【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

2割特例(ありがたい救済制度)

2024-02-17 12:31:00 | 消費税
2割特例、昨年インボイス登録をして消費税の課税事業者になり、今年初めて消費税の申告をする個人事業者のほとんどがこれで申告することになるでしょう。2割特例が税務署に納付する消費税が一番少なくて済むからです。

◆原則課税との違い

事業者は商品の販売やサービスの提供に際して消費税を受け取ります。一方、仕入や諸経費の支払いに際しては消費税を支払います。そして、この受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて税務署に納めなければなりません。この消費税の仕組みどおりに申告をする方式を原則課税といいます。

2割特例は受け取った消費税の2割を税務署に納税すればよいという申告方式です。2割特例においては支払った消費税がどれだけであるかは問題としません。2割特例は、消費税の仕組みを一切考慮しない極めて政策的な申告方式です。

◆簡易課税との違い(2割特例は簡易課税の変形?)

簡易課税とは、支払った消費税の計算(仕入税額控除)を受け取った消費税に対して「みなし仕入率」を乗じることによって行うという方法です。みなし仕入率は、卸売業は90%、小売業は80%、製造業は70%といったように業種ごとに法律で定められています。

なお、簡易課税が認められるのは、基準期間(2年前)における課税売上高が5000万円以下の事業者です。また、簡易課税で申告するには申告に先立って所定の届けをしておく必要があります。

2割特例は簡易課税の変形であると考えることができます。受け取った消費税の8割を支払った消費税として差し引くと考えるのです。しかし、簡易課税のみなし仕入率には一定の合理性がありますが、2割特例の2割には全く合理性がありません。

◆2割特例は基準期間の課税売上高が1000万円以下であれば認められる

2割特例は基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者にのみ認められます。いわゆる免税事業者がインボイス制度導入に際して適格請求書発行事業者になった場合の特例だということです。(インボイス制度導入後、基準期間における課税売上高が1000万円以下になった適格請求書発行事業者についても認められます。)

◆2割特例は申告時に選択可能

2割特例は簡易課税のように申告に先立っての届けは不要です。2割特例が原則課税よりも、簡易課税(届けはしていなかった)よりも有利という場合にはありがたいものです。

◆2割特例は期間限定の特例

令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する年度(個人事業者であれば令和5・6・7・8年)において認められる期間限定の特例(救済制度)です。

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2割特例で申告するには下記の要領で申告書を作成して提出しなければなりません。

★申告書第1表
「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)44」を丸で囲む必要があります。

★付表6
これを記載して提出しなければなりません。

2割特例で申告する場合は売上のみの集計しておけば申告書を作成することができます。なお、昨年インボイスの登録をして消費税の課税事業者となった場合、令和5年の消費税の申告において対象となる売上はインボイス制度が導入される10月1日以降の売上です。

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初めての消費税申告(所得税との違い)

2024-02-17 12:30:00 | 消費税
昨年インボイスの登録をして消費税の課税事業者となった個人事業者が、初めて消費税の確定申告をする時期になりました。はたして申告できるのでしょうか。

◆所得税と消費税はまったく違う税金(申告書も納付書も別)

事業所得者に課税される所得税は、収入(売上)から必要経費を差し引いた事業所得が基準となります。一方、消費税の課税事業者が税務署に納める消費税は、事業者が商品販売やサービス提供に際して受け取った消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額です。

このように所得税と消費税はまったく違う税金です。ですから、申告書の作成と提出、そして納税も別々に行います。

◆自主申告であることは所得税同様

消費税の納税義務がある事業者は自ら申告と納税をしなければなりません。「税務署からの連絡がなかった」「連絡に気がつかなかった」が通用しないのは所得税同様です。

◆消費税の申告も暦年単位で行う

所得税も消費税も税額の計算を暦年単位で行い申告と納税をします。所得税の申告期限は申告対象年度の翌年3月15日、消費税は3月31日です。納税もこの期限までにしなければなりません(ただし、いわゆる振替納税の場合は4月下旬に預金口座から引き落とされます)。

◆今回の申告対象は令和5年10月1日以降の売上(昨年インボイスの登録をして消費税の課税事業者となった場合)

昨年インボイスの登録をして消費税の課税事業者となった個人事業者の場合、令和5年の消費税の申告において対象となる売上はインボイス制度が導入される10月1日以降の売上です。受け取った消費税は10月以降の売上合計に基づいて計算し、支払った消費税も10月以降の仕入や諸経費に基づいて計算します。

◆原則課税と簡易課税?

このどちらを選択するかが消費税の難しいこところです。どちらにするかによって有利不利があります。税務署に納付する消費税が異なってくるのです。また、簡易課税を選択するには事前の届けが必要で、届けがない場合は原則課税になります。

◆2割特例?

原則課税と簡易課税だけでもややこしいのに「2割特例」とうい申告方式があります。受け取った消費税の2割を税務署に納付すればよいという特例です。2割特例は申告時に選択可能ですので、原則課税あるいは簡易課税よりも有利であれば選択できるという点においては融通が利きます。

◆消費税に関する専門用語の難解さ

所得税の確定申告を税理士には依頼せず自身で行っている個人事業者は多いです。そのような個人事業者は、申告書の用紙を見て「これならばなんとか自分で書けそうだから」と感じたからです。

しかし、消費税はそうはいきません。消費税の申告書は「一般常識」「勘と経験」「ひらめき」では理解できない専門用語ばかりです。おそらく、申告書を見ただけでは手も足も出ないと思います。

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★税務署が混乱すること必至!?

消費税の申告書は大変「とっつきにくい」ことから、これからの確定申告の時期、税務署は消費税の申告書の書き方をたずねに来た個人事業者で混乱することが予想されます。また、申告書が書けず放置したままの事業者、申告が必要なことに気がつかなかった事業者が現れることも予想されるので、税務署はその対応にも追われることでしょう。

インボイス制度が軌道に乗るまで、行政上の負担(コスト)も相当なものになります。当然、それを負担するのは国民です。

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インボイス制度は大成功(漁夫の利を得た政府)?

2024-01-27 16:31:00 | 消費税
インボイス制度導入から早や4か月、世間は「きりきり舞い」「七転八倒」です。

「インボイスを発行しなければならない」
「インボイスを発行してくれ!」
「これはインボイスではない(訂正に追加発行)!」
「登録番号がないので消費税は支払わない!」

インボイス制度導入以降、事業者間の「いざこざ」が絶えません。しかし、世間の混乱をよそに税収は確実に増えていると思います。

◆インボイスの登録をしなければならない

多くの事業者がインボイス制度開始前の令和5年9月30日までにインボイスの登録を済ませましたが、中には制度開始以降に慌てて登録する事業者も相当数います。

「やはり噂は本当だったのか」

制度開始前はインボイスの登録などしなくても大丈夫と高を括っていたけれども、制度開始後、「本当に消費税の請求ができなくなって」ようやくインボイスの登録をする事業者がいます。

◆インボイスの登録をしていない支払先に関する経理処理

インボイスの登録をしていない支払先の経理処理を杓子定規にしている事業者は多いです。

「登録番号の記載がない請求書は仕入税額控除8割」

機械的にこのような処理をしている事業者がいます。「塵も積もれば山となる」で、次回の申告の際に消費税の納税額の増加に愕然とすることでしょう。

◆漁夫の利を得た政府?

インボイス制度導入により消費税の課税事業者は増えます。従来からの課税事業者の納税額は増えます。政府は何もしなくても民間に委ねておけば勝手に税収は増えます。

しかし、間もなくインボイス登録をした個人事業者が消費税の申告をする時期になります。

できるでしょうかね?
消費税の申告をしたのはいいけれども、その納税はできるでしょうか?

税務署は「消費税を申告すべき事業者が漏れなく申告しているか」「その申告額は正しいか」「そして納税しているか」を確認しなければなりません、大変な作業です。

インボイス制度の成果が問われるのはこれからです。具体的な運用方法の確立、制度の修正、課題は山積みです。

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さっそく2割特例

2023-12-28 20:00:00 | 消費税
来年はインボイス制度によって変更となった消費税申告の対応に追われることを覚悟していましたが、早くも今年中にそのときがやってきました。10月決算(事業年度が11月1日から翌年10月31日)の会社の申告です。10月決算の会社の場合、10月分はインボイス制度導入後の方式で消費税の申告をしなければなりません。申告書の提出期限は12月31日ですので(厳密には来年1月4日)、早くも今年中にその対応を求められるのです。

◆さっそく2割特例

インボイス制度導入が申告書作成に与える影響はいくつもありますが、そのひとつが2割特例という申告方式です。2割特例は従来からの申告方式である「原則課税」「簡易課税」に新たに加わった申告方式です。新たな方式ですので「2割の計算は申告書のどこでするのだろうか?」と申告書作成に戸惑います。

◆「10月分の消費税」はわずか

10月決算の会社でインボイス制度を機に課税事業者となった場合、今回の消費税申告で納付する消費税は10月分だけです。2割特例であれば、10月の売上に対する消費税の2割です。10月の売上が50万円とすれば消費税は5万円、税務署に納付するのは5万円の2割である1万円です。わずかといえばそうかもしれませんが、来年は12か月分です。けっこうな金額になります。

◆廃業する事業者も

必要に迫られて(得意先の圧力に屈して)インボイス登録をして消費税の課税事業者となった事業者は多いです。来年はそのような事業者が消費税の重税感に気がつくことでしょう。いままでも消費税の増税時にはその重税感に耐え切れず廃業する事業者が続出しました。来年以降、廃業する事業者が増えることは必至です。

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登録番号を信用情報に!(あくまでも空想です)

2023-11-26 12:00:00 | 消費税
インボイス制度がはじまって約2か月、請求書や領収書の登録番号のチェックに四苦八苦している事業者が多いです。

◆目指すべきは偽インボイスの「完全排除」

インボイス制度がはじまってから増大した事務手数のひとつが請求書や領収書の登録番号のチェックです。「登録番号が記載されているか」「登録番号は本当に登録されているのか」、特に後者の作業は「適格請求書発行事業者公表サイト」で調べなければなりませんので本当に大変です。

「登録番号は本当に登録されているのか」を調べずに済むのであれば事業者の事務手数は大幅に軽減されます。しかし、そのためには偽インボイスの完全に排除されるような社会のシステムが必要です。

◆事業者の申告状況を公表する

適格請求書発行事業者公表サイトで各事業者の「消費税の申告状況」を公表すれば偽インボイスは当然として、記載事項に不備のあるインボイスも大幅に減るのではないでしょうか。申告状況としては「直近の申告日付」でいいでしょう。適格請求書発行事業者公表サイトを閲覧すれば、その事業者が実在し活動をしているということが一目瞭然です。「直近の申告日付」があまりにも古ければ、その事業者はすでに活動を停止していると推測されます。

このようにすれば、各事業者はすすんで正確なインボイスを発行することでしょう。正確なインボイスを発行することが事業者の信用の証になるからです。そうなれば、「登録番号は本当に登録されているのか」をチェックする義務を事業者に課す必要もなくなり事務手数は大幅に軽減されます。

◆「法人番号」はすでに信用情報となっている

同じく国税庁が発行し公表している法人番号はすでに信用情報のひとつとなっています。「法人番号公表サイト」で調べれば、会社が実在することは当然として、活動拠点が登記された場所であるかも判明します。

税を目的として構築された情報を他の目的に転用することは好ましくありませんが、それが適正な課税につながるのであれば許されてもいいのではないでしょうか。

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