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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

2006年度 マイ・ベストテン 日本映画篇

2007-01-02 22:16:51 | 私の映画年間ベスト
2006年に観賞した日本映画34作品の中から、独断と偏見によるマイ・ベストテンおよび勝手に個人賞を発表します。
基本的には2006年度に初公開された作品で、かつ私が映画館で初めて観賞した作品を対象にしています。ただし長野県松本市を中心とした映画鑑賞を行っている関係で東京より1年遅れで初公開される作品もあり、もちろんそれも対象としています。
(本当は、これから「大奥」を観賞予定ですが、ベストに食い込んでくることはないだろうと予想してます。)
日本映画観賞リストは→こちら

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2006年、日本映画ベストテン
1位 嫌われ松子の一生 監督:中島哲也


2位 恋する日曜日 監督:廣木隆一


3位 虹の女神 Rainbow Song 監督:熊澤尚人


4位 ゆれる 監督:西川美和


5位 かもめ食堂 監督:荻上直子


6位 ある朝スウプは 監督:高橋泉
7位 [真救世主伝説] 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章 監督:今村隆寛
8位 いつか読書する日 監督:緒方明
9位 フラガール 監督:李相日
10位 犬神家の一族 監督:市川崑


次点「武士の一分

解説
気がつけば日本映画の観賞本数が外国映画のそれを上回っていた2006年。我が人生で二度目のことです。巷では「今年の日本映画は面白い」とか言われているし、実際、興行収入でも邦画が外国映画を上回っています。「ハウルの動く城」みたいな化け物級ヒット作があったわけでもないのに。
しかし、今年の日本映画ってそんなに面白かったでしょうか?
30本ちょいしか観ていないし、フジテレビ系をことごとくパスしたからヒット作を抑えているわけでもないのですが、どれもイマイチ満足しきれないものばかりでした。外国映画は巨匠も若手もヒットメイカーも芸術志向の人もみんながきっちりと仕事をして、新鮮な驚きを与えてくれるものが沢山あって、ベストテン選びに苦労したのですが、邦画はそんな迷いもなく、消去法で明らかにダメなものを除いていけばちょうど10本くらいが残った感じでした。
自主映画撮影とか8mmフィルムとかを題材にしている「虹の女神」が一番思い入れはあるのですが、冷静に客観的に観て「嫌われ松子」がベストではないかと思います。もう一回1800円払ってもいいと思えたのは「松子」だけでした。独創性、テンポのよさ、効果音の使い方、編集、華やかさ、先の読めない展開・・・すべてにおいて傑出していたと思います。LOVE IS BUBBLE、What Is A Life、Happy Wednesdayなどなどミュージックナンバーも名曲ぞろいでした。
「恋する日曜日」はカメラと取っ組み合い、俳優と取っ組み合いしながら作り上げる映画作りの基本中の基本を大事にしている感じがして良かったです。
けれども2006年の日本映画を語る上で外せないのは「ゆれる」と「かもめ食堂」じゃないかと思います。考えに考え、悩みに悩み、全て計算ずくの上で作られた映画こそ傑作という考えはもう古いのかもしれません。脚本がしっかりしていなければ名作は生まれないという考え方も古いのかもしれません。あまり深く考えずに意味がないならないでそれでも構わないからとにかく撮ってつなげてみる・・・なんてデタラメな撮り方を「ゆれる」と「かもめ」がしているとは思いませんが、どちらも傑作というにはあまりに不完全で隙だらけな気がするのです。けどそんな撮り方がこれからのスタンダードになっていくのかもしれません。そうすることで映画の観客とクリエイターの距離はぐっと近づくでしょうし、その反面、巨匠がますます少なくなっていくかもしれません。理論より感性で撮り上げる・・・これを女性的というのは暴論でしょうが奇しくも「ゆれる」と「かもめ食堂」はどちらも女性監督の作品です。女性監督の躍進にもつながりそうなこの二作品が好みの問題はさておいても、2006年の最重要作品となるような気がします。
「ある朝スウプは」は今年観た商業映画の中でダントツで制作費のかかっていない作品です。しかしこれより緊迫した心理ドラマは他に無かったです。
「北斗の拳」は、そんな大した作品でないのはわかってるけど、面白かったんだもん。
「いつ読」は、2005年のキネ旬三位、映画芸術三位、日本映画プロフェショナル大賞受賞など批評家ウケのものすごく良かった作品ですが、そんな高評価も納得の傑作でした。もっと高順位でしかるべき作品なのですが、今更べた褒めしたってしょうがない気もしたので下の方に・・・
大人気が予想される「フラガール」は、確かに今年を代表する作品だとは思うけど、あえて順位は低めに(新しさがないんですよ)
新しさと言えば「犬神家」には、新しさは究極無いのですが、しかし「あっという間の135分間だった」という感想を抱いた映画は他にありません。ランク外にするわけにもいかない気がして、ひっそりと10位においてみました。
ちなみに批評家ウケのいい「雪に願うこと」は、去年の「三丁目の夕日」と同じで、否定はしないけどそんなに買いません。

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2006年、日本映画・勝手に個人賞
監督賞 中島哲也 「嫌われ松子の一生」
 他に良かった監督…廣木隆一「恋する日曜日」、西川美和「ゆれる」、荻上直子「かもめ食堂」、高橋泉「ある朝スウプは」

主演女優賞 中谷美紀 「嫌われ松子の一生」
 他に良かった人…蒼井優「フラガール」、水橋貴己「恋する日曜日」、並木愛枝「ある朝スウプは」、上野樹里「虹の女神」

主演男優賞 オダギリジョー 「ゆれる」
 他に良かった人…市原隼人「虹の女神」、廣末哲万「ある朝スウプは」、オダギリジョー「スクラップ・ヘブン

助演女優賞 もたいまさこ 「かもめ食堂」
 他に良かった人…桃井かおり「武士の一分」、大楠道代「空中庭園」、片桐はいり「かもめ食堂」、木村佳乃「寝ずの番

助演男優賞 笹野高史 「武士の一分」
 他に良かった人…香川照之「ゆれる」、佐々木蔵之介「虹の女神」、岸辺一徳「フラガール」、堺正章「寝ずの番」

脚本賞 「恋する日曜日」 いずみ吉紘
 他に良かった作品…「嫌われ松子の一生」「フラガール」「ある朝スウプは」


解説
監督・主演は迷わず「松子」です。主演男優は「ゆれる」のジョーさんと思いつつ、香川さんなくしてジョーさんの輝きは無かったと思います。だから助演男優として香川さんと思ったのだけど、「一分」の笹野さんがまた良いんですよね。
助演女優は「かもめ」のどちらかにと思い、フィンランド女との飲み比べ対決を制したもたいさんに
脚本はもちろん読んだわけじゃないのですが、「恋する日曜日」の次々と事件が起こり息つく暇の無い四角関係恋愛バトルは見事だったと思います。

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2006年、日本映画ワースト
1位 天使 監督:宮坂まゆみ
2位 最終兵器彼女 監督:須賀大観
3位 THE 有頂天ホテル 監督:三谷幸喜
4位 地下鉄(メトロ)に乗って 監督:篠原哲雄


解説
「天使」は最悪につまらなかったのですが、観客が私一人だったので、酒飲みながらしかも電話で実況中継しながら観賞しました。なのでけっこう楽しく観賞することはできました。
「最終兵器彼女」は、日本全土が戦場になっているというのに、散らばったビデオの片付けしたり、負傷した女子高生が綺麗な個室に入院していたりと、そういうリアリティの無さは笑って済ませばいいのかもしれませんが、戦闘シーンとドラマパートが全く遊離していて、しかも戦闘シーンはちょっとだけでどうでもいい会話シーンがダラダラ長くて、どうしようもなく退屈でイライラさせられた作品でした。
大ヒットした「THE有頂天ホテル」ですが、豪華俳優陣それぞれに見せ場を配してあり、それなりの満足感は味わえますが、ただ話をまとめているにすぎない脚本には何の面白さも感じません。
「地下鉄に乗って」のヒロインが誇大妄想狂サイコ殺人者に変貌するクライマックスは衝撃といえば衝撃でした。

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2006年度マイベストテン外国映画篇

バカ映画を勝手に讃えるバカデミー賞はこちら→バカデミー賞2006

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9 コメント

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邦画 (kossy)
2007-01-03 08:57:33
邦画の年ではあったけど、
やっぱり外国映画には届かなかったですね。
邦と洋をまとめてしまうと、ほとんど洋画になってしまうような気もします。
「ある朝スウプは」をまだ観てないのが悔やまれます~
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どうしましょ? (aq99)
2007-01-03 22:43:20
洋10位=邦1位レベルにあるほどの、洋高邦低とのことですが、「ミュンヘン」に点数がなく、「松子」に9.5点を与えていいのかどうか・・・。
洋画の10記事を読むと、洋画のベスト10を総合10とみなした方がよさそうな・・・。
どうしましょ?
返信する
コメントどうもです (しん)
2007-01-04 17:41:28
>kossyさま
天皇も硫黄島も外国人に先に撮られて、SAYURIにぶーぶー言ってても大奥くらいしか作れない・・・というところでむしろ日本映画の衰退を感じた2006年でした。
どんなに衰退しても「ある朝スウプは」のような低予算映画は作れるわけで、生き残る努力をしている人たちもいるということかもしれません。
「ある朝スウプは」は東京では2005年公開作ですから、いまさら地方で上映されることはないと思います。是非ともビデオで観賞してみてください

>aq99さま
昨年に続いてのブロガーベストテン期待してます。
集計方法ですが・・・
気分的には洋画ベストテンが総合でもベストテンだと思っていますが・・・一人だけ例外認めると、私も実は、私だってホントは・・・と言い出す人もいそうなので、それぞれから5本ずつでいいのではないでしょうか?

最終的には、おまかせいたします。
返信する
多分地上波w (メビウス)
2007-01-05 20:24:05
しんさんこんばんわ♪TB有難うございました♪

『嫌われ松子の一生』は自分も邦画トップ10に入れたほど印象深い作品ですね。出演陣も豪華でしたし、プライド(?)捨てたかのような中谷美紀の弾けた体当たり演技は必見でもありました。自分ももう1回見たいですけど、多分今年地上波初登場の名目で放映される日が来ると予想してますので、その時まで(笑

自分はワースト付けていませんでしたが、付けるとしたら同じく『最終兵器彼女』は確実に入れてますね。キャストの超絶ミスマッチが何とも言えません(^▽^;)
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あけましておめでとうございます。 (冨田弘嗣)
2007-01-06 22:00:34
 トラックバック、ありがとうございます。私は「嫌われ松子の一生を」こきおろしてしまい、まったく違ったベスト10を出してしまいました。はじめてベスト10を考えたので、初心者です。しかし、ワーストを見ると、本当、その通りですね。今年もプロが裸足で逃げていく素晴らしき文章を読ませて下さい。宜しくお願い致します。 冨田弘嗣
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こんにちは♪ (ミチ)
2007-01-08 20:47:28
いつもお世話になっております。
主演男優賞を見て飛び上がるほどうれしくなってしまいました!
助演には香川さんを推したのですが、笹野さんも捨てがたかったです(泣)
今年もよろしくお願いいたします。
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コメント感謝!! (しん)
2007-01-09 02:15:20
>メビウスさま
最近じゃ一年たたずに地上波ですから、あり得ます。
映画館に1800円払う意味があるのかと疑問を感じたりもしています。
最終兵器彼女みたいの見せられたら特に

>冨田弘嗣さま
けっこうアンチ松子派も多いのです。アンチゆれる派も多いです。去年のアンチ三丁目vsアンチパッチギとはまた違った感じでこの両作が潰し合い、意外とアンチの少ないフラガールが一歩リードしています。
今年もプロが裸足で逃げたらガラスを撃てとか言える様に頑張りますので応援よろしくお願いします。

>ミチさま
ジョーは他にスクラップヘブン(東京から一年おくれ)もあり、パビリオン山椒魚もあり、私の中ではジョー・イヤーでした。ジョー嫌じゃないです。
今年は東京タワーですが、なんか大物っぽくなってきてるのが心配ですが、まだまだマイナー作品で凄い演技みせてくれるでしょう
今年もよろしくお願いいたします。
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こんにちは (カヌ)
2007-01-14 12:11:02
ご無沙汰です&コメントありがとうございます。
ミュンヘンに勝てませんか、松子(^^;
映画の出来で言えば、やはり邦画はべたな作品も多いし劣るかもしれませんが、個人的に楽しめる作品は、増えたかなって思いました。
今年もよろしくお願いします。
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コメントどうもです (しん)
2007-01-22 01:13:51
>カヌさま
勝てないと思います・・・
2007年は驚きを与えてくれる新しい日本映画に出会いたいです
今年もよろしくお願いします。
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