Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

日本橋劇場『第四回 趣向の華特別公演』 1等1階席前方

2011年08月09日 | 歌舞伎
日本橋劇場『第四回 趣向の華特別公演』 1等1階席前方

8/8(月)のプレ公演に続き、本公演を昼夜続けてみました。とても楽しかったです。この試みは続けていってほしいです。

【昼の部】
長唄・清元『喜撰』
さすがにプレ公演のときより纏まった演奏でした。長唄と清元の掛け合いでの演奏はこの趣向の華の会ならでは。変化があって面白い。

清元は勘十郎さん中心に梅枝くん、廣松くんがきちんと唄っていました。梅枝くんは声が良いですね。鳴物では先導するのは太鼓の青楓さん。梅丸くんの小鼓がなかなか良い音を出しておりましたね。長唄、三味線は出だしがちょっとヒヤッとさせましたが演奏していくうちに音が揃っていきました。今回も何人かには後ろから調律する先生の手が伸びてましたけど(笑)それもご愛嬌。三味線の音を合わせるのは難しいと思いますけど皆さん結構頑張ってたと思います。立三味線の染五郎さんは譜面から顔が上がりませんでしたが苦手のはずの三味線で演奏は無難にまとめてきてました。掛け声は少々自信なさげだったかも(笑)。

長唄『阿古屋三曲琴責め』
勘十郎さんが琴、三味線、胡弓の三曲を弾きこなします。改めて難しい曲だなあと思いつつ、勘十郎さんの達者な演奏に感心。琴こそかなり緊張されての演奏でしたけどお得意の三味線、胡弓では安定した演奏。ほんとお上手です。にしても勘十郎さんはほんとマルチ人間ですね。なんでも出来るってだけじゃなくそれぞれレベルが高い。

常磐津『三世相錦文章』
唄だけで8時間かかるという大曲。そのなかの一部分の件を語ります。内容がかなり面白く聴き応えありました。脚色して歌舞伎上演してほしいなあ。
浄瑠璃を青楓さん、三味線を勘十郎さん。青楓さんは本当に美声。また語り分けがお上手です。舞踊家だけにしておくのもったいない(笑)。勘十郎さんの三味線も毎年パワーアップしている。『阿古屋』の時よりのびのびして音が良くなってました。『阿古屋』のときはやはり緊張されていたのかも。

歌舞伎舞踊抄『続花形一寸顔見世』
歌舞伎舞踊のメドレーです。大曲が並びます。演奏者たちも聴かせどころが多いのでかなりヒートアップしてたかも。勘十郎さん、青楓さんの安定感はもとより染五郎さんの小鼓が立鼓方としてかなりの上達ぶり。良い音が安定して出ていましたし掛け声がハリのある声で素敵でした。あと太鼓の壱太郎さんがかなり頑張ってました。思わず目が釘付けになる場面も。

『操り三番叟』
翁の廣太郎くん、千歳の男寅くんが丁寧に丁寧に。男寅くん、大きくなりましたねえ。男前になってきた。

後見の米吉くんが無駄のない動きでなかなか良い感じです。芝居っ気もありそう。

三番叟の種太郎くんは…一生懸命に踊っていました。が、人形にみえないかも…若干お猿さん…。操り三番叟って高度な踊りなのねって思いました。そういや勘太郎くんも苦戦してたもんな。

『船弁慶』
前シテ静御前を梅枝くん、やっぱり梅枝くんは上手いです。女形らしい柔らかさがありとても可愛らしい静御前。切々と、哀愁のの部分はまだかなと思えども思い入れはきちんと見えたし、いずれ本公演で観てみたいと思わせた。

後シテ平知盛は萬太郎くん、大きく丁寧に動いて爽やかな知盛でした~。

『宗論』
種之助くんと廣松くんが一生懸命に丁寧に演じてて、そのマジメさのところで可笑し味が出てて楽しかったです。余計なことしないのが良い。

『連獅子 後ジテ』
染五郎さんが生前の富十郎さんと約束していたという鷹之資くんと金太郎くんの『連獅子』には思わず涙がこぼれました。鷹之資くんの親獅子姿が富十郎さんソックリなんだもの。鷹之資くんはお兄ちゃん分としてきちんと金太郎ちゃんをリードしてて、そんな姿にもうるうる。富十郎さんが降りてきて近くで舞台を観てるような気がして、つい泣きまくってしまった『連獅子』でした。

この二人、とにかく可愛い親子獅子でした。二人が出てきた瞬間から大盛り上がりでなんだかすごいことになってました(笑)

ちっこい親子獅子でもちゃんと花道を後ろ向きで下がっていくのもしっかりこなしてました。鷹之資くんは毛を足に挟んで、金太郎くんは毛を脇に寄せて、まっすぐ前を見ながらススッと花道を下がっていきます。

鷹之資くんは堂々と所作もピタっと決めていきます。キレ味は富十郎さん譲りでしょうか。毛振りは勢いよく。途中二度ばかり毛が引っかかりやり直していましたが、あまり気にならず。きちんと獅子としての佇まいを忘れていませんでした。

金太郎くんは本当に小さくてとっても可愛い仔獅子。あの小さい体で毛の重さにバランスを崩しそうになりながらも体いっぱい一生懸命に踊っていました。また高い台を一足飛びにちゃんと乗っていたし、よくぞ頑張ったなあ。それと毛振りがかなり上手かった。腰から廻して、しかもリズムが一定でまったく止まらずかなり綺麗な毛振り。さすが獅子大好きっ子だけあります。

【夜の部】
袴歌舞伎『染錦絵化生景事』
藤間勘十郎 作/市川染五郎 演出

楽しかった!!やりたいこと全部つっこみました~なノリが良し。ベテランが舞台を締め、中堅花形が華やかにしっかり物語を動かし、若手が一所懸命に必死に演じ、観ててウキウキしました。

紋付袴だけの素歌舞伎なので体の動きがモロにわかる。それもまた見どころ。やっぱり中堅以上の役者さんは素でもきちんとキャラが立ち拵えした姿が浮かぶくらい。女形さんは男だけどしっかり女形なんだよね。すごいなあ。

今回の演目は豆腐小僧を題材にした歌舞伎をとの染五郎さんの発案で勘十郎さんがいかにもな筋立てに仕立てた新作の義太夫歌舞伎。新作とはいっても筋がさまざまな古典をベースにしているので観てて安心感が。染五郎さんの演出はシンプルでわかりやすく立体的に組み立て、また所々擽りもいれて楽しく見せていきました。まずは口上で染五郎さんが物語の発端を役々の役者を並べ台詞を入れつつ説明し、語り終えるとそのまま自分のお役に入ってしまう、という趣向。

ベテランは友右衛門さんが珍しく大悪党を演じ、魁春さんはほんのちょっと出番ですが大事なお役で場を締めます。

中堅花形の亀三郎さん、亀寿さん兄弟の存在感はこれからもっといい味わいになっていくんだろうなあと思わせました。二人とも声がほんとに良いですよね。また孝太郎さんの上手さが印象的。翫雀さんは意地悪な妖怪ばばあを楽しそうにユーモアたっぷりに。翫雀さんのほのぼのキャラは楽しい。

若手では梅枝くんが頭ひとつ抜けている感じ。人形振りも丁寧にしっかりこなす。彼はあとは型に想いのせるとこを目指す段階にきてるかな。集中度がすごいと思う。後見の種太郎くんもしっかりと。彼はこの後見が一番よかった。あ、幽霊のだんまりも楽しかったです。それにしても若手が前のめりに頑張る姿には元気をもらえる。これからも頑張っていってほしい。彼らはこういう良い機会を与えられてるのだか幸せです。

青楓さんが珍しく役者として登場。やっぱり上手い。お嬢様が誕生されたとのことでサプライズでお祝いされてました~。おめでとうございます。

また演奏のほうでは義太夫に東蔵さんまで出演。さすがにお上手ですねえ。義太夫は梅丸くんも語ってました。なかなかしっかり語れてました。

袴歌舞伎のお約束、大薩摩に勘十郎さん・青楓さん。やっぱ上手いよ。勘十郎さんの三味線、疲れてるどころかすごいことになってました。相変わらず台運びは染五郎さん(笑)。ラストでまた鳴り物勢ぞろい。染五郎さんも鼓叩いてましたけど疲れてたかも。出だしの音が面白いことに…その後しっかり持ち直していました。 壱太郎くんも太鼓で登場。どうやら黒御簾内でずっと太鼓を叩いてた模様。今回はずっと裏方で頑張ってたのね。