ラッキー君に最初にお願いしたのは、誰だったんだろう?
フクイのおばちゃんも自分が最初だって言うし、ヤマダのばあさんもそう主張している。
フクイのおばちゃんは、ラッキー君の肩を撫でたら、年来の肩コリがウソのように消えたという。
ヤマダのばあさんは、ラッキー君の口に小銭を投げ入れたら、音信不通だった息子が帰って来たという。
まあ、どっちが先でもいいじゃないか。ラッキー君が御利益があるってのは同じだから。
ラッキー君は、真っ赤なロボット、移動式郵便ポストだった。町じゅうアチコチ歩き回って、手紙を回収するロボット。
そんな旧式のポンコツロボットに願いごとをかなえる霊力があるなんてウワサが広まって、ラッキー君なんて愛称までつけられた。
ラッキー君は、昔のオモチャのロボットにそっくり。ガチャガチャ歩くだけで、もちろん、しゃべることなんてできない。
「アッ、ラッキー!ラッキー君見っけ!待ってぇ~、ラッキーく~ん!」
女子高校生たちが追いかける。追いつくと、ラッキー君の口・・・郵便差し出し口に5円をチャリン。
「彼氏が早くできますように!」「ユッコといつまでも友だちでいられますように」
思い思いの願いごとをしていく。
学習塾の前に行けば受験生たちに取り囲まれて、学業成就を祈願される。
産婦人科病院の前に行けば、ご婦人方に囲まれて、子宝祈願やら安産祈願やら。
老人福祉施設の前に行けば、老人たちに囲まれて、長寿祈願にポックリ大往生祈願。
ある学生は言う。
「やっぱりラッキー君、すごいや。無理かと思っていた資格試験、みごとクリアだよ」
ある会社員は言う。
「出世を祈願してもう何万円賽銭を入れたやら、御利益なんて怪しいもんだ」
ある主婦は言う。
「家族みんな幸せにしてくださいって祈ったのに、去年となんにも変わんないわよ」
祈願なんてそんなもんで、かなう人もいればかなわぬ人もいる。ある老人は言う。
「本来、不幸が起きているはずのところを、何も起きないようにしてくださっている。それこそ御利益じゃ。ありがたや、ありがたや」
ま、こうなってくると信じるものは救われるって世界。
そんなある日、ラッキー君が横断歩道をガッチャンゴロゴロ歩いていると、暴走トラックが突っ込んだ。
ラッキー君、あまりの衝撃にバラバラに大破、首部分にバネの付いた頭は歩道までコロンコロンと転がって行った。
そしてちょうど、通園中の幼稚園児たちの前で止まった。
チビッコたちが雨傘でカンカン突っつき、キャハキャハ笑う。
「な~んだ、ラッキー君ってただのロボットじゃないか」
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感慨深いというか、
ラッキー君っていう名前をつけたのも
周辺住民だし、ご利益があるって言ったのも
勝手なこと。
ロボットだってことは、周知の事実なわけで
だけど、読んでるうちにラッキー君に愛着がわいてきて、
その瞬間に、ぶっ壊れて
あ、やっぱロボットだったと再提示される。
ロボットを人間に置き換えることもできますね。
ずーと信じてたのに・・
裏切られ
今では廃止の大合唱。
少しは怪しいと知ってたのに
信じた振りをしてただけ・・
勝手なのは誰?
人間の叡知でなんとかなる問題はなんとかなるように祈りたいくらいの気持ちですけど。
願掛けって、そういうものかもしれませんね。
自己満足なのかな。
最後の子供のセリフが、何とも寂しいですね^^
だから新興宗教にだまされてン百万だましとられたりするんですね。
でも最後の子供の笑いはやるせない。
やっぱり勝手ですね。(^_^)