ひとつひとつは、報道されませんが、年間3万人以上、毎日、100人近くが日本で自殺をしていることになります。戦争をしているわけではないのに、一日100人が、自分のこころと戦いながら、命をすてていることになります。
生徒や子どもから、“ぼくの生きる意味は?” と問われたら、何と答えましょうか。
これまでも 『 14歳からの哲学 』 『 なぜ人を殺してはいけないのか 』 『 人生を変える3分間の物語 』
など、そういうたぐいの本をご紹介しましたが、本書は4コマ漫画というスタイルで、非常にわかりやすく、しかもこころを揺さぶる一冊でした。
人はなぜ生きるのか、生きる意味について悩む主人公の 『 浩 』 と、知り合いになった 『 ブタ公 』 のおはなしです。
浩があれこれ悩む一方で、ブタ公は物語のはじめに、平然と、 “俺は人に食われるために生きている” と言い放ちます。 “ それで良いのか ” と詰め寄る浩に、ブタ公は “良いも悪いもない、そういうことだ” と答えます。
浩の “人生はいかにあるべきか” という価値判断(哲学)に対し、ブタ公は、“人生はこうなっている” という事実判断(科学)で答えるわけです。 浩とブタ公は、そこからなんとなく一緒に旅に出て、日々生きる意味についてやりとりをします。
たいてい浩が何かを思いつき、それをブタ公に言うのですが、あっさり否定されてしまいます。 4コマ漫画で一つの話ができており、そのあとに南部氏が解説を加えます。
ある日の会話はこうです。
【 浩 】 : 『なぁ、ブタ公、俺さ、ついに分かったんだ!自分の生きる意味が』
【ブタ公】: 『なに?』
【 浩 】 : 『俺はさ、本当の自分を見つけるために生きてるんだよ!』
【ブタ公】: 『本当の自分なんてものはないよ。
自分がイケてないことの理由を、
今の自分が本当の自分じゃないから
なんてところに求めること自体が
すでにイケてないんだよ。
そんなイケてない今の自分こそが本当の自分なんだよ』
【 浩 】: 『ぐおおおお~っ!!』(倒れる)
【ブタ公】: 『パンもらうよ』
ブタ公の最後のセリフは、毎回の決め台詞です。
★★★★★
中学生なら漫画の部分だけをまず読んで欲しいですね。解説は高校の倫理社会の先生のものですから、中学生だと、ちょっと難しいと思います。
解説には、古今東西の哲学者や思想が登場します。ソクラテス、カント、ヘーゲルもちろん、そこからポストモダン、構造主義 などの思想までを、漫画のストーリーに沿って平易な言葉で解説しています。
人の悩みはほとんど、家族を含めた他人を意識すること、他人と比べることから生じるはずですが、絶対的幸福などというのも、麻薬を使ってでもいない限り、常に相対的なものであったり、他人から与えられるものですね。
時々、“自分は孤独を愛する” などという表現を見ますが、ほんとうにそうならば、なぜそれを言葉で他人に伝えようとするのか、私には不思議です。孤独を愛するとアピールするのは、孤独を愛するということを理解してくれる仲間を求めていると感じてしまいます。それでは、孤独を愛している、ということにはならないのではないかという疑問です。
筆者は、がんばれば、何でもできる、何にでもなれる(実際はがんばれない)式の教育のまま大人になってはいけないと主張します。自分の限界から目をそらさずに、生きていくことが成長するということだと。
そして、“本当の自分”が別にいる式の考えを広める、SMAP や 尾崎豊 などの歌詞をやんわり批判します。
さて、そんなことを、解説しつつ、漫画は、浩とブタ公の二人旅、物語が感動のエンディングへむかいます。
“食べられるために生きている” と言っていたブタ公が、いよいよ本当に、食べられるためにつかまってしまいます。その時、浩は…。
何度も読み返しました。ゆっくり読んでいただければ、たしかにこころにあったかいものを感じることのできる一冊だと思います。
4コマ哲学教室 イーストプレス 詳 細 |
P.S. 本書をながながと取り上げたのは、時おり拙ブログにコメント下さる、ひゃくおく◎萬太郎さんが、下の歌をご紹介していただいたからです。本書にもぴったり(と勝手に思っております)。
■■■ 厳しい社会に圧倒され、身動きが取れず、引きこもってしまった若者が、時間を経て、現実を直視し、心の中の青い鳥を追い出すというストーリーです。音楽も最高で、涙が出ました。こころの戦いをやめ、自分とまわりを見つめなおす、そんな感じです。 お時間があれば、ぜひ聞いてみて下さい。
http://www.geocities.co.jp/PowderRoom-Lavender/7709/blueb21c.html
http://tokkun.net/jump.htm
『4コマ哲学教室』 南部ヤスヒロ(文) 相原コージ(漫画)
イーストプレス:127P:1575円
■■ 本当の自分 ■■
まだまだ何度も読みたい本、聴きたい曲です。
いったい自分は 【浩】 (-_-;) なのか 【ブタ公】 (^0_0^) なのか
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お邪魔でしたらごめんなさい。
もう秋の季節ですね・・・。
秋は、人生の哀愁とか孤独を感じさせる季節ですね・・。
ところで・・・・
人はどこから来て
何のために生きて
どこへ向かっているのでしょうか・・・?。
この世界の終末はどうなるのでしょうか・・・?
神の存在、愛とは何か、人生の意味は何か、いのちと死の
問題などについて、分かりやすく聖書の福音をブログで書き
綴っています。ひまなときにご訪問下さい。
ソフィーの世界もはやりましたね。確か本書にも、哲学の本は、どんなに“易しい”と書いてあっても、高校生には、充分難しいというような内容が書かれていたと思います。
哲学は“私”のことを“自我”とわざわざ難しい言葉を使いますよね。特に翻訳ものは返って読みにくかったりします。
昔、バートランドラッセルの『哲学入門』を文字通り入門書だと思い買って読んだのですが、これまた難解だなと感じて、原書をチェックしたら、題名は『Problems of Philosophy 』で、入門とはどこにも書いていない(笑)。
ひどいですよね、一番分かりやすいだろうと思って買ったのに…。でも原書の方が日本語訳よりずっと分かりやすくて、驚きました。今、別の翻訳が出たそうですので、今度買って読んでみようと思っております。
当方は、ニーチェだとか構造主義だとかの入門書を読みかけては、いつも挫折しています。
油断せず、お体お大事にしてくださいね。
非常に楽しみにしております。
VIVAさまのこの本も「哲学」で、私も読まなくてはならないと思いました。まんがで、私にも読めそうだし、、、
おっしゃるように、“自分の限界”をしっかり認識してこそ、大人であると思いますし、その限界まで努力しようという意欲もわくというものでしょう。
こんなに豊かで、平和な日本に自殺が多いというのは、子どもたちだけじゃなく、大人も考えなきゃいけないですね。
VIVAさんのこの記事を読んで、
>筆者は、がんばれば、何でもできる、何にでもなれる(実際はがんばれない)式の教育のまま大人になってはいけないと主張します。自分の限界から目をそらさずに、生きていくことが成長するということだと。
「これだ!」と思いました。たぶんどちらのケースも、理想通りに行かない自分に歯がゆさを感じたところから始まっていました。理想通りになんていかないのが当たり前だと気づかせてあげれば救える人はいるかもしれないですね。自殺まではいかなくても、自暴自棄になって、引きこもってしまったりということも防げる言葉かもしれません。そういう壁(自分の限界)にぶち当たるのは、大人になる一歩手前辺りが多いと思うので、高校生ぐらいまでに、そのことを知ることができそうな、この本はすばらしいですね。
良い本のご紹介ありがとうございました。
その後違う本ばかり読んで、存在すら忘れてしまっていました。
早速、買いに行きます!