空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

robo氏あて2

2011-08-03 23:09:52 | Weblog
某robo氏宛。

 「何か確認するポイント等ありましたら@robo7c7c」の続き。いまこそtwitterアカウントを取るべき気がしたがまあ自分の勉強のために書くという意味もあるし(日記)。

 Ciniiから検索すれば―

佐藤 和也 , 田崎 和江 , 奥野 正幸 , 久保 博 「長野県・松代温泉におけるバイオマットへのホウ素の濃縮」『地球科學』64(2), 63-75, 2010-03-25 (CiNii PDF - 定額アクセス可能)

 …聞きなれない「バイオマット」なる語が,何か不安なものを思わせるかもしれない。率直に言って,疑似科学なんじゃねえか的な。
 それについては:

日本粘土学会 新 刊 情 報 バイオマット―身近な微生物がつくる生体鉱物― (富田克利)

バイオマットという言葉は,正式にはまだ認知されていない言葉であるが,最近,田崎氏グループが盛んにあちこちの学会でバイオマットに関する研究発表をしているので,この言葉を聞いたことがある人も多いと思う.最近,地球表層部での地球環境維持およぴ資源鉱物の形成などに関して,生体鉱物に関する研究の重要性がいわれるようになってきた.バイオマットの研究もこれらの研究の一環として大変重要なことである」云々。

 上掲『地球科学』のサマリーを見れば,これは諸種微生物の堆積形成物を言うものらしい(「バイオマット」でじかに検索するとエライざまになるが)。温泉排水路に数百メートルにわたって形成される「バイオマット」の働きで排水中のホウ素がエライ減るのだとか。廃水処理規制法でものっそ厳しい数値が示されるが,零細温泉旅館では対応できない。そこで安価な方法として微生物を利用できないか―というもので,真っ当な研究のように見える。

 金沢大は結構な場所であるが―一般向け啓蒙活動に熱心であるのも特筆すべきだ,町中のキャンパスに対外広報室を設置し,子供科学講座などやっていて,寧ろ「研究者向け学会やる日くらい遠慮してくれねぇかなあ」とか思うほど―,なんというか,旧帝より一段予算規模等々は落ちるだろう(調べたこともないが)。そんな中,確実なところから攻めていっている感がある。

田崎 和江 , 野村 正純 , 馬場 奈緒子「O-252 能登半島地震による水田の塩害調査と現状(23.環境地質,口頭発表,一般講演)」(PDF),日本地質学会学術大会講演要旨 114, 187, 2007-09-01 ,日本地質学会

 …田崎先生が第一著者で(第一に責任を負う―自分で筆を執ったかと思われる)かつオープンアクセスなのはあまり見ず(いや私は定額アクセス可能だが),blog自体にはあまり言及できないが―。

 ―あーなんつーか,トンデモさんだったら,も少し派手なモノを扱うと思います。

田崎 和江 , 白木 康一 , 松島 唯志 , 今西 弘樹 , 野村 正純 , 森井 一誠 , 脇元 理恵「ダム排砂時のアユのエラに認められた粘土鉱物」,粘土科学 46(1), 40-45, 2007-02-16

 …とにかく,粘土と鉱物,微生物との関係に一生を捧げた人のようで…どうもこのひと,能登半島中心にサメの歯化石見たり温泉の水質調査やったり松の塩害枯死扱ったりと,ものっそローカルな偉人さんっぽいと思うんだけど。

 そんなわけで

○相手は研究者なんだからまずCiniiとKAKENをみなさい
○もし研究者なのだったらCiniiとかなんとか使って,相手の様子をうかがうとかなさい。過去の業績から測るのは基本でしょう
○あまり大学事務を余計な業務で困らせないでください。ただでさえアレら死にかけなんですから。連日12時前帰宅とか,私が2時になったからもう帰ろーとか思ったらまだ居たとか,10時ごろ問い合わせメール来たから出向いたら「すいませんっ! 私たちはいないことにしてくださいっ!」とかすげぃ勢いで言ってきたり。
○何で新聞記者がそんな真実だけ書けると思うんです。
 なお参考:おおやにき「続・岡崎市立図書館事件(4・完)」より「ところで本シンポジウムについては朝日新聞の記者の方が取材されていたようで、以下のように記事になっている(…中略…) のだが、まあこうまとめられると非常に困るなあこれ」。
 まあそんなわけ。

 アクション仕掛ける前に,よくよく情報を精査するべきだと思います>robo氏。
 少なくとも,富山新聞が伝える田崎先生の御説と,福島民報の伝える田崎の妄言とは極めて異質であることは注意すべきだと思う。

 あと周りでrobo氏に知恵をつけてる人たちは,ちゃんと相手の過去の業績チェックとかなさい。

 上掲おおやにきから,さらに:「結局、騒いでるのは直接来たり聞いたり確認したりせずに・待っていて手に入るもので何か言いたい人々なのだねえという感じは、一連のtweetを見ていて、あからさまに持ちますね」。
 いや私も田崎氏の論文,2,3編ほどしか読んでいないが(だから私は何学者なのかと)。

 現時点の私個人としては,田崎先生は(なにやら非常なファンがついているようだが)地道な研究者であって,その説明を受けた側が理解しそこなったせいで福島民報の記事になったものと推測する。誤解が市役所の時点で生じたかどうかは不明だが,何れにしても福島民報の記者の科学的批判能力は低いレベルにあるものと推察され,何にせよそこは突っ込まざるを得ないことも併せて指摘する。

 ―「そういうアホを教育したのはてめえらじゃねえか」という反論はありえるが,私が教えた世代はまだ世間に出ていないか,出てもぺーぺーなのでまだ私個人の責とは。まああと数年経ったら教員団の一員として連帯責任をおわねばなりませんでしょうが。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アカウント (Hi-Low-Mix)
2011-08-04 08:20:40
あってもいいんじゃないすか?
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Unknown (ナナシ=ロボ)
2011-08-04 10:02:38
おー、ありがとー。
いろいろ肝に命じておきまする
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Unknown (teiresias)
2011-08-04 17:25:03
>アカウント
だってtwitter漬けになっちゃいそうだしっ!

>ロボ氏
普段アレな,御商売やってらっしゃる”学者”を見慣れた目には”これだからキョージュ様は”みたいに思いがちですが。
普段の学者は専門領域の話を延々とやっているせいで,そもそも一般人の目には触れないのです。
目立ちたかったり,商売の都合だったり,まあその学問以外の目的があってこそ露出するものだと私は理解しています。

あと「研究者相手ならCiniiとかKAKENとか見なさい」とかいうのは結構有用とおもう。某EM菌の人の惨状とか。
私なんか,超カタイ所にしか書いてないから業績数は少ないが―それ,「どういう種類の執筆者か」という情報でもある。…あまり正直なところを言うと差障りがあるが(苦笑)。
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