「脳の構造」家庭の医学より
10月7日に、東洋医学学校協会の学術大会がありました。興味を引いたのは、おおとりで講演をした渡辺恭良先生のお話でした。
渡辺恭良：理化学研究所ライヒサイエンス技術基盤研究センター センター長
大阪市立大学大学院医学研究科システム選経科学 特任教授
大阪市立大学健康科学イノベーションセンター センター所長
講演の内容は抄録にもかかれていますが、概要は以下のようです。
① 慢性疲労で苦しんでいる人たちの本格的な研究が少なかった
② 疲労は、日常生活における様々なストレスの延長線上にあり、未病の最たるものである
③ 様々な疾患の一大症候として全身倦怠があるが、系統的な療法がない
④ 文部省科学賞科学技術進行調整費などで疲労の研究を牽引してきた
⑤ 疲労の分子メカニズムについては、加齢のメカニズムと時間の長短はあるもののほぼ同じ現象が起り、
A) 科活動による整体酸素と修復エネルギー不足
B) 過労死前の内分泌系破綻
C) 慢性疲労時の自律神経・脳機能低下に関する確かな手がかりが得られている
疲労臨床研究として
D) 疲労質問紙・PC版の確率
E) 疲労・慢性疲労のバイオマーカーの樹立
F) 慢性疲労症候群のお治療法の開発・試験
抗疲労研究において
G) 抗疲労製品開発のためのバイオマーカー検索・樹立
H) 抗疲労食品・製品臨床試験のガイドラインの創成
そして、私が非常に納得したのは、
【ほとんどの疾患で、脳内に炎症が起っている】ということでした。
8月から過度の緊張状態で生活したために、脳での炎症（脳の熱感）を覚え、豆腐で頭を冷やすとすっきりしたからです。（詳細はリアル臨床研究会で説明します）
渡辺先生も『脳と疲労』協立出版刊で脳疲労を解説していますが、ちょっとレベルが高いので、易しく理解するには、九州大学名誉教授・藤野武彦著『脳の疲れをとれば、病気は治る！』のほうがいいかも知れません。
藤野先生によれば、右脳と左脳、大脳新皮質（数々の情報を分析し指令するなど脳の合理的仕事の主役的役割をする知的中枢）と、旧皮質（本能や情動を維持するための司令塔）のバランスが大切で、二つの司令塔に不和が生じた状態を「脳疲労」と定義して、理論を展開していきます。
大脳新皮質から伝えられた情報は、間脳（視床・視床下部）に伝えられると同時に、大脳旧皮質（本能をつかさどる脳）にも伝えられます。
ところが、新皮質からの情報が大量になってくると、間脳に圧力をかけるようになります。
この状態を藤野先生は、夫が妻を無視している夫婦関係に喩えて説明しています。
【大脳新皮質を夫、大脳旧皮質を妻、間脳を子どもとすると、夫が仕事のためとはいえ、いつも家庭の外にばかり目を向け、妻に対して無視、あるいは命令的、抑圧的で、妻の意見に耳を貸そうとしなしなければ、多くは夫婦間に亀裂が生じます。そのような関係では、子どもに対する教育や指導についても意見が分かれ、子どもは戸惑い、さらに不安や混乱に陥るでしょう。】
そのような状態が続くと、妻（旧皮質）も反発するようになり、両親の意見の違いに子ども（間脳）は混乱に陥ることでしょう。つまり「脳内ファミリー」で家庭不和が起り、関係性の破綻（情報伝達の混乱）を、藤野先生は「脳疲労」と呼んでいるわけです。
そして、脳疲労は「心」と「体」に現れますので、いろいろな症状が出現してくるわけです。
さて、そのお二方の理論から、脳卒中の関係を考えてみます。
私がこれまで治療した脳卒中は、視床での梗塞や出血が多かったのですが、視床出血とは、視床に出血が起こる脳出血で、脳出血では 2番目に多く、全体の約30％ぐらいを占めています。
視床出血の症状は、「しびれ」、「片麻痺」、「感覚障害」、などです。また、視床出血では、出血した後に「視床痛」という半身の激しい痛みが起こることがあります。
出血が視床だけの場合は、症状はしびれを感じる程度ですが、基底核部の内包にまで出血がおよんでしまうと、麻痺が起こります。また、脳室が近いので、「脳室内出血」を起こすこともあります。
視床出血は死亡率が高い脳出血ですが、命が助かっても、しびれ、痛み、意識障害、片麻痺、などの後遺症が残ることが多い脳卒中です。
今回の「リアル臨床研究会」で来られる患者さんも、お二人とも視床で梗塞を起こした方々です。
