Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

『掛け合い噺 すずめ二人會 -夏の巻-』

2007年08月24日 | 古典芸能その他
全生庵『掛け合い噺 すずめ二人會 -夏の巻-』

春の巻の好評を受けて2回目となる落語家の林家正雀さんと歌舞伎役者の中村芝雀さんのコラボ企画。最初、昼夜公演でしたがなんと早々の売り切れのため朝の部を追加したそうな。「歌舞伎美人(松竹歌舞伎公式サイト)」で宣伝してもらったおかげでしょうか。また全生庵で怪談噺という企画も良かったと思う。

さて夏の巻ですが前回同様、手作り感溢れる企画ではありますが、前回に較べたらだいぶこなれた感じ。夜の部の特典?として全生庵の境内に蝋燭の灯りがともされており、とっても綺麗でした。

落語噺では正雀さんの「七段目」がかなり楽しかったです。芝居狂いの若旦那の話なんですが歌舞伎の演目を知っているほうが楽しめるお話ですね。正雀さんが芝居っ気たっぷりに聴かせてくれました。

鼎談では住職さんがいい味を出されていていました(笑)円朝師匠のタニマチの藤原さんのエピが興味深かった。この藤原さん、雀右衛門さん(京屋)とも繋がりがあったそうです。ご縁の不思議を芝雀さんがお話されていました。

メインの掛け合い噺は「真景累ヶ淵~豊志賀の死」。前回同様に落語を掛け合いできるように正雀さんが脚色して、正雀さんと芝雀さんが何役が掛け持ちで演じていきます。前回の「芝浜皮財布」は各一役づつでしたのでいきなりレベルアップな演目でした。でもお二人ともとっても乗って演じてらして、観てて楽しかったです。語りと素芝居の中間のような出し物ですが、それだけ語りや芝居の実力が一目瞭然。今回の演目、役の振り分けをよく考えてきたなあと思いました。

芝雀さんは豊志賀、お久、与太郎、仲居そして一部分の新吉も!を演じられました。心配だった豊志賀でしたが思っていた以上に色年増の雰囲気があって、新吉一途さの執念や恨みも違和感なく、なかなかの出来かと。お久は得意役とあって、10代の娘の可愛らしさが出ており、豊志賀とお久の演じ分けのメリハリが出てたように思います。個人的にはすし屋の仲居さんがヒット(笑)芝雀さんの口からああいう笑い声が出ること自体、おおっとビックリ。案外こんな役も出来るんだなあと。男役のほうは少々ぎこちなかったけど、新吉おじ宅内での新吉のおどおどぶりはなかなか可愛らしかった。芝雀さん、なかなかに渾身の出来。それぞれの登場人物の気持ちというものがしっかり伝わってきた。いわゆる「芝居の上手さ」という部分では硬いとは思うのだけど、気持ちを伝える、という部分がとっても良くなってきたなあと思います。

正雀さんは地の語りの部分が軽妙。さすが落語家さん。正雀さんの新吉は実直な雰囲気があって、とてもマジメ。そういう男が恨みをかってしまう、といういわれのなさがストレートに出てました。新吉の叔父さんが味があってとっても良かった。前回より芝居っ気がでてて楽しそうでした。

<出し物>
落語:「つる」小きち
落語:「鮑のし」林家彦丸
落語:「七段目」林家正雀
鼎談: 平井正修(住職さん)、正雀、芝雀
掛け合い噺:「真景累ヶ淵~豊志賀の死」正雀、芝雀