セピア色の想い出。

日々の生活と、其処から生まれる物語の布飾り。

HappyBirthday +それでも僕らは歩む・・・+ 後編

2010-02-27 23:37:41 | ガンダムOO 二次創作

泣くってのは、弱み。
だけど、泣けないのは、何よりも辛いんだ。
オトコは、そう簡単に泣けないだろうけど。
同類、の前でぐらいは、泣いてくれよな。



HappyBirthday +それでも僕らは歩む・・・+ 後編



「僕は、あの研究所の前の・・・処置を受ける前の記憶がないんだ。」
散々泣いて、泣き疲れたようなハレルヤ/アレルヤは、ぼろぼろだった。
とにかく休ませた方が良いと判断しビアンカは、取り敢えず一番近かった自室へと彼を連れて行く。
どうせ、相室のネ-ヴェはいないし、イヴェ-ルも戻らないだろうから。
そして、眠るように促した。
でも、自分に縋り付くように離れない彼を引き剥がすことは出来なかった。
自分の膝を貸して、どうにかベッドに寝かせた。
そして、彼の髪を梳いていた時、2人が交互に、ポツリポツリと語り始めたのだ。
己の過去を、罪を。
少しだけ、夢織を通じて、或いは、≪神≫を通じて、ビアンカも知っていた。
「超兵を造り出す為に、身体を、脳を、全てを弄られて・・・」
≪そして、俺が生まれた≫
繰り返される実験と、研究者達から向けられる視線に耐えながらも、生きた。
無様であっても、自分たちは、生きたのだ。
辛くて苦しくて・・・・・・それでも、生きたかった。
・・・死にたくなんてなかった。
だけど―――。
「僕達は“失敗作”として…“処分”が決まったんだ」
・・・『処分』が決まった被験者/仲間/同類は、毒殺される。
それまでも、多くの被験者/仲間/同類がそうして居なくなるのを見てきたから、自分達の末路も容易に想像出来た。
出来ないはずもなかった。
「だから、仲間達と一緒に逃げ出したんだ。」
≪お前ら、他の何人かを見捨てててな。≫
そうして、施設を抜け出して、輸送船を奪い、コロニーを脱出した。
追手に怯えていても、宇宙に出た自分たち、これで自由なんだって抱き付き合った。
だけど―――。
「船に積んであった水や食料・・・そして何より酸素が・・・足りなくなっていったんだ」
もともと行くあてなど無い黄泉路にも似た旅路。
補給を受けることも出来ない彼らが、すぐに直面する問題だった。
確実に突きゆく酸素、底をついた食料・・・徐々に、でも確実に死の恐怖が、忍び寄って来ていた。
生き残る可能性があるとすれば、たった一つしかなかった。
≪・・・俺は・・・隠していた銃で、仲間を殺した・・・生き残る為だけに・・・≫
一緒に逃げて来た仲間達を、次々に殺した。
泣き叫んで命乞いをされても、容赦なく。
≪・・・死にたく、無かっただけなんだ・・・。≫
アレルヤに身体の主導権を返された時、身体は返り血に染まっていて。
己が作り出した状況に、言葉も無くへたり込んだ。
何よりも、自らの犯した罪に、震えた。
その時の光景は、未だにアレルヤの心に疵になっている。
夢織との日々は、それを薄れさせさえすれ、無くすまでに至らず終った。
だから、その後、出会ったCBにスカウトされ、参加することを承諾した。
「正直、嬉しかったんだ・・・こんな僕でも、出来ることがあるってことがね。」
≪人殺し(こわす)ことしか出来ない俺でも、世界を帰られるかも知れねぇってことがな。≫
「・・・・・・」
2人の告白を、ビアンカは黙って聞いていた。
彼等の過去を聞かされても、驚きはしなかった。
知っていたから。
ネ-ヴェとして、金髪のブランカとして、黒髪のブランカとして、アリアとして、ドミニクとして、様々な立場から見ていたから。
そして、知っていた。
モレノの手伝いで、マイスタ-のカルテを見ていて気付いたのだ、アレルヤの身体が示す数値の異常さに。
そしてそれが何を意味するのかも、ビアンカは知っていた。
正確には、聖に聞いて知った。
その数値は、カナ-ドが居た世界で見た、強化人間の――情報屋の間ではブーステッドマン、エクスデットと呼ばれていた――資料と、酷似していたということ。
-『維持に、薬が必要の無い分、こっちの方が、技術としては上ね、皮肉だけれど。』
・・・そして、皮肉ながら、人革連が求める『超兵』の理想構造に彼が、一番近かった。
調べた。
あらゆる、とりえることができる手段を使って。
知った。
それを誰か――アレルヤ本人にも確かめることはしなかった、というより出来なかったが。
同時に、ビアンカは、この世界に酷く哀しさを覚えたのを覚えている。
「今日のミッションは、超人機関を撃ちに行ったんだ」
知っているだろうけど、とアレルヤは、前置きしてそういう。
先日の鹵獲作戦で出会った紅梅色のティエレンタオツ-に乗っていたのは、間違いなく自分の同類だった。
つまり、あの狂気の機関がまだ存在していて、自分と同じようなモルモットが増えつづけていることに、変り無い。
≪やるべきことは、一つ。俺が、俺達が断ち切らなきゃなんねェんだ。≫
もう、繰り返されないように。
もう、生まれないように。
もう、嘆かないように。
「だから撃った。・・・殺したんだ、大勢の子供達を・・・僕の、同朋を・・・この手でっ!」
彼等には、何の罪も無かったというのに。
生まれてきたことすら、罪であっても、それは罪ではないのだから。
撃つ直前から引き金を引く度に、「来ないで」「死にたくない」と最後まで、頭に響いていた。
≪俺のエゴで、引き金を引いた≫
「辛かった、撃ちたくなかった・・・でも、同時に少し安心したんだ」
子供達の命が消えていくと思うと同時に、自分の過去が消えていくような気がした。
あの灰色の過去が、無くなった気がして。
そう思ったアレルヤ達をビアンカ達は責めれない。
けっして、それで、その子ども達ガ死ななかったとしても。
「酷いことだね、ほんと・・・・・・許される筈、無いのにね・・・・・・」
≪ネ-ヴェが止めた時は、何故か、ほっとしちまった。≫
「・・・アレ、ハレ・・・・・・」
自嘲するように笑う2人に、ビアンカは静かに諭すかのように言葉を紡ぐ。
口調こそ、いつもの男性めいたそんなものだったが、雰囲気はあくまでも、優しく穏やかで。
怖い夢を見た子どもを宥める母親にも似ていた。
「あたしには、お前等を責めることも、許すこともしないさ・・・だけどな。」
-(あたし達にも、覚えが無いわけじゃない)
声無き声が伝えるそんな言葉。
そのまま、青紫の瞳が、金と銀の瞳を見据える。
決して、逸らさずに、だけれど、何処までも優しく。
「赦されない罪、償いきれない罪も、ねぇよ。
 少なくとも、あたしは、『生きたい』ってキモチが罪な筈はねぇと思うからよ。」
「でも、僕はそんな人の命を奪った
今日だって、ネ-ヴェが居なかったら・・・」
≪いつか俺達も、その報いを受けるさ。≫
「あのな、馬鹿か、お前等。死んで詫びいれるって言うけどな、それが償い全部じゃねぇの。
 今、この場で、お前等が死んでも何も変わらないぜ?
 だけど、生きてさえいれば、ドンだけだって変えれるもんだぜ?」
かすかにでも、そう思ったからこそ、マイスタ-の道を選んだのだろう。
あのまま、裏町で、ノタレ死ぬことを選ぶこともできたはずだから。
「どんなに辛くても、生きろ。
 どんなに苦しくても、生きて、生き抜いて、戦いつづけろ。
 それも、償いだ。」
死は、全ての鎖から解放される、唯一無二の手段。
ある意味、一番楽な逃げ道。
だけれど、全ての停止だ。
それの手をとれば、それ以上の苦しみも無いけれど、喜びも無い。
「死ぬなんて、いつでも出来る。
なら、ちいとばかし、生きて戦ってみな。」
アレルヤとハレルヤは、熱くなる目頭を押さえた。
涙が溢れる。
「・・・厳しいなぁ・・・・・・」
厳しいが、何処までも優しい。
咎を背負い、生き続ける―――それは、何よりも、辛く苦しい
「・・・辛くて、苦しくて、どうしようもなくなったら・・・また、こうしていい?」
≪・・・また、泣いても良いか・・・?≫
また、甘えても良いだろうか。
女々しいかもしれなけれど、君の側で、泣いても。
それに、ビアンカは、溜息ひとつ、つきはしたがこう返す。
「・・・いいぜ、あたしも、寄っかかりたい時は寄りかかるからよ。」
「うん・・・」
≪いいぜ・・・≫
互いに支え合うことは、許されるだろう。
ある意味で、同胞同士だ、疵の舐め合いに近い。
だけれど、一人で生きていけるほど、人は強くは無い。
「ねぇ、ビアンカ・・・歌を、聞かせてくれないかい・・・?」
「は?」
≪俺達と、今日、奪うかもしれなかった命と、今まで、俺達が奪った命の為に。≫
今まで、奪った命が安らかであれるように、
そして、今日から大きく変わった同胞達の門出の為に。
「あたしの歌で、いいか?」
ネ-ヴェのような歌は、歌えないのに。
良くも悪くも、低い、ハスキ-ボイスだと言っても、かなり低い。
胸を潰して、男装するだけで、地声のままでも充分に男性で通るぐらいだ。
そりゃ、それなりに歌えはするけど。
「君の歌が、良いんだ」
ビアンカは一瞬、瞑目してから、静かに歌い始めた。
懐かしい歌だ。
あの≪ラクエン≫の日々の中で、橙色の髪の兄達が、怖い夢で飛び起きたビアンカ達に歌ってくれた。
もう遠い日々で、歌詞もうろ覚えだ。
「~♪木漏れ日に さえずる小鳥のように♪~」
低く優しい歌声が、部屋に響く。
少し照れているような響きが混じる。
「~♪ 呟きを描く 雨のように~♪」
歌声に包まれながら、2人はそっと涙を流した。
自分達の罪に、喪われた命に。
傷付いて、泣いて、ずたずたになった心を癒すかのような歌声に、身も心も任せた。
歌が終わってから、どちらも口を開かなかった。
しばらくして、口を開いたのは、アレルヤとハレルヤの方。
優しい歌声と、ビアンカが与えてくれる温もりに、急激に瞼が重くなってきたけれど。
それでも、今、どうしても伝えたいことがあったから。
「・・・ありがとう・・・ビアンカ・・・。」
≪お前等と再会できて・・・≫
『俺(僕)達、良かった』
そう言って、『アレルヤ』は沈黙した。
しばらくした後、照れ隠し、なのか、そうじゃないかは置いておいて。
ハレルヤは、ビアンカを自分の腕に収める。
半ば、投げ技のような流れとは言え、そうされるとは思っていなかったせいか、すんなりと、ビアンカは納まった。
「・・・ハレ?」
身長が近いとはいえ、肩幅は、体格に比すればやや狭い。
胸はでかいが、目立って筋肉質ではない。
腕も足も、ハレルヤよりも、ずっと細い。
総合的に言えば、ハレルヤの腕に収まるほどに、華奢とも、言える体格だ。
身長と性格のせいか、それは、余り感じないのだが。
ハレルヤは、そのまま、彼女の髪ごと肩に顔を埋める。
しばらく、無言で時は流れる。
ビアンカは、息のくすぐったさに耐えつつ、ハレルヤが何か言うのを待った。
「俺・・・お前ことが、好きだ。」
「・・・は?」
かなり、マヌケな声をビアンカはあげる。
少なくとも、少なくとも、一年以上前、トレミ-加わった時には、始末したいと、ようは、殺したいと、発言していたのは、ハレルヤだ。
それに・・・。
「マリ-のことは、いいのか?」
「あの女に、執着しているのは、アレルヤだ。
 ・・・アレルヤは、俺でもあるし、ハレルヤはアレルヤでもある。
 だけど、好きになる相手ぐらいは違うぜ?」
「いや、あの、お前。
 あたしは、ネ-ヴェじゃないぞ、ビアンカだぞ。
 後、酒が脳みそまで回ったか?」
混乱しているビアンカに、焦れたハレルヤは、腕の拘束を解かないままで、彼女を自分側に向かせる。
そして、これ以上、何も言わせないように、口を己の口で塞ぐ。
抵抗が無いことに、加虐心をくすぐられたのか、そのキスの深さを増させていく。
「・・・イヤか?」
「嫌な、相手なら、とうの昔に金的蹴り上げてるよ。」
「ちげぇねぇ。」





そして、翌朝。
「おはよう、ハレルヤ・・・ああ、アレルヤか。」
「え、な、何で?」
「おや、何があったか、朧気ながら、覚えてない?」
「泣いて、ありがとう、って言ったとこまでは・・・。」
「・・・・・・。その後、隣りに行こうとしたけど、放してくれないから、一緒に寝ちゃった。」
慌てるアレルヤに、同じベッドでくっついて眠っていたビアンカは、そう答える。
ただし、この上なく、棒読みで。
「何があったの、ホントは?」
「秘密。
 それより、朝ご飯行って、ネ―ヴェの様子見に行こうぜ。」





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

一応、11話前提その2及び、アレハレ(主にハレ)誕生日話です。
裏設定を言うなら、ビアンカ自身は、2月28日の誕生日設定だったりします。

その1の数時間ほど後の設定です。
かなり、独自解釈入ってますけれど。
破壊の権化のように言われてるハレルヤですが、私は作中のように思います。
一番楽だけど、楽じゃない道を選んでるし、泣き言言えない分、結構辛いと思いますよ?
少なくとも、アレルヤを生かす、一点に於いては、有効でしょうし。


また、オラトリオ=ハプティズム/オルステッド=フェルニシアの種まき完了です。
一応、この一年と数ヶ月後に、アイルランドの石碑前ににて、ティエリアとビアンカ親子は会うわけですから。
・・・どういう形であっても、いつかは、ハレルヤに『父親』させてあげたいとも思うのです。
結果的にとは言え、二期アレルヤは、「おじちゃん」呼び決定ですし。


ともあれ、次の物語にて。



HappyBirthday +それでも僕らは歩む・・・+ 前編

2010-02-27 23:35:01 | ガンダムOO 二次創作



人革連の襲撃後。
結果的に、殺さずに済んだとは言え、「同類」を殺そうとしたことには変り無い。
アレルヤは、スメラギから酒をもらったのだった。
飲み慣れない・・・むしろ、初めて飲んだアルコ-ルだ。
低重力な以上に、ふわふわとした、足取りだ。



HappyBirthday +それでも僕らは歩む・・・+ 前編



「アレルヤ、酔ってるなら、部屋までついてって添い寝してやろうか?」
そう、冗談めかしていったのは、ビアンカ。
妹のネ―ヴェの意識が戻らないのは心配だろうに、顔にも出さない。
寝間着、ではなく、いつものティ-シャツにベストのパンツスタイルな辺り、アレルヤを探していたのかも知れない。
「大丈夫だよ、ビアンカ。」
「・・・で、整理ついたのかい、今日・・・いや、もう昨日か、昨日のこと。」
「・・・痛いところ、つくね。」
「そりゃね、私も、ネ-ヴェ達も、五年前に通った道だ。
 意味合いも、何もかも違っても、人革連のあの子達は、私やネ-ヴェの弟妹だからね。
・・・もちろん、アレルヤも私の弟さ。」
そう言って、ビアンカは、彼の頭をがしがしとやや乱雑に撫でる。
この行為のせいばかりではないが、アレルヤは決意する。
10年前、自分が逃げたあのあとに何が会ったのかを。
あの時、会えなくなった彼女達。
もしも、自分達が逃げていなくても、そうなっていただろう。
珍しくなかった。
毎日のように、誰かが居なくなっていたから。
だから、彼女達も、きっと・・・そう思っていた。
話したかった。
逃げられるはずもないし、少しでも楽になりたかった。
それでも、アレルヤは彼女達と再会しても、何も言えなかった。
だけれど、今なら話せると思ったんだ。
・・・しかし、いざとなったら話せなかった。
そして、アレルヤには、スメラギがアルコ-ルを手放せない理由がわかった気がした。
「・・・どうした?」
ビアンカはそれ以上、触れてこなかった。
アレルヤは、意識して覚えているわけではないせいか、すぐに思い至らなかったが、彼女が精神に特化した精神干渉を使うことを。
透視(よ)んでいても、それをビアンカは悟らせない。
考えてみなくとも、少し彼女の紫色の瞳を見れば、紅かった。
泣いていた、とは考えにくいが、妹であるネ―ヴェが倒れた後だ。
それが、問いつめられたら、責められたら、と怯えていたアレルヤには、逆に何もいえなくなってしまう。
「・・あ、僕・・・は・・・。」
言葉が出てこない。
どうやって、ビアンカと話していたか、解らない、と思ってしまうほどに、アレルヤは何を言っていいのか分からなくなってしまった。
俯いたまま、何も言わなくなったビアンカは、首を傾げた。
「・・・?おい、アレルヤ、どうした?」
そして、一旦、下ろしたその手を彼の方に伸ばして――――。

パシィィィン

そんないっそ小気味いい音共に、振り払われた。
「・・・あ・・・・・・」
思わぬ、行動に目を見張ったのは、ビアンカだけではない。
振り払ったアレルヤ自身、自分の咄嗟の行動に唖然とした。
(―――今、何をした・・・・・・?)
伸ばされた手を乱雑に振り払った。
決して女性らしい柔らかさのある所作ではない。
しかし、心配そうに差し伸べられたその彼女の手を、アレルヤは振り払ったのだ。
「・・・ぁ・・・ご、ごめん。」
何をしているのか、アレルヤ自身解らなかった。
彼女に触れられるのは、嫌じゃない。
むしろ、いつもと変わらない彼女のぬくもりに、甘えて・・・縋ってしまいたかった。
でも――それは許されない。
彼女達と違って、同胞を・・・自分と同じあの子達を殺そうとしたのだから。
例え、彼女達がその為に、他の命を奪っていても、『同じ』相手を殺そうとした自分たちよりも、ずずっと・・・。
「ごめん・・・ビアンカ・・・ぼ、僕・・・」
これ以上、彼女の側にいてはいけない。
そう思って、踵を返そうとした時、やや強引ながらも、ふわりとした温もりに包まれた。
何が起こったのか、アレルヤは、咄嗟には判断できなかった。
鼻孔をくすぐる甘い花の香りとそれとは別の甘い香りと、背中に回された腕の感触。
視界を彼女が着ていたティ-シャツの白が埋める。
「なっ・・・ちょ、ビアンカ・・・」
「・・・大丈夫だ。」
「?」
流石に、慌てて声を上げるアレルヤの言葉を遮って、ビアンカが、優しく話し掛ける。
「大丈夫・・・大丈夫だからな・・・・・・」
何がとか、どんな風にとか、そんな事は一切言わないけれど。
ただの一言の「大丈夫」というそれと、優しく背を擦るその手の温もりに、アレルヤの張り詰めていたそれが崩れ落ちた気がした。
彼女の優しさに、このままつい縋ってしまいたくて、ゆっくりと目を閉じた・・・その瞬間、意識が引きずり下ろされた。
ビアンカは、この優しい同類を慰めたい一心で、アレルヤを抱き締めていた。
そうするのが自然だと思った。
傷付いた瞳をしている人に、そうするのは普通のことだ。
両親や、リアクトがしてくれたように、今は覚えていなくとも、ティエリアにも同じ様に慰められたからだ。
だが―――、
「・・・んで・・・」
「あ?」
その変化に気付いた時には、身体は離され、彼の背に回していた腕は痛いほどの力で掴まれていた。
如何に、超兵としてと、戦闘用イノベイドしての力があろうとも、咄嗟では男性には叶わなかったのだ。
「何でお前はそうなんだ!」
予想外のことに、ビアンカは、なす術もなく腕をねじ上げられ、その痛みに僅かに顔を歪ませた。
廊下の人通りが少ないとはいえ、廊下で行うことではないだろう。
「ハレルヤ・・・か。」
目の前にあるのは、金色の輝き。
ギラギラと激情に揺れている。
たぶん、先ほどアレルヤの意識が緩んだ所に、ハレルヤの人格が表に出てきたのだろう。
「何様のつもりだ!
『大丈夫』だぁ!?大丈夫じゃないのはお前の方だろが!」
一人で泣いていたくせに。
いつも通りに振る舞おうとしていても、無理をしているのが一目瞭然なのだ。
それなのに、何で、他人のことに心を砕こうとするんだ。
アレルヤもアレルヤだ。
ビアンカが一人で泣いて、苦しんでいたことを知っているくせに、彼女に優しくされたら、途端にそれに縋ろうとして。
そんなことをハレルヤは、吐き出しこそしないものの、うちで思う。
「何で一人で溜め込んじまうんだよ!?」
以前、アレルヤが「何かあったら相談して欲しい」と言ったのは、彼女に一人で悩んで欲しくなかったからだ。
姉役として、マイスタ-やクル-の間にいたり。
あのグル-プでも長姉役として色々あったのを知っている。
また、偽名でユニオンにもぐりこんでいるのも。
僅かでも、その部分を知っているから、アレルヤは彼女に頼って欲しかったのだ。
ハレルヤの怒声を黙って聞いていたビアンカだったが、ここで漸く口を開いた。
「その言葉、リボンで飾って返すぜ、ハレルヤ。」
「あん?」
「お前も同じだろが。
 痛みを、苦しみを、哀しみすらも、全部、手前で溜め込んじまおうとしてんだろが?」
「・・・っ」
そうだ、いつだって・・・ハレルヤが出てくるのは、アレルヤを守る時だけだった。
アレルヤが、自分の半身が傷付き、その心が死なないように、その痛みを、苦しみを、ハレルヤが肩代わりする為だ。
誰よりも、何よりも、自身の命よりも、きっと・・・。
「俺は、っ・・・俺は、自分が生き延びる為にやってんだ。
 お優しいアレルヤと違ってなぁ、俺は他人の屍肉を食らってでも生き延びたいと思うからなぁ!!」
それには、彼は邪魔なのだ、とハレルヤは言う。。
アレルヤのように躊躇っていては、生き残れない。
それに、他人の命を奪うのは、自分は今此処に生きているという優越感に浸れるから―――。
「本当に、そうか?」
ビアンカが、ある意味で、鏡写しの彼女が見たハレルヤの行動は。
あの時、感じたのは、そんな狂気じみたものだけではなくて・・・。
「あたしには、お前が全ての痛みを引き受けて。 
・・・それでも泣く事すらできねぇ苦しさを。
・・・誰にも話せない辛さを他人に当り散らして誤魔化してるようにしか、見えねぇぜ?」
「っ・・・テメェ!」
カッとなったハレルヤは、ビアンカを壁に叩きつけた。
背中を強打して一瞬息を詰まらせたビアンカ。
咄嗟に顎を引いて、頭こそ打たなかったものの、しばらくの行動を封じられたことには変り無い。
その肩を砕かんばかりに掴み、壁に押し付ける。
「知った風なこをぺらぺらと・・・っ!!
 お前に何が、何がわかる!!俺達のことが、お前に・・・・・・!!」
確かに、ビアンカも、ネ-ヴェも、同じく超兵として改造された同じ『化け物』だ。
だが、彼女達には、いつも、周りに仲間がいたと聞く。
いつも、孤独と関わっていたハレルヤ達の気持ちがわかるはずが無い。
わかってたまるものか。
「・・・わかるわけねぇだろが。」
背中と肩の痛みに言葉を途切れさせようとなろうとも、ビアンカは決して声を荒げず、静かに語りかけた。
涙はないものの泣きたいのを堪えるような色合いが含まれるそんな声で。
「・・・でもよ、夢織さんと過ごした毎日も、てめぇには必要なかったのか?」
「・・・」
「解る、なんてこと、おこがましいこといえないけどね、一個だけ言わせて貰うぜ?
ハレルヤの頬に手を添え、金の瞳を見据える。
太陽のように明るい、だけど、少し哀しいその瞳をビアンカは見つめる。
「お前も・・・泣いていいんだぜ、ハレルヤ?」
ハレルヤの瞳が見開かれる。
そんなこと言われるとは思わなかったからだ。
「・・・お互い、大概に化けモンだけどよ。
そんでも、お前も『人』だ。『人』は、泣けんだから」
慰めると言うよりも、自身に言い聞かせるような言葉だった。
だけど、ハレルヤは頭の中が真っ白になった気がして固まってしまう。

―――人?自分が、自分達が・・・・・・・・・?

そんな事、今まで誰にも言って貰えなかった。
身体を改造された自分達は、普通じゃないから。
そんな事を言えば、ここにだって居られなくなる。
戦うことしか出来ない『化け物』だと、そう思っていた。
最期は朽ち果てるしかない『化け物』だと、そう思っていた。

―――泣いて良い・・・・・・?

自分は、ハレルヤは、アレルヤが受ける痛みと苦しみを肩代わりする為に生まれた。
だから、弱くてはいけなかった。
弱さを見せるなんて持っての外。
生き残る為に、幾人も、大量に殺した。
死にたくないから、幾つも奪った。
アレルヤが出来ないなら、自分がやるしかなかったから。
笑いながら、容赦なく、この手を血で染めた。
全ては、自分の、・・・アレルヤの為に。
しなかったのは、夢織といた一年足らずの間だけだった・・・。
しなくても暮らせたのは、夢織といた夢のような夢幻の間だけだった・・・。
でも、本当は・・・・・・。
本当に、本当は・・・・・・。
「ぅ・・あ、俺は・・・・・・俺は・・・っ」

―――殺シタクナンテ、ナカッタンダ・・・!

「うああぁぁぁぁぁぁっ!」
ハレルヤのあまりにも悲痛な叫びが木霊する。
頭を抱えて蹲った彼を、ビアンカは黙って受け止め抱き締めた。
その温もりに縋りつく様にして、ハレルヤは泣いた。
彼がこうして涙を見せるのは、初めてだった。
誰かに――アレルヤにさえ見せようとしなかった弱さを、初めて見せた。
アレルヤが眠っていて、夢織やその兄と話した時にも、見せたことがない弱みを。
それが、許される気がした。
この腕の中でなら。
まるで母のように――ハレルヤは母というものを持たないけれど――包み込んでくれる、この温もりになら。
全てを曝け出して、委ねることが出来ると思えたから。
赤子のように、泣き続けた。
そしてビアンカは、縋り付いて泣くハレルヤを、受け止める。
彼を傷付ける全てのものから守るように。
彼の気が済むまで泣くことが出来るように。
或いは、ただ、母のように。
ただずっと、抱き締めていた。
自身でも、らしくないと、ビアンカは思いつつ。


後編へ続く


ある日の会話(絶可チル/兵部とオリキャラ)

2010-02-26 13:10:44 | 携帯からの投稿
前回の会話の後の兵部と、ちぐはぐなあやめの会話。


「ねーねー、きょうすけくんってさびしいのー?」
「何故、そう思うんだい?」
「んとねー。
 らんちゃんも言ってたけど、きょうすけくん、みらいに自分いないんだもん」
「……」
「あやめね、しろーパパも、しよーママも、みつきにーちゃんも、ようくんも、もみじちゃんも、かがりくんも、かずらちゃんも、みおちゃんも、おかまさんも、ももたろうも、みんなみんな、エスパーは幸せになって欲しいの。」

(兵部にあやめ抱き付く)

「もちろん、きょうすけくんもだよ?」
「……そうなれば良いね」
「うん!!…あ、しよーママ、クッキー焼く言ってたから、もらってくるね」

(あやめ出て行く)
(入れ替わりで、紫陽が瞬間移動してくる。)

「…悪いわね、あやめが残酷なこと言って。」
「気持ちは、わからない訳じゃないからね。」
「…お互い長生きだしね。」
「戦前と明治生まれだからね。」
「…辛うじて、大正よ」



例えば、そんな会話。

絶対零度のぬくもり  後編(絶可チル)

2010-02-18 23:33:52 | その他 二次創作


難しい。
人間と人間が関係を持つだけでも、難しいのに。
エスパ-と普通人(ノ-マル)ってヤツで、更に難しい。
・・・ただ、単純なのになぁ。



絶対零度のぬくもり  後編



オレは真木さんが好きだ。
バベルの人達には勧誘で酷い目に会わされた事もあるけど、小さい頃から何かと気にかけてくれてる人達だから、好きだ。
死んでしまった父さんも母さんも、オレが会う事のなかったじいちゃんばあちゃんも、不二子さんだって勿論好きだ。
パンドラの人達も勧誘の時じゃなきゃ気さくで優しいし、オレは好きだ。
じいちゃんのこともオレは大好きだよ。
・・・でも、それだけじゃだめなんだってわかってんだ。
大人は「戦争」と「仕方ない」が大好きだから、子ども(むりょく)なオレがどれだけ目を逸らしたって嫌いだって言ったってどうにもならないってわかってんだ。
でもさじいちゃん、ノーマルが好きなエスパーだっているし、エスパーが好きなノーマルだっているし、いないってわけじゃないんだよ?
それだけじゃだめなのかな。
ばあちゃんが、話してくれたあの眼鏡の上官の人は違ったの?
大人はそれだけじゃ納得できないのかな。
1か0かじゃなきゃ、ダメなのかな。
全部そうじゃなきゃだめなの?
そういうものかな。大人はそうなのかな。
きっとこんなこと考えてるオレは、ホントにガキなんだろうけど。
じいちゃんを傷つけてまでして伝えるべきことだったのかもわからないけど。
でもさあ、じいちゃん、言わなくちゃわからないことだってあるじゃんか。
それにじいちゃんは言われなくたってわかる凄い力があるじゃんか。
それでわかってよ。
じいちゃんが好きな人がいっぱいいること。
じいちゃんのことが大切な人がたくさんいること。
わかってよ。
・・・じいちゃんが、居なくなったら、哀しく思う人たくさん居るんだぜ?



なんだかぐるぐる考えてたら、ガラにも無く泣きたくなったから、オレは席を立った。
じいちゃんが残して行った催眠(ヒュノプ)のおかげで誰もオレには気付かない。
今日はもう帰ろう。
ああ、今日特売だっけか、めんどいし、別に良いや。
なんか、寂しいというか悲しいというか・・・虚しいのかな。
よくわからんね。オレ、あんまり泣くの好きじゃないんだ。
あんまりわんわん泣いてると勝手に力でてきちゃって、涙が凍っちゃうんだよ。
ほっぺたから落ちた涙がころころ丸い氷になって。
冷たいし、よくわかんないけどそれ見てると余計に悲しくなるんだ。
だって、オレが泣けば泣くほど、泣いた証拠がどんどんできてくんだ。
泣けば泣くほどオレの周りは氷だらけ。
こんな涙だからへたに拭えないし。
誰かが触れて凍っちゃったりしたら嫌だ。
小さいころオレの涙を拭いてくれた孤児院の先生は手がしもやけになっちゃった。
それでもオレの涙を拭ってくれたけど、先生の手が真っ赤になるのが嫌で泣きたくなるとオレは隠れた。
けれども孤児院の子達は優しくて、オレの冷たい涙を一生懸命拭おうと、オレを追っかけまわしてくれた。
だからオレはそのうち泣かなくなった。
追いかけられてるうちに涙がひっこんで、冷たい涙は零れなくなる。
・・・なんか俺ってほんと、追っかけられる人生ばっかり。
年々ハードになってきてるし。
此処半年でハードになりすぎだよ、じいちゃんはもうパンドラの本拠地に戻ったかな。
一人でいないといいな、たぶん、婆ちゃんがいっしょにいるのかもしれないけど。
ほっつきあるいてないで、仕事さぼってもいいからパンドラのみんなと一緒にいてあげればいいんだ。
そうしたら、きっと皆、ほっとするよ。安心してくれる。
それでイイじゃん。それじゃだめなの?
じいちゃんがいてくれれば、パンドラのみんなはきっとそれだけでイイんだ。
全部ひっくり返して無茶苦茶にして、やり直さないと気が済まないのかな。
大人の考えはやっぱりまだ俺にはよくわからない。
いつか、オレもじいちゃんが考えてる戦争を「仕方ない」って思える日が来るんだろうか。
それなら、オレは大人になりたくないな。
・・・やっぱりじいちゃんは、昔のことでぐちぐちうるさいよ。じいちゃんのばか。
変にじいちゃんとシリアスぶったせいで、オレのちんまい頭のなかぐちゃぐちゃだ。
今どこ歩いてるっけ?ていうか靴履きかえた?
全然覚えてない。
なんか目の前がよく見えない。
見てるんだけど見てる光景を認識できてないというか、違う、目の前がぼやけてるんだ。
・・・・泣いてるんだ。泣いてる。泣くのなんて何年ぶりだろう。
つか、高校生のでかい兄ちゃんが泣くのって滑稽すぎだろ。
じわじわ滲んだ涙はオレの俯いた頬から離れて、丸い氷となって地面に落ちる。
乱暴に目元を擦った。
何の為に朝苦労して学校に来たのかわからないけど、こんな時間に出たなら、勧誘奇襲にはあわないだろう。
見つかる前にさっさと帰って、・・・・・・帰ったら先生に追いかけられる・・・よな?
どうしよう・・・。
泣きやむまで歩く?こんなぼろぼろ出てるのに、そんなすぐに引っ込むかな。
何かびっくりすることでもあれば引っ込むかもしれない。
例えば?例えば・・・うーん、いきなり真木さんが出てくるとか?あはは、そんなまさか。
「藍さん?!」
「・・・藍ちゃん?」
どうしよう出てきた。
ついでに、ばあちゃん-紫陽さんも。
相変わらず、見るたびに、違う着物な気がする。
今日のは、海老茶絣の着物に、道行を合わせてる。
いきなりすぎる真木さん達の出現にオレはびっくりして足をとめた。
瞬きをするといくらか視界がクリアになって、驚いた顔でオレを見ている真木さんの顔が少しだけよく見えた。
ばあちゃんは、いつものように微笑んでた。
びっくりしたら涙が止まるかも、なんて思ったけどそう都合よく涙は止まらなくて、オレはボケッとして、ぽろぽろ氷を零しながら真木さんを見上げた。
頬を霞める氷が冷たい。
真木さんのすぐそばにオレの学校名が書かれた標識が見えて、今立っている場所がちょうど校門を出たところなんだってわかった。
どうして真木さんがここにいるんだろう。
まだ、二時間目の途中だ。
ぼんやりと真木さんを見ていたら、真木さんはオレに向かって手を伸ばしてきた。
呆然としていたオレは頬に触れた手のひらをよけることができなくて、触れてきた手のひらの熱さにぎくりとして首を振った。
オレの涙はひどく熱を奪う。
人の指なんてあっというまにしもやけにしてしまうのだ。
真木さんの手のひらを押しのけて、また自分で目元を乱暴に拭った。
「・・・傷がつきます、藍さん!!」
「すい、ませ・・・これ、すげ-冷たい、から」
「藍さん」
「大丈夫よ、司郎くん。」
真木さんの声がよく聞こえない。
ばあちゃんが、溜息混じりにそう言ったのは、何故か聞こえたのに。
ぐしぐしと乱暴に涙を拭う。冷え切った袖が冷たかった。
ふいにオレの腕を誰かが掴んで―真木さんしかいないじゃないか―ぐいっとオレの目元からどかした。
ばあちゃんなら、そのまま、放っておいてくれるからな。
冷たいって言われるかもだけど、それも優しさ、だし・
びっくりして目を見張ったオレの目元を、整った指先が優しく拭っていく。
どうでもいいけど、真木さんの指って、ゴツイけど、綺麗だな。
ぽろりと零れた涙が指を伝って小さな氷の粒になった。
冷たさのあまりあっという間に赤くなる真木さんの手のひらに、オレはもう一度首を振る。
押し返そうにもしっかりとオレの顔を包んだ手のひらはびくともしなくて、何度も何度も零れる涙を真木さんの指が拭っているうちに、オレの涙はひっこんでしまった。
ひくつく喉を震わせながら深呼吸。
真っ赤になった真木さんの手を思わず握りこむと、また泣きたくなるほど冷たかった。
これだから嫌なんだ。
オレの涙って、これだから嫌だ。しもやけどまりならいい。
指の一本や二本、凍傷は簡単に人から奪ってしまう。オレはそれが嫌だ。
「藍ちゃん、おばあちゃんがいるから大丈夫よ?」
確かに、ばあちゃんの治癒能力なら、大丈夫かもしれないけど、それでも。
オレの力はその気になれば簡単に人の肉を削ぐ。
傷つけるのは嫌いだ。だから傷つけられるのも嫌いだ。
オレの涙を拭ってくれるような優しい人が、オレの所為で辛い思いをするのが嫌なんだ。
きっと真木さんはこの冷え切った真っ赤な手に、じんじんとした熱を感じているだろう。
オレの手じゃとても包みきれないけれど、真木さんの両手を包んで強く握って、オレの熱が少しでも移ってくれればいいのにと願った。
オレの体温が低いことくらい、知ってる。
オレの手のひらで温められるものなんて、たかが知れてることくらい、わかってる。
ごめんなさいと呟いたら、真木さんはオレの背中を優しく擦ってくれた。
炭素で作った手のひらは温度を持たないはずなのになぜだか妙に温かかった。
「じいちゃんと喧嘩したんです」
「・・・少佐と?」
「京介くんと?
・・・あら、珍しいわね。」
真木さん達はじいちゃんのことを少佐って呼ぶ。
兵部少佐って。そういう階級に馴染みのないオレにはなんだかそれが少し耳障りだ。
逆に、ばあちゃんの京介くんってのは、かなり新鮮に聞こえる。
こう言う時もまたじいちゃんは昔のことにぐちぐちとって思うんだけど、そう思うたびにオレって母さん似だよなって風にも思う。
泣きやんだオレは、真木さんとばあちゃんと一緒に歩きながらなんとなく事の顛末を話してみることにした。
真木さんは、オレの雹をくらって、能力がマヒしたらしい。
回復したそこに、ばあちゃんがこっちに来ると言うので、護衛役として、残っていたらしい。
ばあちゃんのお願いで、飛び上がってオレの様子を見ようとした時に、オレが校舎から出てきたのを見つけて降りてきたらしい。
・・・雹くらわせてごめんなさい。
痛かったかな。痛かっただろうな。手だってまだ冷たいままだ。
うっかりさっきは握りしめちゃったけど、いくらか落ち着いてしまった今じゃそんなことできるわけがない。
すぐ側で揺れる真っ赤な手のひらがどうにも気になった。
「じいちゃんに、たぶん、結構酷いことを言ってしまったんじゃないかな、って」
じいちゃんは馬鹿じゃない。
俺に言われなくてもきっとわかってるはずだ。
真木さんが、パンドラの皆が、じいちゃんのことが大好きで大切なんだって。
そんなことは解らないほどじいちゃんは馬鹿じゃないし、耄碌しちゃ居ないだろう。
だけど、じいちゃんはそこから目を逸らしてる。
わかってないふり。気付いてないふり。
暖かいそれに触れたら、立ち止まっちまうって、気付いてないふりをしちまってんだと思う。
思うけど、その上、一番真芯なことはわかってないし気付いてない。
わかってほしいって思ってる人がどれだけいるのか、じいちゃんはわかってないんだ。
ばあちゃんは、それがわかった上で、伝えないで側に居るみたいだし。
あ、なんかまた泣けてきた。
やめやめ、泣くな。真木さんの指がなくなっちゃうだろ。
・・・って、ああ、うあ、また拭いてもらう気になってるわけじゃなくて!
今度は絶対真木さんの手は阻止するから!
でもその、あえて泣くこともないし・・・うん、泣くな。泣くなよ、オレ。
ここが、外でよかった、うちに居たら、転げてた、恥かしくて。
「オレ、じいちゃんのこと好きだぜ。
バベルの人達もパンドラの人達も、ノーマルもエスパーも、孤児院の先生も孤児院の皆も、ひっくるめて好きなんだけど。」
「・・・・・・、」
「でもそれじゃ、ダメっぽいんだよな」
「・・・藍さん」
「・・・真木さん、じいちゃんのこと好き?
ばあちゃんは、聞くまでも無く、会う度に惚気られてるから、好きなんだろうけど」
オレの問いかけに真木さんは僅かに瞬いた。
けれどもすぐに、頷いてくれた。
きっとじいちゃんも、真木さんのことが好きだ。
真木さんもじいちゃんも、パンドラのみんなが好きなんだ。
けどそれだけじゃだめなんだろうな。どうしてだめなんだろう。
好きなだけじゃどうにもならない。
どうしてかな、オレはノーマルの中で生きてきた。
エスパーであるオレに優しいノーマルの人がいっぱいいるってこと知ってる。
これはきっと途方もない幸運なんだろう。
ノーマルに傷つけられてきたエスパーなんてのはきっと数え切れないほどいるんだろう。
パンドラにいるエスパーのほとんどはそうなんだって、オレは知ってる。
たまに来るあやめって女の子もそういう子だってのは、聞いた。
じいちゃんがノーマルを憎んでて、ノーマルなんてみんな同じだって思ってることもオレは知ってる。
でもさ、オレはオレの涙を手のひらを真っ赤にして拭ってくれたノーマルの人達を知ってるんだ。ついさっき、エスパーの誰かさんだって同じように拭ってくれた。
冷たくなった手のひらは痛々しいくらいだったけど、それでも温かったんだ。
暖かさも優しさも、一緒だったんだぜ?。
涙を拭ってくれる手のひらが、ノーマルでもエスパーでも同じんだってこと、オレはじいちゃんに知ってほしい。
・・・たぶん、それを知ってもじいちゃんは戦争をやめてはくれないのはわかりきっててても、それでもオレは知ってほしい。
じいちゃんはきっと、泣いて、泣いて、悲しくてしょうがない時、涙を拭ってくれる人がいなかったんだ。
苦しくて悔しくて寂しくて、涙が止まらなかったその時に、誰も涙を拭ってくれなかったから。
ばあちゃんも、じいちゃんが撃たれた後、しばらくは、一緒に居ることが出来なかったってきいた。
その間に、じいちゃんは凍ったのかも知れない。
だからきっとじいちゃんは悲しくて、苦しくて悔しくて寂しいんだろうな。
じいちゃん、わかってくれなんてもう言わねぇよ。
ただ、知ってほしいんだ。
オレも真木さんも、みんな、今ならじいちゃんの涙を拭えるよ。
じいちゃんが泣いてたら、誰だってじいちゃんの涙を拭ってくれる。
知ってほしいな。
・・・・忘れないでほしいな。
「・・・あの、真木さん」
「なんですか?」
「・・・手、大丈夫か?」
「ええ、なんともありません」
真面目な顔で頷く真木さんに、オレはちょっとだけ噴き出した。
エスパーでもノーマルでも、優しいことには変わりないぜ。
優しい人は優しいし。知っててね。忘れないでね。
真っ赤になった真木さんの手をそっと握って、たいして温度の無い俺の手のひらが少しでも真木さんの手のひらを温められるよう願った。
どきどきするけど恥ずかしくない。
ちょっとだけ目が泳いでる真木さんがかわいくて、オレは真木さんの腕に抱きついた。
忘れないでよ、じいちゃん。
オレは知ってるんだ。
オレは世界一冷たい人間だから、知ってるんだ。
オレの涙を拭ってくれる人の暖かさと優しさ、ちゃんと知ってるんだ。
だからじいちゃんも忘れないで。
一人で泣いたりしないでよ。
オレもいままでそうしてくれた皆みたいにその時は追っかけるから。
じいちゃんの涙を拭ってくれる人は、たくさんいるよ。忘れないでくれよ。
オレも真木さんもみんな、じいちゃんのこと大好きだから。
「・・・真木、僕のかわいい曾孫に手ぇ出すなんていい度胸じゃないか」
「し、少佐っ!?いやこれは違っ―ちょ、やめ、引っ張らないでくださっ、イタっ!」
「あらあら、京介くん。
 若い子の恋路、邪魔しちゃダメですよ?」
「いいじゃないか、茜の時も言ったけど、僕の可愛い曾孫に手ぇ出すなら、僕に勝ってってね。
・・・藍、暇ならうちに遊びにこないかい?みんな喜ぶよ」
「うん。・・・あのさ、じいちゃん」
「なんだい?」
じいちゃんが、口を挟んできた。
ばあちゃんが、それに茶々を入れる。
それに、始めから聞いてたのかもしれないけど・・・
「顔赤いよ」
「うるさい!」
大人って、しょうがないねぇな。。



+おまけ+
その後、すぐに、瞬間移動で、あやめちゃんが来た。
「しろ―パパ、ここにいた!!」
「はい?」
「ああ、この子、司郎くんのこと、パパって呼んでるのよ。」
「ええ、ああと、あやめちゃん!!」
「なぁに、らんちゃん!!」
「オレが、ママになってもいい?」
パニックったオレが、そんなことしか言えなくても、誰も責めれないと思う。






++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

先に、チルドレン達バベル組と紫陽とあやめの話よりも、先に、こちら完成したのでアップしました。
ナチュラルにBLしてますが、プロットでは違ったことを先に明言します。


ともあれ、この話のテ-マは、『幸福な未来』。
戦争やるなら、何か、『未来』-『先を見つめて』無いと、壊れます。
・・・良くて、死にますし、先を見つめないで、戦争を個人が起こすもんじゃないと思うです。
それに、パンドラって、ほとんど、兵部さん信者しか居ない気がします。
暗にですけど、薫ちゃんを次期首領として、認めないのは、兵部が居なくなるのを考えてないせいもあるんじゃないのかなと。
そういう意味で、バベルでも、パンドラでもなく、もちろん、無関係じゃないということで、秋好藍は生まれました。
初期プロットじゃ、真木さんを兄のように慕う不良っぽい少年程度だったんですが、現状は本編通り。
ともかく、なんでもない未来を兵部は見ていないということで。


そして、秋好藍のモデル?というか、書いてみて、イメ―ジ的には、ダブルクロス・リプレイ無印の「上月司」、通称・つかちゃんです。
兄ちゃんこと、上月永斗のせいで、苦労を、じいちゃんで苦労しますし。
また、地の文章も彼がやっていますので、ややこしいのですが、兵部京介や絹笠(兵部)紫陽は、彼の曽祖父母です。
2人の息子の恵介が、藍の祖父にあたります。
出てきていませんが、原作主人公参人が通う私立中学の付属高校の一年生です。
・・・一応、超度が低いエスパ-でそれなり成功している社長で、父の友人が大学まで面倒見てくれる、という裏設定もあったりします。


ともあれ、原作にあわしたら、結構アレなキャラかつ、作者のサドっぷり全開満開な設定になりました。
後、二つ、三つは、書きたい話ありますし、ヨロシクです。

では、次の物語で。





絶対零度のぬくもり  前編(絶可チル)

2010-02-18 23:18:40 | その他 二次創作


片想いしている相手に追いかけられて早一月。
オレはもう力つきてしまいそうです。
そして、天国の貴方達に会いに逝ってしまいそうです、お母様、お父様。
「藍さん・・・!」
「真木さ、・・・も、もう・・・っ」
真っ直ぐに見てくる瞳に辛くなる。
オレの所為だってわかってるんだ、オレがこの人を苦しめてるんだって。
けれど嫌なんだ。
これだけは譲れない。
オレは真木さんの側には居られない。
・・・い、いやべつに真木さんの側限定とかそういうんじゃないんだけどな。
「もう諦めてくれええええい!!」
「うぐっ、・・・ってちょ、待っ、」
泣く泣く降らせた拳大の雹をもろに浴びて、真木さんは沈黙したって訳だ。
・・・手加減はしなかったけど。
ばあちゃんの言葉通り、「手加減は無用」に無意識に従って。
或いは、「敵は生かして置いちゃいけない」でも良いけど。
無駄に、ばあちゃんの教えは、殺意が高いと思う。



絶対零度のぬくもり  前編



オレの名前は、秋好 藍。
あ、名前の藍は、「あい」じゃなくて、「らん」な。
学校じゃ、藍じゃなくて、嵐で、「らん」って呼ばしてる。
母方の名字を名乗るなら、兵部 藍。
・・・知ってる人もいるだろうけど、とりあえず、国のあの機関を始めとして、悪い意味で有名なエスパ-犯罪者の兵部京介の曾孫。
じいちゃん・・・正確には、ひ-じいちゃんだけど・・・が強い超能力に目覚めてから出来た子孫のせいか、超度は高め。
おまけに、ひ-ばあちゃんも、結構、超度の高い能力者だ。
ばあちゃんは、母さんを産んで、すぐに死んじゃったらしいし、じいちゃんはその前に、死んでる。
じいちゃんが、じ-ちゃん-ひいの方-達の息子になるって聞いてる。
オレの父さんも母さんも、もういない。
母さんは超度7のサイコメトラーだったんだ。父さんは超度6のサイコキノ。
三宮紫穂だったかな、今の唯一の超度7のサイコメトラ―。
あの子が生まれる前の一番のサイコメトラ―だ。
父さんも、超度もだけど、固体-分子レベル含めてだ-操作に長けた人だって、不二子ばあちゃんが言ってたっけ。
まぁ、父さんも母さんも、バベルには所属しなかった。
じいちゃんの関係らしい。
いろいろあったみたい、じいちゃん関係で。
それでも母さんの方が精神的にはもちろん肉体的にも強かったんだから、・・・やっぱ女の人は強い・・・って、そんなことは今関係ねえんだ、うん。
オレが小さいうちに交通事故と病気で死んでしまった二人に変わって、オレは普通の孤児院で育ったってわけだ。
ばあちゃん・・・当時は、そうと知らなかったけど、その人は、オレの居場所、知ってたみたいだけど。
元々、オレが性格が大人しいっていうか、喧嘩嫌いっていうか・・・争いごとが嫌いで力を暴走させたことがなかったし、教会の孤児院で普通に面倒見てもらえたんだ。
・・・まぁ、この口調のせいか、誤解は多いけどよ。
そういうのは、腕っ節で黙ってもらってる。
なんたってじいちゃん犯罪者だし、まず第一にじいちゃんって顔じゃねぇし。
ばあちゃんも、和服好きのお姉さんって感じだし。
検査で引っ掛かったけどね。
その間にバベルには『特務エスパー』になって社会のために戦わないかって何度も誘われたけど・・・じいちゃんのこともあるし、オレが原因でバベルの中にヤな空気とかうまれたら嫌だし、なによりオレは自分の力を戦う事に使うのが好きじゃないから、何度も断った。
ただ、平穏な暮らしがしたかっただけなんだ。
・・・いいじゃん、たしかにオレは超度6で犯罪者の孫だけど。
誰かを傷つけることも、傷つけられることも、好きじゃねぇ。
傷付けられたと、してもね。
そんなオレは、実を言うと、最初に検査に引っ掛かったときは、元々は超度4程度の合成能力者だったんだ。
超度5に大分足りないぐらいだった。
4の真ん中ぐらいのやや下ぐらいだった。
努力次第で伸びる範囲ではあったんだけど。
オレは、伸ばすもんかって思ってたのに―。
なんでか、勝手に伸びちゃって。
ほんと、突然だったぜ。
高校上がってすぐに、突然、超度6になったオレには、バベルの怒涛のお誘いが待っていた。
文字通り、のね。
あの桐壺っておっさん、の熱烈且つ、熱血なお誘い。
必死になって辞退したけどそれでもしつこいのなんの。
女の子からの恋のお誘いなら、遠慮なく受けるよ?
オレだって男の子だし。
・・・何より俺がじいちゃんの、兵部京介の曾孫で、ばあちゃんの、絹笠紫陽の曾孫でもあるから、確保しときたいって気持ちもあったんだと思う。
そんな時、バベルの勧誘にうんざりしてた俺の目の前に現れたのがじいちゃんだった。
母さんが持ってたセピアの写真の中でしか見たことのなかったじいちゃんは、俺と同じ学ラン着てる大人げないじいさんだった。
ついでに、孤児院にたまに来てた女性が、ばあちゃんだってことも知ったんだ。
・・・その時、初めて知ったんだけど、じいちゃん、母さんとすんごく仲が悪かったらしい。
正確には、ノーマルの事が好きな母さんとノーマルを憎んでるじいちゃんの、意見の食い違いっていうか・・・価値観の相違っていうのかな、そういうのが原因で、花の女子高生時代。
母さんの両親、オレのじいちゃん、ばあちゃんはいなかったし、じいちゃんに育てられてた母さんははじいちゃんにとび蹴りかましてそのまま行方をくらませてしまったそうな。
ついでに、その部屋にあった金品根こそぎ奪ってね。
なんたって超度7のサイコメトラーだったから、プロテクトも強力。
だけど、母さんはバベルにはオレらがじいちゃんと血の繋がりがあるってことをこっそり明かしてた。
ばあちゃんが、入れ知恵したらしい。
じいちゃんから、完全に逃げ出したいなら、其処が安全だろうって、な。
結局、そこから情報を手に入れてオレを見つけたらしい。
・・・ばあちゃん曰く、「そろそろ、京介くんも知っても良いでしょうから。」って在り処を教えたらしい。
じいちゃんは、母さんと喧嘩別れしたまま、母さんを交通事故で失ってしまったことを気に病んでたみたいだけど、母さん、ちゃんとじいちゃんのこと好きだったと思うぜ。
ばあちゃんが、話すに、結構、親馬鹿で。
-自分の息子が居ない以上、この子を取っていくヤツがいるってなら、僕に勝ってもらわないとね。
なんて、普通に言っていたらしいし。
何より、母さんは、オレにじいちゃんの話いっぱいしてくれたし。
じいちゃんの悪口・・・まあ、昔のことをぐちぐちとしつこい!なんてことは言ってたけど、けなしたことはなかったしな。
だけど、じいちゃんとの思い出を語る母さんは幸せそうで楽しそうで、それを聞くのがオレと父さんの楽しみでもあったんだ。
それをそのまま伝えたら、じいちゃんはちょっと悲しそうな、でも嬉しそうな顔で笑ってオレを撫でてくれた。
オレ、もう高校生だよ?
それが、半年ほど前、オレが高校二年になったばっかの頃。
で、それ以来、オレは真木さんに追いかけられるようになりました。


・・・・・・なにがどうしてこうなった?
話は飛ばしてないけど、そうなったんだ。





「・・・うっ・・・うう、今日もまた真木さんに酷いことしちまったなぁ。」
もやもやしながら、オレはいつも通りの通学路を歩いていく。
もとはといえば―これは完全にじいちゃんが悪い!絶対じいちゃんが悪い。
何故か初めての出会いを果たした後、じいちゃんは突然、オレを引き取ると言い出した。
ばあちゃんは、(その時、ばあちゃんもいたんだ。)オレが、望むなら。
できれば、このままで・・・ってふうだったしね。
普通?でいられるなら、ってな。
ともかく、それはつまりパンドラに連れてかれるってことで、聞きつけたバベルは猛反対。
なんせ、バベルが把握してる限り、合成能力者といえど、オレぐらい超度の高いのはいないらしいし。
・・・実を言うと、超度7も結構近かったりする。
コンディション次第だけど、辛うじて、サイコキノだけは超度7に到達したこともある。
オレの身の回りの警備は厳しくなるわ、今まで以上に勧誘が激しくなるわ。
バベルが嫌ならうちにおいでよ、なんてじいちゃんは軽く言ってくれるけど、オレは力を使って戦うのが嫌なわけで、バベルにいってもパンドラにいっても、そこんとこ変わんないじゃないか。
第一、オレはノーマル嫌いじゃないし・・・じいちゃんは昔のことにしつけぇ・・・。
・・・じいちゃんの傷跡は、確かに凄く痛そうで、悲しい感じがしたけどよ。
裏切るのも、裏切られるのも、どっちもイヤなことなのに。
そんなわけで、オレはバベル、パンドラ両方から勧誘を受けるはめになったんだ。
・・・で、パンドラでオレの勧誘を任されたのが真木さんだった。
真木さんは・・・その、かっこよくて、大人って感じの男の人で・・・うん、かっこいい。
じいちゃんに紹介された時、オレはうっかり真木さんに一目ぼれというのをしてしまったのだ。
自分でもびっくりした。
男の人を好きになったことより一目惚れなんて漫画みたいなことが自分の身にふりかかってきたことだ。
オレだって、健全で極々マットウな高校生。
悪友が、女の子と最後まで行って、オトコになったとか聞くとうらやまし-とか、一組のマコトちゃん可愛いなぁとか、普通に思うし。
まあ、真木さんもびっくりしてたけど。
なんでも、オレは随分とじいちゃんに似ているらしい。
じいちゃん程は髪短くないし、髪が暗い茶色だし、あんまり実感わかないんだけど。
あ、髪は地毛だぜ?
父さんのお母さんがハ-フだったとか、言うから、その関係じゃねぇかと思う。
・・・一度だけ連れてってもらったパンドラの本拠地で、じいちゃんが「ドッキリ」とか言って自分は隠れて俺をパンドラのみんなの前に放り出したら。
少佐が若くなった!とか口々に言われてオカマさんに抱き潰されてモモンガに飛びつかれて真木さんに助けられて・・・もうなにがなにやらでした・・・うん。
まあ、とにかく他の人からみたら似てるってことはわかった・・・。
ばあちゃんも、「京介くんの若い頃に似てますよ。」と言ってたし。
「帰りもなんだろな。
 ・・・はぁ、どうすんだ、オレ。」
学校にのろのろと入りながらため息をつく。
・・・そりゃ、好きな人に会える機会というか、チャンスだから、真木さんならいいんだけどな。
バベルの勧誘が過激なのは元からだけど、真木さんの勧誘は最初はそんな過激じゃなかったんだ
望まない相手をそんな無理に引きこまなくても・・・って感じで。
そんな真木さんにかなり助かってたんだけど。
じいちゃんが俺をパンドラの本拠地なんかに連れてったりするから、真木さんは豹変してしまった。じいちゃんさ、仕事さぼってるんだよね。
めんどくさいとか暇じゃないとか適当な理由つけて。
そういうのだめだよ、じいちゃんちゃんと仕事しなよって俺が注意したらむすっとしたけど、お茶とか入れてあげたりしたら普通に仕事してくれたんだ。
なんかそれがいけなかった、オレは熱烈に後悔している。
少佐が仕事を・・・!って真木さんものすご感動して、オレに是非パンドラに来てほしいって言い始めて、その日から勧誘の激しさはバベルと同レベルに激変。
ううっ、じいちゃんの馬鹿!
真木さんがこんなになって必死にオレを勧誘するほど普段仕事してねぇのか?!
お陰でオレはじいちゃんに会う前よりもずっとずっと大変な日々送ってるだけど!
ばあちゃんも、できるのは代替わりしてるらしいけど、それよりも、注意して!!


・・・既に、オレの勧誘戦争が激化して3ヶ月以上が経った。
どうやらいい加減、バベルもパンドラも業を煮やし始めたらしくて、なんか当事者であるオレを無視して互いに条件を決めたらしい。
聞くところ、先にオレを捕まえた方が、オレを手に入れる権利を得る!とかなんとか。
・・・勘弁してくれ。
時間はオレの登下校中のみ。
正確には、下校途中のバイト先までだ。
学校や家にいる時は押しかけたり襲いかかったりしちゃダメっていうルールで、両方とも毎日のようにオレのもとにエスパーを送りこんでくる。
今朝は真木さんが出し抜いたのか、最後までオレを追ってきたのは真木さんだけだったけど、昨日なんか・・・えーと、エロ浦さん?って人の毒舌音波攻撃が酷くて酷くて・・・っていうか途中からあれじいちゃんの悪口になってたと思うんだけど、いいの?ありなの?一応じいちゃんってパンドラの偉い人なんだよね?人望ないのか?
・・・ばあちゃんなら、「悪口言われるほど慕われてるんですよ。」とか、いいそうだけど。
最近はじいちゃんの義理のお姉さん・・・にあたる、不二子ばあちゃんまで出てきてもう大変。
あ、ばあちゃんって呼ぶと怒るんだった・・・不二子さん。
ばあちゃんの姪っ子らしいし、流石にしつこくて強引だ。
超度7で凄いって有名なザ・チルドレンひきつれて不二子さんがオレを捕まえに来た時は死ぬかと思った。
ちょっと本気で涙出た。
ああ、友人と馬鹿やって帰ったあの日々は何処?
毎日、バイトがあるわけじゃないから、たまにマック寄ったり、古本でキワドイグラビア本立ち読みしたり、そんなフツ-の生活
勿論、パンドラの人達がここぞとばかりに徹底抗戦、いつもならオレを追っかけるだけだけど、あの日ばかりはオレを逃がしてくれた。
チルドレンのチームの子たちはオレより小さい中学生で、学校もあるしそんなに毎回は出てこない。それだけがせめてもの救いだと思うぜ、ホント。
とはいえ普段はバベルとパンドラの両方からオレは遠慮なく、かつ過激に勧誘されてるわけで。
いくらなんでも生身でそれを回避するのは辛いから、最近は仕方なくオレも力を使っちまっている。
今日もまた真木さんにたんこぶをつくらせてしまった・・・。
ごめんなさい真木さん。
あと、エロ浦・・・じゃなかった藤浦さんも昨日はごめんなさい。
雪だるまの中に詰め込んじゃったけどあのあと無事に脱出できたのかな・・・。




オレの合成能力は基本的に空気中の水分を集めて固めて、温度的には-の方へ持っていく力。
一応、空気中のゴミを集めて発火させること・・・温度を+の方に持ってくことも可能。
藤浦さんも温度を上下させることができるらしいけど、オレは基本的に下げるが楽。
だから、メインで使うのは、温度を下げる・・・ばあちゃんに言わせると、「分子が踊るのを止める」能力ということになんのかな。
なんでかって言われると・・・なんでだろな?
雨を降らせることもできるし、雪を降らせることもできるし、氷の塊をつくることもできる。
応用として藤浦さんにこないだやったみたいに、雪で包んで人間雪だるまを作ることもできる。
あんまり強く固めすぎると窒息して死んじまいそうな気がして怖いからできるだけソフトに固めてる、流石に死なれると寝覚め悪い。
あとは足元を凍りつかせて足止めしたり。
そんなとこかな。
燃やす方は、大変だからあんまりしねぇ。
大した能力じゃないんだけど、バベルは俺のじいちゃんの孫だからって俺を確保したがっていて、パンドラは俺がいればじいちゃんが仕事するからって確保したがっている。
ばあちゃんが言うには、物理的に両方に干渉できる能力は珍しいから、とも、言ってたけど、どうなんだろう。
ちょっと不良とは言え、平凡な高校生としては正直言って物凄く迷惑な話だ。
一生こうなのかな・・・って思うとちょっと鬱っぽくなるから最近は考えないようにしてる。
だけど、一生とかそんなまさか。ははは。いつか諦めてくれるに違いない。
そうに違いない。きっとそうだ。・・・そうであって欲しい。
「さっさと僕のところに来ちゃえばいいのに」
「・・・じいちゃん、また来たの?」
「授業参観だよ」
「参観日はないよ、うち」
じいちゃんはじいちゃんで、しょっちゅうオレの学校に紛れこんできてるし。
オレの隣が空席なのをいいことに、(ちなみに、俺の席は、窓際の最後列だ。昼寝に最適)周りに催眠かけて普通に授業受けてたり、お構いなしに寝てたり、オレに勉強教えたり、好き勝手に過ごしている。
一番最後のはありがたいにはありがたいけど、授業参観とかどうでもいいから真木さんの手伝いしてあげればいいのに・・・。
真木さん、いつか倒れるんじゃないかって本気で心配なんだよな・・・。
「だからパンドラに来て真木の手伝いすればいいだろ?」
「やだよそんなの・・・。俺、普通に暮らしたい」
「数年もすればそんなこと言ってられなくなるさ」
「・・・」
オレは既に予知のことをじいちゃんの口から知っている。
―だからパンドラにおいで、って何度もその予知の話の後に言われたから。
ノーマルとエスパーの戦争なんて、一体何のためにやってるんだろう。
オレは普通にノーマルの中で暮らしてるエスパーだし、ノーマルの家族がいるエスパーなんて山ほどいるのに。
父さんの知り合いの人・・・今のオレの後見人で、アパ-トの保証人でもある・・・も、奥さんがノ-マルだ。
大人ってどうしてこんなに喧嘩が好きなのかな。
・・・あ、違うか、子供でも喧嘩はするもんしな・・・。
なんていうか、大人の喧嘩って物騒だ。
強い力が使えるようになるからなんだろうけど。
数年後の未来の戦争の話を聞いても、オレはやっぱりパンドラにもバベルにもなりたくない。
オレはただ普通に生きたいだけなんだ。
親友と馬鹿やって、大学に行って、適当に就職して、結婚してオレか嫁さんそっくしのガキ作って・・・なんていう普通の生活。
・・・ていうかもしかするとこれって現実逃避?
じいちゃんが予知の話なんてしなきゃパンドラやバベルにいったかもしれない。
たぶん、ノ―マルが好きだから、バベルだったかも知れないけど。
「そうなの?うーん、それじゃ予知の事は話すんじゃなかったかな」
「・・・あのさじいちゃん、授業中だしさっきからなにナチュラルにオレの心、透視(よ)んでるのさ・・・」
「別に周りには見えてないし、聞こえてないんだからいいだろ?
第一、藍は正直すぎるね。
考えてることを隠そうとしてないから、透視(よ)もうとしなくたって透視(み)える」
「じゃあ、透視まないでいてくれ・・・」
悪戯っぽく笑うじいちゃんに溜息。
透視(よ)まれてるならまあいいかな。
考えてることって口に出すとよくわからなくなっちゃうし、このまま言おうかな。

あのよ、じいちゃん、未来に戦争が起こるってことが本当だとするぜ。
ばあちゃんからも同じこと言われたし、あやめちゃんの従姉の『カサンドラ』なんて呼ばれてる沙良さんからも、聞いたからな。
たぶん、本当に起こるんだろうけどよ。
じいちゃんは知ってる予知のことは大体俺に話してくれたけどぜ?
・・・だけど、じいちゃんが話してくれる予知に、じいちゃんがいた試しはないよな?
どうして、・・・じいちゃんが話す未来にじいちゃんはいない?
遠くない未来だって言ってるくせに、どうしてじいちゃんがいる未来を教えてくれねぇんだ?
そりゃ、じいちゃんは80過ぎのじい様だけどよ、生きててもおかしくねぇのに、教えてくれねぇ。
戦争ってそういうことだよな。
未来を造るとか言っといて、未来を潰すことしかしてくれないじゃないか。
じいちゃんのいる未来をつくってくれる戦争はどこにあるの?
大人の喧嘩は楽しい?
その喧嘩で誰もかれも泣いてるのに、その先にみんなが笑える未来なんてあるの?
オレはまだガキだから、じいちゃんが感じてきたこととか想像しかできないし、ケントウはずれかもしれねぇから、大人の「仕方ない」なんてよくわかんないよ。
だけどよ、じいちゃんがいない未来のための戦争なんて嫌いだ。
オレは、じいちゃんに生きて欲しいんだ!!
どんな未来を選ぶにしても、じいちゃんに生きて欲しい。



じいちゃんはどこか驚いた顔をして、寂しげに笑って、悲しげに笑って、オレの額に唇を寄せてから姿を消した。




後編へ続く



単純複雑明解難解

2010-02-16 13:04:14 | 携帯からの投稿
OOの映画情報幾つか知りましたが…。

ロックオン…もとい、ニールが生きているらしいです。
一応、ロックオン/ニールが好きですから嬉しいですよ。
聞いた瞬間、グラニルネタとか、ハレニルネタとか、ライニル/ニルライネタ思考しましたよ。
ほぼ、ニル受けなのは条件反射です。
ニル刹でも、ニルティエでもいいですが。
…オタにあるまじき雑食なんです。


ですが、敢えて、断言します。
「死んで花実が咲くものか、咲けば、墓は花だらけ」とは言いますが、それでも断言します。
OO二期は、ニールが死んでいたからこそ、成立するのだと思います。
イアンや亡きジョイス、外伝のシャルが、CBにいるのは、少なくとも、フェルトの両親やグラーベ、ヒクサーの死があったからこそ。
…安易に生き返らすな。
死人は死人だからこそ、平穏があるのだよ?

にゅうぅぅぅ~

2010-02-14 22:15:08 | 携帯からの投稿
目がウサギな十叶です。
ええと、アリアンロッドのルージュリプレイ読みまして。
泣きました。
正確には、番外読んで、三巻のあの事件読んで、涙腺堤防決壊しました。
ええ、もう、大泣きですよ。
トラン=セプター、その散り様に僕は無上の敬意を表する!(ずびっと鼻すすり)

エイプリルが、外見美少女の中身親父なのも、クリスが、アホなぐらいに純粋なのも素敵です。
むしろ、ツボです。


(かなり、また泣きそうなのをこらえて)…ですが、いえ、ですから、トランが死んだのは…すんげー悲しい…よりも、痛いです。
DX2で諏訪原慎也が、ジャーム化しました。
同じく、DX2で、エンドラインで、多数消えました。
NWでは、真行寺命が、一度死にました。
…それも、悲しいよりも、痛かったですよ?
ですが、ですが、あの散り様は…辛いです。
泣きました。
マジに、目がウサギです。



…そして、気づいた。
NW二次で、乾詠太郎氏。
死亡率高そうだ。
性格と言うか、設定上、ジュリを庇わない筈がない。
彼女より、レベル10以上低いのに(笑)


ともあれ、目がウサギじゃ会社行けんってことで、氷嚢探してる夕海でした!

カップルに100の質問 1~50

2010-02-12 22:46:27 | バトン など

ブリーチで、班目一角×小鳥遊聖で。





1 あなたの名前を教えてください。

「班目一角だ。」
「・・・小鳥遊・・・聖。」

2 年齢は?

「あー、幾つだったか?」
「不明・・・外見は、二十代と・・・中学生。」

3 性別は?

「女。」
「男以外に見えっか?」

4 貴方の性格は?

「・・・甘いわ・・・・・・優しいわけじゃないし。」
「戦闘馬鹿、だな。
 こいつには、何時か前のめりで死ぬわなんて言われているな。」
「・・・十一番隊、らしいわ。」

5 相手の性格は?

「優しいけど、厳しい、俺らのオカンってとこか?」
「陽気で・・・戦闘を楽しめる・・・・・・戦闘馬鹿。
 ・・・誰が、オカンよ。」
「お前。」
「・・・・・」

6 二人の出会いはいつ?どこで?

「二百年ほど前に、俺が十一番隊に入った時か?」
「違う・・・流魂街で・・・・・・助けてもらった。」
「・・・あん時のか?」
「そう。」

7 相手の第一印象は?

「・・・ハゲだけど、良い人。」
「ハゲってなぁ・・・。」
「当時は・・・剃ってるの知らない。」
「ちびっこい、痩せたチビガキ。」
「・・・一角も酷い。」

8 相手のどんなところが好き?

「・・・全部。」(無表情に抑揚無く)
「・・・」(無言に、茹で蛸)
「どうしたの・・・一角、答えは?」
「つやつやの髪も、お前の料理も好きだし。
 ・・・強さも認めてる、ま、全部だな。」

9 相手のどんなところが嫌い?

「自分を過信するとこだな。」
「・・・か、過信?」
「おう。」
「・・・・・・私は、十一番隊・・・だからでも・・・命を軽く・・・みるトコ。」

10 貴方と相手の相性はいいと思う?

「・・・悪くは・・・ないはず。」
「悪けりゃ、一緒にいねぇよ。」

11 相手のことを何で呼んでる?

「・・・一角。」
「聖。」
「最初は・・・班目三席・・・・・・だったけど。」

12 相手に何て呼ばれたい?

「・・・(本名だけど、無理よね。)」
「特にねぇな。」
「そうね。」

13 相手を動物に例えたら何?

「黒猫、仔猫かもな。」
「・・・・・・黒豹。」

14 相手にプレゼントをあげるとしたら何をあげる?

「・・・酒。」
「甘いもんとか、小物だな。」

15 プレゼントをもらうとしたら何がほしい?

「つまみも、つけてくれや。」
「うん・・・・・・私は・・・一緒の時間が欲しいな。」

16 相手に対して不満はある?それはどんなこと?

「もっと、素直に甘えろ。」
「・・・腹の中・・・もっと見せて欲しい。」
「似たようなこと考えてんだな。」
「・・・そうね。」

17 貴方の癖って何?

「・・・あるのかしら?」
「自分じゃわかんねぇな。」

18 相手の癖って何?

「寝てると、大概、俯せか丸まってて、仰向けは無いな。」
「・・・嘘つく時は・・・こめかみ掻いてる。」

19 相手のすること(癖など)でされて嫌なことは?

「・・・抱っこする時・・・・・・子ども抱きと荷物抱きは酷い・・・思うわ。」
「深酔いするな、としか、言えねぇ。」

20 貴方のすること(癖など)で相手が怒ることは何?

「脱いだ足袋をそのままにすると、怒られるな。」
「・・・仕事で無茶すること。」

21 二人はどこまでの関係?

「・・・さ(口を手で塞がれる。)」
「いくとこまではいってる。」
「むごむがむごむご(言っても良いじゃない。)」

22 二人の初デートはどこ?

「現世の大阪・京都あたりだな。」
「・・・うん、任務の帰り・・・・・・
 弓親・・・あんな服・・・」
「ま、弓親のヤツが、手配してくれたから・・・」
(以下、十分ほど、想い出話)

23 その時の二人の雰囲気は?

「色気より、食い気だな。」
「・・・あと、買物・・・・・・」

24 その時どこまで進んだ?

「・・・キスまで。」
「おうよ。」

25 よく行くデートスポットは?

「任務のついでが多いからな・・・」
「でも・・・普通の人間の子と・・・・・・変わらないと・・・思う。」
「ふうん、行きてぇトコ無いのか?」
「・・・水族館か・・・遊園地。」

26 相手の誕生日。どう演出する?

「好きそうな小物を、隊室の机に仕込むとかか?」
「・・・浴衣姿で・・・リボン巻いて・・・。
 『私がプレゼントよ?』とか・・・やろうかなぁと。」

27 告白はどちらから?

「・・・私。」
「だな、男として、情けねぇが。」
「百年ぶりの・・・恋・・・だったし・・・・・・自覚したらすぐ言いたかった・・・。」

28 相手のことを、どれくらい好き?

「戦闘と、更木隊長の次に、好きだな。
 女じゃ、一番にな。」
「・・・何よりも好きだ。」(仕方ないわね、と言う風に、無抑揚に言う。)

29 では、愛してる?

「・・・鷹无の家を・・・敵に回しても・・・・・・良いぐらいに・・・」(囁くように)
「何か言ったか?」
「・・・自分よりも・・・・・・・大切だ・・・と。」
「おうよ、俺もだ。」

30 言われると弱い相手の一言は?

「言われると、ってか、無言で涙目で上目遣いで見られると、な。」
「・・・耳元で・・・『好き』は・・・・・・腰砕ける。」

31 相手に浮気の疑惑が! どうする?

「・・・三席で、男性だし・・・付き合いありそう。」
「あー、わかんねぇ。」

32 浮気を許せる?

「そう言う商売の人で・・・一夜なら・・・」(はんにゃの笑顔)
「・・・ガチはダメなわけか。」
「一角は・・・許せるの?」
「許せるほど、心広かねぇ。」

33 相手がデートに1時間遅れた! どうする?

「待つ・・・が、三十分しないうちに連絡するかもな。」
「・・・待って・・・安曇庵で・・・DX抹茶白玉パフェ驕ってもらう。」

ちなみに、安曇庵のデザートメニューで二番目に高いメニュー。
一番は、DX金魚鉢パフェ。

34 相手の身体の一部で一番好きなのはどこ?

「・・・手。
 撫でてくれる時・・・優しいから。」
「長い黒髪、だな。」

35 相手の色っぽい仕種ってどんなの?

「眠さが極限になるとすり寄って来る時の顔。」
「・・・手首まで・・・・・・タレたタレを舐めるとか。」

36 二人でいてドキっとするのはどんな時?

「・・・目が合うと、その・・・ドキっとする。」
「急に抱きつかれると、動悸が危なくなる。」

37 相手に嘘をつける? 嘘はうまい?

「ついても、すぐバレる。」
「顔に・・・出るの・・・一角は。
 ・・・私は・・・・・・つけるよ。」
「そして、バレない。
 つか、つかれても、わかんねぇ。」

38 何をしている時が一番幸せ?

「・・・一緒に居るだけで・・・・・・良い。」
「膝の上に、乗せて抱き締めてる時。」
「・・・すんなり言うな。」(顔真っ赤。)

39 ケンカをしたことがある?

「・・・まぁ、それなりにな。」
「うん・・・それなりにな。」

40 どんなケンカをするの?

「口喧嘩メインだな。」
「手まで出ると・・・確実・・・流血。」

41 どうやって仲直りするの?

「謝り倒す。」
「後ろから・・・抱きついて・・・・・・謝る。」

42 生まれ変わっても恋人になりたい?

「・・・目の前の一角だけ・・・・・・一角だから。」
「そうか、俺は、お前となら、良いと思うけどな。」

43 「愛されているなぁ」と感じるのはどんな時?

「・・・前の任務で・・・脳揺らされて・・・・・・意識不明で護廷に連れ帰られて・・・。
 ・・・起きたら・・・一角が居た時に特に。」
「何かと頼られると、そう思う。」

44 「もしかして愛されていないんじゃ・・・」と感じるのはどんな時?

「「ない」」

45 貴方の愛の表現方法はどんなの?

「・・・構い倒す・・・。」
「キスよ・・・」(足払いされる。)
「・・・こういうトコで・・・・・・言うな。」

46 もし死ぬなら相手より先がいい? 後がいい?

「・・・どちらでも。
 ・・・私が・・・見とるだろうけどね。」
「同じく。
 こういう仕事だと、明日にもそうなるかもしれないからな。」
「・・・だけど・・・死んで欲しく無い。」

47 二人の間に隠し事はある?

「俺には、そんなにない。」
「・・・ありまくり・・・・・」

48 貴方のコンプレックスは何?

「超えたいけど、超えちゃダメな壁がある事。」
「・・・こいのぼりまで・・・いかないけど・・・そういう体型。」

49 二人の仲は周りの人に公認? 極秘?

「バレてるだろ。」
「少なくとも・・・十一番隊には・・・・・・公認。
 ・・・一番隊にはバレてない・・・はず。」

50 二人の愛は永遠だと思う?

「今が続けばな。」
「・・・永遠はない・・・。
 だけど・・・続けば良いと思う。」




50以降は、隠し。



質問は、コチラより

AfterGlow 1

2010-02-10 22:53:24 | 凍結

Middle-1 忘れられた青から滲む感情(いろ)


月匣に、深紅の色さえ視認できるほどに濃い殺気が満ちる。
呼応するように、夜会服姿の年頃の妖艶なる男女の四人。
そして、ねじくれた角と蝙蝠の角を持つ怪物も、雄叫び魔力を吹き上げる。
魔王とトオル達の間に立ち塞がった。
狂おしいほどまでに濃密な魔力と瘴気。
ウィザ―ドとして、幾ら経験をつもうとも、人であるが故にヘビに睨まれたカエルよろしく動けなくなる。
「準備、なさいな。
 それくらいは、待ってあげるわ。」
余裕、ではなく、全力の貴方達を殺さないと意味が無い、と言わんばかりに彼は準備を促す。
本能的な恐怖をトオル達は振り払う。
理由はともかく、何故という疑念は振り払えないが,各々に死ねない理由がある。
トオルは愛する少女が為に。
麒麟は愛しの親友が為に。
輪之助は己が成すべきヒロイズムの為に。
ならば、それが、戦う理由だろう。
トオルは、ウィッチブレ―ドを抜き払い、姿を銀色の髪、闇の深淵色の瞳の青年・・・即ち、モッガディ-トの姿に変じる。
輪之助は、リンカイザ―に変身した。
麒麟は、破魔矢を月衣より抜き、符を構える。
そして、戦端が切り開かれようとするその刹那。
「疾く走れ、『雷光矢(バルティル)』」
月匣に人が抜けれるほどの穴が空き、そこから、五人が入ってくる。
そして、トオル達とアッシェン側を引き離すかのように、雷光の矢が通り過ぎる。
桃色に近いほどの赤紫色の波打つ髪で、身丈ほどの大剣を携えたゆったりとした服の青年。
黒い髪を肩ほどに切り揃え、ハンドガンを構えるカソックとトレンチ姿の青年。
闇にも負けない銀色の長髪を背中に流し、棍を帯びた輝明学園高等部の制服姿の少女。
漆黒の闇色の髪を尻尾にし、二本の剣を構える、RPGにでてきそうな暗殺者風の少年。
淡く緑に輝く髪をお下げにした、暗殺者風の少年と同じくRPGの僧侶風味で槍を携えた少女。
そして、五人の中央にいた僧侶のような少女が、今の雷光を放ったのだろう。
「・・・やっぱりか。
 アッシェンの動きを察知した途端、行方不明になっていた四人。
 マデュ―姉妹に、ヤン=アメルン、アルヴィン=イェルム。
そして、やっぱり・・・背任行為を許すほど≪背信者会議≫は甘くは無いぞ。」
夜会服の四人と『アッシェン』を見て、泣きそうに、輝明学園制服姿の少女は、呟いた。
≪背信者会議≫・・・吸血鬼達の最大コミュニティの名前が出たことで、夜会服の4人に動揺が走る。
知らない顔、ではなく、むしろ、尊敬する相手だったのだ制服の少女は。
「ジュリちゃん!!」
「大丈夫だ、久遠。」
「・・・無茶はいけないわよう。
 ともかく、トオルくん達、一応、加勢に来たわ。」
「あの喫茶店の!?
 何故?」
「うふふふ、お姉さんには、秘密の情報源があるのよ。
 ともかく、来るわよ!!」
素早く、トオル達側に駆けより、臨戦体制をとる五人。
泣きそうな制服姿の少女-ジュリに、赤紫色の髪の青年-久遠は、声をかけるが一蹴されてしまった。
久遠はめげずに、顔見知りの若いウィザ―ド達に声をかける。
彼の喫茶店『デザ-トスト―ム』や、裏側のウィザ-トアイテムショップ『デザ-トファントム』で、何度か、言葉を交わしたことがあるのだ。
友人と言うほど親しくないものの、非日常(ウィザ―ド)の知り合い、であるのだろう。
そして、そのオカマ口調で、彼が月森久遠であることを三人は確信する。
「・・・オレはオマエを守る。」
「さて、私にこの姿(ほんき)を出させたのだから、ただじゃ帰さないわ。」
四人の吸血鬼とア-クデ―モンが、アッシェンテンペスの戦術指揮を受け、向かってくる。
それが交錯するまでの刹那。
暗殺者風の少年と、ジュリの姿が変わる。
否、元に戻ったのだ。
少年の背には、禍々しいまでに黒き一対の翼、その身に宿るは黒き光。
少女の背には、節くれだった蝙蝠の漆黒の翼、その瞳に宿るは紅き光。
魔力は塗り変わる。
本来の・・・魔力行使が一番しやすい姿に戻ったのだ
「詠太郎、今は、回復より、攻撃だ。
 あいつに、変われ。
 私が、時間を稼ぐ。」
棍を構えたジュリが、カソックの青年に、そう指示を出す。
自身は、翼はためかせ、一足に、群に向かって行く。
それに見かねたのか、それとも、モッガディ-トがそうさせたのか、トオルもウィッチブレ―ドに飛び乗り、後に続く。
純粋に時間稼ぎなのだろう。
キャスタ-やヒ-ラ―向きの吸血鬼が白兵戦を挑む辺り。
ある程度レベルが無ければ、同じ吸血鬼ならまだしも、ア―クデ―モン相手には、自殺以外のなにものでもない。
そして、一方、残った六人のうち、天使化した少年は待機・・・というよりも、僧侶少女の側にいる。
庇う為だろうか。
「・・・・・・特殊能力、使いますから、ちょっと離れますね。」
「そんなに、危ないもんなのか?」
「アゼル・イヴリスと同じ、と取って貰っても構いませんよ。
 正確には、それは副産物なのですが。」
詠太郎は、そう短く会話をして、5sq×5sqの端の真ん中のほうにいた面々から、少し離れ、呪を唱え始める。
参十秒ほどのそれが唱え終わると同時に、そこにいたのは、カソック姿の青年ではなく、別の人物。
淡い藤色のゆるいウェ―ブの髪を背中に流し、蒼穹色の瞳で、左目に片眼鏡をかけていて、何処となく裏のありそうな青年だ。
着ている物は古式ゆかしい魔王のようなロ-ブにマント。
そして、撒き散らすのは、破滅の瘴気。
「相変わらず、せっかちだねぇ、詠太郎。
 まぁ、愛しのジュリの為だから、僕にしても、否応もないのだけれど。」
「魔王っ!!
こんな時に・・・ッ」
「一応、味方だから大丈夫、でも、魔力取られるのは勘弁して。
 離れてる分、ちょっとだけマシだと思うのだけれど。」
麒麟の言葉に、久遠がフォロ-をいれる。
それどおりに、魔力-MPが、一人あたり、15ポイント削られる。
仕方ないね、とでも言うように、彼は、前方の反対側へ4sqへと即座に移動する。
その移動で、効果圏内にいるのは、アッシェンのみとなる。
雄たけび上げて、トオルとジュリをすり抜け、ア―クデ―モンが、こちらに来る。
そして、闇のような口腔に、黒い魔方陣が展開される。
ディメッションホ-ルだろう。
スッと前に出たのは、久遠。
「くす、ワタシにそれは野暮よねぇ。」
全員分のそれを受けたのに・・・それも、相手の表情?からしても、的確な魔法攻撃だったのだろう。
ミリ単位ですら、揺らいでいない。
輪之助と十歳程度も変わらないはずなのに、老齢の龍使いのウィザ―ドを思わせる練度だ。
事実、これは、ジュリと先ほどのロ-ブの男しか知らないのだが、久遠は永い時を生きている。
そのせいもあるのだろう。
しかし、一見して、新宿歌舞伎町のおにね-さんがそうだ、というのは、少々、意外だろう。
「ねぇ、輪之助ちゃん。
 麒麟ちゃんとそっちの僧侶っぽい子・・・レティ―ちゃん、お願いしていいかしら?」
何か考えがあるのか、久遠は、魔物使いの青年にそう言葉をかける。
無言でそれに頷き、即座に庇える体制に入る。
「じゃ、ナハトちゃん、逝くわよ?」
「・・・字が違う気がする。」
「細かいこと気にしない。
 たぶん、あの子の性格考えると、ア―クデ―モンはともかく、身内が倒れてまで自分の目的果そうとはしないでしょうし、ね。」
「ツィアのナイト役を取られたくなければ、とっと終らせろ、と言う所か?」
「そう。」
半ば、引き摺るように、ナハトと同じく、2人がいるスクエアに移動する。
2sq先で乱戦しているトオルと、その1sq横で、彼に支援を打ちつつ、棍を繰り出すジュリ。
既に、男女1組の吸血鬼は、討ち果たされている。
血を流してはいるが、死んでは居らず、気絶しているようだ。
「集まったわね。
 風よ、なぎ倒せ、≪ハリケ―ン≫。」
アッシェンがそう宣言すると、風が巻き上がり、暴風となる。
暴風がトオルがいるsqを中心にして、四人だけを飲み込む。
四人の吸血鬼とア-クデ―モンは、その魔法の効果に居ない。
的確に、味方を効果から外している。
それに・・・
「ふうむ、僕の能力を受けながら、そこまで、行動できるとは・・・。」
ライアが、呟くように、魔力を削られ続けているのに、魔力行使の集中力を失わないのは、元々の素地が良い、と言うのも、あるだろう。
魔王ではなく、ウィザ-ドとしての。
「ともあれ、私が、受けるわよ!!
・・・だけど、お姉さん、魔防は低いのよぅ。」
「では、一応。
≪プリズムアップ≫」
「必要、無いかも知れないけれど。
 同じく、≪プリズムアップ≫。」
カバ―リングする久遠を、呆れながらも、魔法防アップの魔法をかける2人。
アッシェンテンペスの方が、強いからだろうか。


この後、攻勢に出たアタッカ―2人と、高レベルの2名を相手にしては、吸血鬼は無力化され、ア-クデ―モンは霧散した。
尚且つ、アッシェンテンペスは、ライアの特殊能力・終焉の鎌により、魔力を根こそぎ削り取られた。
少なくとも、今現在、表界に干渉している分に関しては、という注釈がつくけれど。
「・・・さあ、どうする、エスメラルダ。」
ジュリは、アッシェンを、『アッシェンテンペス』ではなく、『エスメラルダ』と呼ぶ。
それに対して、彼の瞳と気配は揺れる。
もう、呼ばれることが無いはずの・・・モッガディ-トや、アスデモ-トが滅んだ今となっては、呼ばれることが無いはずの『自分』の名前だからだ。
「お、・・・おだ、まり、ください・・・ジュリ様。」
会話から察するに、≪背信者会議≫に所属しているという、女吸血鬼が、身を起こすことは愚か、声すら途切れ途切れで、話す。
確かに、一条家など、エミュレイタ―に与するウィザ―ドはいる。
いるが、≪背信者会議≫を始め、『エサ』とは断言しているとは言え、人間に敵対する同胞に厳罰を科す吸血鬼や、人狼のコミュニティは多い。
その上で、この四人の吸血鬼は、この魔王についている。
「退くわ。
 ・・・だけれど、覚えていなさい。
 理由はどうであれ、モッガディ-トを滅ぼす一助をした夜見トオルとその仲間よ。
 私は、貴方達を必ず、殺すわ。
 ・・・私の魔力を使い尽くしてもね。」
ジュリに促されたからではないだろう。
どちらかと言えば、久遠の予想通りに、吸血鬼達の命を優先したのだろう。
≪ポ―タル≫を起動しつつ、アッシェンテンペスと呼ばれた魔王は、そう言って、掻き消えた。
「・・・・・・これで、ヤツが動くかな。
 それだけは、止めないと。」
ジュリの呟きと、ライアが乾に戻るのを合図にしたかのように、月匣が閉じられた。




Middle-2 ×××は時空を越えて


その後、事情を説明しろ、と言うトオル達を連れて、≪デザ-トスト―ム≫へと、向かう。
流石に、9人が、一同に、集まれるほど、リンカイザ―ハウスは、広くはない。
そういうわけで、だ。
灯りはついているものの、≪CLOSE≫の札が掛かっている。
構わず、久遠は扉を開ける。
「あ、すいません、もうおわ・・・久遠さんに、マム!?
 ・・・なんか、面倒事のようですね、学生ウィザ―ドまで、いると言うことは。」
扉を開けると、ドアベルと共に出迎えたのは、焦げ茶の髪にこれと言って特徴の無い風貌の青年。
室内なのに、帽子をかぶって居るのが、特徴らしい唯一の特徴ではあるが。
彼は、店主の都築淳と言う。
そして、微妙に衝撃的なことをいうが、久遠は無視して、二階の書斎を借りると宣言して、さっさと8人を先導していってしまう。
ジュリは、お茶と菓子を淳にそうお願いして言った。
仕切りなおして、二階の書斎。
ドアのある壁以外、三方が本棚になっていて、部屋の中央に、重厚なデスクセットと応接セットがある。
それぞれ、座り、淳がお茶セットを置いていった後。
「さあて、何聞きたい、シュガ―ボ-イズ?」
「とりあえず、久遠さん以外の名前、聞いて良いですか?」
自己紹介すらしておらず、あの戦闘を行なったのだ。
麒麟の指摘と言うか質問はもっともである。
「ジュリ=ロ-ゼンマリア、或いは、都築樹里(つづき・じゅり)になる。
 一応、≪背信者会議≫所属・・・籍だけだけどね。」
そう、棒読みに、輝明学園の制服の少女は、最初に答える。
「僕は、乾詠太郎(いぬい・えいたろう)。
 ロ-マ聖王庁所属のウィザ-トになるよ。
 後、僕もだけど、ジュリさんもできれば、名前で呼んであげて。
 名字で呼ばれるのは慣れていないから。」
続いて、カソック姿の青年が、ちょっと困ったような微笑で、自己紹介をする。
付け足しの言葉から思うに、人のよい性格らしい。
「・・・・・・レティ―ちゃん?」
「え、えう、あ、はい。
 レティ―ツィア=ヴァ―ルハイドです。
 あの、久遠さん、どこまで喋って良いですか?」
「何処から、来たのか、までね。
 どうやっては、この後の情報収集シ-ンで。」
「メタなことは言わないの、久遠。」
どぎまぎしながら答えたのは、エルフのように、耳の尖った僧侶のような少女。
服装から、多少予想できていたものの、別の世界から来ていたようで。
かなり、メタなことを久遠が言ったのを、机の上のクラッカ-を投げ、ジュリはツッこむが、それを彼は口で受け止める、という芸をやる。
「・・・ええと、その、ラ―ス=フェリアっていう、第一世界からやってきました。
 シェロ-ティアの探索者協会の所属でしたが、今は、フレイスの異世界連合に身を置いています。
 こっちのナハト=トワイライトは、私の仲間です。」
それに困りつつも、とりあえず、僧侶の少女-レティ―はそう言った。
同じ世界から来たであろう、少女より若干年上に・・・輪之助と同じぐらいかすぐ下ぐらいの少年は、少女の言葉に、頷き肯定する。
喋る気は更々無いらしい。
正確には、無口なのだろう。
しかし、次の瞬間、口を開いた。
「月森久遠。
 オレとツィアは、休ませて貰うぞ。」
「ナハト?」
「・・・ツィア、無駄打ち過ぎだ。
此処は、魔力が薄い。」
「そ、それは、ナハトも同じでしょう?」
「・・・オレはまだいい。
 そこの神父みたいなのいる分マシだ。」
「うう~っ、でも・・・」
「いいわ、レティ―ちゃん、休んでちょうだい。
 お姉さんが、知ってる分は、話しておくから。
 部屋は、さっきのだから。」
久遠が、苦笑混じりに、許可を出すと、レティ―は席を立つ。
そして、何も無い所で、どんがらがらと、すっ転ぶ。
絨毯が敷いてあるとは言え、下は固い床。
「・・・ちゃんと足元も注意しろ。」
床とキスする前に、掬いあげるようにナハトは、レティ―を支え、そのまま、お姫さま抱っこして、部屋を出て行く。
滑るように、滑らかでありながら、同時に物音を立てない動き・・・エンジェルになる前の出自を見せるかのような。
それを見送ってから、久遠は改めて、説明を始める。
「とりあえず、お姉さんの認識間違ってないと思うけど。
 トオルくん達が襲われた理由わかってるかしら?」
「モッガディ-トとのことか?」
「そうなる。
 では、私と久遠達がそれを助太刀した理由はわかるか、若いの。」
トオルの回答に、外見上は、一番幼いジュリがそう訊ねる。
真意を掴ませない、老人特有の透明な色の瞳だ。
何かを隠しなれた、そんな。
「・・・少なくとも、貴女とあの魔王の配下は知り合いでしょう。」
「ついでに言うなら、アッシェンテンペスの・・・。
 いや、正確ではないな、『今』のアッシェンテンペスの『中身』とも知り合いだ。」
「・・・?」
「・・・あの月女王の失策さ。
 自身の指揮でああなったのだからね。
 世界の敵を一人増やして、侵魔よりの私を創ってしまったというべきだろう。」
奇妙な物言いに、歳若いウィザ―ド達に困惑が混じる。
それに、唇の端を吊り上げる皮肉な笑みで、月女王-即ち、『真昼の月』と呼ばれる世界魔術協会の長・アンゼロットのことを揶揄するジュリ。
逆らう人間/ウィザ―ドなどほとんど居ないし、悪く言うことすらほとんど無い。
しかし、今、ジュリははっきりと、かつて、アンゼロットの指揮で行なわれた作戦が、今の状況の遠因であると断言する。
「今、私に、言えるのは、それぐらいだ。」
「・・・ともかくね、私とジュリちゃん、詠太郎ちゃんとさっきの2人は、とある人の仲介で、対アッシェンテンペスの依頼を受けたの。
 ジュリちゃんは、特に、あの子を滅ぼさせるわけにはいかないから。」
「・・・侵魔の味方なら、俺は止めるぜ?
 正義の味方が、そんなヤツとつるめないからな。」
「安心しろ、リンカイザ―。
 私は、一応、人間側だ。
 アンゼロットや、レオン兄様が、何を企もうとも、私は私を仲間と言ってくれた天春(あまかす)の恩に報いる為にも、侵魔を利用することはあっても、侵魔の味方になることはない。
 ・・・あの哀れな幼女以外はな。」
輪之助の言葉に、断言するように、ジュリは返す。
彼女が言う『天春(あまかす)』は、昨年の春から、今年の春までの一年間にあったマジカルウォ―フェアの最中に、倒れた龍使いだ。
そのもういない彼の事に触れるジュリには、もう還らない者に対する青色がある。
また、今現在の『ル―の転生体』候補は、幼い少女だ。
「・・・それよりも、一ついいですか、久遠さん。」
ある意味居た堪れない、この雰囲気を払拭する為ではないのだろうが、麒麟が、そう切り出した。
それに対して、無言で久遠は続きを促した。
「途中で現れた魔王は、なんですか?
 そこの詠太郎さんと、同一人物です、よね?」
「・・・ジュリちゃん、何処までは話す?」
「話せることは話せ。
 隠すようなことではないし、アッシェンテンペスの件が終るまでは、即席とは言えパ-ティだからな。」
久遠の問いに、あっさりとジュリは許可を出す。
そして、久遠が語ったのは、次のような話。


詠太郎は、今は聖職者であるが、元々、転生者であること。
更に言うなら、特殊すぎる転生者だった。
現在も、裏界に存在している魔王の一柱の転生体。
マジカルウォ―フェア以前の記録上、その封印に、ウィザ―ドと侵魔がその封印に手を貸した唯一の魔王の転生者。
それが、千と数百年前。
しかし、その魔王の転聖者を確認できたのは、四百年ほど前のつい最近だ。
裏界に月女王が、当時のロンギヌスを送った直後のことだと言う。
その転生者の特徴は三つ。
対侵魔・・・最近で言うなら、冥魔に対して、強い影響力をもつこと。
ようは、ダメ-ジを与えやすい性質/特殊能力を持つこと。
その転生者の持つ、遺産武器は、武器であるよりも、守りとしての性質が強いこと。
そして、ジュリ=ロ-ゼンマリアに遠い縁があること。


「強い影響を受けた、何人かは、詠太郎ちゃんみたいに、裏界の本体と交替する能力を持つのよ。」
「・・・難しいことはわかんねェけど、侵魔なのか?」
「いや、橘先輩、たぶん、俺と同じ、落とし子じゃないかな。」
「正解よ、トオルちゃん。」
「あくまで、性質などのと言うレベルだ。
 一昔前までは、侵魔と共闘など愚の骨頂だったからね。」
「少なくとも、今の僕は、それでも、僕は聖職者だからね。」
概略ではあるが、つらつらと久遠は話す。
いくつかを隠した上で。
しかし、脳みそスライムと呼ばれようとも、歴戦のウィザ―ドで在る事に変り無い。
輪之助は、こう聞く。
久遠にしてみても、うっかりな一言だったのだろう。
「ジュリって子に、関係あるって言うのは?」
「・・・ちょっとぉ、輪之助ちゃんが、脳みそスライムって言ったの誰よ!!」
「久遠、落ち着け。
 それに関しては、私は覚えていない、と断言しておこう。
 知っているのは、長寿で石頭の長老どもの中でも、レオンハルトと私の養父ぐらいだ。
 養父は人間に討たれたし、アイツは話してくれないがな。」
思わず、テンパった久遠その言葉に、ジュリは、窘めつつ、フォロ-をいれる。
詠太郎は、そのジュリの失われた記憶の断片を知っていながら、黙っていた。

そして、話は進み、夜は更ける・・・。

紅き月の導きがままに・・・・。




+後書きめいた補足+

というわけで、ミドル突入です。
一応、補足いれていきます。
ミドル終盤までに気付かれてないとキツイ伏線もありますので。


Middle-1は、のっけから、戦闘です。
その親玉、アッシェンテンペス/エスメラルダは、まず、名前ありきでした。
アスタロト/アスタロスをモチ―フにして。
はい、公式のアステ-トより、前に一応設定したのですよ?
そして、敵のレベルとしては、トオル達・・・レベル3では、勝つのは難しいレベルと構成にしています。
吸血鬼四人も、個人デ-タのある敵として設定してあります。

・・・後、この変則パ-ティ、全員が全員人外か、その関係ってどうなんだろうか。
一応、リプレイや公式設定の解釈と特殊能力曲解でですが。

また、「ある日の会話」などで、あるように、NWを含む主八界では、神様レベルとして、『萩行幹久』が糸引きしてます。

『Middle-1 忘れられた青から滲む感情(いろ)』は、悲劇は忘れ去られても、いつか、何かが芽吹いてしまう、ということで。

ちなみに、『雷光矢(バルティル)』は、セブンフォ―トレス準拠の魔術です。


Middle-2は、一応、本来的なオ―プニング。
ホットスタ-トでなければ、この終わりに、月匣張られて・・・なのでしょうが。
ともあれ、先にアッシェンの決意を見せておきたかったと。
尚且つ、直接的な脅威として、先に、Middle-1を演出。

また、ライアと詠太郎の関係は、以前、何処かのリプレイで見たNPCとPCの関係です。
味方が実は、敵の重鎮だった!!という関係。
本来ならば、序盤で明かすべきではないのでしょうけど、こっちのほうが、楽しいので明かしました。
侵魔と人間、種ではともかく、個で分かり合うことは難しくは無い。
それを、アンゼロットや、ゲイザ―が許すかどうかは置いておいて。

尚且つ、レティ―ツィアとナハトは、味方であっても、トオル達側の人間ではないので、ちょっと線引きも。
と言うより、この2人は、とある人の依頼で動いているのであって、レティ―ツィアはともかく、ナハトには、トオル達を助けなきゃという意気込みがありません。
情報収集以外に、仲良くなるシ-ンを演出して、どうにかしたいとは思いますが。
・・・黒ひよこが、誰に懐くのか、どうなるか、未だに不明。

『Middle-2 ×××は時空を越えて』の『×××』は好きな単語を。
個人的には、おまけで投稿予定のライアとして、『キモチ』辺りを思考しています。




さてさて、次からは、情報収集の開始です。
惚れた病に薬無しというわけで。
誰に惚れれるか選べれば、この世の不幸の九割は無いでしょう。
・・・とか言いつつ、Middle入れたいシ-ンだけで、10つ・・・一応、15ぐらいで切上げれるように頑張りますですよ?
シナリオ上は、6つでいいのですけれどね。
うち、二つは、マスタ―シ-ンって、どうなんだろうね。


ともあれ、次の物語で。


ヴェーダァァァァァア~~~ッ

2010-02-06 19:31:18 | 携帯からの投稿
OOI一巻発売おめでとうございます。

そして、読了一言めが、タイトル。
自宅で良かった。
マジに叫んだ。

レイヴは可愛いし、テリラは好みにヘタレだけど格好いい。
ブリュンの女装はグッドだ。
ちなみに、レイヴはリボンズと同タイプです。



だけど、だけど、叫ぶぞ、叫ぶぞ、魂の嘆き。
……ラーズは、二期終了後のライルのもう一つの姿だと思う。
ただ、彼がイノベであった、それを否定してしまったから。
八つ当たりする相手が、自分自身でもあったからああなった。
…つか、ヴェーダも、機能停止させろよ。


…尚且つ、推測混じるが、ベイン=レイヴだわ。
話の流れからして、リボンズと同じ塩基配列で戦闘用を作る理由がわからない。


…やはり、ヴェーダは名前通りに無慈悲だ。