Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

4月のBGM

2013-04-30 | 音楽
2013年4月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■波の数だけ抱きしめて/Original Soundtrack
今月通勤BGMにしていた、中山美穂と織田裕二共演の映画「波の数だけ抱きしめて」サントラ盤(映画は観たことないなぁ)。J・D・サウザー、バーティ・ヒギンズなどなど80年代初めのAORのコンピ盤であるオシャレなサントラ。ジェームズ・テイラーとJ・D・サウザーの「憶い出の街」に朝から泣ける。バーティ・ヒギンズの「カサブランカ」の歌詞って、今改めて聴くとドラマがある。日本語カヴァーのイメージが強い曲だけど、ハンフリー・ボガードの映画の世界観とそれを観ていて恋におちた恋人の物語。「キー・ラーゴ」もそうだけど、なんてセンスがいいんだろう。・・・と思ったら、バーティ・ヒギンズって、あの詩人ゲーテ(「若きウェルテルの悩み」)の子孫なんですと!
波の数だけ抱きしめて Kiwi FM ORIGINAL SOUNDTRACK(コンプリート版)

■ルミナス/Claris
昨年、劇場版「魔法少女まどか☆マギカ」を観たのだが、長男ルークが最近「まど☆マギ」のゲームをし始めた。夜、部屋に僕を連れ込んだので、何かと思ったらPSPのゲームを見せてくれた。RPGとダンジョンゲーム、しかも因果値が溜まっていく設定がアニメのストーリーと同じ。またアニメとは違った結末やらが出てくるようだ。ふーん。ゲーマーさんでない僕にはよくわからんが。何にしても「ルミナス」はいい曲。
ルミナス(期間生産限定アニメ盤)

■Vocalization/森川美穂
中古盤で入手。だってー、Blue Water聴きたかったんだもん。チャラチャラしたギターのカッティング、もこもこしたシンセベース、残響音のあるスネア・・・80年代末期から90年代初めのかっこいい音ってこんなんだったよ、うん。それにしてもこの人のヴォーカルは素晴らしい。この歌唱力を買われて、「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」に出演したと最近知った。えー?どこどこ?。
Vocalization

■はぐれそうな天使/来生たかお
映画「セカンドバージン」で鈴木京香がハミングするのが何の曲だか最後までわからなかった。エンドクレジットでやっと「はぐれそうな天使」だとわかったのだけど、それ以来なーんか繰り返し聴いてしまう。岡村孝子が歌ったヴァージョンは、まさにリアルタイムだったはずなのだが、あの頃真面目に聴いてなかったからかな。来生たかおの切ないメロディーはいいね。カラオケで歌いたいけど、来生たかおの声って僕には低すぎるんだよねぇ。
ザ・プレミアムベスト 来生たかお[SHM-CD]

■ゴールデン☆ベスト/中原めいこ
大学時代に所属していた音系サークルには女声ボーカルのバンドがいっぱいあったけど、中原めいこをコピーしてるところは複数あった。僕のバンドでも「ダーティペア」のEDテーマだった宇宙恋愛(スペースファンタジー)など数曲やった。「気まぐれオレンジロード」のOPだった鏡の中のアクトレスを選曲会議に出したこともあったっけ。「マクロス」の天使の絵の具(飯島真理)もやったから、今思うとあのバンドはアニソンバンドだったのだ!(恥)。
ゴールデン☆ベスト

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アルファヴィル

2013-04-29 | 映画(あ行)

■「アルファヴィル/Alphaville Ou Une Etrange Aventure De Lemmy Caution」(1965年・フランス=イタリア)

●1965年ベルリン映画祭 金熊賞

監督=ジャン・リュック・ゴダール
主演=エディ・コンスタンチーヌ アンナ・カリーナ ラズロ・タボ

 アルファ60というコンピュータによってコントロールされている都市アルファヴィル。そこでは人間は喜怒哀楽の感情を持たないようにそうした言葉を削除されている。それに反した人々はプールで公開処刑されるのだ。主人公の探偵はその世界からアルファ60の開発者であるブラウン博士の娘ナターシャを連れ、外の国へと脱出する。管理社会の恐怖を冷ややかに描いている。製作時から約20年後の1984年という設定。管理社会の恐怖を描いたジョージ・オーウェルの「1984」の引用なのかな。

 設定とお話だけで近未来SFを成立させてしまう何とも強引な映画。なれどハードボイルド小説的な展開とアンナ・カリーナの存在感で観客をグイグイ引っぱっていく。商業映画を嫌うゴダールだけど、この映画は彼の作品中でもエンターテイメント色が強い。ゴダールというブランドを敬遠する人々にも、受け入れられやすいのではないだろうか。それはきっと主人公によってナターシャが初めて「愛」を口にし、かすかな微笑みをみせるラストシーン、その静かなる痛快さ故であろう。特撮や特別なセットなしにSF世界を構築するアイディアは見事。第三級誘惑係という役割も面白いよねぇ。「お疲れでしたらお休みください。」なんて余計な世話を焼いて、「一緒にお風呂にお入りします。」だもんね。「物語842を。」って人を笑わせておいて罪を問うのも面白い。「お元気ですか?」「元気です。あなたは?」に続くあいさつを、前を省略して先に仕掛けていく(しかも時には握手を求めながら)。唐突で不自然な「元気です。ありがとう。」という挨拶は、コミュニケーションの合理化が行き着くところを描いているのだ。電子音と気味悪いアルファ60の声は強い印象を残してくれる。

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ジャン=リュック・ゴダール

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フットルース - 80's Movie Hits ! -(その4)

2013-04-28 | 80's Movie Hits !

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

「フットルース」の第4回(第1回第2回第3回)。今回はボニー・タイラー。

■Holding Out For The Hero/Bonnie Tyler
from「フットルース/Footloose」(1984年・米)

 ボニー・タイラーといえば”女ロッド・スチュワート”という表現がやたらとつきまとう。確かにハスキーな女性ヴォーカリストではあるが、初期はロック色はさほど強くなかった。80年代に彼女が成功したのは、孤高の名プロデューサー、ジム・スタインマンとの出会いによるものであろう。アルバム Faster Than The Speed Of The Light は、スタインマンの手による収録曲の数々が実にクオリティが高い。その中から大ヒットとなった Total Eclipse Of The Heart(愛の翳り) はドラマティックなバラードで、コーラスをまるで楽器の一つとして扱うスタインマンのアプローチが実に見事。かくいう僕も、この曲との出会いによってスタインマンの大ファンとなった。
Faster Than the Speed...

Bonnie Tyler - Total Eclipse of the Heart


 ボニー・タイラーはその後もスタインマンのプロデュースでアルバムを製作、また Making Love Out Of Nothing At All(渚の誓い) を始め、他のアーティストにスタインマンが提供した曲を歌い継ぐこととなる。

 そんなスタインマン作品でもあり、80年代のボニー・タイラーを代表するヒット曲が、この Holding Out For The Hero(ヒーロー) である。映画「フットルース」では主人公が不良たちとチキンレースをする場面に使われて、強い印象を残す。デジタルビートにシモンズのタムが重なり、スタインマン作品には欠かせない力強いピアノがそのリズムの上で弦を唸らせる。さらにぶ厚いコーラスワークが加わり、いかにも”らしい”アレンジである。

 しかし日本では「フットルース」の収録曲としてよりも、ドラマ「スクールウォーズ」の主題歌として朝倉未希がカヴァーしたことでお馴染みであろう。この曲を聴くと山下真司の顔とラグビー場面を思い出す方も多いと思う。2004年にその映画化「スクールウォーズ HERO」が製作されたが、ここでももちろんこの曲は使われている。こちらは大黒麻季がパワフルに歌う。

 ところでこの曲は「フットルース」公開当時に全米トップ10ヒットとなったのだけど、86年に全英チャートで2位の大ヒットとなっている。これはイギリスのテレビ番組でこの曲が使われた為で、アメリカン・フットボール番組のテーマ曲だったとか。なんか日本人にはうなずける話だが(笑)。

 実はこの曲には元ネタがある。ジム・スタインマンの唯一のソロアルバム Bad For Good の一曲 Stark Raving Love がそれだ。イントロに全く同じピアノのリフが流れる。この焼き直しが Holding Out For The Hero だったのだ。このアルバムはミートローフのアルバムとして製作される予定だったのが、彼との決別によってソロアルバムとして発表されたものである。その後90年代に再びミートローフとタッグを組んだ為、収録曲の多くが広く世に知られることとなったのだった。興味ある方は是非お聴きを。


名盤です。

Bonnie Tyler - Holding Out For A Hero (Official HD Video)


※Bonnie Tylerの歌が流れる80年代の主な映画
1984年・「フットルース」 = Holding Out For The Hero
1984年・「メトロポリス」 = Here She Comes
1986年・「処刑ライダー」 = Matter Of The Heart
1988年・「ショート・サーキット2 がんばれジョニー5」 = Holding Out For The Hero


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最後の猿の惑星

2013-04-27 | 映画(さ行)

■「最後の猿の惑星/Battle For The Planet Of The Apes」(1973年・アメリカ)

監督=J・リー・トンプソン
主演=ロディ・マクドウォール ナタリー・トランディ セヴァン・ダーデン クロード・エイキンズ

衝撃の第1作(1968年)をテレビの深夜放送で観たのは高校生のとき。これ以上にない絶望的結末の第2作、未来から猿がやってる第3作、猿と人間との戦いが始まる第4作・・・と観てきたが、何故か最後の第5作だけは観ていなかった。新聞のテレビ欄を見ると、深夜枠で第5作「最後の猿の惑星」がっ!やっと観られるっ!。これで自分の中でこのシリーズが完結・・・とわくわくしながら鑑賞。

核戦争の後、猿のリーダーであるシーザーの下に村がつくられ、猿に支配されている立場の違いこそあれど、協力する少数の人間とともに暮らしていた。シーザーは自らのルーツや世界の過去を知るべく、廃墟と化した街に残された資料館へと向かう。ところが、街の地下には武装した人間たちが生存していた。シーザーたち一行を見つけた人間たちは猿の村を殲滅すべく、スクールバスやジープに武器を満載して攻撃してくる。一方、猿の村でも平和的な共存を望まないゴリラの一派との対立が起こっていた・・・。

あれだけスケールの大きかったSF大作の完結編。だが、唖然とするくらいにこぢんまりとした映画。村と村の抗争が2時間近くに渡って描かれ、その結末として第2作で示された絶望的未来とは異なる結末が示される。小さな村が戦ったくらいで、唐突にこの結論はいかがなものか・・・とも思ったが、映画で描かれた物語からウン百年経ってるとして示される結末だから、その後シーザー閣下がアレクサンダー大王並みの活躍があったとか、いろいろ想像してしまう。それでも、この第5作は大作とは呼びがたいショボさが何よりも印象に残るから、評価はどうしても悪くなるのは理解できる。満足でしたか?と問われれば首をかしげてしまう。好き嫌いもあるし、映画に何を求めるのかで満足度も差が出る映画だろうけど。

この映画で強く印象に残るのは「猿は猿を殺さない。野蛮な人間とは違う。」という言葉。この考えをもっていたことが、ゴリラ一派との対立から起こった事件から、「善悪と死」という人間社会で言う死刑論に通ずる命題に猿たちは直面する。社会も進化していく中で直面するこのエピソードがあるから、この映画は単なる猿と人間のドンパチ、おとぎ話では終わらないのだ。2011年にリメイクされた「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」は、理詰めと表現の巧みさが光る秀作。こういうリメイクが作られているのもオリジナル5作品がシリーズとして愛されているからこそだ。

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再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ

2013-04-25 | 映画(さ行)

■「再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ/Bright Lights Big City」(1988年・アメリカ)

監督=ジェームズ・ブリッジス
主演=マイケル・J・フォックス キーファー・サザーランド フィービー・ケイツ

 観ていなかった80年代もの観るゾー!ということで、本作です。ドラッグ依存で身を持ち崩すお話としては、同時期に西海岸を舞台にした「レス・ザン・ゼロ」があるけれど、僕は「再会の街」の方がずっと好き。というのはラストシーンが好きだから。同じように”失業しました今からどうする?”というお話でも、親のスネかじりまくって、彼氏とイチャイチャしてやがる「リアリティ・バイツ」のラストで、僕は老婆心的感慨を持った。それに比べて、今までの生活から目覚めて「一から学び直すのだ」という前向きな決意で終わるこっちの方が断然いい。サングラスを焼きたてのパンと交換し、、見てくれだけのええかっこしいの生活から変わろうとする主人公が表現されるいい場面だ。こだわっていた”今まで”から”現実”に向き合おうとする主人公を応援したくなる。何度も出てくる昏睡胎児の挿話もモラトリアム型の青年たちや”今まで”にこだわる主人公を象徴している。胎児と会話する場面には一瞬ギョッとしたけど。

 マイケル・J・フォックスは撮影当時29歳で、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がかなり若作りだったから年相応の役柄ともいえよう。おまけにヴィッキー役のトレイシー・ポランとは、この後プライベートでパートナーとなったとか。パーティー会場から涙ながらに自分の弱さをぶちまける電話の場面、他の映画のマイケルとは違って格好悪い。でも人間味のあるいい場面だ。サントラもちょっと渋めで素敵だ。音楽担当はスティーリー・ダンのドナルド・フェイゲン。エンドクレジットにかぶさる Century 's End はAOR好きにはたまらない。他には80年代を描写すべく、プリンスが提供した新曲 Good Love や、80年代ユーロディスコにはお約束のニュー・オーダー True Faith(「アメリカン・サイコ」でもディスコで流れてましたよね)等々。

 ただ、仕事スッポかしたりする主人公に自業自得じゃん、という冷ややかな思いは観ていてずっとあった。そういう面では感情移入しずらかったのだけれど、とにかくラストシーンが評価につながっている。終わり良ければすべて良し。それにしても日本の宣伝文句「摩天楼シリーズ第2弾」!ありゃねぇだろ。

(2002年筆)

コメント (2)
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アサシン

2013-04-24 | 映画(あ行)

■「アサシン/The Assassin (Point Of No Return)」(1993年・アメリカ)

監督=ジョン・バダム
主演=ブリジット・フォンダ ガブリエル・バーン アン・バンクロフト ハーベイ・カイテル

 リュック・ベッソンの「ニキータ」をハリウッドリメイク。好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、「ニキータ」とは違う明快さがこの映画の魅力かな。これは何でもソツなくこなす映画監督であるジョン・バダムの仕事だからか。されどアクションがツボでもなく、主人公マギーの苦悩も描かれるがどうも今ひとつ深みがない印象も。でもオリジナルと大きく印象が違うのは、ガブリエル・バーン扮する上司ボブとのエピソード。

 この映画でのブリジット・フォンダは他の映画ではないくらいに熱演。そこは確かに魅力なのだが、「アサシン」で最も”いい役”だったのは何と言ってもガブリエル・バーンだろう。オリジナルのチャッキー・カリョをしのぐかっこよさ。マギーへの恋心とも親心とも言える心境が観ている側の男心をくすぐってくれる。ラストシーンでマギーが愛聴していたニーナ・シモンのLPを手にとり、「ニーナ、好きなのか?」と尋ねられる場面。”ニーナ”はマギーの殺し屋としてのコードネームなのだ。ボブは「あぁ、愛している。」とつぶやく。彼の思いが凝縮されるラストシーンは何とも言えない余韻を残してくれる。

 オリジナルにはないニーナ・シモンの使われ方がいいね。流行のポップス/ロックで飾り立てるのがハリウッドリメイクではありがちだけど、そうしなかったことが軽い印象になっていない。オリジナルではジャンヌ・モローが演じた教師役をアン・バンクロフトが貫禄を感じさせる。オリジナルでジャン・レノが演じた掃除屋(「レオン」の元ネタとなる)は、ハーベイ・カイテルが演じているのも面白い。タランティーノ監督のファンとしては、「パルプ・フィクション」を連想してしまうよね。冒頭のドラッグストア襲撃場面、チンピラたちに銃を向ける店主はジュリエット・ルイスのお父さんジェフリー・ルイス。

(2005年筆)



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フットルース - 80's Movie Hits ! -(その3)

2013-04-23 | 80's Movie Hits !

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

「フットルース」の第3回(第1回第2回)。今回はムービング・ピクチャーズとクワイエット・ライオット。

■Never/Moving Pictures
from「フットルース/Footloose」(1984年・米)

 「フットルース」の楽曲の中、当時の日本人に最も受けしそうな曲だ、と僕は勝手に思っているのだが、いかがでしょ?昔から思っていることなんだけど、日本でヒットしやすい洋楽って”マイナーキーでアップテンポの曲”という傾向ないだろうか。このNeverなんてその典型だと思う。イントロの印象的なシンセのフレーズをみーんなピアノでコピーしたものさ(僕?もちろん弾けます・笑)。続くイントロはサックスがむせび泣く。この辺りがなーんかドロ臭いというか、どっか歌謡曲なんだよねぇ・・・(少なくとも僕にはそう思えた)。そんな日本人受けしたこの楽曲は、当時元ピンクレディーのMIEがカヴァー。大映TVドラマ「不良少女と呼ばれて」の主題歌としてヒットを記録する。それにしても、この曲でしかムーヴィング・ピクチャーズを知らない、という方も多いだろう。

 オーストラリア出身の6人組バンドで、81年にデビュー。CDのライナーによれば当時メン・アット・ワークをしのぐ人気だったそうだ。82年のアメリカでのデビュー曲 What About Me というバラードがヒット。ちょっとジョン・ウェイトあたりを思わせるようなシャウト混じりのヴォーカルが印象的なパワーバラードで、この1曲で惚れ込んだファンも多い、名曲なのだ。ちなみにこの曲はイタリアのアンナ・オクサという歌手によってカヴァーされたりもしている。他にも Sweet Sherie というヒット曲もあり。だから巷の一発屋さんたちと一緒にしてはいかんようにも思う。うむ。映画では「バローギャングBC」(1985)なる映画で楽曲が使われている。これはシブガキ隊主演映画。これも日本での人気が特に高かったという証なのでしょうかねぇ・・・。

 それにしても「フットルース」の中でのこの曲の使われ方がいい。馴染めない保守的な田舎町で次第に問題児扱いされる主人公。彼のフラストレーションと怒りは、どこへもやり場がない。人気のない工場に車を停めたレンは、この曲をバックに踊り狂う。その激しさと躍動感に観客も引き込まれていく。でもレンを理解するのはスクリーンのこちら側だけではなかった。その様子を見ていたアリエルがレンに近づいていく・・・。



※Moving Picturesの歌が流れる主な映画
1984年・「フットルース」 = Never
1985年・「バロー・ギャングBC」 = Picture Show


■Bang Your Head (Metal Health)/Quiet Riot
from「フットルース/Footloose」(1984年・米)

 主人公レンは初めての登校の日。黒いネクタイを鏡に向かって締めているのを、母親は「デビッド・ボウイみたいね」などと言う。この辺りにも時代を感じるよね。でもそう言ってくれるのは、この街ではよそ者である母親だから。ロックが異端視される異常なほどの保守的な街。レンは高校に黄色いビートルでやってくる。クワイエット・ライオットの Bang Your Head (Metal Health) を流しながら。レンが少しずつ苛立ち始めているのを象徴しているかのようだ。

 クワイエット・ライオットは名ギタリストであるランディ・ローズが在籍したバンドとして知られている。78年にデビューするがセールスは振るわず解散。ランディ・ローズはベースのルディ・サーゾとともにオジー・オズボーンのバンドに参加した。ここでの華麗なプレイで一躍ギタリストとしての名を高めた。が、ランディは82年に飛行機事故で死去。ルディはクワイエット・ライオットを再始動させるのだった。活気づいたLAメタルのトップグループとして多くのファンを魅了した。特にスレイドのカヴァーである Cum On Feel The Noize は大ヒット。これを収録したアルバム「メタル・ヘルス ~ ランディ・ローズに捧ぐ」は全米No.1を獲得した。惜しくも88年に解散。

Quiet Riot - Metal Health (Live)




※Quiet Riotの歌が流れる主な映画
1984年・「フットルース」 = Bang Your Head (Metal Health)
1985年・「シュア・シンク」 = Party All Night

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エステサロン ビーナス・ビューティ

2013-04-22 | 映画(あ行)

■「エステサロン ビーナス・ビューティ/Venus Beauty」(1999年・フランス)

●2000年セザール賞 作品賞・監督賞・脚本賞・有望若手女優賞
●2000年シアトル国際映画祭 主演女優賞

監督=トニー・マーシャル
主演=ナタリー・バイ ビュル・オジエ サミュエル・ル・ビアン オドレイ・トトゥ

 エステサロンは外見を磨くお店。されど、そんな外見を美しくして幸せになるお客さんたちの陰で、エステティシャンたちには様々な悩みや思いがあるのだ。主人公ナタリー・バイはお店では年長者で、腕も確かなエステティシャンだが独立もせず、若いコたちと同じ立場でいる。彼女は男性不信であるせいか恋にも恵まれないし、かつて自分が顔面に傷を負わせた男友達に悪いとう気持ちから自信も持てないでいる。彼女は自分を「痩せすぎの女」と呼ぶ。そんな彼女にいいよる男性が現れた。しかし・・・とまあそういうお話で、彼女が愛を受け入れるまでを描いた素敵な恋愛映画である。ナタリー・バイが決して若くはない女性の寂しさ、不安を見事に演じている。

 この映画の魅力はそんな主演女優だけではない。フランス映画は人間模様を描くのが昔々からのお家芸。ここにはそれがきちんと息づいている。若手エステティシャンたちや、お店に訪れるお客たち、それぞれが個性的で随所に彼女(彼)らの生き方が見えてくる。そこがこの映画を単なる恋愛映画に止めておかない。自身が女優でもあるトニー・マーシャル監督は、暖かく優しい視線で登場人物たちを見つめる。店の外から長回しのキャメラで登場人物たちを追うところに、そんな印象を受けた。特にほとんど無言のラストシーンは美しい。「アメリ」のオドレイ・トトゥも若手エステティシャンとして登場、セザール賞新人賞を獲得した。彼女に入れ込んでいく初老の男性に、名優ロベール・オッセンという配役が憎いね。

(2003年筆)



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アイデンティティー

2013-04-21 | 映画(あ行)

■「"アイデンティティー"/Identity」(2003年・アメリカ)

監督=ジェームズ・マンゴールド
主演=ジョン・キューザック レイ・リオッタ アマンダ・ピート レベッカ・デモーネイ

豪雨で何処にも行けなくなった男女が古びたモーテルに集まる。原住民墓地のすぐ近く、集まった中には囚人護送中の刑事もいた。そして次々と起こる連続殺人・・・。ヒッチ的要素、鍵のルームナンバーをカウントダウンに使ってだんだん人間が減っていくクリスティを思わせる仕掛け。う~ん、これは先達に敬意を表したサイコ・サスペンスなのだな・・・と思ったら大間違い。それはさらなる大仕掛けでひっくり返されてしまうのだ。これは誰もやったことがない方法だけに、なかなか面白い。実は思いっきり伏線は張られている(タイトルが既にそうなんだけど)けれど、巧くみんな引き込まれちゃうんだよね。

 でもねぇ、あのひっくり返しかたによって、それまでの話はつじつまが合わなくても全くオッケー、何でもありってところが気になる人も多いだろう。正直僕もミステリーの謎解きを期待しただけに、ええーっ?それでいいわけ?というのが観た直後の素直な感想だった。おそらくこの映画を気にくわないとおっしゃる方々は、そのクチだろう。しかし、その大ネタをやっちゃった勇気には、恐れ入るし、ラストの結末だって一応の”おとしまえ”にはなっているから、よしとしましょう。

 ジョン・キューザックはどうしても甘っちょろいお話が多い人だけに、この映画での彼は新境地ではないでしょうか(少なくとも僕には)。実はハードボイルド路線もいけるのかも?そう思えた。「フィールド・オブ・ドリームス」のクリーンなイメージがあるレイ・リオッタを、一度は信用させておいて観客を裏切る手は、もう「コップランド」で使用済みのネタだけに、こっちはまたか!と思ったけれど。

(2003年筆)




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リンカーン

2013-04-20 | 映画(ら行)

■「リンカーン/Lincoln」(2012年・アメリカ)

●2012年アカデミー賞 主演男優賞・美術賞
●2012年全米批評家協会賞 主演男優賞・脚本賞
●2012年NY批評家協会賞 男優賞・助演女優賞・脚本賞

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=ダニエル・ディ・ルイス サリー・フィールド トミー・リー・ジョーンズ デヴィッド・ストラーザン

 2012年のアメリカ大統領選挙を覚えておられるだろうか。共和党のロムニー候補と民主党の現職オバマ大統領の対決は、政策論争から始まって、様々な対立を促した。保守的な政治を望む人々と、4年前の「Change!」と同じく変革を望む人々。宗教的な見地や人種間の隔たりにもつながるネガティブキャンペーンがエスカレート(みんなウンザリ)。次第に国を二分するような様相を呈した。こんなことで選んでいいのだろうか・・・日本にいる僕らですらその様子には首をかしげたものだ。中傷合戦の一方で、異なる意見の国をなんとかまとめようとするオバマ大統領の姿も印象的だった。

 どんな人物が国のリーダーにふさわしいのか。そんな空気に包まれていた時期に、スピルバーグ監督はこの題材を選んだ。第16代大統領エイブラハム・リンカーンが南北戦争を終結させるまでの物語である。映画の予告編でスピルバーグ監督は、日本の鑑賞者にメッセージを語った(予告編)。予告編で作品について言及する映画監督はピーター・ジャクソンやアルフレッド・ヒッチコックなど、これまでにもたくさんいる。だが今回のスピルバーグの言葉は単なる広告宣伝ではなく、今の世の中で政治のリーダーに何ができるのかを問うために、今も国民に愛される大統領を題材に選んだことを発している。その言葉は、オリバー・ストーンのように声高に世界のこれからの成り行きを憂い、訴えるのではない。かつて「ミュンヘン」のラストシーンで、世界貿易センタービルをCGで再現し、復讐が悲劇しか生まないことを静かに訴えたのに似ている。

 本編で描かれるのは、合衆国憲法修正13条を通過させるまでの物語。ゲティスバーグでの有名な演説シーンは出てこない。長引く南北戦争の一刻も早い終結が望まれる中で、リンカーンが目指したのは内戦の原因でもある奴隷制度の廃止である。しかし、戦争の終結を急ぐ多くの政治家たちは、南と和平さえ結べるならば奴隷制度は二の次でよいと考えている。戦争だけを終結させても根本の問題は解決しない。この両方をいかにして実現するか。これまで歴史の授業や伝記で僕らが知っているリンカーンの偉業だが、映画で描かれるのは泥臭い政治的かけひき。映画の前半はとにかく賛成票を投じてくれる下院議員を増やすための画策が描かれていく。しかし前半の議会の場面は、白熱こそしているもののエンターテイメントとして観るにはキツい部分もある。スピルバーグが元来得意としている映像で語り尽くす上手さは、ひたすら弁論に終始する場面ではうまく発揮できないと思えた。

 だが映画は中盤にさしかかり、一人の人間としてのリンカーン像を理解できてくると映画は輝きを増してくる。悪妻(?)とも言われた夫人の激しい言動にたじろぐ恐妻家、入隊を望む息子との関わりに、不器用な男の一面が描かれる。何事にもひるまない信念の人・・というイメージがあっただけに、ここから政治的難問に立ち向かう後半は、前半のキツさが嘘のように飽きさせない。これまでの作品よりも封じ込められたスピルバーグの映像で語る演出は、短いカットをテンポのよい編集でつなぐことでグイグイ引き込んでくれる。議員一人一人の表情が次々と映し出されて、緊張感が銀幕のこちらにも伝わってくる。トミー・リー・ジョーンズが演ずるスティーブンス議員は”実質的な平等”にこだわっていたが、政治的な妥協で形式的な”法の下の平等”を説く。この場面は印象的だが、ピンときにくいところかもしれない。奴隷とされてきた黒人を解放し、人種間での差別をなくそうとするのが”法の下の平等”。スティーブンス議員は、富裕層の財産を分配して黒人にも経済的な面での平等を与えようとしていた。つまり”実質的な平等”。そこにこだわっていた理由が明らかになる場面は、スピルバーグらしい上手さ。これまでも「アミスタッド」「シンドラーのリスト」でも人種差別問題を扱っただけに、昔からのファンには特に感動的に映る場面かもしれない。

 リンカーンが憑依した(?)とも思えるダニエル・ディ・ルイスは名演技。サリー・フィールドもやや憎まれ役だが素晴らしい。僕らエイティーズに嬉しいのが、裏舞台で民主党議員に近寄る工作員(ロビイスト)を演じたジェームズ・スペイダー。エンドクレジットで気付いたのだが「刑事ジョン・ブック 目撃者」のルーカス・ハースも出演してる。



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