田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

砂浜のツルギアブ

2008-06-05 | ハエ目(双翅目)
ツルギアブsp
2008.6.3 豊津海岸 夕方にネムノキで休むツルギアブの仲間 ♂
彼の背中側は海浜植物の少ない砂浜。

1年前から近くの砂浜海岸に白いハエがいることに気がついた。
いろいろ調べてみたが、種名までたどり着けなかった。
ハエ目のツルギアブ科までしか分からなかった。

ツルギアブの仲間は、雄交尾器の形状や前胸腹板の毛の生え方などを調べないと正確な種の同定が出来ないという。
三重県レッドデータブック2005には、ナギサツルギアブとヨシコツルギアブの2種が絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。どちらも日本固有種である。
Acrosathe属の「種は互いに非常によく似ていて、正確な判別には雄外部生殖器を調査する必要がある」としている。ツルギアブ科は9属14種があり、その内Acrosathe属には、ナギサツルギアブ、ヨシコツルギアブ、ハマツルギアブ、タシマツルギアブの4種がある。別属のシロツルギアブやショージツルギアブも白っぽいようだから、これら6種の内のいずれかであろう。
ナギサツルギアブとヨシコツルギアブはいずれも「小形で体形は細く、後方に向かって狭まる。雄の腹部は美しい銀白色の毛で覆われる。雌では灰褐色に黒色の斑紋を装う」と同じ特徴が記されている。
また、タシマツルギアブについても京都府では絶滅危惧種とされ、その形態について上記と同様の説明がされていて、「自然度の高い海浜に生息する」という。
『札幌の昆虫』によると、ナギサツルギアブの体長は9~10ミリで平地で見られ、「ナギサツルギアブによく似たタシマツルギアブ」は「前額下方部両側部に0~2本の毛がある」という。また、同書ではシロツルギアブには「前額下方と顔の側部に白く長い毛がある」としている。
ナギサツルギアブは、自然度の高い「海岸や河口の砂地で草本に覆われた環境に生息する。すなわちヨシコツルギアブよりはより内陸に生息」し、三重県内では川越町の高松海岸でしか記録されていない。京都府でも絶滅危惧種とされ、「水辺のススキやヨシの生い茂る砂地に限って生息し」ているという。
ヨシコツルギアブは、「近年まで九州からのみ知られる種であったが、最近本州で数か所の生息地が発見され」、「海浜性で、コウボウムギの群落やその周辺の限られた範囲にみられ、それより内陸には生息しない」とし、「前・中腿節の腹面に1~2本の剛毛をもつことで、比較的容易に区別できる」という。
ヨシコツルギアブの三重県内の分布記録はこれまで津市内の河芸、白塚、町屋浦、御殿場の各海浜であったが、『鈴鹿市の自然』によれば鼓ヶ浦海岸でも2006年に記録されている。

さて、私が出会った3ケ所のツルギアブたちはいずれの種であろうか。砂浜で撮影した下の2枚の写真はこれまでの分布記録と生息地の環境からヨシコツルギアブの可能性が高いと思われるが、写真による同定は不可能ということなので永遠の謎である。個体数はすごく少ないのに、捕獲しないといけないのかなあ。

ツルギアブsp
2008.6.3 町屋海岸 コウボウムギ、ハマボウフウ群落周辺にて ツルギアブの仲間 ♀

ツルギアブsp
2007.6.20 豊津一色海岸 ハマニガナ、コウボウムギ、ハマボウフウなど海浜植物群落周辺にて
ツルギアブの仲間 左♀ 右♂
「体形は細く、後方に向かって狭まる。雄の腹部は美しい銀白色の毛で覆われる。雌では灰褐色に黒色の斑紋を装う」

ヤマトツルギアブ
ナギサツルギアブ覚書
シオサイツルギアブ覚書
ツルギアブ科Acrosathe sp.の訪花