空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

何か確認するポイント等ありましたら@robo7c7c

2011-08-03 17:45:14 | Weblog
 何か研究者に出会って,その人の何者であるかを知りたいときには以下のサイトで検索をかけるがよい:

Cinii 論文情報ナビゲータ
Kaken 科学研究費補助金データベース

 そこで

福島民報 バクテリアの除染に効果 飯舘の水田、線量が大幅低下 2011/08/03 09:42

南相馬市、飯舘村で微生物を活用した除染実験に取り組んでいる田崎和江金沢大名誉教授(67)は2日、放射性物質を取り込む糸状菌のバクテリアを発見した同村長泥の水田の放射線量が大幅に下がったと発表した。南相馬市役所を訪問し、桜井勝延市長に報告した。水田の表面は毎時30マイクロシーベルトの高い放射線量だったが、7月28日には1桁台に下がっていた。水田では無害のバリウムが確認されており、田崎名誉教授はバクテリアの代謝によって放射性セシウムがバリウムに変わったとみている

 この田崎和江先生は地道なテーマで科研費を当てているようである(1990年代~)。バクテリアの代謝によって…の行は―どうだろう。「Cs137/134のβ壊変でBa137/134になるんかな。どうなんだっけ。生命活動が核種の変換に寄与する可能性自体は否定できないけど肯定もできない。(@Tamiful07 殺戮者たみふる,2011/08/03)」―生命活動はそのまま核種変換に寄与するものかどうか。

 つうかこのたみふる氏の書き方は通例の学者的書きようで,実際上『出来るんだったらやってみやがれ』的意味を持つのではあるまいか。私が同じような言い回しをつかうばあいを考えれば―『それを論文にするのはやめておけ』という意味だと思う。

 バリウムの生成については―あんまり大量に見つかっても,そのなんだ,高濃度の放射線汚染を示唆するような気がして気分が悪いが,物理の法則に適うことではあろう。

 注目点は以下のところで(ともに福島民報):

同村長泥の放射線量が高い湿地で根を伸ばしたチガヤも確認した。根にはカビ類が大量に付着、除染効果との関係を調べる予定

南相馬市原町区の水田では、バクテリアと、粘土のカオリナイト、ケイ藻土の粉末を使って稲を栽培、除染効果を確認している

 ―バクテリアが直接放射性元素を崩壊させるというなら,なんでチガヤの根に付着したカビ類を調査せねばならないのか? なんでカオリナイト,珪藻土だなどという,名前を聞いただけでも多孔質構造っぽい物質を使わなければならないのか?

 ―寧ろ福島民報の記者氏の物理学的素養が低く,田崎先生の談話を誤解したか・(同様の理由で不正確なものとなった)市役所の説明・発表を批判的に理解することができなかったかが,ちょっと謎な記事になった理由ではあるまいか。

 ロボ氏の見つけた

富山新聞 放射性物質吸い取る細菌 タンザニアで発見 【5月27日03時02分更新】

田崎和江金大名誉教授は26日までに、タンザニアの首都ドドマ近郊で、ウランなどの放射性物質の濃度が高い土壌中に、同物質を吸着する細菌が生息していることを発見した。福島第1原発事故後、放射性物質で汚染された土壌の処理が大きな課題となる中、「微生物が放射性物質を固定して拡散を防ぐ『ミクロ石棺』として役立つ可能性がある」としており、今月中に福島県で土壌調査を実施する

『ミクロ石棺』との表現がある。

電子顕微鏡による観察では、体長数百マイクロメートル(マイクロメートルはミリの1千分の1)の細長い糸状菌の生息が確認された。菌体の周りには粘土鉱物の塊が多く付着しており、この粘土は周りの土壌に比べて極めて高濃度のウランやトリウムなどの放射性物質を含んでいた

 放射性物質を身の周りに纏う菌に注目していることがわかる(田崎先生の研究は重金属を吸着する菌類をめぐるものが主軸であることに注意)。

福島での調査に向け、田崎名誉教授は「自然の中にはもともと大きな環境修復能力が備わっている。微生物の力を生かした汚染土壌処理の可能性を探りたい」と意気込んでいる

 無茶苦茶なほど多孔質なカオリナイト,珪藻土を使用し,放射性物質を収集する菌を使い,『ミクロ石棺』という表現まできたなら―

 ―常識的にはカオリナイト・珪藻土に当該の細菌を蔓延らせ,周辺の放射性物質を吸着させ,吸着が一通りいったところで(表土付近に散布した)珪藻土等を回収する―という,まったく奇矯でない,恐ろしく地味な計画なのではあるまいか,これ。

 少なくとも富山新聞の記事では,放射性核種を直接分解促進するという話ではない。あくまで『石棺』に閉じ込めるだけのことだ。

 そんなわけで確認すべきポイント:「お宅の記者はきちんと科学教育を受けてきていますか?」。文系博士からのチェックポイント。

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