radiko

　3月から、radikoというラジオ放送のネット配信サービスが始まった。現在は試験運用だが、関東エリアでは、TBS・文化放送・日本放送のAM三社、Tokyo FM・J-WAVE・Inter FMのFM三社、短波のラジオNIKKEIの合計7社が配信を行っている。今までのオンデマンド・サービスと違って、実際の放送と同じ内容をリアルタイムで同時配信しているのが新しい。


　実は、PCでラジオを聴きたいという需要はずいぶん前からあり、現在でもUSB接続のPC用ラジオチューナーは隠れたヒット商品となっている。ただ、それなりの性能のものは安くても6,000円以上の価格だし、ノイズの発生源であるPCとラジオは本来相性が悪いので、PCから離れた場所に専用アンテナを設置する必要がある。使い勝手は決して良くない。PCの数が一家に複数台となると、どのPCでもラジオを楽しむというわけにはいかなくなる。私自身も、PCから離れた所にラジオ本体を置かなければ受信できないため、面倒で断念した経緯がある。私の住んでいるあたりは高台で電波状態は悪くないはずだが、ニッポン放送などはPCなどのノイズ源がなくても受信感度が低く、実用にならない。


　試験配信中のradikoはインターネット経由であるため、電波状況の影響を全く受けないし、通信量も500Kbps程度なので、一般的なADSL環境でも回線負荷は低く、ストレスを感じることはないだろう。光回線であれば、回線品位に関係なくストレスフリーで楽しめる。私はradiroというフリーソフトでradikoを楽しんでいるが、AM放送の音質は非常にいい。FM放送に関してはさすがにオーディオセットで聴くようなわけにはいかないが、気になるレベルではないと思う。番組表を見ながら、好きな放送局に切り替えてラジオを聴けるのは、やってみるととても快適。NHKもこのサービスに参加してもらえれば、さらに便利さも広がるだろう。


　ラジオはもともと、「ながら作業」に向いたメディア。学生時代は深夜放送なども好きで聴いていたし、以前は、朝はFMを聞きながら身支度を整えて出勤することが多かった。様々なメディアが台頭してくる中で、一人負け状態で地位を奪われていったラジオ放送だが、このradikoで一気に復権を果たせそうな気がする。いや、そうなってもらえたら、私はとても嬉しい。「耳」だけのメディアであるラジオには、長く積み重ねてきた文化と利点がある。ラジオ人口が増えてくれれば、広告収入も増えるだろうし、以前のような質の高い番組も増えていくだろう。TVがハイビジョン化する時代でも、視聴者のすべてがそれを望んでいるわけではない。


　TVは多チャンネル時代を迎え、ケーブル・衛星ともに商業放送が増えている。携帯でもPCでもTVが見られて当たり前というご時世になった。さらに、PCでもオンデマンドでの動画配信が盛んになった。だが全体として見れば、番組のレベルは下がり続けているように思う。もともと、TV放送の制作コストは高い。同じ映画を繰り返し流したり、再放送に特化したチャンネル、マイナーなスポーツ中継に特化したチャンネルは何とかなるが、一般のチャンネルはそうそう高コストの番組を作り続けるわけには行かない。その結果、集客力のあるお笑いタレントがただしゃべっているだけだとか、人件費の安いお笑いタレントが街をブラブラするだけの番組が増えたんじゃないだろうか。制作費も企画力も、すでに限界に近かったところへ持ってきて、かつては高視聴率がとれた巨人戦の放映が万年赤字になるほど、視聴者のニーズが多様化してしまった。新聞がかつての存在価値を失い、民放テレビがジリ貧で力を失いつつある今なら、その隙間を突いてラジオが復権を果たすことも可能なのでは.....。こんな時代だからこそ、ラジオにはぜひ頑張っていただきたいところ。