十和田市駅のバスターミナルのプラットホームに下り立つ。まずは道路の側に出て、ホームに停まっている電車を撮影する。
今日の昼食は2回。それも駅そばと決めている。バスのプラットホームとつながっているコンコースにあるそば屋さんで玉子そばを食べる。
2階の電車の出札窓口に行く。間もなく電車が出る時間だが、待つ人はそう多くはない。
電車が出発したのを見計らって、記念切符を買う。「鉄道むすめ」の青森版ができたらしく、こちらまでついでに買ってしまった。三沢までの乗車券も、窓口で硬券のものを売ってもらった。
出札窓口の戸が閉まると、静まりかえった感じになる。
十和田市駅に背を向けて歩き出す。ショッピングセンターと一体化した駅というのは、いろいろと可能性があったようにも思うが、それさえも思うに任せないような現実というものが立ちはだかったのだろう。
十和田の中心市街地を歩くことにした。こちらは次年度に向けた「下見」の意味合いもある。十和田市を訪れるのは、昨年の11月に、地域生活演習という1泊の野外授業に同行させてもらって以来だ。そのときの印象が面白かったので、今年はより深く勉強したいと思う。
天気は晴れてきたが、相変わらず風が冷たい。稲荷神社の大きな鳥居を見ながら進む。
十和田市の中心街は、立派なアーケードがあって、碁盤の目のような通りの配置になっている。こんなところも北海道に似ている。シャッターの下りているお店も多いが、一方で再開発で新たに店舗がオープンしたところもある。
電車の時間を勘案しながら、行けるところまで行って引き返す。駅までは行きとは違ったルートをたどる。途中で趣のある教会に出くわした。
あとで調べてみたら、1932年築、しかも宇都宮のカトリック松が峰教会や神田のカトリック教会を設計した、マックス・ヒンデルによるものとのこと。外壁などがきれいになっているので、ぱっと見ただけでは気づかなかったが、すごいものがあるのだなあ。
再び十和田市駅に戻ってきた。同好の士と思しき人が10人ほど。思ったほど多くはない。出発まではしばらく時間があるので、切符に鋏を入れてもらい、跨線橋を渡り、ホームに出て電車の写真を撮る。
(レールは中心市街地とは反対の方向を向いて途切れている)
前のほうの座席に座って、車窓風景を車内から撮る。11月に来たときには、朝早くに乗りに行った。でもそのときには朝食の時間までに宿に帰らなければならなかったから、十和田市から古里まで乗って、そこから十和田市へと引き返したのだった。だから全線乗り通すのは今日が初めてである。
(写真が傾いているのではなくて、電車が傾いてホームに停車する)
七百ではカメラを持った乗客が数人下車した。側線に停まっている車両群も魅力的だが、ここは先を急ぐことにして、車内から無理な角度でカメラを向ける。凸型の電気機関車も魅力的だが、一番見たかったのは、緑色の東急からやってきた電車である。
車窓の風景には大きな変化はない。道路が併走していて、これなら車との競争も厳しかろう。社名には「観光」とあるけれど、電車そのものには観光的要素は乏しい。もっとも、大曲を出て、広大な古牧温泉の敷地内を走るあたりはなかなか楽しい。
三沢駅に到着した。ホームのたたずまいも駅名板も、何ともいい感じである。
さて、今日二度目の駅そばである。こちらは三沢の駅そばと同じ経営で、メニューもほとんど同じである。だがお店の趣はこちらのほうがずっとある。
今度はスペシャルそばを食べた。
天ぷら・玉子・山菜が載っている。それに青のりもかかっている。十和田市のほうでも青のりがかかっていたから、全メニューにかかっているのだろう。
駅舎を出て、道路のほうから眺めてみる。コンクリートの飾りっ気のない建物だが、それはそれで味わいがある。年月を経ての汚れもまたある意味装飾だ。
これが最初で最後の、通しでの乗車機会だ。来年度に十和田市を訪れるときには、もうこのルートでの移動というのはできなくなる(代替バスはもちろん走るのだが)。
このような形で地方鉄道の終焉を見ていると、やはり弘前のことも気になってくる。一時はLRTへの注目などで、鉄道の存在意義が見直されてきたように思っていたけれど、そうした流れは全国共通のものではないし、またいささか退潮気味でもあるように思う。
青い森鉄道の列車を待つ。なぜか青い森鉄道と十和田観光電鉄の接続もあまりよろしくなかった。この時間帯はまずまずである。701系電車ではなく、大湊からやってきた、「快速しもきた」のディーゼルカーに乗る。やっぱりボックスシートはいい。
雲の流れが速い。太陽はあっという間に西に傾いている。堂々たるかつての東北本線の複線区間を、キハ101が快走する。エンジン音も心地いい。
列車は定刻通りに八戸駅のホームにすべり込んだ。1時間半弱で移動できるところを6時間かけてやってきた。たった一度きりのぜいたくな旅である。
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