田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

未脱出個体

2008-10-05 | ウミガメ
アカウミガメ未脱出個体
10月4日午前10時津市河芸町の芦原海岸。
9月26日に、多数の子ガメが地上脱出したアカウミガメの産卵巣の孵化率調査が、この日行われた。巣穴を掘り始めてすぐ、10㎝程の深さの砂の中に1匹の子ガメを見つけた。28日の夜、未脱出の個体がいないか確認した時には見つからなかった。その後孵化したのだろうか。
卵の殻まで、深さは約35㎝あった。砂の中、たった一匹で地表近くまで這い上がってきた子ガメ。自力で地上脱出できたのかは不明。奇形であった。
弱々しいが、湿った砂をいっぱいくっつけて海へ向かって歩き出す。海浜植物や人々の足跡だらけの砂浜を右往左往する。日差しが強く体表の乾燥が目立つ。20分後、ようやく3メートル程進み動けなくなってしまった。子ガメたちは通常日が落ちてから脱出する。その理由の一つが良く分かる気がする。私は、子ガメが明るい内に海に帰っていくのを数回見ている。いずれもその産卵巣の先頭で、兄弟に先立ち地上脱出する強い個体というイメージがある。最後に、たった一匹で砂の中を這い上がってきた子ガメには、お日様の下、海に帰る余力が無かったのだろう。
頭をゆっくり上げ下げするだけとなった子ガメを保護。日が落ちるのを待って海へ返した。
夕凪、子ガメは時折海面に頭を浮かび上がらせ、息つぎをしながら遠ざかっていった。
孵化率調査の結果
産卵数156個。未脱出生存1。未孵化4個(未発生1、発生初期死亡2、発生後期死亡1)。
孵化率97.4% 脱出率96.8%

芦原海岸南で、9月13日に孵化した産卵巣の卵数も約150。河芸町内におけるアカウミガメの一回の産卵数は調査を始めた2001年度以降で最高。学生たちから聞いた話では、産卵巣を発見できないまま、脱出個体が確認できたのが2ヶ所(鈴鹿市と津市)あったという。この2ヶ所では、漂着ゴミに行く手を阻まれて身動き取れなくなった子ガメが発見されたことにより、ようやく産卵が分かった。
2008.10.4

アカウミガメ未脱出個体
コウボウムギの葉が子ガメの首に絡みつく。子ガメはただただ前に進もうとする。どうにか自力で逃れたが、ここで体力をほとんど消耗してしまったようだ。

アカウミガメ未脱出個体
巣穴から出て20分以上炎天下に居る。まだ巣穴から数メートルしか離れていない。子ガメの体が乾燥し始めた様子。前肢が動かなくなってきた。もはや自力では海にたどり着けない。

アカウミガメ未脱出個体
漂着ゴミの中から、バケツを拾ってきて、海水を入れる。その中に子ガメを入れて、直射日光に当たらないように覆いをする。このとき、子ガメの奇形に気づいた。左右が非対称である。甲羅に歪みが見られる。前肢の付き方も異なる。2003年度の河芸町の未脱出個体の中にも奇形が見られ旋回歩行した。写真上は発泡スチロールの箱に移した子ガメ。蓋には穴を空け約10㎝の深さになるよう海水を入れた。水温は20℃~25℃に保つ。元気に泳いでいる。不自由なく見える。

アカウミガメ未脱出個体
三重大生4名とS女史たちにより行われた孵化率調査の様子

アカウミガメ未脱出個体
未孵化卵を調査する。発生後期に死亡した個体。後肢と前肢で黄身を抱きかかえている。
体の一部に凹みが見られた。先に孵化した子ガメたちに踏まれたのか。死亡した後凹んだのだろうか。標本にした。卵の中で子ガメが育っている様子を紹介したい。

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2 コメント

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そんなにカメが… (KOH)
2008-10-06 23:09:41
川越の高松海岸も調べているのでしょうか。
最近、キノコとドングリ目当でよく出かけています。
調査 (田中川)
2008-10-08 08:42:08
地元住民からの情報が学生たちに届けば、彼らは動いてくれると思います。
高松海岸では今年は上陸も確認されていないのではないでしょうか。

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