Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

新橋演舞場『東日本大震災 復興支援 歌舞伎チャリティー公演』 3等3F前方上手寄り

2011年07月29日 | 歌舞伎
新橋演舞場『東日本大震災 復興支援 歌舞伎チャリティー公演』 3等3F前方上手寄り

歌舞伎役者さんが東日本大震災の復興を支援するために開いた特別公演です。東北の民謡づくしの舞踊を披露したり、幕間にロビーで東北物産店を開き役者さんたちが販売を手伝ったり。その他、役者さんたちの私物やサイン、押し隈、絵や写真、ポスターなどを役者さん達がチャリティー販売。さしずめマジメなプチ俳優祭。ゆる~い感じでしたがとても楽しかったです。役者さんたちが勢ぞろいしてるのを拝見するだけで嬉しい。

ただ新橋演舞場って小屋は歌舞伎には不向きってだけじゃなく俳優祭にはもっと不向きかも。ロビーが狭すぎて身動き取れないんだもの…。色んなとこでもっとまったりしたかった。

『ご挨拶と黙祷』
ご挨拶予定だった芝翫さんがお休み。ちょっと心配です。菊五郎さんがご挨拶を代読されました。役者さんたちが紋付袴姿で舞台にずらっ~と並んでいる姿は壮観。舞台復帰された勘三郎さんの姿があったのがやっぱり嬉しかったです。次の演目の『舞踊 東北民謡づくし』に出演の女形さんは拵えのためか並んでませんでした。藤十郎さんの発声で一分間の黙祷を。

『舞踊 東北民謡づくし』
1,福島県『会津磐梯山』
2,岩手県『チャグチャグ馬ッ子』
3,宮城県『大漁唄い込み』
4,福島県『相馬盆唄』

中村福助/中村扇雀/片岡孝太郎/中村橋之助/中村翫雀
坂東亀三郎/中村梅枝/中村萬太郎/中村壱太郎/尾上右近/中村種之助/中村隼人/中村米吉/大谷廣太郎/坂東新悟/坂東巳之助/中村種太郎/坂東亀寿

長唄の演奏での民謡メドレーを若手中堅どころが踊っていきます。これはとても楽しかった。個人的に女形が入る踊りが好きというのもあるし伸び盛りの若手が一生懸命きちんと取り組んでる姿に爽やかがあって清々しい舞踊になっておりました。顔つきが青年期に入ってきた若手たち、応援していきあいなと思いました。勢ぞろいの舞踊だと踊り手としての技量がハッキリと出ます。若手では尾上右近くん、梅枝くん、壱太郎くんが今のとこ飛びぬけてるかな。皆さん、これからも頑張っていって欲しいです。

中堅どころはそれぞれに華やかな個性があって味がある。そのなかでも福助さんが体の使い方がやっぱり上手い。ギリギリのとこで体を使っているというか瞬間瞬間の形がどこ切り取っても綺麗だなと感心。

『舞踊 松島』
尾上菊五郎/中村吉右衛門/片岡仁左衛門/中村梅玉/市川團十郎/松本幸四郎

豪華メンバーの並びを楽しむってところでした。皆さんかなりフリーダムだった…稽古する時間なかったのかしらん。かろうじて踊りの肩のラインになっていた(なんと失礼な物言い(^^;))のが若干二名。でも皆さん、それなりに様になりしかも決めのとこは外さないのがさすがベテラン。

『幕間:物品販売』
すさまじい熱気でした。人でごった返し歩くのも大変だし、物を買うのに並ぶのにも一苦労。お目当てのものは買えなかったけど、まあそれはそれ。その後は友人を煽る係りになったり(笑)、ふらふらとあちこちにいらっしゃる役者さん見物をしてみたり。

個人的には素顔がとってもダンディな左團次さんからアイスを買って握手してもらって満足しました(笑)。勘三郎さんのお顔を近くで拝見できたのも嬉しかったな。それと雀右衛門さんの超高額の革ジャンが売れた瞬間を目撃したのだけどなんだかとってもジ~ンときました。舞台にはもう立たれないと伺っているけどファンはまだまだ雀右衛門さんのことを想っています。

『舞踊 石橋』
市川染五郎/尾上菊之助/中村勘太郎/市川海老蔵/尾上松緑

短くて少々物足りなかった。せっかくこの面子を揃えたのだからもっとしっかり踊らせてほしかったな。花形の華やかさ&それぞれの個性を楽しむといったところ。とはいえ五人もの獅子を構成よくきちんと踊りに仕立ててたのには感心。にしても五人五様なのが面白い。白毛獅子が染五郎さんと松緑さん。赤毛獅子が菊之助さん、海老蔵さん、勘太郎さん。

染五郎さん、獅子ものはお得意ですが、やはり毛振りが一番美しかった。力強く綺麗に弧を描く。腰を中心に全身を使って力強く振るので毛が絶えず上向きで軌道が綺麗。回転スピードのコントロールも上手いです。毛を廻すスピードを早めてもまったく乱れません。染五郎さんの毛振り、時々とんでもない高速ギアを入れる時がありますが今回はそれは封印。綺麗に円を描くことを意識してたかなと。また踊り手としては伸びやかで特に肩と背のラインが美しい。五人のなかでリーダーとしてタイミングを指示するだけのものを見事に見せてくれました。

松緑さんも獅子ものはお得意。松緑さんは弾むように踊る感じです。毛振りの質は染五郎さんに似ています。全身を使って力強く、まあるく振ってくる。やはり回転スピードのコントロールも上手いです。いつもはぶんぶんと勢いを増していくタイプのように思いますが今回はしっかり弧を綺麗に丁寧に廻そうとしていました。染五郎さんと松緑さんの毛振りがピタッとタイミングが合う場面も。スピードを出してからは、いつものように勢いに任せてな部分もありましたが(笑)

菊之助さんは可愛らしくて一人だけ女獅子にみえました。全体に踊りも毛振りもまるい柔らかな感じ。梅幸さんに本当に似てきたなあと思いました。それと踊りの間合いが尾上流ならではで五人のなかでは一番独特で可憐さがある。毛振りは珍しく最初からやったるぜな熱い毛振りだったかも。ぐおん、ぐおんという感じでした(笑)。さすがに途中少し疲れてましたね(笑)。

海老蔵さん、やはりお顔がほんと綺麗ですねえ。目力はダントツ。舞踊に関しては大胆なところは良いのですが反対に雑な部分も目立つタイプでしたが今回はとても丁寧に踊っていました。しかし毛振りは腰をしっかり使おうとはしているとは思うのですが上半身とうまく連動できてない部分が。クセなのでしょうか?一緒に首も廻してしまう。だから体全体の動きや毛振りが雑にみえる。勢いはあるだけにもったいないですね。

勘太郎さんはいつものようにまっすぐまっすぐ伸びやかに踊る。あと目力が最近ついてきたなあと思います。お父さんとは違う個性なのがハッキリしてきた感じ。毛振りはいつもの柔らかいキレのある毛振りじゃなかったのが残念。力が入りすぎてたかなあ。先輩のなかに入って踊るんですものね、多少緊張してたかも。

『御礼』
松竹の迫本社長と坂田藤十郎さんの締めのご挨拶。

収益は一千万円超えをしたとのこと。藤十郎さんがとっても感激されていたのが印象的。