田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

砂浜のハマベニクバエ

2011-01-08 | ハエ目(双翅目)

ニクバエ科のハマベニクバエ Leucomyia alba (Schiner, 1868)

2010.10.6津市の芦原海岸で撮影していたハエが,どうやらハマベニクバエのようだと判ってきた。会いたいと思っていたハエではあるが,図鑑に載っていて,標本写真は見ているのだが,生態写真についてはネット検索してもなかなか出てこないので,どんなものなのかがハッキリしていなかった。

三重県内の記録は,吉田 (2008)が本種の学名をSarcophaga (Leucomyia) alba (Schiner, 1868)とし,津市御殿場海岸で採集している。
三重県レッドデータブック2005では学名をLeucomyia cinerea(Fabricius)とし,「海浜の砂地に生息する。関東の一部の地域では極度に減少したとの報告があり,調査が必要である。」からと情報不足に選定している。文献が挙げてないので,当時は県内での記録が無かったのであろう。すると,吉田 (2008)の記録が三重県初の記録だと思われる。他県の人に初記録を許すとは三重県人としては恥ずかしい話である。

京都府のレッドデータブック2002では学名をLeucomyia cinerea (Fabricius, 1794)とし,「中形種。ニクバエの仲間の中で、顕著に白色がかった異例な体色をしているので、容易に判別できる。東洋区から南西諸島を経て、本州にまで広く分布する。」本種は,「京都府でも多いとはいえ、主に見られるのは自然度の高い環境であり、この環境が失われればたちまち減少する危険性が高い。」として要注目種に選定している。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ハマベニクバエ Leucomyia alba (Schiner)は「体長約8㎜。小形で灰白色の美しいニクバエで,♂♀共に両複眼の間隔が甚だ広い。端刺は基部に極めて短い側枝がある。後背中剛毛は5対で,後の2対が著しく長い。本州以南の海岸に普通で,6月頃から9月頃までが多い。成虫は海岸の波打際に多く,海岸に打上げられた海藻や動物死体,または野菜屑などの上に止まる。幼虫は海岸に打上げられた動物死体などに発生する。」などとある。

村山 (2006)は「個体群の粗密が激しく,局所的に砂の上に多数が群がっていた」という。
吉田 (2007)は本種の学名をSarcophaga (Leucomyia) alba (Schiner, 1868)としている。

祝 (2008)は本種の学名をSarcophaga (Leucomyia) cinerea(Fabricius,1794) とし,「個体数も多く,砂浜上に止まっている個体が確認されており,砂浜にオキアミを置くと本種が集まってくる。白い砂浜では本種の白っぽい色彩がカモフラージュになっており,海浜植生の有無は生息にあまり関係無いようで,砂浜があれば生息している可能性が有る。」としている。

本種の学名は変遷が著しい。

文献
大石久志 (2002) ハマベニクバエ.京都府レッドデータブック2002 上 野生動物編:427,京都府.
大石久志・蒔田実造 (2006) ハマベニクバエ.三重県レッドデータブック2005 動物:353,三重県.
村山茂樹 (2006) 葛西臨海公園に出現したニクバエ(東京都新記録のハマベニクバエの報告).はなあぶ,(22):81.
吉田浩史 (2007) ハマベニクバエの兵庫県からの採集記録.はなあぶ,(24):62.
祝 輝男 (2008) 九州における海浜性双翅目について.はなあぶ,(25):49-57.
村山茂樹 (2008) ハマベニクバエにみられたイネ科植物への集合行動.はなあぶ,(25):48.
吉田浩史 (2008) 紀伊半島におけるニクバエ科の採集記録.はなあぶ,(25):46-47.


芦原海岸のハマベニクバエ 2010.10.6


島崎海岸のハマベニクバエ 2010.7.8


島崎海岸のハマベニクバエ 2010.7.8


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