※季節ネタですので、ゲーム中に、登場人物及び、その周辺設定を合わせております。
微妙に、06年10月以降の事も、少し書かれてます。
I wish you a Christmas?†聖夜の夜に†
12月24日
その日の88番地は、いつもにも、まして、戦争だった。
元々も、メンバーの数が多いところだ。
なおかつ、シルバニオンのアージェントが、現役の方の図書館で、クリスマスの知識を手に入れて来たことや、メティラゴスのエルヴィンが、小さめとは言え、もみの木を引っこ抜いて来たことで、クリスマスムードが高まったようである。
「主様、クリーム、5リットル分泡立てました。」
「わかりました、それ、三等分してください。」
「うん、わかりました。」
「姫さん、ローストビーフ焼き上がったぜ。」
「ストーブの側の机に置いておいて下さい。
寒く無く、暖か過ぎも泣くな処ですよ。」
「OK、チビ達に食われないようにしとくぜ。
次は、ローストターキーだな。」
「マスター、シチューの味を見て下さい。」
「解りました。」
「おねがいします。」
「サンドイッチ、冷蔵庫ですね。」
「お願いします。」
「ええ。」
「マスター、腹減った~。」
「居間に、オニギリとストーブに味噌汁が掛けてあります。
紅や、ヴァーユをよろしくおねがいしますよ、アージェント。」
「いえす、まむ」
こんな具合に、ディスティア及び、上から、リュコラヴォスのリュイス、ボレアスのセファイド、レティーシアのラケシスの三人と合わせ、フル回転で、クリスマス料理を作っているのだ。
最後の銀髪のアージェントは、ただの邪魔であるのは、明白なのだが。
メニューとしては、ローストターキー&ポーク&ビーフ、付け合わせ数種、海老のオーロラサラダ、サンドイッチ、シチュー数種などなど。
一応、瑠璃など、和風好み用に、キノコパスタや、肉味噌ポテトサラダなどを用意している。
ケーキは、生クリーム、チョコ、マロンの三種類+カボチャケーキ
アージェントは、ちびっ子ズのアリナトの紅とブルーホワイトのヴァーユの面倒を見ている。
たぶん、一緒にサイクロンのアレクサンドラもいるだろう。
或る意味で、ローストビーフをちびっ子達と一緒になってつまみ食いしそうな組み合わせなのだが、セファイドがうまくヤッてくれるだろう。
ラリユーのレヴィンとシンのブリジット、イシュタルのソルカーシュは、飲み物の類いのおつかいに、隣の市場まで行っている。
住人のほとんどが、健啖家というか、大酒飲みな以上、「帰りは、小さな荷馬車を借りなきゃね」というのが、冗談にならないのである。
ちびっこでも、ヴァーユが、そこそこ呑めるように。
また、クラッカーなども、一緒に買うようだった。
だから、林檎酒や生姜蜂蜜酒から、テキーラ系まで、色々用意する羽目になるのである。
エポパスのライアとメティラゴスのエルヴィンが、裏庭に移植したもみの木に、飾り付けの仕上げと、余計な雪を落としている。
その後に、薪割りをする予定のようだ。
電飾の代りに、エルヴィンが、炎の精にお願い・・・もとい、脅して、硝子玉に入ってもらうようである。
トップスターの中に入ってもらう精霊にお願いする役は、末妹の紅が担当するようだ。
祭りは、準備が楽しいという。
普段は、諍いが少ないと言えないような個性豊かな面々が揃う88番地。
でも、クリスマスの空気に、一致団結していた。
食い気やら、主への忠誠やら、理由は違うけれど。
それでも、妙に浮かれたクリスマス気分だった。
「「「「「「「「「「「「「「Merry Christmas!!」」」」」」」」」」」」」」
ディスティアが、メモリーオーブに、「Joy to the World」や、「Amazing Grace」等のクリスマスソングを吹き込んだモノをBGMに、そんな声に響いた。
続けて、クラッカーの破裂音がなる。
間をおかず、乾杯のグラスの音が鳴る。
ちびっ子達や、お酒に自信が無い人(龍)には、林檎酒や蜂蜜生姜酒のお湯割りのグラスが手に。
それなりに、呑める人(龍)は、とりあえず、スパークリングワインのグラスが手に。
ローストターキー&ポーク&ビーフをそれぞれが、好みのモノを一皿目として、切り分けられる。
ソースは、基本的に、同系等ので、まとめてあるため、問題は無いのだ。
そうして、無礼講と言うか、そんなのが始まった。
腹が膨れてくると、宿り木のリースの下で、ラケシスに、エルヴィンがキスをして、ソルカーシュに、睨まれていたり。
呑み過ぎた、アージェントが、ヴァーユを抱っこしたまま、潰れたりしていた。
始まって、数時間が過ぎる頃には、涼しい顔したライアとブリジット、茹で蛸になった状態で、セファイドが、呑み比べというか、そんな具合で、呑み続けるだけで。
他の面々は、風呂に入ったり、早い人は、もうベッドの住人になっている。
リュイスとラケシス、ディスティアの三人は、後片付けをしている。
ラケシスが、流し台に立ち、皿や鍋を洗っている。
リュイスが、洗い上がって来た皿の水気を拭き取って、戸棚に入れている。
ディスティアは、ローストターキーの骨から、肉を丁寧にはがし、小さな肉片を鍋に、割合大きな肉片を別のボールに、わける。
そして、骨を砕いて、タマネギと人参、ブーケガルニ、塩ハムに、岩塩、粒こしょうを昨日別に作っておいたチキンブイヨンが入った寸胴に放り込んでいく。
これで、明日には、美味しいチキンスープが飲めるのだ。
もう片方のローストターキーの割合大きな肉片とローストビーフ&ポークの切れ端を、マリネとして、付け込む。
これを明日、さらしタマネギと一緒に、ホットサンドする為の用意である。
「マスター、料理上手いですね。」
「傭兵稼業を数年すれば、自然に、覚えますよ。
それに、以前、一緒に行動していた剣士が、結構上手でしたから。」
「にしても、マスターのクリスマス料理って定住してないと難しく無いですか?」
「この時期だけ、定住していたのですよ。」
他愛も無く、でも、少し寂しい会話をしていく。
そうしていれば、じきに時間も過ぎる。
午前二時。
置き時計が、時間を告げる。
黒色のいわゆる暗殺者スタイルに、白い袋というスタイルで、ディスティアは、二階の廊下を歩いている。
リュイスは、一緒にサンタクロース役をすると意気込んでいたが、それでも、寝てしまったようだ。
レヴィンには、竪琴用の研き油と手編みの緑色の手袋を。
ヴァーユには、お菓子の詰め合わせと絵本を。
ライアには、手縫いの占いサークルクロスと、安眠セットを。
ブリジットには、レイピアの磨き油と藍色の手編み手袋を。
瑠璃には、緋漆の簪と瑠璃色の手編みのケープを。
リュイスには、本と栞セットと手作りのネコモチーフの指輪
そんな具合に、ディスティアは、プレゼントを枕元に、置いていく。
三階に上がる。
紅には、茜とお揃いの赤い手袋とマフラー、絵本を。
アレクサンドラには、フォトスタンドと水色のニット帽を。
ソルカーシュには、黒いセーターと、ラケシスとのペアリングを。
ラケシスには、料理のレシピ大全とソルカーシュとのペアリングを。
そこまでーソルカーシュとラケシスの部屋まで、配るとディスティアはとある事に気付いた。
一個前に、廻ったアレクサンドラの部屋にも、同じ事が合ったなと思い出す。
すなわち、先客が居た事を。
回った順番から考えれば、次の・・・アージェントの部屋で、鉢合わせするかもしれないと思いさっさと、移動した。
そして、案の定、その先客は、アージェントの部屋に居た。
「・・・セファ、去年も、同じ事をしていましたね。
ありがとうございますと言うべきでしょうか、主人として。」
「ん「おこすつもりですか?」
先客―セファイドが、アージェントの枕元に、プレゼントを置いていたようだった。
ディスティアが、声をかけると、大声を上げかけたので、彼女は思い切り勢い良く、口を塞ぐ。
小声で、「静かに、配り終わったら、一階に来て下さい。」と言って、ディスティアは、アージェントの分を置いて、次のエルヴィンの部屋に行った。
アージェントには、低反発クッション(リクエスト)と、銀ねず色のマフラーを。
エルヴィンには、リップクリームと保湿クリーム、緋銀の逆十字のペンダントトップ。
それぞれを置いて、一階にディスティアは、移動する。
お湯を沸かすため、ケトルを火にかける。
その間に、とろ火にしておいた寸胴鍋の様子も一緒に見る。
「うう、さびー。
姫さんも、もうちょっと何か着ろよ、風邪引くぜ?」
「風邪も、引けない身体なのは、セファも知っているでしょう?」
「そりゃ、そうだな。
何、喫れる?」
やがて、セファイドも、プレゼントを配り終ったのか、一階に降りて来た。
そして、居間の椅子に、腰掛ける。
ディスティアが、暗殺者スタイルで、白いエプロンで台所で立つと言う、或る意味、キングギドラ&キュロットにも匹敵するミスマッチスタイルで、ハーブティをいれる。
「バレリアンとオレンジピールですよ。
一応、寝る前ですし。」
「なんか、食うもんねぇ?」
「・・・カボチャケーキなら、残ってますが。
寝る前に食べるのは、身体に良く無いですよ。」
「いいじゃんいいじゃん。」
「変わりませんね、セファイド。」
「そうか?
結構、変わったぜ、俺も、姫さんも。」
「そうですか?」
「変わったぜ。」
「くすくす、そう改められると嬉しいですね。」
「・・・恋人も、出来たしな。」
「・・・・・・けほ、そうですけれど。」
「あっちの方はともかく、「呪い」は解けたんだろ?」
「ですが、あの人達にとって、私が都合のいい駒なことには変わりないですからね。」
「アイツが居るんだから、大丈夫だぜ、きっと。」
つらつらと、二人は、ハーブティとクロテッドクリームとイチゴジャムをそえたカボチャケーキを肴に、話していく。
他愛も無い・・・だからこそ、掛け替えの無い会話だった。
ぽつりと、ディスティアは、こう言う。
「それでも、一年前なら、一年後のクリスマスのことなんて、考えれませんでしたね。」
「だよなー。
いつ、「呪い」が、どうなっか、解らない状況だったんだし。」
「ええ、本当に・・・・・・」
「うんうん、そうだったよな。
確かに、「呪い」と「混沌」で、ダブルで大変だったもんな。
おまけに、あの頃のお前は、自己追いつめモードだったから。
それに、キサのこと思い詰めてたしな。
・・・・・・ありゃ、寝ちまったか。」
セファイドが、長々、話していると、ディスティアは眠ってしまっていた。
やはり、昨日からの準備で、疲れていたのだろうか。
寸胴鍋の火も消し、電気も消すと、セファイドは、ディスティアを俗にいうお姫様抱っこで抱き上げ、一階の彼女の寝室に運ぶ。
その時点で、眠かったセファイドも、深く考えないで、ディスティアと同じベッドに潜り込む。
ようは、ディスティアを抱き枕にして、眠ったのだった。
翌日、ラケシスが、ちょっと気をきかせて、寝たい人には、そのまま、その日は起こさなかった。
そして、昼少し前の事だった。
142番地の乾・・・ディスティアの想い人が、やって来た。
ラケシスは、マスターを起こしてくれるように、頼んだのだった。
約一分後。
言葉に表すのも、苦痛なくらいの悲鳴と言うか、絶叫が、ディスティアの寝室から、響いたのだった。
-------クリスマスの朝に、何があったのかは、ご想像にお任せする。