石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

年越し

2008-12-31 21:38:31 | 雑談
おおみそか、病室で過ごす。

午後、小澤征爾の指揮、ベルリンフィルによるチャイコフスキー「悲愴」をテレビで聴く。オケと指揮者が一体、圧倒的。

4人部屋を1人で占拠することになった。他は退院や外泊。抜群の解放感。3食、ルームサービス、看護婦つきでホテルのスィートの広さ。

教育テレビで今年亡くなった人特集。加藤周一、筑紫哲也など。ガンと戦い、自分の病を書きつづけたノンフィクション作家・柳原和子さんの言葉が印象的だった。

「ガンになると、生きることと言葉が直結するんです」

永平寺の住職の言葉。「悟りとはいつでも死ねるということではなくて、平気で生き続けるということだ」

夕食は通常の食事に椀一杯のソバが出た。

年越しのそばをすすれりガン病棟

昭和の病室

2008-12-29 03:23:53 | 雑談
白血球の数が前回検査(26日)で3600、きょうの血液検査で2600。確実に減りつつある。潜水艦内で深度計を見る思い。

妻が来院して、こちらの昼食につきあう。妻は売店のお握りをほおばる。

昭和に建てられた県立病院の病室の狭さは偉大なり。4人の相部屋だから、ベッドだけがオラの自由空間で、まるでスペースシャトルのカプセル内生活。

そのベッドにふたり並んで飯をほおばっていると、なんだか昭和の映画の一場面が思い出される。懐かしい!

妻は懐かしがるものは何もない、平成のリアリストである。「これで、橋の下の暮らしも二人で出来るわね」

院内宴会

2008-12-28 18:45:08 | 雑談
病院暮らしは多忙とヒマの「変拍子」である。検温、脈拍、問診は1日2度の決まり。

その他不定期の血液検査などあり。お小水は必ず分量を報告。3度の食事に、入浴など加えると結構なルーティン・ワークである。

突然にドーンとヒマになる。プリペイドカードを買ってはあるが、テレビを見る気はしない。音楽はビル・エバンス 、ドボルザーク、シューベルトがいい。

小説はジョン・グリシャム『評決のとき』が断然面白い。消灯時刻がうらめしいくらい。

がん関連の本は読む気せず。妻にまかせて時々「御進講」を受ける。

きょうは思いがけず見舞い客が1度に6人やってきた。黒いコートの男たちが部屋に入ってきた時は、刑事たちに逮捕されるあわれながん患者を想像した。

はるばる京都から来てくれた2人を含め、大学時代の友人たちである。丹沢山系を眺めるラウンジで歓談尽きず。

 年の瀬に酒なきままの宴かな

「派遣切り」という人災

2008-12-25 15:06:58 | 雑談
血液検査の結果がいい。一昨日またも「外泊許可」がでた。クリスマスイブは自宅で、の粋な計らいだ。

しかし、こんなに病院と自宅の間をウロウロしていると、一人前のがん患者になれないんじゃないか、と不安である。

こちらは我が身一つにかまけているが、世間の報道では「派遣切り」の話で一杯だ。しかし、あっちで切られた・こっちでも切られたのエピソードばかりで、何故かくも本質的な議論を欠いているのか。

金融破綻も「派遣切り」も、人災、政策の大失敗で、戦争責任と同じ。

そもそも、平成16年3月1日に変更された「労働者派遣法」を立案したのは誰か、賛成したのは誰か、報道は何を伝えたのか? 

この時点で、派遣とは「切られ役」が運命付けられていた。

それらの検証がないまま「寒風に住む所ナシ」の山のような報道ばかり。ニューギニア・ガダルカナル、南方の島々、あちこちで「玉砕」の報を見る思い。

県立ハーレム

2008-12-22 23:53:41 | 雑談
昨夜、本宅から「別宅」に戻るように、病院に帰投。

こっちにはホンモノの看護婦さんがひしめいて、24時間体制でサービスに手ぐすね引いて待っててくれる。いわば「県立ハーレム」である。

がん病棟には「軽症者」はいないはずだが、症状の「格差」は歴然とある。オラの同室、80才近い老人は、食べることも排泄することも自力では出来ない。

全部を看護婦さんが引き受けている。24時間にわたる看護は、実に頭が下がる。その彼が、きょう個室に移動した。

我が帰り彼が去りゆく師走かな

長めの休暇

2008-12-21 16:42:02 | 雑談
3日間の病院からの外泊休暇は、鎌倉の海を見ることと休養に当てる。

発病に驚いた某友人からのメールでは「少し長めの休暇と思って療養に専念を」と言ってくれた。

悠揚たるかな雲の行き来、わが人生に何か急ぐことありや。

フラジャイルな私

2008-12-20 17:54:52 | 雑談
今のところ、抗ガン剤による吐き気は出ていない。昨日、医師はオラの様子を見て突如「外泊許可3日間」を出した。

白血球の急減など、副作用が顕著に出るのはもう少し日数がたってからなのだ。

身支度して病院を出れば、とりあえず「普通人」。横浜のベイ・シェラトン・ホテルのラウンジでコーヒー、とシャレようとしたら、待つ人長蛇。

とりあえず、ロビーのソファーにどっと座り込む。長く歩くとめまいがする。何という「フラジャイルな私」!

院内聖夜

2008-12-18 17:40:38 | 雑談
病院に1週間早くクリスマスがやってきた。

本館ホールで、昼からミニコンサート開催。オペラ歌手によるメゾソプラノ独唱。午後は、ボランティア・グループが各病棟を回りクリスマス・キャロルを歌ってくれた。

夕方には看護士、医師、病棟スタッフらが、トナカイの縫いぐるみやサンタの格好で各病室を回ってくる。患者一人一人に手作り・手書きのカードと、ローソクを模したタオルのプレゼントをくれた。

オラへの文章は「石井さんへ。初めての入院や治療で不安なこともいっぱいかと思いますが、一緒に乗り越えていきましょう!」かたじけなし。

抗ガン剤

2008-12-17 17:32:49 | 雑談
初体験! 抗ガン剤投与の1日。4時間にわたって、パクリタクセル380mg、パラプラチン720mg が体内に点滴・注入された。

ガンを退治してくれるのか、オラの体内の免疫力を叩いてしまうのか、スリル満点だ。注入をまるで他人事に、トロトロと眠くなってくる。

4人部屋、自分のベッド回りだけが生活空間のすべて、という暮らしがとりあえず始まった。

入院の日

2008-12-16 21:06:48 | 雑談
神奈川県立がんセンター入院の日。

万端の準備のもの、2つのスーツケースに。鎌倉駅にて妻の母と合流、支援態勢心強し。母といってもオラより年下のたらちね。

午前11時、橋本千寿子先生と対面。明日からの抗がん剤治療の諸注意を受ける。あちらもこちらも背水の陣。

B棟2階の病室は4人部屋。午後は検査で大忙し。CTスキャン、心電図、レントゲン、血液検査。まるでベルトコンベアを流れる旅行カバンだよ。

同じカバンでも、くたびれたカバンより、カッコいい、おしゃれなカバンでありたい。

異境の町に着いて、ブラリと町に散歩に出たき思い。

ガン病棟・第一夜。ひたすらに静寂なり。