秋の日は釣瓶落とし。
芝居小屋に提灯が灯ると、
芝居はいやがうえにも盛り上がる。
「蟇妖術瀧夜叉姫 筑波山岩屋の場」
物語は上品で艶やかな舞から始まる。
敵方の源頼光を慕う良姫は瀧夜叉姫の妹。
姫君様、御注進! 御注進!
七草四郎兼定が味方はすべて滅ぼされ、
すでに頼光の軍勢が押し寄せてきたと伝えるのであった。
瀧夜叉姫の家来三島小女郎に捕らわれたのは浦辺六郎末武の妻姫松。
瀧夜叉姫は平将門の息女、幼少の時、父将門が無念の討死と知るや唐士に渡り蟇の妖術を会得して、
今は残党を集めお家再興の機会をうかがい、筑波山の古御所を住処としていた。
我が野望、打ち砕かれしからには是非もなし。
姫松、早くこの場を落ち延びよ。
良姫の身の上、くれぐれも頼みおく。 この物語の泣かせどころです。
2019年10月 岐阜県各務原市