五行目の先に

日々の生活の余白に書きとめておきたいこと。

長野電鉄屋代線(その2)

2012-04-14 17:52:57 | 鉄道

 須坂駅に戻ってきた。跨線橋の上に人だかりがある。到着する列車を撮影しようという人々のようだ。遠くから踏切の音が聞こえてきたので、まもなく到着のようだ。長いこと須坂駅構内に留置されている2代目OSカー10系と、屋代線の電車が並ぶ瞬間を待つ。



 改札口からホームに下りて、あちこち見て回る。ある程度近代化されてはいるものの、随所に古びた感じが残っている。



 乗り込む電車は、先ほどと同じ編成のようだ。それにしてもこんなにきれいな電車だったっけ?と思う。弘南電車で見慣れている、元東急のステンレスカーよりもはるかに美しい。デザイン的にもよくできた電車だったのだな、と思う。



 最後尾の、運転席直後の場所に陣取る。ここから前面展望ならぬ後面展望を楽しもうと思う。一応ワンマン電車ではあるが、たくさんのお客さんをさばくための乗務員は乗車している。ただしこちらの運転席のほうに入ることはなさそうだ。



 列車が動き出す。須坂を後にして、しばらくはまっすぐな線路を進んでいく。この独特の架線柱が並ぶ眺めもなかなかいいものである。





 時折、車両のあちこちに目を向けてみる。ドアに手を挟まれないよう注意を促すステッカーの男の子の涙も、何だか今日は違った意味での涙のようにみえてきた。



 信濃川田では、元成田エクスプレスの「スノーモンキー」2100系とすれ違った。普段ならこの線を走ることはまずない車両である。これまた廃線景気によるものらしい。左に並ぶ、小布施から移動してきた古い車両たちの行く末も気になるところである。



 いくつかのトンネルを通過する。今まで意識したことはなかったが、馬蹄形の石積みのトンネルで、これがまた歴史を感じさせる。







 しっかり景色を目に焼き付けておこう、と意気込んでいた往路と比べると、復路はただぼんやりと風景を眺める感じで進んでいく。それでもふと駅舎に目をやったりすると、子どもたちの書いた惜別の絵が飾ってあったりして、感傷的な気分になる。



 どんな小さな駅でも人の乗り降りがあり、カメラを向けて見送られる。今まで廃線になる直前の電車に乗りに行くということがほとんどなかったから(その意味でこの2ヶ月は僕にとっては異例のこと続きだ)、何とも新鮮な経験である。



 線路はやがてしなの鉄道の線路と併走して、屋代駅に到着する。



 跨線橋には、4月1日から屋代線に代わって走り出すバスのPRポスターが掲出されている。廃線の寂しさとは対照的に、こちらは明るい雰囲気作りに満ちている。バス転換の成否というのは、そう時間を置かずに明らかになろう。



 跨線橋を渡って、改札口に向かう。オンボロの跨線橋はどうなるのだろう。



 改札口を出て、しばらく待合室のなかをうろつく。こちらの時刻表も運賃表も、まもなく過去のものとなる。



 廃線は残念なことだが、話しを聞くところによれば、自治体も会社もいろいろと策を講じての結果だそうだから、仕方のないところなのだろう。盛大な見送りのなかで、ゆっくりと往復を楽しめたことは、とてもよかったと思う。そして、身近なところで頑張っている路線の今後というものについても、思いをめぐらせる。どうしたら活かし続けることができるだろうか。

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