ふ~、いい気分。
さすが平日の昼下がり、サウナ風呂に先客なし。
12分計を確認、12分間の苦行に専念する。この後の水風呂が最高なんだよな。
誰もいないことをいいことに横になりかけた、そのとき。
扉が開いて客が入ってきた。
ゲッ。
思わず声を上げ姿勢を正した。だってその男、丸裸だったのだ。
いや、もちろんサウナだから裸でいいんだけど、裸も裸、皮膚がない。
人体模型の、筋肉標本そっくりの全身赤身の男。
驚いたのは相手も同じだったが、気まずそうに入口近くに腰を落ち着けた。
見て見ぬふりをしつつも、サウナ室内にピリピリ緊張が充満する。
皮膚がないなんて・・・。
何かの病気か?皮膚が溶けちゃうみたいな?痛くないの?サウナ入って大丈夫?
と、またひとり客が入室。
ゲゲッ。
こいつも筋肉標本男!おいおい、いったいどうなってるんだ?
男が奥に座る。ボクは筋肉標本に挟まれ、お尻がモゾモゾしてきた。
時計を見上げる。え?まだ3分も経ってない。
すると、談笑しながら数名の客が入ってきた。
またしても全員筋肉標本。一同、ボクを見て小さく声をあげる。
さらに次から次へと筋肉標本が室内に増えていく。
なんでこいつ、皮膚つけたまま風呂に入ってんの?非常識な。そんな空気が充満している。
かと言って、ひしめきあう筋肉標本をよけながらサウナを出る勇気もなし・・・。
圧倒的な優勢に立った筋肉男たちは横になったり世間話を交わしたり。
ああ、ボクも脱げるものなら脱いでしまいたい!皮膚なんかいらない!
と、そのときだ。
皮膚男がひとり、入ってきたのだ。わが同志よ!
・・・その皮膚男の背中全面には、凄味のある夜叉の刺青。
夜叉に威嚇された筋肉男たちがお行儀よく座りなおす。何気なさを装い、そそくさとサウナ室を出て行く者さえいた。どんなもんだ!
モンモンのお兄さんがこんなに頼もしく感じられたことがわが生涯にあったろうか?
今し方まで猫背だったボクの背筋がしゃんと伸びる。
ついに皮膚男の時代到来!
と、思ったのもつかのま。館内アナウンスが鳴り響く。
「ご来店のお客様、当店は刺青の方はご遠慮申し上げております。ご協力のほどよろしくお願いいたします」
刺青男が小さく舌打ちをして腰を上げる。室内の空気が再び変わっていく。
ああ・・・お兄さん!ボクをひとりにしないで・・・。
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ある意味地獄絵図ですよ。
その人たちは、出たら皮膚を着て服を着て出て行くんでしょうか^^
「どこそこの組の○○はなんでムショ入ったんや?」
「チャカ、チャカ!」
「おい、おまえらカタギさんの前やぞ」
「すんませんっ」
みたいな展開がそのあとに。
このお話はその経験の逆転発想みたいなもので~す。
どこかの博物館だっけ?
あの筋肉標本が館内案内してくれるんですよね。
あぁバイトしたい~って思いました。
あ、でもサウナはどうかな~?
前に夜叉の刺青してるおじさんにじっくり見せてもらったことがあります。
きれいでしたよ。
知らないおじさんだったけど「見せてください。」って
お願いしたら見せてくれました。
サウナってどちらにも出会えていいところですね。
ってお話ですね。(違う?)
科学くんって番組の案内役、人体標本みたいなのでしたよね。あの番組、好きだったのになあ。
以前、サウナで、ボクの前に刺青の若い衆が座ったんですけど、彫りはじめの時期だったみたいで、観音とか獅子とか点線で描いてあるだけなんですよ。しかも、瞳の中心を決めるために、両方、目がテンなんです。
観音さまも唐獅子も、キョトンとした顔をしていて・・・。
笑うに笑えない、あの状況。
思わず屁コキそうになりました。