【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

【個人事業者・不動産所得者】会計ソフトを使わないほうが効率的です!

2016-04-02 22:30:00 | 会計ソフト(弥生会計)
「なんでもパソコンで!」、「なんでもネットで!」という世代が、昨今では起業する人の大半を占めるようになってきました。そのような人が経理や税務申告の作業に着手するに際して迷わずに選択するのが「会計ソフト」です。ソフトも安価に購入できます。また、最近台頭が著しいクラウド会計ソフトには、無料で使えるものがあります。ほとんどの人が、当り前のように、無意識に、会計ソフトの操作を開始しているといっても過言ではありません。

しかし、会計ソフトには大きな「弊害」があることを忘れてはいけません。

◆設定が間違っていると機能しない

購入した会計ソフトはインストールしただけでは使えません。必要に応じてユーザー独自の諸設定をしなければなりません。そうでなければ一部のデータ(仕訳)が未入力になるなどしてしまいます。これでは、正確な処理結果が得られず、結果として税務申告も間違うことになってしまいます。

最近では、ネット銀行の預金増減やクレジットカードの利用実績を「自動的に取込む」という機能が主流になりつつありますが、この機能も設定ができていなければ有効に動作しません。

◆処理結果を理解できない(試算表?総勘定元帳?)

会計ソフトでデータを処理した結果は既定の様式でしか見ることができません。その様式は「試算表」「総勘定元帳」「仕訳日記帳」など、生まれて初めて見るものばかりです。課税はこれらを基にされますが、「儲かっているのか?いないのか?」、「どれだけ課税されるのか?」に関してさえも見当がつかないという人が数多くいます。

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★「会計ソフトは断念したほうがいいです(仕上げは会計事務所にお任せください!)」

個人事業者・不動産所得者にそのようなアドバイスしているケースがあります。

「青色申告特別控除(65万円)が!」、「経理に強くなりたい!」はもっともですが、「この人は会計ソフトを使っての申告は無理だろう・・・」という人が相当数います。

個人の事業所得・不動産所得は次のように計算します。

「収入-必要経費」

これは、青色申告決算書や収支内訳書の構造を見れば理解できると思います。会計ソフトの入力画面からは「収入-必要経費」「青色申告決算書(あるいは収支内訳書)」が直接は結びつきません。むしろ、「これ(入力画面)からどうして税務申告ができるのだろう?」という疑問と不信感(?)を抱くだけです。また、誤入力や誤操作に気が付かずに、実態とは隔たりのある数値を算出していることがあります。

大切なことは次のとおりです。

○1年間の収入を集計する
誰でもできると思います。

○1年間の必要経費の領収書を科目別に整理して集計する
「科目」とは、青色申告決算書(あるいは収支内訳書)の必要経費の内訳です、「租税公課」「荷造運賃」「水道光熱費」「旅費交通費」「通信費」「広告宣伝費」「接待交際費」などのことです。領収書を科目別に整理・集計すれば青色申告決算書(あるいは収支内訳書)の経費欄を埋めることができます。

以上の作業ならば、かなりの人が自信を持ってできると思います。専門知識も不要です。作業結果にも実感を持つことができるでしょう。

★重大な漏れや誤りは会計事務所が発見してくれる

この方法では、会計ソフト(複式簿記)を「正しく」活用した場合に発見・防止できる仕訳(データ)の漏れや重複を発見しにくい場合がありますが、会計事務所(税理士)ならば「勘と経験」で重大な漏れや重複を発見できることがあります。そして、その結果で税額が相当変動することも珍しくありません。

年間売上高が1000万円に満たない(今後もまずは満たない)個人事業者・不動産所得者の場合は、自身で会計ソフトを利用するのは無駄です。会計事務所に依頼するほうですが効率的です。上記に類似する自己流の方法で青色申告決算書(あるいは収支内訳書)の原稿を作成し、それとその基データを会計事務所に手渡し、簡単なヒアリングを受ければそれで青色申告特別控除額(65万円)に匹敵するメリットを受けることが十分可能です(この方法では65万円の控除は受けられません)。

e-Taxは来年1月からWindows10に対応予定(ただし、Microsoft Edgeは利用不可)

2015-12-01 13:30:00 | 会計ソフト(弥生会計)
e-Tax(国税電子申告・納税システム)は来年1月からWindows10に対応する予定です。

●国税庁サイト・・・お知らせ一覧 >【重要】Windows10のご利用について

そりゃそうでしょうね。これだけWindows10が普及しているんですから、多くの国民が関わる確定申告の時期になっても「未対応」では国民にそっぽを向かれてしまいます。そっぽどころか国税庁・国税局・税務署にクレームの電話が殺到します。

●Microsoft Edge

Microsoft Edgeという新ブラウザがWindows10では標準となりました。Internet Explorer(IE)の後継です。これが「曲者(くせもの)」のようで、民間のサイトでもこのMicrosoft Edgeでは一部の動作ができず、Windows10においてもInternet Explorer11の利用を推奨しているケースがあります。

当然のようにe-TaxでもMicrosoft Edgeを推奨環境から除外しています。なんとも「不細工」なことです。国税庁が悪いのか、マイクロソフトが悪いのか。いずれにしても、マイクロソフトは「日本の国税庁ごとき」には合わしてはくれないでしょう(笑)。

心配なのは、e-TaxのMicrosoft Edgeへの対応が大幅に遅れることと、Microsoft Edgeへ対応するために国、民間(会計事務所業界)双方に多額のコストが発生することです。やはり、当分は「セブン」を使うのが無難なようです。(Windows10はともかくとして、Edgeに手こずるユーザーが多いようです。)

電子申告はWindows10には未対応

2015-11-29 11:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)
このところ頻繁に画面に表示されるWindows10へのアップグレードを促すメッセージが大変気になります。さらに、無料のアップグレードの期限が来年7月末までということに焦らされます。

OSをアップグレードする際には、使用しているアプリケーションの対応状況を確かめておかなければなりません。

国税電子申告・納税システム(e-Tax)
対応していません。
地方税ポータルシステム(eLTAX)
対応していません。
弥生会計16(会計ソフト)
対応済みです。
魔法陣(申告書作成ソフト
対応していません。

この状況ではとてもWindows10へのアップグレードはできません。画面に表示されるアップグレードを促すメッセージを「うっかり!」クリックしてしまうと大変な目にあいます。世間一般ではWindows10へのアップグレードが着々と進んでいるようですが会計事務所業界では「ちょっと待った!」という状況です。

★いつになればアップグレードができるのか?

Windows10で税務申告ができる環境が整うまで待つしかありません。つまり、「国税電子申告・納税システム」「地方税ポータルシステム」がいつWindows10に対応するかです。もし、2016年の年初に対応したとしてもとてもアップグレードなどできません。所得税の確定申告という繁忙期を前に慣れるまでの一定期間は混乱が予想される新システムの導入などとてもできないからです。確定申告が終わる3月中旬も無理です。まもなく3月決算の法人の申告作業が始まるからです。会計事務所業界は無料アップデート期間が終了する間際にアップグレードするか、無料期間が過ぎてから有料でアップグレードすることになりそうです。

アップグレードは作業が面倒だと聞いています(特に周辺機器の再設定)。ですから、Windows7のサポート期限である2020年1月までの間に順次新たなパソコンを購入する際にWindows10を徐々に導入するのが良いのかもしれません。会計事務所業界では、当分は「セブン」を使うことになるでしょう。

合わせたはずの預金残高が合わなくなっている!?

2015-10-17 13:45:00 | 会計ソフト(弥生会計)
会計ソフトの入力は預金通帳をベースに行うのが効率的です。預金通帳は銀行が作成した信頼のおける記録であり、多くの入出金は預金を経由することから、まずは預金通帳の出入りを入力し、結果としての預金残高を確定させるのが効率的です。

「合わせたはずの預金残高が合わなくなっている!?」という質問を受けることがあります。「確かに合わせた!」、「会計ソフトの設定がおかしいのでは!?」、「ソフトのバクでは!?」などといって、驚愕したり憤慨したりする人がいます。そんなことはありません。自身で、無意識に数値を動かしているのです。

■二重仕訳

二重仕訳とは、複数の基データに同じ仕訳が表れるという現象です。

例えば、A銀行の普通預金からB銀行の普通預金に預金を移動させた場合です。この場合、両行の預金通帳に「同じ意味の記録」が残ります。仕訳は、「B銀行普通預金/A銀行普通預金」です。

このようなケースでは、どちらの基データから入力するかをあらかじめ決めておく必要があります。A銀行の預金通帳から入力するのであればB銀行の預金通帳にはその旨(入力不要)を記しておく必要があります。そうでないと、A銀行の入力が終わった時点ではA銀行の預金通帳と残高が一致していたとしても、B銀行の預金通帳を入力すればA銀行の残高は変動してしまい預金通帳と残高は一致しなくなります。また、B銀行の残高も一致しません。A銀行を入力した時点でB銀行の変動を入力しているからです。

■期首残高(期首残高の変更は厳禁です!)

期首残高は前年度の決算額であり、決算とは「確定」を意味しますので期首残高は変更することはできません。決算額が誤っていることもあるかもしれませんが、それでも期首残高は変更できないのです(前期の決算額が間違っている場合には所定の方法で当期中の日付で変更します)。

「この鉄則!」を知らずに、期首残高を変更しているうちに期首の預金残高を変更している人がいます。

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★複式簿記
先ほどのA銀行からB銀行への預金の移動のように、取引(お金の動き)を二面から捉える記帳方法を複式簿記といいます。複式簿記においてはある取引を記録するにあたっては、その取引を両面から認識します。そして、その両面が異なる基データに表れる場合には二重仕訳の問題が生じますので、どちらから記録をするかを決めておかなければならないのです。

会計ソフトに入力するタイミング(毎日、毎月、リアルタイム)

2015-07-25 22:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)
会計ソフトへの入力は事務作業が滞らないように「タイムリー」に行う必要があります。

ほとんどの経済取引が日を単位にして動いています。ですから、経済取引の集計作業である「記帳=会計ソフトへの入力」も一日が終わった段階で行います。会計ソフトの入力結果は、各種の外部データ、例えば預金通帳などとの照合作業が欠かせません。これら外部データを入手することができるのは一日が終わってからになりますので、入力と照合作業をセットで考えた場合には一日が終わらないと入力作業は終了しないのです。外部データによっては、「夜遅く」あるいは「翌朝」にならないと確定しないものもあります。そのような場合には、作業は翌日になります。

しかし、「事務量が多い」、「一日の終わりにまとまった時間が取れない」場合には一日が終わるのを待って入力をしているわけにはいきません。その場合、リアルタイムに入力できる項目があれば、リアルタイムに入力しておく必要があります。例えば、得意先からの売上代金の銀行振込などがその典型です。ただし、取引によっては一日が終わるまでは「取消し(あるいは変更)可能」なものもあります。そのような取引については、一日が終わった段階で最終確認作業を行う必要があります。

リアルタイムはおろか、一日単位での入力もできない項目があります。例えば、得意先の月単位での「査定」や「検収」と称する作業を終了しないと請求額が確定しない場合です。大手企業でこのようなケースがあります。不正が起きないように、何重にもチェックをしてから支払額を確定するような仕組みになっているのです。このような取引に関しては「待つ」しかありません。

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★クラウド会計ソフトのメリット(2つのリアルタイムの入力)

クラウド会計ソフトが本格的に普及してきました。クラウド会計ソフトのメリットのひとつとしてリアルタイムに入力ができるということがあげられます。銀行預金口座と連動させておけば銀行預金口座に増減がある都度、仕訳が行われます。クラウド会計ソフトはWeb上で入力を行いますので、Webを閲覧できる状況であれば、いつでもどこでも入力することができます。

入力は場所を選ばすリアルタイムに行い、締め(データの確定)は一日の終わりや月単位で行いたいという場合にはクラウド会計ソフトはうってつけです。