《試練》――現在史研究のために

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21年版防衛白書の侵略性、好戦性を弾劾する

2021-07-14 23:11:57 | 日本の政治・軍事―日本の動きⅠ

2021年版防衛白書の侵略性、好戦性を弾劾する

 

 2021年版防衛白書の表紙に「天皇の忠臣・楠木正成像」を掲げた意図は何か‼ その侵略性と好戦性を弾劾する‼


 防衛省は「〈令和3年版#防衛白書 開いた本その2〉」で、「今年の表紙は、防衛白書らしい「威厳」と若年層を含め幅広い年齢層の方に手に取っていただくための「スタイリッシュさ」の追求、そして国外にも発信できる「日本らしさ」を表現するため、日本を代表する墨絵アーティストの西元祐貴氏に描いていただきました」と説明しています。
 単なる騎馬に乗った武将を描いたかのように装っていますが、これは上の左右の写真と見比べると一見して明らかなように、皇居外苑に設置されているブロンズ製の楠木正成像をそっくりそのまま絵にしたものです。
 この像は、千代田区観光協会の説明によると、「手綱を引きながら馬を抑え、頭を下げ拝礼しようとする「楠木正成像」。この姿は、楠木正成公が正慶2(1333)年に、隠岐の島から戻った後醍醐天皇を、兵庫の道筋で出迎えたときの勇姿を象ったものです」という。
 つまり、太平記において、楠木正成が後醍醐天皇を戴いて「鎌倉幕府打倒・天皇親政」の戦争へ進んでいく本格的出発となったエピソードが記述されていることにもとづいた像なのです。忠君愛国と日清戦争の勝利、朝鮮侵略・台湾植民地化の象徴として、この像は約10年がかりで1900年(明治33年)に竣工されたのです。
 防衛省が戦争に臨む武将・楠木正成と皇国史観および日清戦争=朝鮮・台湾侵略を美化する像を改めて持ち出したことは、じつに重大なことではないでしょうか。


 では、同白書の中身はどのようなものなのでしょうか。そこでは、(1)米中対決論と中国脅威論を前面に押し出し、(2)それに対応する「インド太平洋戦略」を打ち出し、(3)そこでの日米安保同盟の強化を前提としつつも、(4)まずもって「わが国自身の防衛体制」を強調し、次いで「日米同盟」を強調する構成となっています。(5)とりわけ「インド太平洋地域での米中対決」「台湾をめぐる米中対立」「台湾海峡の危機はわが国の安全保障にとって重要」と打ち出したこと、(6)韓国・朝鮮領である独島(「竹島」)について、「竹島は日本固有の領土」「韓国側による同島周辺海域での軍事訓練は認めない」などとしていることは重大なエスカレートです。(7)その文脈なかで沖縄・辺野古新基地建設の強行を謳っています。(8)核心的には、敵基地先制攻撃の戦略化を狙っており、沖縄を南西拠点として台湾を戦場にする構えを示し、独島を略奪する意図をも示しているのです。恐るべきことです。
 そうした白書の内容の真の意図が、前記した表紙の楠木正成像で示そうとしている「威厳」「スタイリッシュさ」「日本らしさ」であるというわけですから、ことは重大です。


 それは、戦争アニメの流行に掉さして、現代の若者を新たな侵略と戦争を美化・肯定する勢力に組織しようとするものです。
 日本帝国主義の支配階級が「楠木正成」(太平記によって作られた正成像)をもちだすとき、きわめて侵略的で好戦的な路線に舵を切るときだということを忘れてはならないでしょう。彼ら菅政権の意図を「時代錯誤」とみなしてはならないと思います。

2021年7月14日


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