浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

BAR SocialExperience(社会実験バー)

2017-10-24 13:00:05 | 日記
たまに行く喫茶店「隣町珈琲」で火鉢のイベントがあったのは前に書いた。→「大人の火遊び」

このイベントの主催者の方がいま常設(なんだと思います)で火鉢バーというのをやっている。隣町珈琲は基本的に18時で閉店なので、その後に火鉢バーになる。

これは非常に興味深い試みだと思う。

火鉢バーのママは、基本的に別の仕事を持ってるようで夜だけここでバーのママをしているようだ。まぁ詳しくはママのブログを読んでください。→「気がつけば火鉢バーのママ〜キリギリス女のサバイバル日記〜」

僕は、「バーをやりたい人が、夜は閉めてる喫茶店をそのまま借りてバーにする」というスキームは大変に面白いと思っている。ので、その話をします。

唐突だけど村上春樹の話。彼は、大学を出て自分でバーを始めた。「村上朝日堂」というエッセイ集の一節にその時の資金に関する話があるので引用します。


「村上朝日堂」

「資金のことを言うと、僕と女房と二人でアルバイトをして貯めた金が二百五十万、あとの二百五十万は両方の親から借りた。昭和四十九年のことである。その当時の国分寺では五百万あればわりに良い場所で二十坪くらいの広さの、結構良い店を作ることが出来た。」
そしてこの文章は「でも、今だと、そんなお店を作ろうとすると2,000万はかかるだろう。2,000万なんて大学出たての人間が用意できる金額ではない」と続く。(この文章の「今」というのは書かれた当時、1984年のこと)

うむ、そうだろう、と僕も思う。

今(2017年)、仮に個人が、「国分寺あたりで、ちょっといい感じのバー、小粋な音楽が流れてて、ランチタイムはオムレツとマスタードがきいたハムサンドがお勧めで、夜はちょっとしたワインでも出せるお店をやりたいな」なんて言い出そうものなら、各方面から「商売舐めてんじゃねーよ、脳みそお花畑かよ!?」と言われることだろう。(もし、お疑いになるなら、試しにTwitterでつぶやいてみてくださいませ)

このあたりのことを言い出したらキリがないけども、つまり僕が言いたいのは「ぷらっと自分でお店をやる、ということは今の時代は難しい」ということ、特に飲食店であれば。

例えば駅前のテナントをちょっと借りようとすれば保証金だけで百万は超えるだろう。それから内装を綺麗にして、椅子とテーブルなんかの什器を買って、オープン告知のチラシ作って、なんてやってるとそりゃ2,000万くらいは必要になるだろう。なかなか「就職したくないから自分でのんびりバーでもやるかね」という人が投資できる金額ではない。100%自己資金で無くて金融機関から借りようとしても、そもそも「就職したくないんで自分でやります、お金貸して」と言ったらまぁあんまり借りれないやね。。

しかしその一方、「喫茶店なんだけど夜は閉めてる」という喫茶店は世の中に結構ある。例えば、自宅の一階を喫茶店にしている、しかもマスターはもう年金をもらう年齢、そうするとまぁ一日に数千円儲かりゃいいかな、という感じになる。そうなればわざわざ夜の時間に営業する必要は無いだろう。だから閉める。

そういう喫茶店で、昼は仕事をしているけど夜だけやりたいという人がバーをやるのはアリだろうと思う。(免許のこととか経営権のこととか保健所のこととかは僕はよくわからないので一旦置いておきますが)

バーをやりたい人は、例えば昼に普通の仕事をしているので夜に副業をしたい、だけど夜にバイトって言ったって大変だ。それが物件の保証金とかほとんどタダで内装什器もそのまま使える、売上から何パーか払えばいい、となれば手元にそれなりに残るだろう。いつもは昼にしか来ない人が「ああ、夜もやってるのね」と来るかも知れない。夜に来た人が「じゃ、昼もカレーでも食べに来るか」と来るかも知れない。

そもそも知らないお客さんが一切来なかったとしても、例えば人によっては週に1度は友達と集まって飲むじゃないですか。居酒屋行ったら一人3,000円なら4人で12,000円。それを自分の店でやる、って方法もあるしね。飲食店の売上に対する人件費+原価の比率は人件費30%と原価20%で、足して50%と言われている。これをF/L比率と言いますがまぁいいや。つまりオーナーが自分の店で売上3,000分飲むとすると600円しかかからないということになる。原価の20%のみ、自分の人件費はなし。となるとオーナーが3人友達呼んで自分の店で4人で飲む、となると4人で9,600円しかかからないということになる。9,600円のうち2,700円(=3,000円✕30%✕3人分)はオーナーが自分の人件費として取る権利はあるだろう。残った6,900円のうち2,400円は原価(=3,000✕20%✕4人分)。だから売上9,600円から人件費と原価抜いた4,500円は店のものにしたっていい。ほら、これなら友達と4人でバーで飲んでオーナー役は原価代として600円払って、給与として2,700円貰った上で自分も飲んで、友達からは一人3,000円もらって店に4,500円払う。もうそれだけで充分じゃないですか、と僕がマスターだったら思うね。どーせ誰かとどこかで酒飲むんだしさ―。まぁこれは非常に特殊な例だと思うけど。

もちろん、そんなに上手く行かないよ、という人もいると思う。色々クリアしなきゃいけないことも多いだろう。そもそも売上の計上とか税金とかどうなるんだ、ってとこもあるし。ただ、僕はコンサルタントの端くれとして、空いてる何かがあり、そこを使いたい人がいて、結果的にお客さんが喜ぶんであれば絶対にビジネスとして成立すると思っている。やりようはいろいろ考えなきゃいけないだろうけど。

今回の話はいわばカーシェアとかルームシェアの一種で「ショップシェア」みたいなもんだろう。そんなにリスクがある話ではないし、そもそも面白そうじゃないですか。ある種の社会実験みたいなもんだから(ご本人はもちろん大変だろうけど)、生ぬるい目で見守りたいなと思っています。

願わくばもしウチの近所にあればねぇ。。僕んちから隣町珈琲までは電車で30分くらいかかる。もし歩いてぷらりと行けるところにあれば、夕方に早めの晩御飯としてカレーを食べて、バータイムに1、2杯飲んで、ということが出来るんだけどね。

先日、初めてこのバーに伺って選挙特番を観た話を今度、気が向いたら書きます。

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