児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

秋・・・①

2013年10月05日 | 徒然
気がついたら、一ヶ月ほども更新をしていなかった。
この一ヶ月に何をしたかというと・・・
札幌で道が登録応援する演奏家(HAFアーチスト)のオーディションがあり、指揮者の円光寺さんと審査。木管5重奏のボロゴは慣れたプレゼンテーションをして立派。しかし、すでにずいぶん道の文化財団の仕事を引き受けて普及などの活動をしている。他の二つのグループはある意味これから、ということで、そこからは財団の判断にゆだねることにした。彼らには来年4月に2日ほどコミュニティ事業の手法などの研修会を開き、そのあと道内に派遣することになる(そうだ)。
いわきではピアノの木田さんのアウトリーチのためのランスルーを18日にして、実際に学校に行っていただいたのは10月1日、2日。1日の2校の中学校を見せてもらったけれど、彼女の語り口は音楽と同様に自分自身と向き合い確認をしていくような感じがする。そのことは昨年のオーディションから明確で、東京のようにスピード感がある場所よりもいわきの方が特徴が活きるかもしれない。いわきではもう一つ、ピアノマラソン。幼稚園くらいのこどもから音大を卒業して帰ってきている人、グループで楽しんでいる女性の集まりなど、様々な30名ほどの出演者が集まり、ピアノと自分との関係が見えるような演奏を約4時間ほど、そのあとゲストの小川典子さんの演奏。小川さんとはもう30年近くになるが、国際的なピアニストとしての「格」を感じる演奏で、それでも仕事をするたびにまだ底が見えないな、と思わせてくれるピアニストだ。そして庶民的(と言って良いかどうか)なキャラクター。
いわきから東京で3時間ほど寝てすぐに徳島へ。徳島では邦楽の活性化事業。合宿のように4日間アウトリーチプログラムを作り実際に学校に行く。この局面は毎回どきどきする。しかし、演奏家は明確な目標が見えたときの瞬発力はすごい。いつも感心する。学校ではそれぞれの個性がちゃんと出ていた。伝えるということは難しそうだけれど、本当に色々な方法があって、伝えようと懸命であることが案じられれば、それを理解する力がこどもでもちゃんとあるということを確認できる貴重な機会。
そのあと北九州から長崎に行って、打合せと長崎のアウトリーチ事業。これも地元の演奏家によるアウトリーチ。ここは、研修で一気に成果を出すというよりも、2年間ゆっくりと見ていけるのでその良さもある。
そしていったんいわきに戻り,すぐ広島県の廿日市。ここでも二人のアーチストのアウトリーチのランスルーから実施までを見る。
演奏家は本当に個性的で、一人として同じアプローチは出来ない。だからAさんに話すこととBさんに話すことは両方聞いたら矛盾しているように見えてスタッフとしては混乱することが絶対にあるはずだ。それでも私としては、「あ、このタイプね」とある程度はパターンというのがあるから短時間でなんとか出来るのだけれど、でも山の3合目くらいまでしか同行できない気がする。でも3合目まで登れば,そのあと他の山に登ってしまうことは無いだろう・・・、と信じる。
昨日は久しぶりに東京で半日近く時間が出来、新しくした車(中古だけど)の試運転。そのあとNHK交響楽団に行って有馬賞の式典に参加。
秋はまだまだ続きそう。10月は北海道に2回、九州に1回、中・四国に4回、北陸に1回、いわきに3回。
写真は、長崎永野さん、廿日市前田くん、工谷さん。






富山県の人材育成事業~アートマネジメントセミナー

2013年09月07日 | 各地にて
富山県が行ったアートマ研修こコーディネーションを頼まれて、9月4,5日の2日高岡文化ホールで「普及啓発プログラムの計画と企画」という講座をやってきた。
富山県のホールの方とは何故か比較的たくさんおつきあいをしてきた。高岡は昔カザルスホールが出来て比較的すぐ、アコーディオンの御喜美江さんと一緒に行ったのが最初だし、黒部や入善にも何度もお邪魔していたが、ここ5年ほどいっていなかった。その間に新しい職員の方も増えて来ていて、今回12名のミニラボ形式(地域創造のラボを小ぶりにした感じのもの)で組み立てたが、10名は初めて会う人だと思う。私が話したあとで講師をお願いしたのは、黒部の鮫沢さん、入善の澤田君、高岡の山本広志さんの3人でそれぞれ自分たちのやってきたことの発表。そしてグループワークでは3つのグループそれぞれに彼らに入ってもらいアドヴァイスをしながらの組み立て。
鮫沢さんの黒部コラーレは関係者の数を圧倒的に増やしていく発想を継続している。入善コスモホールの澤田君はクァルテットエクセルシオとの10年のつきあいを再現してもらった感じの発表。演奏家とともに育っていくときの澤田君の覚悟と演奏家への発言はエクセルシオにとっても本当に刺激になったと聴いている。山本さんは,県の立場からあるべき姿を話してくれて、若い人には発見があったと思う。まあ富山にはそのくらい人材は居ると言うことも言えるし、それをどう継承していくかという課題もあるのだろう。
そのあと、田村緑さんの素材を活用して、田村さんがゲストで出る45分のラジオ番組を考えてもらうのだけれど、その場に田村さんは居ないので、資料のみにて組み立てなくてはならない。提案のあった曲目の音源と曲目解説、田村さんのプロフィールを事前に読んできてもらっていたのだけれど(これはみんなとてもまじめだったな。ラボではそこがいい加減なことも多いので・・・)

夕方から翌昼までにまとめてもらって、発表をしてそれを講師4名と田村さんで協議して優秀者を出そうと思ったのだけれど、どれも捨てがたく、結局25分番組に組み替えて3つを録ることになった。ここからが一気にダッシュしないと間に合わない時間。
舞台にはスタジオのセッティングとピアノがおいてあって、4人が協力し合いながら番組を収録していく。聴き手、キューを出す人、合づちをうつひと、進行をする人など組毎に自然と役割分担が出来ていくのはさすがにホール職員。特にこの県では普段から,企画も出来れば舞台も音響も照明も出来る職員を育てると言う方針なので、とっさのときの思い切りの良さとか、対処の仕方は本当に立派だと思う。それとともに、放送というのはかなりなプロ集団がいて動いているのだと言うことも実感できた。

全般に短くした反動でちょっと慌ただしい感じがしたが、一組だけじっくりと演奏が出来たな,と思える組もあり、みんな楽しそうにやってくれていたので,なかなか充実した会になったと思う。まあ私が楽をした感もあるが・・・
一番大変だったのは多分田村さんで、前日熊本の学校公演からかけつけ、3つの録音をして、翌日学校アウトリーチを2件、その翌日(今日ですね)11時半からのワンコインコンサートで85分くらいのコンサート(長い)という無茶なスケジュールをこなしてくれたのに感謝である。でも録音は楽しかったみたい。
面白そうなのでいずれラボでも・・・と思える手法である。

しかし、この一週間に3つの企画を任された2年目の櫛本さんがまあよく身体から動かしてやってくれたと思う。録音が出来てくるのが楽しみである。
次の写真は語る澤田誠(本人の許可無し)。


んまつーポス、いわき小白井小中学校でのワークショップ

2013年08月27日 | いわき
宮崎の大学で教育を専攻している男性3人組の、んまつーポスというグループ。今年いわきで試験的にプログラムをしてもらっている。体育をより芸術化したようなワークショップの方法論は、ダンスの中でも比較的珍しいのではないか(まあそんなに知っていないので独善的な判断だけど)。
今日はその3回目、今年行ってもらっているのはいわき市の北のはずれにちかい小白井小中学校で、全校7名(小学5名、中学2名)で山の中であるせいか本当に素直でよい子たちばかり、高校に行ってからが心配になってしまうくらい純粋なので、この字牛としてはある意味では理想的な場所でもある。校長先生もワークショップにも着替えて参加してくれたし、率先して身体を動かす。廊下で全速力で走るのも自分でも参加してしまって「廊下は走らないんだよなあ」と思いながら見ていた。その意気がすばらしいので、子供にも人気があるのだろう。
震災と原発の事故いらい、子供の体力の心配はこの地域では常に心に引っかかる分野である。その意味でダンスのアウトリーチは意味のあることだと思う。すこし続けて行ければと思う。プログラムもかなり綿密に目標設定されているように感じた。学校には良いグループだろう。ただ、ダンスの場合一回行けば良いというものでもない(今回は6回)そんなに数が出来るわけでもない。だから、その目標を考えると、一種の手法として学校の先生が実践できるようなことも考えないといけないであろうと思う。そのあたりは音楽分野と若干違うニュアンスがある。
まあ、個人的には身体を動かすのは純粋に楽しいことなので、子供も先生もみんなニコニコ、自分も久しぶりにラジオ体操などをやってしまい満足ではあったのだが。

邦楽活性化事業徳島

2013年08月10日 | 各地にて
あつい。あつい。あつい。
しかし、311以来、家ではほとんどエアコンのスイッチを入れていません。あ、それほどいないのですけどね。
今年の夏は例年よりも時間があります。それゆえお盆にいわきに行くのも今年はなし。いわきにはじゃんがらという個性的な新盆の祭りがあり、若者が数多く参加して新しい作品も出来てきているのですが、こういうのは全国的にも比較的少ない風習だと思います。伝統的な芸が守られていると言うよりも活きているという感じ。よさこいはすごいと思うけれど、甲子園のようになっていて生活者の中から立ち上がってくるような感じはない。その辺のバランスが好きかもしれない。
一昨日、昨日と地域創造の邦楽の事業で徳島と吉野川町に行ってきました。吉野川は古くは忌部氏が中心となって、主に糸(蚕や麻?)の生産にたづさわっていたあたりらしい。麻植郡というのは無くなってしまったけれど、これも古代の面影を感じる名称です。吉野川という水質、水量ともに豊かな地域ならではなのでしょうか。鴨島駅のそばの鴨島小学校は三木稔さんが効果を書いていて、亡くなる少し前に学校を突然訪れ、子供たちと一緒に歌ったり演奏したりして帰られたそうですが、邦楽に熱心な土地柄なのもあるのでしょう。公民館は建設会社が指定管理をとって運営していて、もう8年目になるそうですが、がんばっていますね。ホスピタリティは良いような気がします。この町は英断で前学校の教室に冷房を入れたそうで。従って音楽室も冷房付きで下見とは言えほっとします。

写真の中学校にはなんと箏が9面と爪が405ほどありとりあえずワークショップ用に公民館に借りることにしました。あと少し。口調先生ありがとう。
公民館はこれ。駅からの写真ですがなんか蜃気楼のように聳えていました。

徳島ではこの時期では当然ながら、すでに町全体がちょっと空中に浮いている感じだし、それをあまり出さないように気をつけて仕事をしている人たちの不思議な雰囲気も面白いです。
邦楽の分野は私にとっては音楽の中では不得意分野で、相変わらず進歩していないので、毎年この会によって獲得できる知識や常識はほんとうに馬鹿にならない。あちこちの知識が統合できるおもしろさというのは独特です。

7月26日いわきでの浜さんのアクティビティ(学校の先生のための)

2013年08月07日 | いわき
 何度も言うけれど、いわきアリオスでは、震災のあといろいろな課題がある中で、こどもに対するアプローチを明確にしていこうという合意のもとに事業を進めている。もちろん今の社会にはいろいろな問題が存在する。それを無視していいと思っているわけではないけれども、文化芸術の分野では、普段からは必ずしも顕在化していないかもしれない子供の精神的な環境をきちんとフォローする施策に力を入れる、ということにしたのだ。そのためにいくつか事業を組み替えることも行ってきた。実際、いわき市に住むと言うことは、選挙直後の水漏れの問題に代表される「小出しにすれば目立たないであろう」とでも言うような様々な電気関係の情報が日常的に人間の精神を苛むのは事実である。これはきわめて精神衛生上良くない。特に子供の生育環境はきわめて良くないと考える方が自然。もちろん子供はそれを日常的に表に出すことはないだろうけれども、アリオスが日常的に子供に目を向けること、そのメッセージを発していくことが数少ない出来ることだ、と言うのが考えていることだ。
 学校へのアウトリーチは、震災前から特に方針を変えてやっているわけではないが、中でも市や市民から一番支持されている事業だろうと考えている。欲を言えば色々あるけれど、これは他のものに代えがたいものだと思っている。別に震災があったからだけではない。
 そんなこともあって、震災前から学校の先生にアウトリーチの手法を見てもらうことは意識して音楽部会とかにアプローチをしてきた。先生の研修会でこのような少人数のアウトリーチ手法を浸透させないと長く続けるには困難があるとおっ持っていた。ありがたいことに、いわき教育委員会では、毎年夏に音楽にかぎらず教員の研修会をすることになっていて、4年前に音楽部会長からその研修会にアリオスからモデルになるようなアウトリーチを見せてくれる演奏家を派遣できないか、と言う話があって渡りに水とお願いをすることになった(不足の謝礼はアリオスで負担をしている)。震災の年はさすがに出来なかったが今年は4回目で、「今年は打楽器」という希望があって浜まゆみさんが同じマリンバの金丸寛君と一緒に来てくれた(研修会場にピアノがないという問題があったので)。

 プログラムは以下
・剣の舞  A. ハチャトリアン
・熊蜂の飛行  リムスキー=コルサコフ  arr. M.レス
・アンダーソンメドレー   L. アンダーソン
・カスケイディーズ   S. ジョプリン  arr. P. サルチック (+ Body percussion)
・ボレロ   M. ラヴェル
基本は変わらないけれど、会話力が強化されているのと、新しいアイデアが入ってきていて、その辺は偉いなと思う。

私のいわきアリオスもあと数年になってきたので(多分)、今のうちに、子供への愛情にあふれた、心のあるアーチストをなるべく紹介しておきたいと思うのと、いわき由来や地元の演奏家を育ててアリオスとアウトリーチをやりつつ他の活動もするようになって欲しいというのは、とりあえず大事な二つである。他のことは、スタッフが力をつけてきているので(多分)そのまますすめていけるだろう。