児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

昭和音大のアーツインコミュニティ

2007年04月23日 | 徒然
4月のはじめにも書いた昭和音楽大学のアーツインコミュニティ。
実は昨年秋から始まっていていくつかの講座などを行ってきていたのだが(あんまり知らなかったのです。ごめん)、4月から新百合ヶ丘に引っ越してきて本格的に始めようと言うことになった。今年はいくつかの講座(ミドリさんのベトナム報告会とか?)があるとともに、実際にアウトリーチやセラピーなどを通じて地域に出て行くプログラムも始めるそうで、この2本の柱で組み立てていくのが武濤先生の構想。面白そうだし、これはすこしは手伝わないわけにいくまいよ。でも学校って手続きが大変なのね。

実は、今年初め長崎で演奏家へのセミナー的なことをやったのだが、今年受講したトロンボーン奏者(ジャズの得意な方)がご自分のブログに感想を書いている。自分の話したことがどのように受け取られているかは、あんまり後を追いかけて知る機会もないので、ちょっと覗く価値はあるかも知れない。(2月24日、26日)

http://sonicborn.blog.drecom.jp/monthly/200702/

でも、基本的にはそんなこんなでみんなの刺激になればいいのかも。

昭和音大は明確に学生のカリキュラムの一環としてコミュニティプログラムを立ち上げようとしていて、なかなか新しい試みであると思う。実演もマネジメントも両方ともに学生のカリキュラムと出来る・・というのは音楽大学であってアートマを持っているという強みであるが、他の音大でも多分あるであろう実演家側のモチベーションをどのようにしていくのがよいか、と言うことはここでもあるようだ。まあ、少なくとも1年間やってみないとそれで何が起こるか(起こらないか)はわからない。それがまたスリリングである。

IWAKI COFFEE Ⅰ

2007年04月22日 | いわき
いわきの町を歩くと、喫茶店にIWAKI COFFEEという黒い看板が出ている。きっと協会のようなものがあるのだろう。まだ、狭い範囲しか歩けていないのであるが、城下町で蔵などの古い建物もあるいわきの平地区は、ちょっとそんな面白さもあるエリアだ。いわきの珈琲屋さん巡りその1。
一昨日に行ったのは駅のそばのS香という、一時の珈琲屋さんの典型のような雰囲気の店。ブレンドはまあまあだが、厚焼きのトーストがあって、それが好きなのでついつい頼んでしまいおなかがいっぱい。ここは借りる部屋に近いところなのでもう少し私の好みに近いと良いのだけれど。
昨日は、帰りの列車を一便遅らせて、蔵を改造したK楽。カウンターだけの店。
ブレンドも何種類かあり迷うのだが、一番店のお勧め風の「味わいブレンド」というのを頼む。豆も何種類も置いてあり豆としても買える。
ここは夜は七時までと書いてあり、マスターに「早いですねえ」と言ったら「この辺は人通りが無くなってしまうから・・」と言っていた。この通りは昔は町の中心地だった通りだと思うのだが、やはり大型店舗の周辺に賑わいが移っていってしまっている感じが強い。「でも、七時に来て飲んでいく人も居ますよ」と言うことでかなりいい加減に開けているみたい。
味わいブレンドは、ちょっと軽めで飲みやすすぎる印象だけれど美味しかった。時々行きたくなるだろう。2階はバー。


おんかつ研修会

2007年04月20日 | 徒然
4月17-29日の3日間、今年度のおんかつ実施団体のための研修会と、演奏家のプレゼンテーションがあった。
このプレゼンテーション、6時間の長さにわたって12組の演奏家が25分づつ演奏するわけだけれど、彼らは、コミュニティをバックに背負い、誰を呼ぼうかという決定権をほぼ持って集まって来ている23の市町村の会館の担当者に向け、如何に音楽が楽しいかをアピールしていくわけである。ということは、少なくともクラシック音楽のマニアの方でなければ「これは日本一面白くクラシック音楽の良さを感じられる演奏会である」とほぼ確信を持って言えると思う。まあ、そういう趣旨でやっているわけではないが、研修会でコーディネーターのひとりが「今日の演奏は間違いなくイミテーションではなく本物」と言うことを言っていたのが印象的。
最終日のミーティングで、某関東のホールのかたが「ほとんど興味の無かった分野だが、クラシック音楽は面白いのだと本当に思えるような時間だった」と言っていたのが印象的だ。
最近は、何らかの形でホール以外の場所(学校や施設など)に出て行くコンサートをしている会館や市町村は非常に多い。いろいろな理由があるのだと思うが、行政にとって、確実に良いこととしか言ってもらえない企画というのは魅力的だろうと思わないでもない。その企画の安易さを思うと、今年ほど、研修で「地域創造の音活事業」の思想を明確に伝えることの必要性を意識した事はなかったように思う。ある意味で危機感を感じるのはそういうことである。
それとは別に、そろそろ、日本の音楽界にレジデンシープログラムというパターンでない、まったく新しい発想をもった事業やミッションを探すという大事なことがまだどこかにあるのではないか、という気持ちもある。クラシック音楽のライブパフォーマンスという世界でも考えねばならないことが本当にたくさんあるはずだ。
私にそれまでの能力と時間があるかどうかということはあるけれども・・。

一番悦ばしいこと

2007年04月16日 | 徒然
エネルギー普遍の法則から言うと、自分が幸福であると言うことは誰かの幸福を少しずつ分けてもらっている、と考えるのが一番自然である。ドラゴンボールの孫悟空がみんなから少しづつ「気」を分けてもらって巨大な元気玉が強敵を打ち破るようなものである。
トリトン・アーツ・ネットワークがスタートして初めての結婚式(5年間廻りの誰も結婚しなかったというのは決して誇るべき事ではないかもしれない)は、音楽業界への人脈の一番ある人によって果たされた(当然相手も業界)。若い人には、まず音楽界の仲間として認めてもらう事の大事さを伝えたいと思っている身としては一番悦ばしい事だと思う。これで、彼らが本当にこの世界の一員として認知され、これからの人生がその分野に捧げられるであろう事に確信が持てる結婚式だった。それとともに、TANも業界内で仲間になれたような喜びも同時に感じる日だった。
二人がみんなからもらった「気」というのは、何を、どのように為さねばならぬか、という課題に常に適切な答えを与えてくれ、これから仕事をしていく上できっと大事なものになる筈だ。



2年目の昭和音大

2007年04月09日 | 徒然
昭和音大の講義も今年で2年目。今日からである。週に一時間とはいえ、それなりに緊張するので、その日は他に使い物にならない。
新しい校舎(写真。校舎の右奥に見えるビルが新百合ヶ丘駅南口の商業施設)は、コンパクトで使いやすそうなのであるが、写真のごとくちょっと四角っぽすぎるかもしれない。レッスン室も少し狭めかも知れないが、私の場合は、そのくらいの方が良い。昨年は縦長の部屋で、学生がみんな後ろにへばりついて座るのでちょっと距離がとりにくかったが、今年は横長だし全般に狭めなので話しがしやすいのだ。
今年の2年生は全員女性。比較的はっきりとした感じの生徒が多くて安心する。とはいえ、月曜日の午後1時50分という時間は、多分週で一番眠い時刻である。こちらもそのつもりでやらないとね。

まあ、80分の授業は案外あっという間である。
今日は所謂ジャブで、アートメネジメントの考え方が多岐にわたっていること、芸術というものが社会の中でどんな役割を持ち、それを必要と考えてきた人によって支持されてきたものであること。音楽会というもの絶対必要な条件は、演奏家、場所、客の3つであり、それが音楽という芸術の3つの要素であること。アートメネジメントの仕事が具体的に関わるのは全部その廻りであって、それは只管、場所で起こる芸術的な行為が良いものになる可能性を高める作業であること、などを話す。

追々、映像なども使って話しをしないとやはり眠いだろうなあ・・・





静けさと静かさ

2007年04月07日 | アウトリーチ
最初の2つの音で、130名ほどの聴き手に静けさが走った気がした。こう言うのを吸い込まれるように・・というのだと思う。静けさは、ただの静かさと違い、聴き手の精神的な状態が表に出てきたような感じと言えばいいだろうか。

桜、桜、桜が咲いた出前音楽会、と言う名前のコンサートは今年で6回目になる。毎年4月のこの時期に行ってきた。
このコンサートの主催は築島散歩の会というボランティア団体で、もともとは中央区のバリアフリーの様子を足で(というか車いすで)歩いて確かめつつ、マップを作ったり区に働きかけたりの活動をもう10数年続けている。トリトン・アーツ・ネットワークが出来た2001年に縁があって2002年の春からこの企画を始めた。家に引きこもりがちになってしまったり、なかなか外に出られない老人たちを桜の花見の時期に外に出かけてもらおうというのが趣旨で、花見のあとは音楽を聴いてもらう事にしている。
トリトン・アーツ・ネットワークは演奏家の手配提供を受け持ち、協同的な事業として関わってきている。

今年はヴァイオリンの大森潤子さんとピアノの竹村浄子さんにお願いした。
音楽のために作られてはいないのだが、比較的響きの良い(というか、響きすぎてお年寄りにうるさいのではないかと大森さんが心配するほど)会場で、はじめにヴァイオリンで2曲聴いてもらったあと、ピアノのソロ(トロイメライ)が小さい音で始まった途端のことだった。
その感覚は演奏者も感じていて、終わったあと「トロイメライの時に異様にみんなが入り込んできた」と感じたようだし、大森さんも「老人向けのコンサートでは本当に珍しく演奏に集中してくれているのがわかった」と言っていたから、私の受けた印象もまんざらでもないように思う。

進行はフィールドノートの方に・・・

草野心平さんの朗読

2007年04月07日 | いわき
3月19日に行った草野心平の記念館(3月20日にブログでも書いた)に行ったときに、本を前にして詩の朗読を聞くというブースがあった。多分本人の声なのだろう。ボタンを押すとテープで朗読が聞こえる仕組みになっている。
この声が非常に素晴らしい。訥々としているのだが、あれほど言葉尻がしっかりしているのも珍しいと思えるような力強さがある。フレーズフレーズへの重みがきちんと地面にくっついているような感銘を受けた。
今、詠むことを前提に書かれた詩というのはそれほど多くないし、前提にしないにしても詠むことに存在意義の大きさを感じられる詩もそれほど多くはない。近年音楽家がコンサートの中で歌詞や詩を読むことに何回か付きあって感じることである。
このテープ、その上に読み手の心の動きが手を取るようにわかるのは、これは場に残存している本人の気持ちが強いからなのか、読み手としてはプロでないということなのかはわからないが、それだけで山の中まで行った甲斐があると思えた。

いわきプロジェクトのスタート

2007年04月02日 | いわき
いわきに来ている。今日(1日)は昭和音大の入学式に行き(まだ新校舎を見ていなかったので)、駅から近いのに感激し、厚木よりもコンパクトにまとまっている新百合ヶ丘駅周辺のお店などを少しのぞき、準備をしてから出てきた。夕方に乗った特急は満席で、水戸まで立たないといけなかったが、だんだん暗くなってくる景色を見ながらの汽車の旅というのは、なかなかいろいろなことを考えるものである。学生の時初めてのひとり旅は夜行列車に乗っての東北だったのだが、そのときも暗くなる窓を見ていろいろと感傷的になったりしたものである。
新しいホールの立ち上げに関与するのははじめてではないし(カザルス、岐阜、三鷹、第一生命)、それほど浮き浮きともしないし、ブルーにもならないが、もしかすると私が関わって立ち上げるホールはこれが最後かもしれないと思うと、それなりに考えるし、心配もある。特にこれだけの大きな施設で、ジャンル的に専門的な会館ではないことを目指しているとすると、初めてでもあるわけだ。
2年前の自主事業の委員会での検討時にも、初めは今まで極端に少なかった公演をきちんと鑑賞型としてやっていくことから始めようという合意があったと思うので、そこからきちんとやりながら、自治体のホールらしいコミュニティと公演の関連を付けていく(そのために演奏家とのミッションの共有は大事だろうが)ことにしていくのが良いように思う。
第一生命とトリトンアーツネットワークが昨春に標榜した「アーツ・イン・コミュニティ」は民間の、昭和音楽大学が新百合ヶ丘に引っ越したのを受けて始めようとしている「アーツ・イン・コミュニティ」が学校の、そして地域の公共ホールの「アーツ・イン・コミュニティ」(これはまだ名前を付けていないが)と3つが揃うような感じである。少しぱくられているような気分のところもある。しかし、日本では様々な手法などに名前を付けると、他の人は2番煎じのように思って別の名前を付けようとする傾向がある。それ故に、一つの考え方にいくつもの名前が付いて定義がぼやけていく。それは良いことなのかどうかちょっと疑わしい。