもらえるのは当然です。

NISAによる非課税措置は、宝くじの賞金が非課税であるのと何ら変わりはありません。税制上、株式投資は宝くじと同列だということです。

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NISAの投資枠が拡大し非課税期間が恒久化されたとしても、いわゆる「貯蓄から投資へ」が活発化するとは到底思えません。ある程度期待できるのは、若年層の収入の一部が長期的な資産形成の手段として株式投資へ向かうということでしょう。

株式投資は住宅取得のように制度的な後押しをしただけでは促進されません。「株式投資はリスクが高い」「株式投資は自己責任」、NISAの投資枠が拡大し非課税期間が恒久化されてもこのことはまったく同じです。「それでも株式投資をする!」というマインドを喚起することが必要なのです。

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特定口座年間取引報告書の見方

2022-09-24 11:00:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
株式投資をしている人の大部分が特定口座を開設していますが、「特定口座年間取引報告書」についてはあまり知らない人が多いです。特定口座であれば確定申告をする必要はありませんが、確定申告をすれば税金が還付される、譲渡損失が繰越せる、複数の特定口座で損益通算できるケースがあります。この判断をするにはまずは特定口座年間取引報告書の見方を知る必要があります。

【ご注意】下記は特定口座で「源泉徴収あり」を選択している場合の説明です。

◆特定口座年間取引報告書がなければ確定申告はできない(証券会社は必ず発行する)

「取引している証券会社は特定口座年間取引報告書を発行してくれない!」という人がいますが、特定口座を開設していればその証券会社(銀行も含む。以下同じ)は必ず特定口座年間取引報告書を発行してくれます。ネット証券の場合にはサイトからダウンロードできます。ネット証券でなければ郵送してくれます。

どの証券会社であっても「名称」は特定口座年間取引報告書です。「様式」も同じです。証券会社が提供するこれ以外の取引状況の数値や自身で計算した数値はこれと異なっていることがありますので確定申告に用いることができません。

◆特定口座年間取引報告書は税務署に提出されます

特定口座の年間の取引状況は、証券会社から税務署に報告する義務があります(譲渡益や配当の額と関係なく報告されます)。それが「特定口座年間取引報告書」にほかなりません。特定口座年間取引報告書は、証券会社が顧客サービスのために作成するのではありません。

◆確定申告は特定口座年間取引報告書の記載に従って行う

特定口座の年間の取引状況は特定口座年間取引報告書を通して税務署に報告されていますので、確定申告をするにあたっては特定口座年間取引報告書のとおり確定申告書も記載しなければなりません。確定申告書で特定口座年間取引報告書と異なる数値を記載してしまうと税務署から連絡がありその修正を求められます。

◆特定口座年間取引報告書の内容

「譲渡に係る年間損益計算及び源泉徴収税額」と「配当等の額及び源泉徴収税額等」に分かれます。前者は売却益とそれに伴って源泉徴収された税額です。後者は配当とそれを受け取る際に源泉徴収された税額です。

◆譲渡に係る年間損益計算及び源泉徴収税額

これは年間(受渡日ベースで1月1日から12月31日まで)の個々の譲渡を積み上げた金額です。譲渡益と譲渡損がある場合にはプラス・マイナスされます。「譲渡の対価」「取得費」「差引金額」、それぞれを確定申告書の所定の箇所にそのまま転記しなければなりません。

上記の税額は国税(所得税)と地方税(住民税)に分けて記載されています。これも確定申告書の所定の箇所にそのまま転記しなければなりませんが、国税はともかくとして、地方税については確定申告における税額には直接に影響しないことから(確定申告は国税である所得税に関する手続であることから)記載を忘れがちです。この記載を忘れると、地方税の計算において源泉徴収された税額が反映されなくなりますので注意が必要です。

◆配当等の額及び源泉徴収税額等

この部分は項目が多いことから大変複雑ですが、途中は読み飛ばして合計額である「差引金額」と「納付税額」を見れば年間の配当合計額と徴収された税額がわかります。税額が国税(所得税)と地方税(住民税)に分けて記載されているのは譲渡と同じです。

◆譲渡損失の場合

譲渡損失の場合は記載が異なってきます。譲渡の部分は税額が記載されません。譲渡損失は配当と相殺されることから、配当部分の差引金額の上部に譲渡損失が記載され、配当から減額する形式になっています。

「譲渡損失>配当」の場合には配当から徴収された全額が還付されます。「譲渡損失<配当」の場合には譲渡損失相当額が還付されます。

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アパート経営は儲かるのか?

2022-09-23 12:15:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
アパート経営が儲かるのかどうかについて、税に関わる者の立場から書かせていただきます。

◆空室は心をむしばむ

当然のことですが、賃貸アパートは入居者がいなければ収益が生じません。また、一部でも空室があれば投下資金(物件購入に要した資金)の回収が遅れます。空室率が20%であるということは投下資金の20%が無駄になっているということです。それを残る80%部分の収益でカバーするのは容易なことではありません。

空室はアパート経営者の心をむしばみます。特に本業(前職)が比較的安定しており、それに慣れている人にとっては耐えがたいことです。

◆多額のローンを抱える不安

賃貸物件の取得を全額自己資金でという人は少数だと思います。ほとんどの人は数千万円のローンを背負ってのアパート経営ですので、「本当に返せるのか?」という不安を抱えることになります。

◆入居者との関係

「大家様」「家主様」、そんな時代はとっくに終わりました。アパート経営は住空間を提供するというサービス業です。対価(家賃)を支払う入居者は「対価以上のサービス」を要求します。「サービスが対価未満」であれば直ぐに解約されてしまいます。

常に入居者の声を聞き、そのニーズや不満を把握しておかなければアパート経営は成り立たないのです。

◆修繕とリニューアルは当初の物件購入よりも判断に悩む

賃貸物件は時とともに傷みその都度修繕をしなければなりません。また、新たな設備(機能)の付加が必要となります。これを怠っていると入居者の不満が募り、いずれは解約されます

修繕とリニューアルをすべきかの判断には大変悩みます。「これで収入が維持できるのだろうか?」「あと何年物件は持つのだろうか(資金は回収できるのか)?」、当初の物件購入よりも悩むこともあります。

◆信頼できる相談相手がいない

アパート経営には様々な「業者」が関係してきます。彼らはアパート経営の相談に乗ってくれるありがたい相手でもあります。しかし、当然のこととしてその業者は「自分も儲かる」という前提で行動します。

アパート経営を始めた当初は「ありがたい人」であった業者とも歳月が経つにつれて疎遠になり、それに代わる相談相手がいなくなってしまうということは決して珍しいことではありません。

◆年によって税金が大きく変動することがある

「業者のシミュレーション」では家賃収入は安定し、支出(必要経費)も前提条件を基に算出されていることから税金も予測可能なように思いがちです。しかし、アパート経営の税金は思いのほか変動が激しいです。

「満室で多額の修繕がない年」は税額が最大になります。「空室が多く多額の修繕があった年」は税額が最小になります。この変動が予測不能です。しかも、税金の納付は1年遅れてしなければなりません。これが辛いです。

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以上、アパート経営の大変さばかりを強調しましたが、もちろんアパート経営にはメリットや旨味もあります。

★「労働時間」が少ない

アパート経営の最大のメリットは、比較的少ない時間で収益を上げることができるという点です。アパート経営にかかわる作業の大部分は業者がしてくれますので、経営者は業者との打ち合わせだけをすればよいということです。

★投資対象が目に見える

たとえば、FXや仮想通貨(暗号資産)と違ってアパート経営は投資対象が目にはっきりと映ります。物件の状況は現地で実際に確かめることができます。収益性に大きく影響する周辺の状況も知ることができます。ですから、素人でも比較的収益の見通しを立てやすいです。

★売り時を逃さない(物件の買い替えも必要)

賃貸物件から得られる収益は永遠ではありません。賃貸アパートという商品は時とともに陳腐化します。これは電化製品や衣料品と同じです。賃貸アパートの収益は、ある時を境にして下降線をたどります。投資額が十分回収できたのであれば、透かさず売ってしまうという機敏さが必要だと思います。次の物件を探せばいいのですから。

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NISAの恒久化

2022-09-17 11:45:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
8月31日に金融庁から令和5年度税制改正要望が公表され、NISAの抜本的拡充策が明らかになりました。要望では、「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度」ということが掲げられています。具体的には制度の恒久化、非課税保有期間の無期限化、年間投資枠の拡大、非課税限度額の拡大が盛り込まれています。

しかし、これで本当に「貯蓄から投資へ」は進むのでしょうか?

◆株式投資で損をした場合の税制の充実が必要

岸田内閣が成立するはるか以前から「貯蓄から投資へ!」と政府は叫んでいますが、あまりそれが進んでいません。それは、国民は株式投資で「損をしたくない」からです。

株式投資を経験した人であれば、株価なんてあっという間に買ったときの半分になるのを知っています。「半値になるから倍にもなる。そして最後は10倍になる」、この域に達するにはそれを裏付ける成功体験と確かな知識(まぐれで儲けたのではない)、さらに資金的な余裕が必要です。

多くの人は保有株の急落に驚いて投げるように売ってしまい、「もう二度と株は買わない!」となって株式市場から去っていきます。「貯蓄から投資へ」を実現するにはこの「悪循環」を断ち切らなければなりません。

◆譲渡損失の繰越期間を延ばす

現行の税制では、特定の年度で生じた株式投資の損失を繰越して、翌年度以降3年間の利益から差し引くことができます。この期間をもっと延長するべきです。株式市場というのはひとたび低迷すると相当長期化することが常です。これは、我が国のバブル崩壊後の「失われた?年」などからして明らかなことです。損失の繰越期間は10年どころか「生涯」にしてもいいと思います。

◆税率の累進化(総合課税にする)

なけなしの(少額な)資金で株式投資をしている人もいます。「貯蓄から投資へ」という国策においてはこのような人を大切にしなければなりません。現状の株式譲渡益に対する税率、所得税15%(さらに復興特別所得税が2.1%上乗せされる)、住民税5%は明らかに高すぎます。

譲渡益や配当に対する税率は累進化すべきです。それには、譲渡益を総合課税(累進税率)に含めることも一法です。

◆必要経費を認める(一定額は非課税とする)

株式投資に成功するには継続的な情報収集が欠かせません。これには相応の労力を要しますのでこれに関するコストを必要経費として認めるべきです。ただし、この「実額」を把握するのは容易でありませんので、一定額を譲渡益あるいは配当から控除する、つまり一定額を非課税にすることが必要です。

◆確定申告を不要とする仕組み(原則として1人で1口座)

上記のような制度を適用するには、自身で複雑な確定申告をしなければなりません。そこで、ITを駆使して、証券会社のシステムで税額を確定できる仕組みを確立すべきです。そのためには、証券口座は1人で1口座でなければなりません。

それならばNISAと同じかもしれませんが、NISAは「どんぶり勘定」的であることを否定できません。一定額、一定期間が「税とは無縁の世界」です。確かな計算の基づく税額のほうが国民は納得できるのではないでしょうか。

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★株式投資はギャンブルではない

資本主義社会においては「株式会社」が大部分の商品やサービスを供給しています。株式はこの株式会社への資金提供であり株価はその出資価値(企業価値)です。株価が低迷すればこの出資の価値も下がり株式会社の資金調達力も低下します。株式会社の活力を維持向上させるために株式投資が欠かせないのです。「貯蓄から投資へ」を推し進めるにはこの点を国民に認識させる必要があります。

株式投資で儲けた人のことを、「楽して儲けやがった」とか「たっぷり税金を払わせろ」とかいって批判する風潮を一掃しなければなりません。株式投資は、資本主義社会を維持発展するための「勇気ある行動」なのです。(ただし、短期間の投機的売買はそうではないと思います。さらに、インサイダー取引など不正な取引は論外であることはいうまでもありません。)

★海外に資金が流れるようでは・・・

昨今、若年層の一定割合では株式投資が定着してきています。しかし、投資の主流は米国株を中心とした外国株式に投資する投資信託です。これでも資産形成という点においてはいいのですが(売却益や配当で増えた資産が国内の消費に回る)、「貯蓄から投資へ」を推進するにあたっては国内産業の発展という点も重視しなければならないと思います。海外に資金が流出すると国内企業の株価が低迷し、外資による買収の標的とされてしまいます。

★今の仕事に将来性がないので株を買う・・・

これも何とかしなければなりません。誰もが株式投資で生計を立てることはできません。株式投資は経済の一機能です。日本経済全体が発展する政策を期待したいです。

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