セピア色の想い出。

日々の生活と、其処から生まれる物語の布飾り。

暮れない空は無い En.4 天蓋に秘されし必然なる悲劇

2011-12-26 01:10:14 | ヴァンパイア十字界 二次創作



「ややこしい、物語になりそうだね、閣下。」
「クルナ、じゃないな、クルトか?」
「そう、クルトの方。
 クルナ、エリィと話しているうちに、寝てしまってね。
 中身だけ、俺だよ。」
「・・・何処まで見えている。」
「多分、俺は・・・ううん、《歌乙女》は何処までも、見えていると思う。
 クルナは見えないのにね。」
「・・・・・・」
「ねぇ、ストラウス。
 お前に、娘ができたら、愛してあげてね。
 後、いつか、俺を殺してほしいな、結局、こういう形の長生きはイレギュラーなんだし。」
「前者はともかく、後者は聞けないな。」
「むう、ストラウスのイケズ。」
何でも無い他愛の無いお話。
まだ、ブリジットが生まれたばかりの頃のお話。
或いは、ストラウスにクルト達が殺される数百年前のお話。









En.4 天蓋に秘されし必然なる悲劇






私が、ブリジットとレティシアに追いつくと。
案の定、レティシアが、或る意味で、正しい事を言っていた。
しかし、ブリジットの睨みで、レティシアは、へたり込んでしまう。
・・・・ま、当たり前だろう、ブリジットが本気で睨むと、私でも、裸足で逃げ出したい。
「確かに、千年前、ほとんどの同族が、赤バラ王を先に裏切った。
 だが、ストラウスは、最後の最後、正しい月に背いた。
 ・・・・自ら信ずるべき『義』を捨てたのだ。」
それは、違うよ、ブリジット。
違う、彼は、義を捨ててもいないし、月に背いてもいない。
ああ、私が、もう少し早く気付いていれば。
それでも、もう遅過ぎた。
遅過ぎるか、全てが遅過ぎる。
「愛するアーデルハイトだと?
 ふざけるな。
 ストラウスはこれっぽっちも、アーデルハイトを愛してはないぞ。」
それも、真実。
でも、少なくとも、恋愛ではない愛情はあったのは、ブリジットも忘れる事が出来ないだろうに。
思い出す。
今も、流布する夜の国崩壊の御伽噺を。






遠い昔、夜の民に夜国があった頃。
今は、遠き昔々の事だ。
ヴァンパイア王・赤バラは、星をも砕かんと言うあまりにも恐ろしいほどの強さから、人間のみならず、同族からも強く強く恐れられた。
ついには、愛する女王を人質に取られ、処刑されようとした。
しかし、それに狂乱した女王は、眠りし魔力を暴走させ、世界を崩壊の危機に追い込んだ。
人々は、辛うじて、女王を世界の何処かに封印したものの、王は怒り狂った。
そうして、自らの夜の国を滅ぼして、女王を取り戻すべく、封印を巡って、同族や人間との終わりが見えぬ戦いに身を投じた。
最後のヴァンパイア王・ローズレッド=ストラウスは、守るべき国も、愛するべく民も、捨てて、封印を探す放浪を、千年以上、千年以上も続けている――――――――。
ただ、愛するアーデルハイトを取り戻す為に。




事実ではあるけれどね、真実ではないが。
信じられない、いや、信じたくないとでもいうように、レティシアは、言葉を叩き付け返す。
「そ、そっちこそ、ふざけるな。
 ストラウスが、アーデルハイト様を愛していないわけがないだろ!!」
更に、良い募ろうとしたレティシアを私は、口を塞いで押しとどめる。
一応、両方の為にだ。
ブリジットにとっては、或る意味で辛い言葉だろうから。
レティシアは、こういう交渉の有利に進めるには、必然の事を思い出させる為に。
「・・・・・・ToBeCool?
 レティシアちゃん、落ち着きな、ひとつづつ、丁寧に。
 それが、こういう会話の基本。
 君も、陛下から聞いているのだろう。」
「くすくす、そうだねぇ、エリィ。
 年若いダンピールちゃん、好意が合っても、ラブとは限らないんだよ、真実はね。」
「誰だ!!」
「今晩は、良い月だね。
 ブリジット、エリィ。」
「まさか・・・」
「クルトか?」
私の言葉を継ぐように、或いは茶化すように一人の青年の言葉が入って来た。
声を辿り、上を向くと、街灯に腰掛けている青年が一人。
私とブリジットの誰何に、応と答えるように音も無く、三人の傍に降りる。
街灯の明かりを受け煌めく鮮やかな銀髪に、紫ダイヤもかくやと言うような笑顔で細められた瞳。
長身ですらりとしたその身体に合わせるように、シンプルなブラックスーツに、深紅のアスコットタイの青年だ。
八百年前に死んだ時と変わらず、変われず、そのままだ。
クルト=エンディアは、壊れた砂時計のダムピールにしても、更に外見が変わらない。
「そう、クルト=エンディアだよ。
 ちゃんと、クルナは死んでいるから安心して。」
「安心してって・・・あの子は承知しているの?」
「とりあえずは、依頼があるってのも抜きにしてもね。
 んで、山猫ちゃん、もっと言いたいことあるんじゃない?」
誤摩化すように、クルトはレティシアに水を向けた。
まったく、変わらない、自分の真意は決して明かさない。
明かしても、それは、クルナのモノ。
クルトの発言を受け、思い出したようにじたばたしつつも、やや気分を落ち着けて、先ほど続けようとした言葉をレティシアは続ける。
彼女としても、自分の母親の悲劇も、赤バラが原因というので、恨みはしたのだろうが。
それが、『愛』という理由ならと、納得させて来た部分があるのだろう。
「愛していないなら、なんで、千年前に大人しく掴まって、殺されようとしたんだ!!
 立った一人、全部を敵に回してまで、女王の封印を解こうとしているの?
 それとも、何!!?
 ・・・・・伝えられていることは、全て嘘だって言うのか!!!!?」
それでも、夜闇を切り裂くように夜の港公園に、レティの切なる声が、響く。
嘘、と言うわけでもない。
真実、と言うわけでもない。
私は、そっと、ブリジットとレティシアの間に立つ。
ちょうど、傍らにクルトが来る形になった。
「・・・・・表面的には、伝承に嘘は無い。」
「―――――!?」
「陛下は、確かに、その御力故に、同族にすら恐れられ、処刑されようとした。」
「姫女王は人質にされた。」
「ストラウスは、大人しく、処刑台に上った。」
「そして、国も民も捨てて、封印を解こうとした。」
「・・・それは残らず、真実の一端だよ。
 だよね、ブリジット。」
ブリジットの言葉をとるように、私は、半ば唄うようにそう言った。
打ち合わせをしたわけじゃないのにクルトがちゃちゃのように言葉を挟んでくる。
知ってるんだね、真実を。
ともかく、それは少なくとも、嘘ではないのだ。
そう、嘘では。
私の言葉を継いで、ブリジットは、こう言う。
誰にも、顔を見せないように、海側の仕切りに手をそえて。
肩が震えていたから、泣けるのならば、泣きたかったのかもしれない。
「・・・・・誰も、嘘を伝えようとはしていない。
 当時、ストラウスとアーデルハイトは、相愛だと信じられていた。
 起こった事をつなげて解釈をすれば、伝承のようになって当然だ。」
ブリジットは、紅い薔薇を模したイヤリングを耳から外し、更に独白する。
どうして、そうなってしまうんだろうね。
嘘を伝えてないのに、嘘に塗れてしまうなんて。
「私とエレノアの二人が、真実を知る立場にいた。
 後は、せいぜい、其処の男とリトぐらいか、今生きている連中ではな。
 ストラウスが、アーデルハイトを愛していない事を。
 何が、あの人に王である事を捨てさせたのか。
 何故、今、戦いを選んでいるのか。」
「陛下の、闘いは、不毛だよ。
 封印を砕き、アーデルハイトを殺せたとしても、陛下が失った星はもう戻らない。」
「まぁ、戻らないと解っていても、それでもそれが必要なんだよ、陛下には。」
ブリジットが語ることは、少なくとも、嘘ではない。
でも、奥に幾つかの秘密がある。
クルトの言葉は端的にそれに触れていた。
隠されたそれを私は語らない。
語れば、ストラウスの決意を閉じる事になるから。
黙っていれば、少なくとも、ブリジットは戦えるから。
「どういう事です?」
と、そんな時、横合いから、花雪の声がかかる。
その後方に、蓮火も居た。
クルトが誰か、誰何したそうであるが、それよりも聞き捨てならない事があったのだろう。
「お話中、すいません。
 ヴァンパイア王が、女王を愛していないと聞こえましたが?」
「赤バラは、女王など愛していない。
 それでも、ヤツが女王復活を望み、生き永らえようとするならば、我らはヤツを殺さねばならない。
 状況に変わりはあるまい。
 それとも、そちらには、そうだと困る理由があるのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それが、このお嬢さん側にはあるんだよね。」
花雪に歩み寄りながら、ブリジットはそう言う。
沈黙を持って困惑を表す花雪に対して、クルトはからかうように、付け加えた。
ストラウスは、生永らえようとしてはいないけど、生き永らえなくてならない立場なのだ。
ま、ここでいうことではないね。
クルトもそれが解っているのか、それ以上は何も言わない。
それに、実際、花雪・・・正確には、GM御前サイドは、そうでなくては困る状況なのには違いないだろう。
私とて、裏稼業でなかったら、絶対に、信じれない事だった。
というか、あれを信じたいと思う夜の民はおるまいよ。
「お前も、赤バラの想いがどこにあろうと関係あるまい。
 奴が、お前の女の殺したと言うだけで、戦う理由は揺らぎはしないだろう?」
蓮火にそう言った、ブリジット。
確かに、それくらいで揺らぎはしないだろう。
私が、五十年前のあの時に聞いた嘆きは、聞いたこっちも一緒に哀しんでしまえたら良いと思ってしまうぐらいには、酷かった。
剣の腕は、憎しみで少し曇っちゃった感はあるけれど。
しかし、蓮火が煙草に火をつけながら、次にいった言葉は、真面目に、あたしは硬直した。
というか,蓮火、お前、マゾか、と本気で突っ込んでやろうかと思うぐらいだった。
「・・・・・・笑える噂を聞いた。
 かつて、お前は赤バラの娘同然に育てられたと。
 ついでに、奴の恋人だった時もあると聞いたが。」
「!!」
それに、一応、敵味方はっきりしてない、レティシアと花雪の前で、そんな事普通言うかな?
案の定、二人は、驚きまくってるし。
クルトは知っていたようで、視線だけで、『この兄ちゃん馬鹿?』と言ってくる。
うんん、解っている、蓮火は馬鹿だ。
「一体なんだ?
 お前は何を黙っている?」
「・・・・・・私が、赤バラに育てられたのは事実だ。
 十歳の時に、赤バラに引き取られ、夜の国が、滅亡するその時まで・・・・・。」
蓮火の言葉の返答と言うよりは、独白に近い語調で、ブリジットは語る。
確かに、そうだった。
ブリジットは、此処数百年愛用していた、赤薔薇のイヤリングをするりと手から滑らせ、海に流した。
「私は、赤バラの側に在った。
 ただし、恋人だった時間は、一秒とて無い。
 私は、あの男にとって、「可愛い娘」でしかなかった。
 ・・・・・・・・真実が、知りたければ、赤バラに訊け。」
さて、荒れそうだ。
それでも、ストラウスは、決して、「真実」は話さないのだろうけど。
でも、話すのも、或る意味での「真実」だ。
少なくとも、客観的な意味での、今知る人は知る「真実」と言う意味で。
だけど、本当に合った認識されない事実と言う意味での「真実」はまだ、天蓋の中だ。








「・・・『そして、憎悪の黒月を見るといい』か。
 いい具合に、凝ってるねぇ。」
その後の車中。
私は、そうダムピールでも聞こえるか聞こえない程度で呟いた。
でもね、ブリジット、あの人は、誰も、そう、誰も、決して憎んでいないんだよ?
むしろ、己が生み出してしまった自分を憎んでいるだけで。
御前が、花雪に呼びかけているが、先ほどの言葉の事を考えていたのか、上の空の花雪。
レティシアも、「どうしていいのか、解らない」というように、俯いたままだ。
何故か、着いて来たクルトはにこにこと真意は見せない。
「・・・・・雪、花雪。
 どうした?」
「あ・・・・・いえ・・・・・・対した事では。」
何処かそうなのだろう。
少なくとも、「陛下が、アーデルハイトを愛していない」と言うのが本当なら、そっちの狙いは、ご破算だろうに。
そうこうするうちに、ストラウスがいる日本家屋に戻る。
考えてみれば、御前の仕事を受けてから、初めて会うんだよね。
一応、自業自得と言えば、そうなんだけど。
怒らないのが解ってても、気まずいのに変わりないんだし。
レティシアについて、ストラウスの処に行くと、彼はケーキを食べていた。
・・・ちょっと羨ましいのかもしれない。
三段で、間に生クリームとイチゴのスライスを挟み、生クリームで飾った上に鎮座するのは、ルビーのようなイチゴ。
うん、美味しそう。
ケーキはシンプルなのが、美味い。
色々凝るのも楽しいけれど、結局シンプルなそれに戻ってくるんだよね
・・・って、そう現実逃避してる場合じゃなくて。
レティシアが、言いあぐねている。
私が、ストラウスに挨拶をしても、そのままだ。
クルトが形だけ、挨拶をする。
数百年前に殺し殺された間柄なのににこやかすぎるぐらいににこやかに。
そこに、花雪が、言葉をこう挟んだ。
「貴方が、女王アーデルハイトを愛していないというのは、本当ですか?」
しばらく、沈黙が流れる。
同時に、風に葉が、踊る。
少なくとも、ストラウスとしても、言いにくい事ではあるのだ。
「----------私が、王になる前、夜の国の大将軍であった頃。
 私は一つの星を失った。
 ステラと言う、人間の女を。
 もしも、後一月でも、生きていれば、彼女は私の子を産んでいた。
 私が、すべてを掛けて愛したのは、アーデルハイトではない、ステラただ一人だ。」
ケーキを食べ進めながら、ストラウスは、話を進める。
ま、事実だけなら、そうだろうさ。
嘘ではないけれど、真実・・・ありのままというのなら、そうではないものだ。
少なくとも、足りないピースを繋ぎ合わせたという意味合いでは、歪な事実。
「人間の女性?」
「黒鳥(ブラックスワン)五十代目、比良坂花雪、其処で一端ストップ。
 ストラウス、いえ、陛下。
 私の口から、幾つか良いですか?」
「オレも少しだけね。」
「かまわない。」
「ありがとうございます。」
視線だけで、いつか、約定したようにしか話さないと。
幾つかの真実を隠した真実までなら、良いとストラウスは、許可したのだ。
不信に思われようと、情報を明かし過ぎれば、殺されるだろう。
陛下は良くも悪くも、そう言う方だ。
しかし、クルト、何処まで知っている。
いや、何処まであの子が知っている?
「赤バラ王が、本当に愛したのは、本当に、混じりっけ無しに、人間の娘。」
「当時、18歳になったばかりの村娘で、名前をステラ=ヘイゼルバーグと言う本当に、何処にでも居る子だね。」
 「私の義理の親戚でもある。」
正確に言えば、その時のヘイゼルバーグ家の当主がその座を退けば、私が、その座に付くはずだった。
実務に耐えれる年齢を越え始めていたのに、その後を継ぐ純血が居ないせいで、とある術を使って代行することになるはずだったんだ、
もう、そうなることは無い。
そうなることは無かった義妹になるはずだったステラ。
でも、本当に、外見ではなく、心が美しい娘だった。
「何事もなければ、ストラウスの子ども生んでいた。」
「だけど、彼女は殺された。
 万が一、高い生命力を持つ腹の子どもまで、助からないように、引き裂かれていた。」
陛下、いえ、ストラウス。
心配しなくて良いわ。
私が、私の思考が、行き着いた真実を決して語らない。
クルトも、どうであれ、あの真実に行き着いたのだろうから、話さないだろう。
あの真実が、今も、一族を苛んでいるのだから、話さないわ。
それが、私の矜持だからね。
或る意味で、それが傍観者が傍観者たる矜持だから。
「当時、政治的、その他の理由で、犯人の捜索は、断念された。
 それから、十五年後、赤バラ王は、敵対国の人間のみならず、同族からも恐れられ、処刑されようとした。」
「元老会の化石ジジイに寄って、処刑を策謀された。
 だけどさ、最悪に最低な事に、その時になって、ステラを殺した犯人が分かったわけだ。」
今のところ、ストラウスは、静かに聞いている。
聞きながら、ケーキを食べ進めている。
・・・ここまでは、許容範囲内らしい。
更に進め・・・正確には,一番の核心を口にした。
「殺したのは、女王アーデルハイトだった。
 赤バラを愛するあまり、嫉妬故に、ステラを殺した、と言う事らしい。」
「そうと知った陛下はさ、当然復讐に走る。
 一回は諦めたはずの復讐だもん、それを最後とは言え叶えられそうなら、ね?
 しかし、アーデルハイトも、土壇場で、魔力に目覚めてしまった。」
「あの子が、魔力を暴走させたのは、伝承にあるように、赤バラの危機に狂乱してではなく。
 赤バラに、殺されるのに怯えたから。」
もちろん、真実は、違う。
何が、どうとは、今は言えないが。
それでも、あの時、アーデルハイトが、魔力を暴走させる直前まで、処刑場にいた私として、それは、確実に証明できる。
背景まで・・・・・・真実の奥の真実まで、情報を得たのは、事件後百年ぐらい立ってからだ。
黒鳥(ブラックスワン)が、三代目か四代目のときだ。
最終的な、結論を得たのは、黒鳥十七代目の時だった。
そのせいで、結果的にとは着くけれど、十七代目を殺してしまったような者だけれど。
「私が、封印を求めるのは、アーデルハイトを引きずり出し、その手で八つ裂きにする為だ。」
そこで、私から言葉を受け継いだストラウスが、言葉を切る、
当時、直後の出来事で、ブリジットは、確信的にストラウスに裏切られたと思ったらしい。
その場にいなかった私が、直接知る事は出来ない。
でも、その後の状況を考えるに、それは、あの出来事が無い限り難しい事柄だったらしい。
だから、余程の事だったのだろう。
しばらく、沈黙が落ちる。
風が、不意に強く流れ、木々を揺らす。
そして、黒い鳥が羽ばたいていった。
「ヴァンパイア王、貴方は・・・・・。
 不毛な復讐の為に、全てを捨てたのですか?」
「あのね、ブラック・スワンのお嬢ちゃん。
 その“不毛”な復讐を否定するってのは、飢え死にしそうな子からパンを奪うようなもんだよ?」
・・・・・・・・・・・「不毛」ね。
少なくとも、それで、ダムピール達は、まとまって来たんだよ?
それを、「不毛」の一言で、潰して欲しくないな。
本当は、言っても欲しくない。
多少は私を代弁するように、クルトはそう言う。
彼の言葉を無視して、花雪の言葉のみに、ストラウスは、無表情とも取れる表情で、こう返す。
「目的がどうであろうと、やる事は同じだ。
 封印を探して、壊す。
 邪魔する者は、倒す。
 私とお前の関係も変わる事はあるまい?」
「いったい、千年前に、何があったんです?
 貴方やエレノアさんは何を黙っているんです?」
花雪は、そう疑問をぶつけていく。
ま、当たり前だ。
それに、私が、ストラウスと口裏合わせ、幾つかを隠していることを察知したのは、流石だ。
流石は、黒鳥だ。
流石は、・・・だ。
さて、これ以上みていても仕方あるまい。
そう思った私は、この場を離れる。
千年前のあの後に、会得した空間転移の魔術を駆使して、ブリジットと蓮火の居場所を探す。
どうせ、一悶着あるんだろうけど。
どうでもいい、少なくとも,私には、ね。
本当に、どうでもいい。
花雪たちの目的が、「アーデルハイトとストラウス」の両方の力がいる事・・・・・・「ストラウス」にアーデルハイト」を「殺させない」ことも、どうでも良い。
結末は、結局結末にしか、行かないのだから。
だけど、私が転移しかけた時、何故か来るとの声だけが届いた。
「あの幼い少年兵の為にも未来だけを紡いでね、エリィ」





「陛下、もう、オレも時間無いし、最後に一個だけ。
 八百年前に殺してくれたお礼にちゃんと、オレは最後まで見ているからね。」
「・・・貴方は誰です?」
「ストラウスに八百年前に殺されたダムピール。
 今ここに関われるのは、或る意味で幽霊だからね。」
それだけ言うと、クルトは消える。
ストラウスからの返答も待たずに。
彼が名乗ったように、幽霊のように掻き消えた。

















+後書き+


一応、改訂版六話あたりに正式初登場なはずだったんですが、こっちの方がキレイかな、ってのと、クルトの出せ出せコールに負けました。
後細かいところ、誤字脱字加筆修正。


あ、最後の幼い少年兵云々は、ガンダム00の刹那くんです。
いい加減進めなきゃ行けないシリーズの設定より。
あのシリーズ終了後の三年ぐらい後になります。



ともあれ、次の物語にて。






ある日の会話(薄桜鬼/鬼娘と虎太郎)

2011-12-25 01:56:12 | 携帯からの投稿
薄桜鬼本編開始前

と言うか約三ヶ月前、芹澤鴨暗殺当日。

船岡山山中、日中

ざんばらな黒髪の袴姿の少年と黒に限りなく近い茶髪なおかっぱと緋眼の尊大そうな少女。

少年は少女に呼び出された。


「お主が来ておるとは思わなんだ、虎太郎」
「実際に会えるとは思っなかったぜ?」
「ほっほっほ・・・」
「お前が瑞衣の中にいなくて良いなら、此処で殺しといても良いぜ?」
「・・・ほっほっほほ、篠木瑞衣は、したらば、殺されるぞ?」
「・・・なんだよなぁ、姫宮の庚もそれは保証してた。」
「今の、此の時代の妾と此処におる妾は別物じゃ。
 だから、八瀬の末裔(すえ)を頼っておる。」
「本来なら、姫宮篠木を頼るのにか?」
「そうじゃて、此の時代の妾はちゃんと此の時代の贄姫の中じゃからのう」
「瑞衣の中にいた松葉なわけか?」
「そうじゃ。
 後、妾は、玻鼕僖(はづき)じゃ、贄姫の中に居らん今ぐらい、松葉など皮肉な名前で呼ぶでない。」
「大仰な名前だな。」
「妾にしてみれば松葉の方が大仰な名よのう。
 『不老長寿』『同情』『向上心』『慈悲』『永遠の若さ』『勇敢』と言ったところかの。」
「何がだ?」
「妾の封じ名じゃよ、松葉はのう。
 炎術に長けた妾を癸(みずのと)の贄姫に封じ、更には似た意味名ではあるが水と木の属性を重ねて更なる封印と成す、封術よ」
「・・・・・・逃げねぇのかよ?」
「我が子から、逃げては、どうして親と言える?
 人と交わる事も、その血筋に守神に封じられるも覚悟の上の事よの。」
「で、何故、呼び出した?」
「今日は、壬生浪士組が新選組になる日じゃろうて、主はどうする気じゃ?」
「うーん、様子見だな。

 姫さん曰わく、「雪村千鶴が新選組に関わるまでは馴染むようにしなさい」だそうだ。」
「主にできるかのう?」
「やるさ、少しだけの幸せの為に、な。」
「ほっほっほほ、お主も大概、物好きじゃ。」
「ふん、接触したお前も物好きだろう」
「妾は、傍観者じゃよ。」
「・・・姫さんが、最後の《歌乙女》のあの子が願ったことだからな。」
「ほっほっほほ・・・・・・」







以前の会話の虎太郎と彼が守る篠木瑞衣嬢の中にいる鬼姫の玻鼕僖/松葉です。
薄桜鬼前日譚。

京都行ってきて、始まりの壬生村辺り行ってきました。
屯所餅上手かった。
そこで思いついた会話。

そんで資料(遥時やらピスメやら含め)ひっくり返して、場所は船岡山での上記会話。
現代なら、京都タワーからなんだろうな、うん。


一応、超絶裏設定つか、彼らの物語はありますが、それはスパイス程度に(笑)

戯れにも似た何か

2011-12-18 23:21:08 | めだかボックス 二次創作



時刻は夕方。
戦挙戦も終わりしばらく経った頃である。
地下二階の空も赤く染まり始め、もうすぐ夜になるそんな時間だ。
「ん、むぅ・・・」
そんな声が、地下二階にある日本家屋の縁側に面した部屋から聞こえて来た。
声の主は、薄茶の髪を背中似かかる程度に伸ばし、桜の刺繍のあるシュシュで髪をまとめた小柄な少女だ。
どうやら、眠っているようである。
その少女を抱き締めるようにして、同じく眠っているのは、黒い髪で髪を尻尾のように括っている少年である。
二人は、男女の差こそあれど、同じ制服を着ていて、同級生でクラスメイト。
少なくとも、恋人ではないが二人にとってはある種ありふれた光景なのだ。
深い睡眠をあまりできない少年―宗像の為に、少女―由良が抱き枕になると言うのは。
「全く、昼寝をするなら、せめてタオルケットぐらい被って下さいって言っているのに。」
そうぼやくように二人に、タオルケットを掛けたのは、別の少年。
焦げ茶の髪を襟足を刈り上げ、長く残したトップを龍馬ティストのチョンマゲ風に結い上げ、眠たげな印象の空色の瞳で身長に比べ痩躯な印象だった。
「・・・色々とバタバタしていましたし、眠れてないんでしょうね、由良さんも、宗像先輩も。
 仕方ないです、もう少ししたら起こしましょうか。」
「にゅー・・・むにゅ。」
その少年は、そう一人ごち、お茶を入れる為に台所に言ってしまったのであった。








夢を見ているのだと分かった。
どうしてそう思ったのかは分からない。
ただ漠然と、自分は夢を見ているのだと分かった。
今、『立っている』場所のせいなのかもしれない。
妙にふわふわした、ここが何処なのかもよく分からない白い空間の中、宗像形はぼんやりと周囲に視線を向ける。
体が軽い。暗器の類は全てこの夢の中には持ち込んでいないようだ。
元々、うっかり殺してしまわない為の枷ではある。
(ーーーま、夢の中まで重いのはごめんだけどね。)
そんなことを考えていると――唐突に、目の前に人影が現れる。
近付いてきたとか、降ってきたとか、そんな感じではない。
本当に唐突に、そこに『湧いて出た』とでもいうような、そんな出現だった。
そのありえない登場の仕方に・・・非現実的なその出現に、やっぱりここは夢なんだな、と再確認しながら、宗像はその人物に目を向け――その目を、大きく見開いた。
「・・・黒神、真黒・・・?」
思わず、呟いた後で――いや違う、と自分で即座に否定する。
確かに一瞬、宗像に暗器の使い方を叩きこんだ魔法使いの変態かと見間違えたが――目の前の男はそれよりも背が高く、何より年齢も明らかに上に見えた。
黒神真黒よりも短いそれをオールバックにした黒髪を持ち、顔には似合わない銀縁の眼鏡をかけている。背が高いのに加えて手足も驚くほど長く、細く、そのシルエットは針金細工の人形にも見えた。
三つ揃えのスーツをきっちり着た彼は、一見して優男とも見えたが――黒神真黒と間違えたように、その雰囲気はどうにも独特で、ひとクセもふたクセもあるように思える。
少なくとも、普通(ノーマル)には見えないようなそんなクセだ。
そんな針金細工は、宗像の呟きを耳聡く聞き取り――やはり真黒とは異なる声で、ぺらぺらと言葉を紡ぎ出した。
「うん?鮪?
 君は今、あろうことか私をあの海産物、一日二十四時間一年三百六十五日泳いでいなくては生存できない、タタキやステーキにするとそれは絶品でいやしかし寿司も炙りも捨てがたいあの真っ黒な回遊魚と見間違えたのかい?
 いやいや、如何にもそれはないだろう。
 きっと私の聞き間違いか、君の知り合いにその魚と奇しくも同名な人がいるのだろうね。
 いやぁ、しかし何とも数奇な運命だよ。
 よもや私が新しい妹を守ると言う役目を終えても、尚、新たな弟とも呼べる存在に巡り合うことが出来るとはねぇ。
 うふ、うふふ!どうやら人識の方にも可愛い弟が出来たようだがね。
 夢織ちゃんにも、可愛い弟候補が出来たようだがね。
 運命のイタズラとは面白いものだ。そうは思わないかい?」
「・・・・・・・」
そのあまりの饒舌っぷりに、宗像は数歩後退した。
口を挟む気すら起きない。
何だこの男――黒神真黒より性質が悪い気がする。
そんな宗像の心情を知ってか知らずか、背の高い青年は、興味深げに宗像の顔を覗き込む。
「君、名前はなんて言うんだい?」
「・・・宗像、形」
「そうか、形くんか。
 形という字を書くとは、なかなかによい名じゃないか。
 即ち、形あるものというのは目に見えるだけで身近な存在だ。
 誰にでも触れることが出来、見ることが出来る。素晴らしい」
「はぁ・・・?」
苗字にはいっさ触れず、名前のみを異様に褒めちぎる青年。
今まで名を褒められたことなどないこともあってか、宗像はどうにも対応に困ってしまった。
元より、人間と交流していないからか尚更だ。
加えて、その青年に会話をするような気がない為かどうしても反応は出来ない。
そんな宗像を放置し、青年は尚も一方的に話し続ける。
しかし、聞き流そうとしていた宗像は――その口から零れてきた言葉に、思わず意識を固定してしまった。
「うふふ、うふ、しかし、まぁ、君は本当に特殊かつ素晴らしく希有な存在だね。
 奇跡と言ってもいいだろうね・・・・・・それほどに強い殺人衝動を身の内に宿しておきながら、それを自覚しておきながら、現在まで人の一人も殺していないなんてね。
 本当に、貴重な存在だ。」
「・・・っ!?」
どうして、分かった、とか。
何で知ってるんだ、とか。
言わなければならないはずの言葉が、全く出て来ない。
そこでようやく気付いた・・・眼前の青年の身の内から溢れ出る、純粋で生粋の、殺気を。
そしてそれに、少なからず安心してしまっている・・・自分を。
諒鷹と居る時よりも彼の抑えた殺気よりも、遠慮のないそれに安らいでいる・・・自分に。
しかし、それに戦慄する間も、反論する間も与えずに、青年は続けた。
「私は伊織ちゃんが希望であり、人識がそのきっかけになると思っていたんだが、ね。
 ・・・君こそが、本当の希望なんだろうね。
 だって、『素質』を持ち合わせておきながら・・・殺したくないという理由だけで、自分を制御出来ている」
「あ・・・」
「君は、素晴らしいよ。」
そう言って。
青年は、おもむろに手を伸ばし、わしわしと宗像の頭を撫でた。
いまだかつてされたことなどないー少なくとも、幼少時の両親以来のーその扱いに、宗像は驚いて青年を見上げる。
その顔は・・・まるで可愛い弟でも見るかのように、愛おしげに笑っていた。
気を許した家族に向けるような、優しい、暖かい笑顔。
年長者が庇護する幼い家族に向けるような柔らかな笑顔だった。
「君は、殺人鬼にしては不安定で人間にしては不適切だ・・・だけど、君には家賊は必要ないんだろうね。
 自分で、大切な人を家族を捜しているんだから。」
「え・・・あ、の」
「本当は、私は君に『零崎』としての名を上げるつもりでいたんだけど・・・君には、零崎名はいらない。
 人間らしく生きて、笑って、泣いて、怒って・・・私達(バケモノ)じゃない人間として幸せになるといい」
「あな、た・・・」
「お兄ちゃんになれなかった私からの、言葉だ」
「あなた、は」
そこで、ようやく。
宗像は声を絞り出し、どうにか、一つだけ問いかけることが出来た。
「貴方は、誰、ですか?」
「私かい?私は――」






「・・・そう、しき」
「葬式がどうしたんですか、宗像先輩」
呟いた言葉に返る、聞き慣れた声。
それに急速に意識が覚醒し、宗像は目を開いた。
途端飛び込んでくる部屋の明かりービオトープが夕方になる程度には寝ていたらしいーと覗き込んでくる有人以上のなにかである後輩の顔。
「・・・七ツ、森くん」
「寝ぼけてんですか?お茶入れましたけど、飲みます?」
体を起こした宗像に、差し出される湯飲み。
無意識にそれを受け取ると彼は、由良にタオルケットを被せる。
それにようやく、自分がビオトープにある屋敷の縁側で、由良と共に眠っていたことを思い出し、ありがたく茶を啜る。
湯飲みに口を付けると、熱いお茶が喉を通った。
「・・・夢を見たよ」
「へえ。どんなですか?葬式とか言ってましたけど」
「葬式・・・いや、人名だよ。」
「・・・兄の一人が、同名ですけど、その人、オールバックのスーツ姿の針金細工みたいな人でした?」
「そう。」
オウム返しに呟いて、だが違う、と思い思考した。
針金細工のように細く長い、夕刻の影のような青年。
似合わないにもほどがある眼鏡と、スーツを身につけて。
オールバックなんて言う生え際が後退していきそうな髪型をして。
あんなに――優しく、慈しむような笑みを、して。

・・・『―幸せになるといい―』

「七ツ森くん」
「はい?」
「好きだよ」
言って、驚いて振り返った諒鷹の唇に、キスを落とす。
見開いた瞳が閉じられ、そっと湯飲みが傍らに置かれるのを見ながら――宗像は、そっと心中で笑った。

「(――言われなくとも幸せになるよ、『零崎双識』さん・・・)
 (七ツ森くんが、貴方と同じであれね。)」



《殺人鬼から、人を殺せない希望の子へ》


(命尽きても家族を想うは、葬送の名を持つ痩身の鬼)





「(えーと、この子達、私が寝てるとは言え居るの解ってるわよね)」









本編沿いじゃ、無理な壱話。
コミックス未収録ですが、宗像さんが球磨川殺害決着な回で思い切り対立するでしょうし。
球磨川の処置をしながら、諒鷹は廻識は、こう叫びます。
「人を殺したなら、笑え。
 過負荷(マイナス)じゃねぇがな、それが、自分が殺しちまった奴への唯一やって良い事だぜ、素人(アマチュア)!!」
なおかつ、意外に、江迎ちゃんにラブってまして、彼。
一応、宗像ルートの一話でした。
あ、ちなみに、諒鷹×宗像のつもりです。
宗像受け派ですので。
もちろん、殺人衝動をあっちで発散するのも美味しいのですが。





俺は童子ではない

2011-12-15 23:08:57 | 薄桜鬼 二次
文久三年霜月末日。
とある少女が、新撰組屯所から消え、ほとんどの者がそれに気付かずに数日が過ぎた頃のお話である。
京都の街中にて。
見覚えの無い白に近い淡く青みのある髪だが、見覚えのある顔の人物に声をかけられる斎藤。
身なりからするに、商家の旦那であるらしい。
斉藤は、手振りで隊士達に先に行くように促す。
そうして、やっと旦那は口を開く。
「お久しゅう、斎藤はん」
「誰、だ・・・朱雀屋か?」
「そうどっせ、いつも贔屓にしてもろとる朱雀屋の蓮雀氷雨やわ。」
新選組とも取引をしている薬問屋の朱雀屋のまだ若い旦那であった。
にこにこと真意を見せないところは、斉藤に山南を思い出させる。
斉藤も、何度か顔を会わせているはずだが、どうにも印象が重ならない。
「・・・・・・・」
「髪色はこんが本来なん。
 こな九十九髪でお兄さんらのトコ、何回も行きはったら目立ってあかんやろ?」
「そうだが、何故。」
「誰か、居らんようになって寂しいを思うとるんを隠しとんみたぁてな。」
「・・・・・・思ってなどいない」
「沈黙、長いわ、斎藤はん。
 後、お兄さんらのいう不逞浪士の情報、山崎のお兄さんに渡してぇ言う用事なんよ。」
自身の父とは重ならないが、優しい父と言うのは、こういうものなのだろう。
そう思わせるように、見下すわけでもなく、包み込むようなそんな優しさの籠った口調では合ったが、聞き捨てならない言葉を聞いた。
思わず、殺気を放ってしまう斉藤。
副長を信奉の域で信頼している山崎がそんな軽率な真似をするだろうか、そう思ってしまったのだ。
「・・・」
「山崎のお兄さんは、こっちの事情を承知の上で聞いてきましたん。
 ((小声で)ま、人間として最期まで居るんを覚悟しはったもんなぁ、死神やなく、あくまでも人間として)」
「・・・・・・」
「そないに見つめられたら、お兄さん、照れてまうわ?」
「お兄さん?もう良い歳だろう?」
「違うわ、まだ、現役やから、お兄さんなん。
 旦那、呼ばれとるけど、商売相手やないんちゃから、お兄さんか氷雨で呼んでえ。」
一応、氷雨の名誉の為、少々、補足するが。
お兄さんは男として現役。
お父さんやおじさん、旦那は、あっちがダメダメという意味なのである。
商家や置屋の旦那の場合、年齢に関係なく、お父さんと呼ばれるが、それと実際の感覚は別であるのだ。
「では、氷雨さん。
 情報は?」
「ちいと、こっち来てな、天下の往来でする話違うやろ?」
そして、場所は移って鴨川沿いの船宿。
ようは、連込み宿・・・未来風に言えば、ラブホである。
それは投げておき、密談にはうってつけである。
「・・・ってことやわ。」
「・・・・・・・・・」
「斉藤はん?」
「・・・・・・・・・」
話終えても、斉藤は上の空だった。
年齢を全く感じさせないように、氷雨はこてんと小首を傾げる。
ぽむぽむ、そんな軽い音をするように斉藤の頭に手を置く。
そして、撫でる。
幼子にするようなそんな所作だ。
「・・・俺は、童子ではない!!」
「んー、うちの蓮と千汰が、寂しそうというか、解らない事が解らないって言う時と似たような雰囲気だったから、つい。
 童子じゃないっていうんだったら、こう?」
多少、上背があると入っても、油断していたのだろう。
斉藤は、氷雨に抱きすくめられていた。
落ち着かせるように背中を撫でられながら、こう言われた。
「あんなぁ、先がどうなるか解らんけど。
 斉藤はんには大事な子おったんよ。
 今は、解らんやろけど、それだけ忘れんで。」




その後、斉藤が立ち去り、船宿の部屋で一人、氷雨は呟く。
「なぁ、聖ちゃん。
 欲しいもんは手に入れていいんよ。」













最初は、ある日の会話だったけど、微妙にのびて小話になったよ、な一話。
出てないけど、斉藤×聖前提。
今、一話のみ公開中のお話、聖ちゃんサイドの終了後なので、冒頭にあるように、霜月末日。
この数日後に、沖田と一緒に現代トリップして慎ちゃんと出会う感じです。
なんで、この小話は一応、ハッピーエンドルートになります。
聖ちゃんサイドバッドエンドは、聖ちゃんが本編開始までに戻って来ない版で一応、今、トゥルーエンド的なところまで持って行けるお話を書いてます、アップは未定で。



それでは、次の物語にて。




magnet 替え歌

2011-12-15 22:57:59 | 替え歌


微妙に近親的なので、苦手な方は閲覧お控えください。























(前奏中)
『手を出せば終わりだと解っていたけど・・・』
『気付けば、おしまいだって解ってるの』
『だけど、止まらない。
 貴女を思うこの気持ち、止めたく無かった。』
『良いわ、受け止めてあげる。』
『姉さん・・・』

この身灼く炎(ひ)が 心の端に灯る
気がつけば切なく哀しい恋情
私の声 儚く解けて行き
あなたの手に傷痕を付けた

絡み合う指ほどいて 全てを委ねる
赦されない事ならば 尚更燃え上がるの

抱き寄せて欲しい 貴方の腕で
嘘なんかじゃ無いんだと 思わせて
キスをして 塗り潰して欲しい
魅惑の時に酔いしれ溺れていたいの


束縛して もっと必要として
愛しいなら狂気を見せつけて
「おかしい」のに たまらなく好きになる
行けるならば果てまで行きたいよ

交わった心なら 簡単に混ざってゆく
優しさなんて感じる暇など 無い位に

繰り返したのは あの幻(うそ)じゃなくて
紛れも無い現実の私達
重ねてから 戻れないと知る それでもいい・・・
誰よりも大切なあなた

(間奏中)
『それでも間違いだから・・・』
『大丈夫、地獄に落ちるなら私も一緒に・・・』
『でも、姉さんだけは・・・』

夜明けが来ると不安で 泣いてしまう俺に
「大丈夫」と抱き寄せたあなたも 泣いていた?

抱き寄せて欲しい 確かめて欲しい
嘘なんかじゃない無いんだと 思わせて
キスをして 塗り潰して欲しい 
魅惑の時に酔いしれ溺れたい

抱き寄せて マグネットのように
例えいつか離れても引き寄せ合う
触れていて 戻れなくていい それでいいの
誰よりも大切なあなた






ええと、気になる曲をつらつら、聞きまくって。
うんで、『magnt』の替え歌カバー聞きまくって。
なんか、うちの聖弥と聖ちゃんっぽいよなぁと、思って勢いで作りました。
一応、ルカソロ→聖ちゃん、ミクソロ→聖弥で。
有名なイラスト的な構図はたぶん、聖弥が聖ちゃんを抱っこしているんだろうな、とか。
後、聖ちゃんの蝶々ヘッドホンの羽は黒基調、聖弥の蝶々ヘッドホンの羽は淡い桜色系のピンク基調イメージでした。
たぶん、最後まで行ってるよね、多分、聖弥が勢い余っちゃったんだね、の歌詞になりました。
尊敬と恋愛感情は紙一重ですし?
また、一応、歌えるはず。
間奏は適当だけど、元ラインは文字数数え数えやったので。

ではでは。



・・・しかし、この後にアップ予定が、斉藤×聖ちゃん前提なのは、我ながらアレだ。