石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

一流企業の「うつ」

2008-10-10 23:06:31 | ベンチャー社長インタビュー
昨日の授業で、ベルトルト・ブレヒトの名前を「聞いたことがあるか」と学生に尋ねたら、全員が「ない」と返事したので、びっくり。

彼が打ち立てた偉大な演劇理論「異化効果」について諄々と説いたが、どれほど分かってくれただろうか。

彼の欧米全土に渡る亡命生活について語り、そのスケールの大きな移動と、秋葉原事件の加藤容疑者のスケール小さな移動に言及した。

加藤は青森で生まれ、静岡で派遣の暮らしをして、秋葉原で「自爆」した。この比較話にも、学生達から反応なくガッカリ。

授業を終えて、すぐに日本橋、ホテル・マンダリン・オリエンタル。監査法人トーマツ主催の「テクノロジーFast50」の授賞パーティへ。

急成長企業トップ50社をランキングして表彰するイベントだ。オラは選ばれた企業の社長インタビューを、ここ数年間やってきた。あのライブドアのホリエモンやミクシィの笠原氏もインタビューした。

今回トップの「ウェルネット株式会社」は、何と収益成長率1,053%。オンラインで代金決済をする会社で、会社は北海道にある。ネットビジネス、恐るべしだ。

世界的な金融危機と株価暴落の時期、このパーティだけは不思議な異次元空間だ。

途中抜け出して、有楽町のプレスクラブで旧友交歓。読売新聞の幹部曰く、『読売ウィークリー』が今年いっぱいで廃刊になる由。活字の苦境は想像以上だ。

また同社内では、各部所で一割は「うつ病」とのこと。派遣の悲惨は理解できるが、待遇がいい「読売」の正社員が陥る「うつ」とは何であろうか。

これがベンチャー魂か

2008-08-07 22:28:11 | ベンチャー社長インタビュー
炎暑の中、上京して「勝どき橋」に近い株式会社ネクスト社長・井上高志氏をインタビュー。

 とんでもない豪華オフィスビルがそそり立つエリア。東京は刻々変わり続けていることを実感した。

 不動産情報でダントツの実績で先頭を走る会社。そもそも、井上氏の起業エピソードがいい。

 リクルート・コスモスにいたとき、彼は、いい物件を探すご夫婦に誠実に対応し過ぎて、「他社物件」を売ってしまった。

 会社からは叱られたが、彼の価値観ではOKだった。

 そもそも「欲しい物件」と「欲しがる人」がキチンと出会えない業界っておかしいんじゃないか、と彼は考え、起業に至った。

 いま、彼が情熱を掛けている事業は、「ロココム」という「ローカル・コミュニティ情報」サイトだ。

 住宅だけではなく、医療・教育・仕事・金融・食の地域情報を、徹底的に洗いなおす事業。本来、行政や自治体がやるべきことだが、赤字にめげず、意気揚々と取り組んでいる。

 不透明・不便・不安のまま「地域コミュニティ」の崩壊がうち続く時期に、こういうベンチャー・スピリットが登場したのである。

 このインタビュー・シリーズは、改めて「日本の希望」を教えてくれた。

 帰りに、夕暮れの「勝どき橋」を徒歩で渡る。日本が鉄に挑んだ時期の土木事業。魂のこもった建造物はいいなー、と思った。

唸りながらインタビュー

2008-07-31 20:51:18 | ベンチャー社長インタビュー
炎暑の中、上京。日本橋蛎殻町にある株式会社「ラクーン」の社長・小方功氏を訪ねてインタビュー。

 主にアパレルと雑貨で、インターネットを使った「問屋業」を起業して、同業他社を寄せ付けず「ひとり勝ち」している。

 「オンライン激安問屋」→「スーパーデリバリー」→「バイヤーズナビ」と絶妙な名称を振って、サービスの質を「進化」させている。上場しても、奢らず、溺れない、その極意は何だろう?

 ベンツに、愛人に、ロレックス・・と空想してしまうが、「今してる時計は3千円ですよ」とケロリとして言う、言い方に無理がない。

 「東大卒と高卒が、仲良くヤキトリ食ってる会社です。僕も一緒になって幸せです」と言うことばに「社風」を感じた。

 この人を作ったのは、MBAとか経営の「指南書」の類ではない。或る「華僑」との出会いが彼を作った。

 「あなたのように名誉ある時間を過ごしたい。あなたのように年をとりたい」

 思わずそう言わせる人物に出会ったことが、小方社長を際立った経営者にした。

 「ウーン」・・オラは、唸りながら辞去した。社長はビルの入り口まで見送ってくださった。
 

内なるガラバコス島

2008-07-28 07:53:01 | ベンチャー社長インタビュー
 先日インタビューしたITベンチャー企業「ライトアップ」社長・白石崇氏の記事を編集作業。改めて内容の深さに感銘を受けた。

 経済の先行きに悲観的な見方が強い中、IT業界もシュリンクし、社長が欝になる時代、明らかに供給過多だそうだ。

 しかし、10社に1社は好調で、どういう会社か? 答えは簡単で「進化し続ける会社」だけが生き残っていくという。

 ライトアップの昨年度成長率:525%

 「苦しみながら独自の進化をしてゆきたいのです。マダガスカル島やガラバコス島には独自な進化を遂げた、不思議な動植物がいますよね。進化とは何か、独自とは何ぞや? それを決めるのはトップです」

 35歳の若い社長の口から「ガラバコス島」の名前が出るとは思わなかった。実に学ぶところ大きい。

 思えば、誰もが「内なるガラバコス」、「進化と創造のきっかけ」をもっている。それを意識するかしないかが重大な分かれ目だ。

染まりやすい性格

2008-07-25 16:47:49 | ベンチャー社長インタビュー
 きのうは炎暑の中を上京。神田で、「プライムワークス」社長・池田昌史氏をインタビュー。

 携帯のコンテンツで最先端を走っている、ベンチャーの星だ。思いついたアイディアを、片っ端から事業化してゆくパワーの源を聞いた。

 根っこには「楽天的な性格」があった。それから、自己の「アイデンティティ」というものを「変化し続けること」に置いている。これが彼をユニークにしている。

 この2点を聞けただけで、インタビューは大成功! ハハハハ・・・。

 オラはホントに染まりやすく、楽天的だ。

日本に希望あり

2008-07-07 21:17:10 | ベンチャー社長インタビュー
(株)ジークレストの社長・長沢潔氏をインタビュー。

 渋谷にあるオンラインゲームの会社で、昨年度の成長率、実に2187パーセント(!)。

 もともと、伊藤忠商事の木材部にいた人が、巡り巡って、ベンチャー企業の社長として修羅場を生きている。

 「人々の余暇を価値あるものにしてゆきたい」という志は、兵器を作って人を殺し、環境を汚染して資源を使い果たす企業に比べれば、なんぼかエエ会社である。

 ただ、ゲームが面白すぎて、「閉店のないパチンコ屋」として、依存症の人を続々と輩出しないように願うばかりである。

 ナンバーワンか、オンリーワンしか生き残れない業界で、司令官として陣頭指揮をとる若き経営者は、35歳である。あのホリエモンと同い年。

 「父を尊敬しています。父と話す時が一番楽しいです」

 ホリエモンからは、決して聞けなかったコメントだった。眉目秀麗、堂々たる応答。日本に希望をもっていいと思ったひとときであった。

熱いぞ、ベンチャー企業

2007-10-12 22:44:22 | ベンチャー社長インタビュー
 昨日は、監査法人トーマツが主催する「Fast50」の授賞式に行って来た。場所は日本橋のマンダリン・オリエンタル・ホテル。急成長企業をランキングして、トップ50社を表彰するイベントだ。

 今までこれに受賞した社長さんを、オラはずっとインタビューしてきた。次のサイトで見ることが出来る。

 http://www.fast50.tohmatsu.co.jp/ceo/ceo_index.html

 会場では次の社長さんたちと歓談した。アウンコンサルティング(株)信太明社長、(株)ボルテージ津谷祐司社長、SBIベリトランス(株)沖田貴史社長。

 みんな若い、青雲の志をもったベンチャー社長たちだ。永田町も霞ヶ関も国民の信頼を失いつつあるとき、いま日本で最も熱く燃えているのはこの部屋だったかも知れない。 
 

ポスト・ホリエモンの社長たち

2007-08-21 22:49:08 | ベンチャー社長インタビュー
 最近、次の8つの会社の創業社長をインタビューした。ベンチャー企業で、ほとんどが30代の社長だ。オラにしてみれば息子のような年代だ。いわば、ポスト・ホリエモンの社長たちだ。 

 ボルテージ株式会社、アウンコンサルティング株式会社、株式会社オプト、SBIベリトランス株式会社、株式会社ミクシィ、サイバーステップ株式会社、株式会社メビックス、ネクステック株式会社

 しかし、学ぶところ大きかった。順次、次のURLでアップロードされ、ご覧になれます。

http://www.fast50.tohmatsu.co.jp/ceo/ceo_index.html


これからは高卒の時代だ

2007-07-04 22:33:27 | ベンチャー社長インタビュー
サイバーステップの佐藤類社長にインタビュー。オンラインゲームで上場した会社だ。日本発の、自前の、オリジナルなゲームで、韓国、中国、ベトナム、インドネシアと制覇してゆく。

 かつて祖父の世代が、植民地にし、兵士として渡り、殺し、焼いて行った国々で、彼はいまゲームで人々を楽しませている。経営者というより、芸術家と遊び人が合体した不思議なキャラだ。

 彼は国境や言語の違いを平気で乗り越えて、「面白いか、楽しいか」だけで勝負している。「戦争は愚かです。平和がいいです。僕は世界中を楽しいことで満たしてゆきます。目標は200ヶ国!」

 29歳という年齢も驚きだが、彼が大学に行っていない、工専卒ということも瞠目した。在学中にゲームを事業化しかけて学校に叱られ、卒業してアルバイトで400万円を作り有限会社を立ち上げた。

 「うなる」ことは、オラが一番心動かされた時の表現だが、きょうもうなった。

 オラ「自分探しとか、自分が何をしたらいいのか分からない若者が多いのですが、佐藤さんは、自分がしたいことをして、まっしぐらで来ましたね」

 佐藤「自分探しでうろうろしているのは、若者だけじゃないですよ、中年だって老人だって、自分を失って、自信喪失しているじゃないですか。若者の不幸は、お手本にすべき大人がいないということです」

 痛烈な一言だが、当っている。彼は大学卒にありがちな「世の中論」や「世代論」を、それ以上は展開しなかった。

 ただ、「日本は変わらなければいけない、このままではいけない、だから10億円自由になれば、自分は若い者に、選挙に行こう! とキャンペーンしたい!」と言っていた。

 大学卒のエリートと称される者達が日本を滅ばそうとしている。これからは高卒の時代だ。

 この社長は、こんな楽しいエピソードを話してくれた。

 佐藤さんが社内をうろうろしてると、社員から「社長、ちゃんと仕事してくださいよ!」と言われてしまった。「僕はすごすごと席に戻って、ゲームをやってます」



「ミクシィ」の笠原社長にインタビュー

2007-07-03 22:34:37 | ベンチャー社長インタビュー
アウンコンサルティングの信太明社長インタビュー記事を原稿にして編集部に送る。湘南新宿ラインに飛び乗って、渋谷のマークシティに行く。きょうのインタビューは「ミクシィ」の笠原健治社長。

 眠そうな顔でご登場。「昨晩、誰かと何かあったんですか?」と訊いたら席を立って怒り出した・・・という人かと思ったが、とんでもない。とにかく温厚、寡黙、微笑の人であった。

 某サイトによれば、32歳にして888億円の財産を持っているそうだが、オラの目には、ビンボーで冴えない大学院生っていう感じでした。

 彼はこっちの挑発になど乗らない。それほど眠かったのか、それほど慎重な経営者なのか、質問慣れしているのか。

 「ミクシィって、笠原さん、あなたのオリジナルなものですか? ネットの爆発的膨張という、所与の条件、つまり幸運は向こうからやってきただけではないですか?」

 「今や誰がやったってMixiはMixiでしょう。笠原さんの存在意義って何ですか?」

 「ライブドアに始まって最近のコムソンまで、新興企業が袋叩きにあい、結局、既得権益まみれのオジサンたちが、いい思いをしているだけ。改革は口先だけのこんな国に、愛想は尽きませんか?」

 どんな質問にも動じず、いきりたたず、微笑を絶やさないこの方は皇族? と思ったりもした。ああ、この人がいる限り世間の袋叩きはないかも、やはり最良の社長を頂いた会社だ。

 父上は暗号解読の技術者、母上はピアニストっていうのも面白い。本当はコテコテの関西弁の人だが、今はしゃべるチャンスはないそうです。えー、じゃ、藤原紀香を奪っちゃえばいいじゃないですかー?

 お馬鹿なインタビュアーは広報の美女の案内でさっさとお引取りを願われました。