セピア色の想い出。

日々の生活と、其処から生まれる物語の布飾り。

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袖触れ合うも、他生の縁  2(他サイトコラボ)

2016-09-18 17:20:58 | 刀剣乱舞二次創作 (多重クロス)



  






 出来るなら、殺すことが無いことを祈ろう。

 出来るなら、操ることが無いことを祈ろう。

 だけど、これから、《御伽噺》が利用されることが無いように。

 それが私の死なない理由だから。







 2. 乾いた涙と老兵の決意











 気のせいかもしれないが、張り詰めた氷のような雰囲気であるのに。
 葵には、どうしようもなく泣きたいのを堪えているように見えた。


 そして、学生の噂、ネットの噂、都市伝説、呼び方は何でもいい。
 ただ、葵の知っているそういう話に樹姫が言っている様な話はあったような気がする。

 数え切れない、と言うよりも数ある都市伝説のひとつで、「そういうのあったよね」ぐらいな話だ。
 その場その場の泡沫のような噂話だ。


「何を聞きたいのかわかりませんが……もし仮に、そんな手段が存在するとしましょうか。
 では、その願いを叶えるために、俺が差し出すことになる物はなんでしょう?
 金やコネでない。ならばそれ以上の何か? 」


 まともに考えれば、正確に言えば、可能性を探れば、それこそ、ファンタジーの世界に足を突っ込むしかない。
 審神者なんて、そう言うところに居るけれど、それとこれは別問題な気がする。
 どういう意図の質問か分からないけれど。


「なんの対価も無しに望みが叶うほど、うまい話は無い。
 それくらい、いくら俺が二十数年しか生きていないとしても、わかりますよ。
 俺には命をかけるほどの願いは無いし、自分以外の何かをかけるなんてもっと無い。
 …………知ったところで、どうもしない。できないでしょうね」


 葵は、答え切る。
 その最後が空気に解け消えきって、劇的に空気が変わった。

 男士ならば、誉桜が咲き誇るぐらいに、それまでの無表情が何だったんだ、と言うぐらいに嬉しそうな笑顔と同時に涙がはらはらと溢れているようだ。
 どちらかと言えば、青い宗三左文字と小夜、氷雨が真横に近い位置にいるぐらいで、他の葵の男士達は顔の見えない位置に居る。
 しかし、気配だけでも喜んでいるのが分かるレベルで樹姫は、泣き笑いをしているようだ。
 真正面に、葵がいる形の為、樹姫の泣き笑顔は見られている。

 途中で、氷雨の手で寝るネコ柄のてぬぐいが掛けられた。
 また、樹姫の男士も兄弟刀から降りたりして、彼女の背中をすったりした。

 そして、この時点で小夜左文字も、葵の前に戻る。


「良かった、えっちゃんとやっちゃんが私達の身内だけど、此処で安易に叶えたいなんて言ってたら、殺し合わせてたし、葵殿を殺してた。
 【御伽噺】が終わっても、【御伽噺】が死んだわけじゃないもの。
 それに、代償はこっちが支払うわ、せいぜい、《片眼王》と《戦乙女》を引き合わせるだけでいいもの。」


 意識してではないのだろう。
 少々物騒な言葉が漏れている。
 
 それに、先ほどの誓約には穴があったことを洩らしている辺り、本当に無意識なのだろう。
 気になる発言もあったようだけれど、部屋の中の三口は、明らかに戦闘体勢に入ろうとしてた。
 それはダメだと、葵は気を逸らすためにも質問をする。


「その《御伽噺》とは?」


「私達《幽霊》の神様としての神話。今も、薄くそれとなく人に流布してる話。
 長兄次兄、監査の子、紅葉とラビも、その中の柱なの。
 ギリシャ神話で言うハデスとペルセポネがどうの辺りのオリュンポリスメインの頃のいざこざ。」


 それそのものを語る者はおろか、知る者も少なくなった神話。
 その中の一つの話し。 
 《片眼王》は《戦乙女》が欲しかった。
 《歌乙女》は《片眼王》が欲しかった。
 《戦乙女》と《妖鳳王》が幸せになって欲しかった。
 だから、《歌乙女》は《片眼王》と戦い、呪いを掛け合い、自身の命を終わらせた。
 そんな神話の中の一つのお話。


「だから、人間が《片眼王》と《歌乙女》を結びつければ、その二人の命を代価になんでも叶わせれる、それこそ死者を生き返らせることもね。
 それだけで、裏組織を作って、息子と呼んだ人工的に生まれ変わらせた《片眼王》入り青年を殺そうとした首領もいるぐらいだもの。」


 なんとなく、ではあるけれど、樹姫の語るそのお話。
 端的ではあるけれど、葵はどこかで聞いたことがある気がした。
 神話ではなく、さにさに動画のような動画サイトで聞いたことがある曲でだ。

 高校時代と審神者になってからの知り合いの猫柳に勧められての。
 タイトルも覚えていないのに、酷い既視感があった。
 それぞれ、一度しか聞いていないのに、なぜか。

 勿論、歌詞も覚えていないのに、とても、とても哀しい物語だったのは覚えている。
 今の内容だって、精々がそんな話あったよね、ぐらいなのに。


「《歌乙女》がいれば、命はいらないけど、そもそも、《歌乙女》は長い間で狂ってしまっていて、二人殺すことになる。 
 ギリシャ神話で言うトロイア戦争に当たるお話の辺りで、元々の世界ないからこっちの政府に協力している面もあるの。
 ラビは、とても、《歌乙女》を嫌っていて、《あの女》としか呼ばないぐらいだけど、姉には甘いわね。」


「……《歌乙女》って、縹さんですか?」


「…………おやまぁ、そこまで。
 そりゃ、気付けばいいとは思ったけども。」


 微笑む樹姫に、指摘する葵。
 初めから、知らせる意図はあったのだろう。
 もしも、監査の時の会話を知っているのなら。


「後、ごめんなさい、意地悪な質問だった。
 貴方が、前向きに男士の子とやっていこうとしてるの聴いたのに、あえてした。
 《御伽噺》を知っているか、或いは、何が何でも叶えたい願いがあるのなら、私は弟妹達の為にも、潰しておきたかったから。
 永く生きた者の義務だもの、あの子に《御伽噺》の終焉を幕引かせたの、押し付けたんだから。」

 一応の謝罪。
 それに葵が答える前に、樹姫の裂帛の気合に満ちた声が響く。
 言葉にならないその声だけで術式を一つ完成させる。
 細いが腕を一対増やしたのだ。
 
 後ろにいた山姥切国広や鶴丸国永も、目を見開くだけで動けない。
 樹姫が臨戦態勢に入った為ではないが、思考が追いつかないのだ。
 本来、本丸内部で、主の執務室で見てはいけないものを視てしまった故に。。
 不思議と気配はしないが、幾度も刃を交えた相手だ、見間違えるはずも無い。

 噂は聞いているが、実際にこうなるとは思わなかった、と言う状況だ。


「薬屋、トドメか弾き飛ばせ。」


「牽制と穴は塞いで送れやす。」


 説明している間も惜しいと思ったのか、四本腕の一本に黒い棍と言うか、長柄武器の柄だけを呼び出し、同時に、執務机をそのまま逆の壁に移動させる。
 氷雨も、要請を受けて無数の半透明の葉を数え切れないぐらい召喚し、風がゆるく彼の周りを取り巻いた。
 まとめていない部分の髪が、ふわりと浮いている辺り、そして、短時間で此処までを構築できる辺り、非常識だ。
 本人曰く、『安倍晴明御霊神さんやあるまいし、普通どす』と言ってるが、それを比べる基準に持っていく辺り、非常識だろう。
 人間の範疇だとしても。

 そして、一足飛びに葵を抱き締める樹姫。
 下手に動いて欲しくないのか、棍を握ってない残りの三本腕で密着させるように固定する。
 必然、身長差と体勢の問題で顔が胸に押し付けられている形だが、こんなラッキースケベは嬉しくないだろう。
 樹姫の胸はまな板なわけじゃないが、割とささやかな範疇ではあるし。
 あばら骨に当たるほどではないが、ふかふかと言うわけでもない。


「しばらく、動かないで。
 ごめ、……うぐ、…………追い払うまで、もう少しだから。」



「追い払うなんてそないな真似、すると思う?
 運の付きだな。幸運だと思ったら大間違いや。」


 氷雨の準備が出来たのか、大小の半透明の葉っぱを飛ばす。
 葵の真後ろに出来た穴に二人と小夜左文字を避けて全て殺到する。

 そこで、小夜はやっと、何があったのかを察した。
 結界の穴から覗いていたのは、半透明の葉っぱをハリネズミのように刺した遡行軍の太刀。
 それが、最後に刺さった一際大きな葉に眉間を貫かれ、喉を切り裂かれ、心臓を抉られ、そして、終わり消える。

 此処までが、約三十秒少々。


「すみません、招きました。」


「その前に、その脇腹のは。」


「ええ、さっちゃん。
 でも、怒らないであげて欲しい。
 あの状況で、主に触れたのを優先して咄嗟に、反応して刺したみたい。
 きっちり内臓に刺さるように下から肺の方向に刺してるし、半回転抉りこんでるから、中々に殺意が高い。」


 右脇腹から鍔まで通っている短刀。
 角度にもよるだろうけれど、肺に刺さっていてもおかしくない。

 刺された本人は、褒めているが、何処かズレている。
 ぐりぐりと小夜を撫でてはいるが、果てまでシュールな光景だ。
 ちなみに、腕はもう一対に戻っている。

 ただ、口の端から血が垂れている辺り、肺には到達しているらしい。


「いや、ちょっと、ストップ、手当て。」


「大丈夫、無かったことには出来るんだけども。
 抜いたら、ここ血まみれよねぇと。」


 怪我よりも、部屋を汚すことを嫌がる辺り、完全にずれてる。
 そのせいもあり、無かった事云々はスルーされた。


「樹姫はん、とりあえず、人間としてそれはアカンですって。。
 と言うか、これぐらいならまだ、戦える戦えへんで判断してるんでしょうけど、咄嗟に判断して小夜を殴らなかったんでしょうけど。
 何やあったら、お姫はんが泣くのは、貴女の為どっせ。」


「いや、あの子がこの世界で泣けるのは、刀剣達の為だけでしょうよ。
 初めに見たのが、犯罪者本丸、ブラック本丸だったから知己が堕ちる様を見てしまってはね、遅いわ。
 酷かった、私がもっと早く覚悟してこっちに来てれば良かったと思うぐらいにはね。
 でも、万物が流転する以上、時もまた然り、どうしようもない。」


「それでも、あるじには、おまえもだいじな“かぞく”だぞ?」


 ザンバラな黒髪に黒眼の短刀よりも、更に小さな子どもの姿、だけど、主であろう人の気配が濃い為か、誰の式かわかったようだ。
 つまりは、縹銀の気配がする。

 彼は、氷雨の懐から出てきたようだ。


「さにわ・あおいどの、おれは、“けっかいがよわまる”という“まっどでもん”をまってきどうされるかんいのしきだ。
 けっかいのしゅうふくだけはさせてもらう、これいじょうはあるじにきいてくれ、しつれいする。」


 言いたいことだけを言って、掻き消える。
 結界の修復と言ったが、何をするつもりなのだろう。


「ほんと、甘いなぁ、私には無理だな。
 天色左文字、できれば、これ無かったことにするから、タイミング合わせて抜いて欲しい。」


「……酷い、人ですね、主様。」


「うん?信頼してなきゃ、触らせもしない。
 般若心経唱えるからの「波羅僧掲諦 (はらそーぎゃーてー)」で一思いにそのまま、抜いてくれな。」


 樹姫は、マイペースに、青い宗三左文字、彼女は、天色左文字と呼び、物騒なことをお願いしているようだ。
 さっさと唱え始める辺り、信頼なのか運用なのか。

 関係ない身体になっても覚えているのか、胃の辺りを押さえながら氷雨は、フォローと言うかそれをする辺り、苦労人なのだろうか、死人の今でも。


「そ、そんで、今の黒い子は、お姫はんの式どす。
 結界が緩んそやし、出てきたんどすけども。お姫はんや二百年前に出来た《すたぁげいと》図書館の初期組権限で、自分とこじゃなくても、うぉーるに干渉でけるんそやけども、ほして今回弄りに行ったどす。
 一応、あの黒い子の術式構成……そぉすは、審神者管理局HPでも公開しとるから、調べてみてぇや。」


 立ち直った彼は、顔を引きつらせつつも、ひらがな発音のカタカナを混ぜて説明してくれる。

 結界の補強と隠蔽率の強化、ついでに、住所の位相を微妙にズラしたらしい。
 専門じゃないから、曖昧な表現な用ではあったけれど。


「ええと、もしかしてだけど、ブラックボックスみたいな位置が残ってると言うか、その結界の要石がその図書館産?」


 かすかなヒントで、答えまでたどり着く葵。
 それを氷雨が肯定し、幾つかの補足をする。
 あくまでも、一般審神者でも調べようと思えば調べれる範囲のことであるけれど。


「元々、結界の基本術式と刀剣男士の基礎術式、その図書館から、政府はんが五代目から奪ったものそやしねぇ。
 五代目はんが殺されて奪われてないんどしたら、和睦もあったですやろけどね。
 そう言う意味では、あの黒い子のおっきいのと刀剣男士の子達は、いとこみたいなもんや。」


 どこまでも、政府の黒さが呪いのように追いかけてくる。
 政府(しゅうだん)の言う幸せに、審神者(こじん)の幸せは重ならないのだけれど。
 
 詳しく語りはしないが、五代目の《スターゲ-ト》の主の名前は、焔澄(ほずみ)=ライ・ラヴェルという。
 違う世界線でも、自分達の手から、図書館を手放した管理人である。
 ただ、この世界線では、図書館を奪われた。
 相棒で恋人だった女性(ひと)と自身の命ごと。
 異世界の知識とまで言われる豊富な情報庫の為に。
 初めは、ただ、初代達が失われていく知識を憂いて作った図書館であったのだ。
 

 葵は、霊力の質も量も、極上ではあるが、数年前までは普通の学生だった。
 霊力の質量以外は、極一般的な、個人エピを抜けばどこにでもいそうな人だった。
 知り合いと酒を酌み交わしたり、レポートに終われたり。
 或いは、本の続きが気になって夜更かしをしてしまったり。
 だから、ではないが、数は少なかったが友人もいて、中には噂好きもいた。
 いつだったか、誰だったか、《スターゲ-ト》の名前を聞いたことがある。
 ただの都市伝説のようなものの筈。


 --『なんでも、それこそ、死人を生き返らせるようなことだって、知ることの出来る図書館がネット上にあるらしい』


 そういう噂の図書館。
 今はないらしいけど、もしあったら、楽に金持ちになれる方法教えてもらいてぇな、なんて程度の軽口の中の他愛も無いそれ。


 今更ながら、それを聞き、実在したその図書館も政府に利用されていたことも知る。
 そして、聞きはしないが、彼らの術式を科学に落としたのが、刀剣男士ではないのか?とも。
 だから、そう言う意味で、縹を初めとした彼らが侍らせる“式”と刀剣男士は親戚に近いのかもしれない。


「今の八代目は管理するだけそやし、権限だけならこっちのほうが強い。
 ……知ってるの審神者にもそれなってにいるからね、そやしこそ、政府を牽制でけるって寸法。」


「政府(しゅうだん)の幸せと審神者(こじん)の幸せは重ならないからね。
 あの件をリアルタイムにに知ってたら、政府の足腰がガタガタになる程度には、闇討ち暗殺お手の物?だしねぇ。
 ……それ抜いても十八年前のあの実験で祟り神放置して解体すればよかったのに。」


「思考が黒くなるのはあかんだよ、落ちきや。
 ほして、話すんやろう、樹姫。
 私は話せへんからね、お姫さんはどなたかが話すのはともかく、自分が話すのを拒絶する部分ではあるのそやし?」


「んあぁ、すまん。」


 樹姫の「それを抜いて~」の後は、聞こえなかったが、氷雨が態々、黒いと称する思考。
 それを散らせる為だろう、父親が子どもにするように頭を撫でる氷雨。
 背景に、小夜左文字に本体を返す、青い宗三もいる。

 樹姫は話そうと、する、したが。


「少し待ってくれ、客人。」


「怪我、気になるの?」


「アレだけの傷が、どうなったか、はな。」


「流石、やっちゃんだね、別個体でも控えめでも、刀の本懐を願った子ね。
 無かったことになってるわよ、超局所的な改変になるのかしら、これ。」


 庭に展開していた短刀の一口、粟田口の薬研藤四郎。
 医術の心得が、ある為か、気になったらしい部屋に入ってきた。
 ……もちろん、葵の本丸の彼だ、優先は葵なのだろうけど。

 今剣と逆に、主を死なせなかった短刀だ。
 気になるらしい。


「直接、見せると確実に、あおちゃんが保護者組に言うから無理だけど、これで。
 下手な防刃ジャケットより硬かったんだけどね。」


 着ていたコルセットと黒と白藍の矢絣の丈の短い着物、を渡す。
 洋装風に言うなら、ジャケットとベストを渡したことになる。
 下に着ていたのは、襟袖なしのブラウスで更に下は色付きタンクな辺り、和洋折衷な格好のようだ。


「……穴がない。」


「だから、“無かったこと”にした。
 手入れはどうにかできるんだけど、生身の人間を治す回復系統の術式、擦り傷を治すのが精一杯でね。
 霊力系統だけは有り余ってるから、傷とその周辺を巻き戻して、結果、“刺した”と言うこと自体、“無かった”ことになってるんだよね。」


「それは、歴史改変ってことにならねぇのか?
 大将のの不利益になるんだったら、始末するぜ。」


「さぁ?個人技能をさして言われるのであれば、手入れもその範疇じゃないの。
 元々の男士の構成術式と手入れセットの構成術式で可能な事柄で、あれも一応は、同じスキルよ。
 審神者の才能に依存しないでできるように、そうしたらしいってのは、兄から聞いたもの。
 回復術式が一切仕えないから、変則ではあるけれど。」


 殺気の方向で、包囲している短刀達も含め、葵の男士が構えだす。
 渦中にいる樹姫は、にっこりと笑顔で丁々発止。
 真正面から薬研藤四郎と睨みあっている辺り、中々に強かだ。


 しかし、二人とも外見は、中学生程度ではあるのだけど。


「一応、現在現役神様で、受肉して色々と制限加えて干渉してる私の保証つけましょうか?
 この妹分の樹姫が歴史修正主義者じゃないってね。]


 極自然に、会話に入ってきたのは小さな子ども。
 小夜左文字よりも、幼い歳の頃合、三つ四つの小さな子どもだ。
 向日葵色の金髪に濃い蜂蜜の瞳の可愛らしい、七五三のようにジャケットショートパンツが、ちょこんと小首を傾げている。
 ただし、雰囲気は幼子らしさがないのだけれど。
 可愛らしくもあるが、厳しいわけでもない、なのに、そうと意識させない老獪さがこの幼子にはあった。


 同じぐらいの刀剣男士だろう子どもも護衛役に付いている。
 いるのだが、外見的には少々上だろうが、同じぐらいに幼い男士。
 抜けるような白い髪はふわふわで綿菓子のようで、瞳も淡い淡い水色。
 肌も白なら、服も白系統だったりして、どこか、粟田口の面々と似た印象のそれで、恐らく、粟田口派というのは分かる。
 色のせいでどうにも、違和感は拭えないけども。

 氷雨側に白い粟田口が、金髪幼児が樹姫側に座る。


「どうも、現役の管理局最高顧問・ルキウス=世樹(せいじゅ)です、と言っても、ええと、縹の義弟だった頃の身体を模してこっちに来たけども。
 仕事中&事情知らない部下もいるから、抜けたら大騒ぎだから、こんな形だけども。」


「はじめまして、ぼくは、ささめゆきです。
 あわたくちよしみつのあいづちによるたちがゆきしろまる、いまはすりあげられてたんとうのささめゆきです。
 よろしくおねがいちます。」


「…………ヤっていい、兄さん、わざわざ、私を放り投げたくせに何で来てるの?
 しかも、その子、300年近く前の方よね、琥太郎が生きてた頃に、無くしたって数日騒いでた時のよね、くっついてる霊力から。
 話せ、じゃなきゃ、掻っ切るぞ。愉快犯でも、同じく。」


 白いの――細雪の挨拶もぶった切るように、氷点下の声が響く。

 スカートのウェスト部分に隠していたのだろう、短刀を見た目三歳児に対して、樹姫は遠慮なく、殺気と怒りを刃に乗せて突きつけていた。
 此処に来てから、感情の薄いが余裕のある年長者と言った風だったのが、八つ当たりというか、ダメ兄を叱る少女のような感じだ。
 台詞を気にしないならば。
 一応、康友と青い宗三が物理的も含め止めようとしたようだが、失敗したようだ。


「……ええとね、弟ほどじゃないけど、審神者殿のことが気になったの一つ。
 後、弟がね、樹姫が怪我したらしいって聞いて、慌てててんだよね。
 一応、すぐにどうにかしたのは察知したんだけど、今度は弟が『俺が行く』って駄々こねたけど。
 流石に、妹分が怪我したのは想定外だったみたい。」


 物理的に、温度が下がるが、気にせず、幼子が答える。
 極普通のそれこそ、大学生辺りが喋っても、そう違和感のない話し方だ。

 声が外見年齢相応に、幼くなければだけれど。


「無理だね、ちい兄さんの神気だと、受肉して制限掛けまくってるあの状態でも、審神者・葵殿には悪影響だ。
 鈍いって言うのも一つの防衛本能よ、一回も途切れないで来ているのが弱いわけない。
 じゃなきゃ、二口の祟り神の押さえなんてできるわけないでしょ?
 そもそも、こうなることはある程度折込済みでしょが、確率の低い、だけど起こって欲しくないことほど引き当てるものよ。」


「だけどね、実際、妹が誤解されたままだってのは、私としても遠慮したいの。
 君だって、紅葉ちゃんが誤解されてるの哀しいでしょ?
 あの子は一番一般人だ、唯一、殺してない。」


「それはそれ、これはこれだ。
 子どもの言い訳でも、もう少しマシな話をするだろうが。」


「いや、はっはっはっはっ。
 でもね、夜伽だの暴力だのは論外だと思うし、一応の選択権を与えないのはどうだと思うけどね。
 政治的な意味のホワイト派をのさばらせると本霊が折れるぞ、神様が人間に力を貸すのは当然なんて、ふざけた話でな。
 樹菖の件が、無くとも、貴女自身にも身内でしょう、《流浪の女軍神》?
 俺にとっても、孫や子どもに近い感覚だ、ついぞ、覚えのない縁のない感情だけれどね、優先したいのは、妹と同じぐらいに男士達もだ。」


「ああもう、そうだけどね、確かに巻き込まれて、流れ軍配士なんてやってりゃ、大概の刀剣は子どもに近いさ。
 ひろちゃんやさんちゃん、みっちゃんは(仮)頃から知ってるわよ。
 だから、私も宗貞を責められないのよ、実子以外でぐずったのをだっこしたのひろちゃん達ぐらいだもの。
 じゃなきゃ、審神者なんてしてない。」


「身内に最大限に甘いのは私らだけどね。
 政府の人間やら、神様甘く見てる管理課の人間見てたら、こう首か腰をきゅっとやりたいと言うか。
 妹の弟になるまで日本に縁がそうなかった私でも、もしも、政府があのラストを選ぶなら、日本沈没も辞さない気だよ。
 刀剣男士ぐらいでも、結構なのに、私達クラスの神様まで出張るのを考えていない。
 伏見の姫神でもあれなのに、大かか様を大とと様が抑えてる時点で、結構詰んでると思うけども?」


「はん、覚悟も無しに戦場に、ガキを送り込むような国は滅べ。
 最悪、この身が消えても、前線に出させないさ。
 戦うのは、その覚悟と能力がある奴がやればいい。
 戦場で兵隊が死ねない世論にしたのは、人間どもだぞ?」


「はいはい、ストップ。
 色々と話しちゃアカンこと話してるでしょ?一応、長兄殿も妹分に甘いのは仕方いでしょうに。
 ……とりあえず、樹姫に会うのはともかく、これ以上、彼女男士に会うのも、向こうも修羅場なうそやし、私とこの子らは帰ります。
 物理で止めてもらわないと、向こうも半壊するんやないかな、加州清光&陸奥守吉行vs宗三左文字&鶴丸国永なんて感じで、どっちが迎えに行くか、喧嘩中みたいやから。」


 手を鳴らし、注意を向ける薬屋・蓮雀氷雨。
 それでやっと、樹姫は、ルキウスに載せられたことに気付く。
 どうあっても、他の本丸の彼らに話す気のなかったことまで話していた。
 加えて、かなり、深いとこまで話してる形。


「……ふふ、妹分が『知らないで居る人がいるのが救い』なのは知っているけど。
 私や妹が『知っていて関わり薄くに暮らす人がいるのが救い』なのは知ってるでしょ?
 妹の報告書から、山姥切国広を初め、あの百花繚乱の時代を生きた子達がいるのは知っていたし。」


「あの男が、ルートの収束を行っている以上、覚えているんでしょうね、ええ。
 だから、私は稚児(ややこ)に再会した訳だしね」


「と言うわけで、葵殿、できれば、私が此処においやしたことは話さいでいてもらえると助かるんや。
 一応ね、今回は裏方どしたし……と言う訳で、天色左文字、堀川国広、康友国永、刀に戻りよし。」


 拍手(かしわで)を八回。
 それで樹姫の刀剣男士が、刀に本体に戻る。
 契約主ではない氷雨の手によって。


「おん、鶴丸国永殿、一応、検討付いててこらどうなんやろう?
 もしも、自分達に使われたら、主が危ないからの思い切りの良さなんやろうけども、つか、《翁》、ニヤニヤしてへんで説明頼みますわ。
私がしても、説得力ないやろうから。
 後、安定、すてい、落ち着け、最悪、どうとでも切り抜けるから、ここでお前出る方がアカンの、落ち着け。」

 
 即座に、鶴丸国永は抜刀する。
 優先するのは、主だ。
 本来不可侵のはずの契約術式に

 そして、氷雨の喉元に切っ先が当てられる。
 殺気すらぶつけられても、側に置いた大和守安定の心配をしている。


「あー、一応、それも《御伽噺の幽霊》で、その類似性を利用しての技だから。
 他のは無理だと思う、《歌乙女》としての類似を利用しても、せいぜい、かくちゃんまでだと思うの。
 後、兄さんは笑いすぎ、と言うか、狙ったでしょ?」


「いやはは、じゃあ、アレだ。
 ルキウス=世樹としてと《御伽噺の幽霊》を代表して《世界樹の翁》として誓おう、術式名『強制顕現解除』は自らの刀剣男士以外に使わせな、ぐべら」


「アホでしょ、兄さん。
 真名名乗る?アホでしょ、馬鹿でしょ、やり方次第で人間でも八坂でも月弓でも呪えるのに、誠意とは言え、名乗るか!!」


 綺麗に、兄へアッパーカットをかます樹姫。
 見た目は、中学生が幼稚園児にかますという構図なのだが、真名を名乗っていたと言う事実には、仕方ない。

 それに、本人的には、先ほどの自身の誓約の時は、まだ拘束力の弱い本名しか名乗っていない辺り、一応は、本当に、一応は、気を使っていたらしい。
 彼女の刀剣男士にはどっちでも変わらないだろうけど。



「兄だからね、あの時は介入できなかったんだし。
 妹分も、妹も苦しんでたのに悩んでたのに、僕は介入し切れなかった。
 それにね、見限る神様がいないわけでないけど、それでも、私や弟はまだ、この世界に未練があるんだよ。」


 自ら飛んで、ふよふよと浮いてる辺り、殴られることも、分かっていたらしい。
 すぐさま、顎の傷を治す辺り、妹分を優先したようだ。
 浮かんで、浮かんで呟く台詞は静かな哀しみが滲み出ていて、干渉し切れなかったことを酷く公開しているよう。


「とりあえず、私は行きますわ。
 ……兄さん、妙な色気出さいでな。
 後、樹姫、こら置き土産そやし、正直になるとええよ?」

 氷雨がもの見事に、それを破壊する。
 そして、最後に樹姫に投げキッスに見せかけた術式を一つ飛ばす。
 
「やられた。」

 瞬間、姿がぶれて、樹姫がいた場所に居たのは、本人では在ったが別の格好だ。
 黒髪をおかっぱにして、白地に蝶の書かれた目元を覆う仮面に、瑠璃色の二部式着物を紺碧色の兵児帯姿に白い半袈裟と言う戦国時代に放り出しても違和感のない格好。
 身長も変わらないが、年齢的には四歳五歳上には見える。
 おおよそ、中学生から大学生ぐらいではあるけれど。

 しばらく、場が硬直した隙間を狙い、氷雨は樹姫の三口を拾い、現れた時同様に、唐突に消える。
 樹姫が立ち直ると、恐らく、フルボッコにされるのが眼に見えているからだろう。

 うなだれる彼女が、何かを言う前に、反応したのが三つ。


「璃蝶姉さま?!」


「日本号の番(つがい)?」


「軍配士の方か。」


「バレたくなかったんだが、ひろちゃんに関しては覚えててくれてありがとう。
 さっちゃんに関しては、そういや黒田にいたっけね、どちくしょう。
 やっちゃんに関しては、織田と松永で会ったね、久しぶり。」


「まぁ、とりあえずさ、本題に入る前に、質問どうぞ。
 答えれるのは、答えるし、そっちも混乱してるでしょう?」


 ダメージでかそうな樹姫の為も含めて、そっちで相談したら?とルキウスは話を向ける。
 実際、ふよふよと浮かんでいた彼は、妹分をなだめている辺りは兄のようだ。
 見た目は、三歳児がお姉さんをよしよしと頭を撫でている状態。

 それから、数分後にまとめられた質問は以下。


 『江雪左文字と薬研藤四郎が、身内ってどういうこと?』


 『それと、三条組(+鶴丸国永)は違うの?』


 『『祟り場』と『浄化場』って?』


 『強制転移したの、そっちの長兄?』


 『祟り場でも浄化場でもいいけど、造ったのは、監査の人?』


 『男士を使った巫術を教えたのは、何故?』


 『世界が分かれたってのは?』


 『監査の結果、と言うか、担当とかどうなった?』


 『動画サイトに、さっきの神話の曲なかったか?』


 『招いたって、どういうこと?』


 『次兄が、祟り神を抑えてるって?』


 『妹と妹分の呼びわけしてるのは?』


 『政治的な意味のホワイトって?』


 『《流浪の女軍神》ってあの《流浪の女軍神》?』


 『日本号の番って?』


 『歴史の“編集”って?』


 『その細雪って言う短刀ってなに?』
 

 ちょくちょく、葵が選んだのではない質問を混ぜてくる辺り、中々に歳を経ているだけある。
 情報は諸刃の剣なれど、必要な刃なのだ。
 僅かに、目配せして、最初の質問から答えるようだ。




   
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