《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

プーチン体制によるウクライナ侵略戦争の階級的性格と日本労働者人民の課題を考える(その3)

2022-03-15 19:52:45 | 世界の政治・軍事・経済―世界の動きⅠ
プーチン体制によるウクライナ侵略戦争の階級的性格と日本労働者人民の課題を考える(その3)

(承前)
(Ⅲ)米帝バイデンはロシア・ウクライナ戦争の戦争放火者である


▲1997年以降のNATO東方拡大(14か国)。*ロシアは2014年にクリミヤ半島を併合。

1)ウクライナの戦場で威力示すアメリカ製武器

 各種報道によれば、ロシア軍のウクライナ侵略は、プーチンの作戦通りには進まず、初期目標を達成できず頓挫したとのことである。ロシア軍の作戦はまずウクライナの制空権をとり、機械化戦力で北側地域を制圧してキエフを孤立化、そして制圧する作戦であったという(別の見立てもあるが)。ところが、ウクライナに進軍してきた大量のロシア戦車にたいしてアメリカ製ジャベリン(対戦車誘導ミサイル)が戦車を次々に破壊するという威力を発揮して、ロシア軍に打撃を与えていると伝えられている。
 ジャベリンとは、長さ1.2メートル、重さ22.3キロの対戦車ミサイル。目標物に照準を合わせて発射すればミサイルが自動的に誘導され戦車などの装甲を貫通する強力な威力がある。ミサイル1発当たり8万ドルという高価な精密兵器である。米帝はこのジャベリンを18年からウクライナに投入し続けてきた。
 それに加えて、2月26日、アメリカはウクライナに3億5000万ドル(約400億円)の追加の軍事支援=「殺傷力のある武器供与」を行うと発表した。そこには大量のジャベリンが含まれるという
つまり、ウクライナ内に軍隊を派兵していないアメリカがじつは対戦車ミサイルシステム・ジャベリンなど大量の精密兵器投入という形で対ロシア戦争に実質的に参戦しているのである。アメリカの帝国主義的中枢をなすエスタブリッシュメント利益集団=軍産複合体がロシア・ウクライナ戦争で大儲けするという構図ができているのである。
 このように、米帝バイデンは、ロシア・プーチン体制によるウクライナ侵略戦争にたいするもう一方の戦争当事者なのである。


2)軍事不介入がロシアをウクライナ侵略に誘い込んだ

 この間の経過を検証すれば、米帝バイデンはロシア・プーチン体制をしてウクライナ侵略に誘いこんできたことが明らかとなる。
・昨21年3月、バイデン政権は国家安全保障戦略の暫定指針を公表。そこでは中国を「唯一の競争相手」に位置付け中国脅威論を強調する一方、「ロシアは国際秩序の妨害者的な役割を果たす意思を持ち続けている」とするも、対ロシアを対中国より一級下の課題にした。対中国・対ロシアの多正面作戦を避けようとしているかのように打ち出した。それを好機とみたプーチンはウクライナへの軍事圧力を強めた。
・9月20日、米軍人を最高司令官とするNATOなど15か国の多国籍軍6000人がウクライナと合同軍事演習。1996年以来最大規模で展開。
・10月23日、バイデンはウクライナに新たに180基のシャベリンを配備。プーチンは「NATOはデッドラインを越えるな」と反発。ウクライナとの国境地帯に10万人のロシア軍の陣地を構築。
・12月7日、バイテン=プーチン会談。会談後、バイデンは、「戦争になっても米軍を派兵しない」と言明。それはロシアにウクライナ侵略の自由を与えるに等しいものだった。
・22年2月6日、バイデンは、ロシア軍がウクライナ国境で兵力を増強していることについて、「ロシア侵攻阻止のための米軍ウクライナ派兵を検討していない」と重ねて表明。
・2月12日、バイデン・プーチン電話会談。「平行線に終わる」との報道。
・2月20日、フランス・マクロン仲介で米ロとも首脳会談開催に合意。
・2月24日、バイデンはロシアのウクライナ侵攻を理由に米ロ首脳会談をあっさりと取りやめ。アメリカは初めからロシアの軍事行動を止める外交努力を放棄していた。
・同日、ホワイトハウスが「アメリカはいかなる状況になろうとも決してウクライナに派兵しない」と発表。
・同日、NATOストルテンベルグ事務総長が東欧でのNATO軍増強方針を打ち出すとともに、「ウクライナには部隊派遣はしない」と記者会見。
・この間、バイデンは2月15日以降、自らロシア軍の動きについての軍事機密情報を次々と公表するという異例の対応をくり返した。「15万人以上のロシア軍部隊がウクライナを包囲」「プーチン大統領がウクライナ侵攻を決断したと確信している」「攻撃は数日中にも始まる。首都キエフが標的になる」などなど。

 要するに、米帝バイデンは、“ロシアがウクライナ侵略に踏み込んでもアメリカは軍事介入しない”というメッセージを送り続けたのである。プーチンはそれをアメリカの弱さととらえ、一気にウクライナ侵略戦争に突き進んだのである。


3)ウクライナを「米欧・ロシア対立」の焦点に

●08年NATO首脳会談が一線を越える
 さらに重大な問題は、米帝はクリントン政権以来、今日のバイデン政権にいたるまで、ウクライナを利用し、その親米政権をして対ロシア対決に向かわせてきたということである。
 まず、米帝がNATO政策を転換したのは、第二期クリントン政権が発足した1997年であった。以後、旧ソ連圏であったバルト三国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)を含め、東欧諸国の相次ぐNATO加盟(計14か国にのぼる)、つまりNATO東方拡大を促進し続けてきた。それは国際政治の上で「クリントンの豹変」と呼ばれる。
 つぎに、その間の過程で重要な結節点が08年4月のNATO首脳会談(ブカレスト)であった。そこで米帝ブッシュは、政権内部のライス国務長官とゲーツ国防長官の反対を押し切ってウクライナとジョージア(グルジア)にNATO加盟の権利を付与しようとした。NATO首脳会談では、ドイツ・メルケルが強く反対し、「ウクライナとジョージアの将来的なNATO加盟を支持する」というややあいまいな文案となった。
 ロシアにとっては、旧ソ連圏といってもバルト三国は第二次世界大戦下で独ソ不可侵条約によってソ連が強制併合した諸国であり、プーチンも併合の事実を認め、厳密な意味での旧ソ連諸国とはとらえていない。だが、米帝がウクライナとジョージアをNATOに取り込むことは、ロシアの直接的利害がかかった旧ソ連圏に侵入することとなる。ブッシュ政権内部でも有力な反対論があり、ドイツが反対したゆえんである。
 そのブカレスト会談を受けるという流れで、南オセチア分離をめぐってロシア・ジョージア戦争が起こった。ソ連崩壊以後、ロシア軍が初めて国境を越えて武力行使したのである。


●14年親米政権成立以後のNATO加盟問題
 ブカレスト会談で米帝がジョージアとともに焦点としたのがウクライナであった。
・バイデンがオバマ大統領のもとで副大統領を務めた期間(09年1月~17年1月)、ウクライナを何と6回も訪問。常に息子のハンター・バイデンが同行。
14年2月、親ロ派のヤヌコーヴィチ政権を崩壊させたウクライナ反政府デモ(ユーロマイダン革命[尊厳の革命]と呼ばれている。ヤヌコーヴィチはロシアに逃亡)が起こった。それに対抗して、ロシアはクリミヤ半島を強制併合、ドンバス地方で親ロ派武装勢力による東部地区支配となる。その後、新たに選出されたポロシェンコ大統領(同年6月~19年5月)とバイデンはきわめて強い関係を結んだといわれている。
・4月、ハンター・バイデンがウクライナ最大手の天然ガス会社ブリスマ・ホールディングスの取締役に就任。同社は脱税など数々の不正疑惑を生んだ。バイデンはポロシェンコに10億ドルの融資撤回をちらつかせて圧力をかけ、同社捜査をやめさせた(15年に捜査に当たったショーキン検事総長が解任された。後に本人が事実関係を告発したとされる)。
・9月、ウクライナ・ポロシェンコ政権は「ウクライナの非同盟という立場は役に立たなかった」と表明。
・12月、ウクライナ最高会議(議会)が非同盟政策を破棄する法案を可決
・15年5月、ウクライナ国家安全保障国防会議で「NATO加盟を追求」と明記したウクライナ国家安全保障戦略を決定。
・6月、NATOが対ロシアで即応部隊を4万人規模に増強と決定。
・7月、ウクライナ西部リビウ州で米軍を始めとするNATO軍とウクライナ軍が合同軍事演習。それはロシアへの激しい戦争挑発となった。
・9月、ウクライナ国家安全保障国防会議で「ロシアは軍事的な敵対国」と規定する軍事ドクトリンを確認。
・18年、米帝のウクライナへのジャベリン供与が始まる
・19年2月、ポロシェンコ政権がウクライナ憲法改正憲法116条に「ウクライナ首相にNATOとEUに加盟する努力目標を実施する義務がある」という条文を追加
・5月、ゼレンスキーがウクライナ大統領に選出・就任。米帝はゼレンスキーをさまざまに後押し。ゼレンスキーはNATOおよびEU加盟を前面に押し出す。
・12月、ゼレンスキーは「国家権力の脱中央集権化」を盛り込んだ憲法改正案を最高会議(議会)に提出。東部ドンバス地方に「特別な自治権」を認めるミンスク合意を事実上破棄するもの。

 このように、14年以降のウクライナ親米政権は、ロシア敵視、NATO加盟の追求、ミンスク合意破棄を次第しだいに推し進めてきた。その背後で、米帝はロシアに米軍=NATO軍増強の重圧を加え、米欧対ロシアの政治的・軍事的緊張を高めながらもきわどいバランスをはかりつつ、ロシアを挑発し、ウクライナNATO加盟問題を対立の焦点に押し上げてきた。
 ロシア・プーチン体制の側は、強行突破的な対ジョージア戦争を遂行し、クリミヤ併合、ドンバス地方軍事介入という武力行使で対抗してきた。
 要するに、米帝の側からも、ロシア・プーチン体制の側からも、相互に一線を越える政治軍事行動を起こし、不可避的にウクライナ戦場化をもたらす国際的条件をつくってきたのである。


4)新大西洋憲章は全世界の反戦闘争への挑戦

●米帝が新たな世界支配秩序の再編へ
 現在の米帝のウクライナ政策の根底には、バイデンが声高に唱える「民主主義国家と専制主義国家との戦い」という路線がある。それは、前述したように、バイデンの政治スローガンであるにとどまらず、イギリス帝国主義とともに署名した新大西洋憲章のガイストとされている。
 そもそも旧大西洋憲章は米英帝国主義が取り結んだ第二次世界大戦の戦争綱領であった。米帝はそこにスターリン・ソ連を引き込み、蒋介石・中国を取り込み、連合国を編成してドイツ・イタリア・日本の枢軸国と総力戦を展開した末に勝利した。そして米帝の世界支配の道具として国連を設定するものとなった。
 その旧大西洋憲章の「再活性化」(米ホワイトハウス)とされる新大西洋憲章とは何であろうか。
新大西洋憲章は、8項目の多岐にわたっている。「民主主義」「国際的な制度、法律、規範」「主権、領土保全、紛争の平和的解決」「科学技術」「サイバー脅威から安定、NATO防衛、核抑止」「持続可能な経済」「気候変動」「COVID-19パンデミックにたいする健康システム強化」がキーワードである。
 それは、(1)まずEUの頭越しに「アメリカとイギリスの特別の関係」を謳い、(2)対ナチス・ドイツを念頭に置き、かつソ連と組むために旧大西洋憲章には書き込まなかった「民主主義」を前面に掲げたように、中国とロシアを仮想敵とするものである。(3)そのまま受け取れば、来たるべき第三次世界大戦の戦争綱領としてある。(4)ソ連崩壊後のヨーロッパ(とくにウクライナ)およびアジア(とくに台湾)の国境線をめぐるロシアや中国との領土紛争=戦争を構えるものである。(5)米帝の世界支配の道具たりえなくなった国連に代わる新たな国際的制度を想定している。(6)ウクライナ情勢に引き寄せれば、「NATO防衛」「核抑止」が謳われていることは、ロシア・プーチン体制によるウクライナ侵略戦争をすでに想定していたといえる。(7)また対ロシア経済制裁の徹底化による世界経済システムの大混乱をよしとし、そこからの新たな世界経済編成の暴力的な再構築を想定しているとみなしうる。
 もちろん、米帝の新大西洋憲章という世界戦争路線が、どこまで準備されたものか、どのように計画的に構想されているものかは、関連する内部文書もないため、現時点ではよくわからない。それほど奥深い構想があるとも思えない。
 しかし金融資本主義である帝国主義とは、必然的に世界支配を求め、そのため帝国主義戦争―世界戦争を不可避とし、かつそれによる世界の暴力的再編を求める体制であることは、レーニンが明らかにした命題であり、それは何も変わっていない。


●米帝の陥った内外危機の深刻さ
 翻って、米帝はその世界支配でも、国内支配でも深刻な破綻に直面している。
 1991年および03~11年のイラク侵略戦争の失敗、その不正義性の露呈、15年シリア軍事介入の失敗、01年以来20年にわたるアフガニスタン侵略戦争での敗北、惨めな撤退、米軍兵士(退役兵士を含む)において戦場での死者の4倍以上が自殺している現実、PTSDに苦しむ大量の兵士たち、総じて「対テロ戦争」の破産と中東でのヘゲモニー喪失と重なり、「唯一の超大国」としての世界支配力が衰退してしまった。とりわけ、昨年のアフガニスタン撤退の大混乱は決定的なダメージとなった。
 国内では、厖大な財政赤字を解消できず、金融政策が動揺し、インフレ昂進を抑えることができない。劣化したインフラ対策や気候変動対策はままならず、大型歳出法案を成立させることができない。COVID-19パンデミックに有効策を打てず、住宅や自動車の需要増加でますますインフレが昂進している。労働者の賃金は下落し、失業者・反失業者が増え、それがアフリカ系アメリカ人、女性、ヒスパニック、アジア系移民などに犠牲転嫁されている。富裕層と中間層・貧困層との経済的・社会的格差は拡大する一方である。数々のヘイトクライムが激発し、銃による殺人など犯罪が多発している。
 他方、もともと巨大な国内市場を擁する農工兼備国であるアメリカは石油に加え天然ガス生産が可能なエネルギー大国となった。ロシア・ウクライナ戦争に乗じる形で、液化天然ガス(LNG)の欧州への輸出増大を狙っている。
 また、世界最大の軍産複合体国家として、ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマン、ジェネラル・ダイナミクス、レイセオン・テクノロジーズといった世界のトップ企業が世界各地での紛争を求めている。

 米帝の基軸にある金融資本とその政府が、内外ともに失墜した世界帝国の位置を押し上げる絶好の転機として、ロシア・プーチン体制によるウクライナ侵略戦争、ひいては第三次世界大戦の切迫を位置づけている――このように今日の世界を認識しなければならないと考える。その帝国主義的路線とイデオロギーが「新大西洋憲章」にほかならない。
 このことは、世界史的にみれば、米帝はソ連崩壊以後の混沌たる世界を自己のヘゲモニーのもとに集約することができず、スターリン主義崩壊をいわば止揚できなかったということを意味する。スターリン主義ソ連は崩壊したが、それは資本主義の勝利、全世界の資本主義化とはならなかった。それどころか、人類にとって戦慄すべきことであるが、資本主義世界は第三次世界大戦にしか危機突破の方途をもちえないということが明らかとなりつつある。

 そうであるいじょう、全世界の労働者人民は、第三次世界大戦を引き寄せる新大西洋憲章こそ反戦闘争への反動的挑戦と受けとめなければならない。だからこそ、ロシア・プーチン体制によるウクライナ侵略戦争に絶対反対し、ただちに全面停戦させねばならない。これを第三次世界大戦過程としてはならない。


【Ⅳ】日本の労働者人民に問われていること
――ウクライナ情勢に乗じた日本政府の改憲策動と戦争政策を許すな


 自民党は、2022年度の運動方針案で、急遽、原案になかったウクライナ情勢を追加し、「日米同盟のいっそうの強化」「早期の憲法改正実現を目指す」を強調している(2月25日、産経新聞報道)。
 岸田首相は、2月25日、記者会見で、ウクライナ情勢について、「我が国の安全保障の観点」を強調し、「この観点からも決して看過できません。G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、ロシアに対して軍の即時撤収、国際法の遵守を強く求めます」と言明した。
 また、岸田は内閣周辺に「アジアの前例になるから深刻に受け止めないといけない」と語っている。2月17日、岸田は宏池会(岸田派)の例会で、「主戦場はヨーロッパと言いながらも、力による現状変更を許すということになると、アジアにも影響が及ぶことを十分考えておかなければならない」とトーンを上げた。
 2月18日の衆院予算委員会では、「わが国を取り巻く安全保障環境は2014年当時と比べて一段と厳しさを増している。なによりも、米中の競争の激しさ、これは2014年当時とは比較にならないほど激しいものがある。G7をはじめとする同盟国・同志国との関係、国際社会との連携、これはより強く意識しながら、適切な対応を考える」と答弁した。
 それらは、日本のロシア政策の転換であり、ロシアとの断交、ロシア仮想敵国視へとつながっていく。日本帝国主義の側から第三次世界大戦を戦争挑発するものでなくて何だろうか。重ねていうが、私たちはロシア・ウクライナ戦争の参戦国=日本の労働者人民となっているのだ。
 あえていうが、自国日本の政権が進める戦争国家化・集団自衛権行使・沖縄基地強化・改憲への明確な反対運動なしに、「ロシアのウクライナ侵攻反対」を唱えることはペテンである。それは真の「戦争反対」といえない。



 水戸喜世子さん(子ども脱被ばく裁判を支える会共同代表、十・八羽田救援会)がFacebookに投稿されている内容が、事態の核心を鋭く衝いている。多くの人たちが共感している。勝手ながら引用させていただく。


▲水戸喜世子さん(22年3月6日)
 「ロシアによるウクライナへの戦闘行為が今日もまだ止まらない。もう10日も経とうとしているのに。その間のウクライナの市民を想うと胸が張り裂ける。
 警戒警報、空襲警報に怯え、防空壕で小さくなって震えていた10才の頃を思い出す。家は焼かれ、5歳の弟の手を引いて、着の身着のままで逃げた思い出。寒かった土手道を。
 国家の安全保障が個人の安全保障より優先される状況はこれ以上許されてはならない
 ウクライナ国は国民に火炎瓶の作り方を教えて、男は留まって応戦しろと強要しているという。かつて竹槍で落下傘で降りてくる敵兵を突けと、訓練をさせられた記憶が蘇る。わが家が爆弾で燃えているのに、父は子どもと逃げることを許されず、町を守れと強いられた記憶。
戦車や兵士で人権の保護や国と国の間の紛争解決に繋がるわけがない。
 勝っても負けても武力で平和は作れないことは20世紀の筆舌に尽くせぬ悲惨な犠牲の上に人間がやっと辿り着いた最後の知恵ではなかったのか。私たちは命をかけてもこの到達点から後退してはならないのです。人類が存続するために。
核シェアリング?!!! 命を冒涜する戯言をまことしやかに垂れ流すフェイク報道は糾弾されねばなりません。」

 そうだ、人類がやっとたどり着いたはずの命の叫び、その知恵を後退させてはならない。この論考の冒頭で記したように、いまもっとも必要なことは、“戦争絶対反対”という、人間としてもっとも素朴な感覚、ヒューマニズムに徹した立場ではないだろうか。帝国主義打倒、スターリン主義打倒第二革命、資本主義社会の暴力的転覆をめざす共産主義者こそ、その体現者でなければならない。

水谷保孝
2022年3月10日脱稿、3月15日加筆



【主な参考文献・資料】
・プーチン「歴史総括テレビ演説」(今井佐緒里訳)、2022・2・21
「その1」:https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20220224-00283560
「その2」:https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20220225-00283620
「その3」:https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20220226-00283950
「その4」:https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20220228-00284037
「その5」:https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20220301-00284508
「その6」:https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20220302-00284556
・プーチン「先制攻撃テレビ演説」(NHKNEWSWEB)、2022・2・24
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513641000.html
・バイデン「一般教書演説(全文)」、2022・3・1
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN021D70S2A300C2000000/
・岸田文雄首相の記者会見、2022・2・25
https://www.kantei.go.jp/.../statement/2022/0225kaiken2.html
・朝日新聞国際報道部『プーチンの実像――孤高の「皇帝」の知られざる真実』2019・3、朝日文庫
・熊倉潤『民族自決と民族団結――ソ連と中国の民族エリート』2020・3、東京大学出版会
・ジェニー・ウィテリック『ホロコーストを逃れて――ウクライナのレジスタンス』2014・7、水声社
・ジェームズ・A・ベーカーⅢ『シャトル外交 激動の四年〈上・下〉』1997・5、新潮文庫
・塩川伸明『国家の解体―ペレストロイカとソ連の最期〈全3巻〉』2021・2、東京大学出版会
・塩原俊彦『ウクライナ・ゲート――「ネオコン」の情報操作と野望』2014・10、社会評論社
・下斗米伸夫『ソ連を崩壊させた男、エリツィン』2021・12、作品社
・――『宗教・地政学から読むロシア 「第三のローマ」をめざすプーチン』2016・9、日本経済新聞出版社
・東郷和彦/A・N・パノフ『ロシアと日本――自己意識の歴史を比較する』2016・10,東京大学出版会
・袴田茂樹『プーチンのロシア――法独裁への道』2000・10、NTT出版
・羽場久美子『ヨーロッパの分断と統合-拡大EUのナショナリズムと境界線――包摂か排除か』2016・3、中央公論新社
・松里公孝『ポスト社会主義の政治―ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァの準大統領制』2021・3、ちくま新書
・山本義隆「戦争と原発――ロシア軍のウクライナ侵攻をめぐって」
https://yamazakiproject.com/from_secretariat/2022/03/12/6194
・吉留公太『ドイツ統一とアメリカ外交』2021・8、晃洋書房


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