目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福（ハチフク）代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から
『必殺、音抜き』「これは、早いパッセージの所に有効な技だ」
他に『秘技、譜面さがし』『最終兵器、チューニング』とかいう技を習った。
なんだか後ろ向きな技だと思ったが、せっかく八守先輩が教えてくれたのだ、
完璧にマスターせねばならん。
福田には見つかるなと言われたので、こっそり江本と2人で練習することにした。
しかし江本は前からずっと聞きたかったのか2人きりになると、せかすように聞いてきた。
「なあ、チハル。急に上手くなったのは何か特別な練習でもしたのか？
時々、福田先輩やチハルが前屈みで練習してるだろ。あれに関係してるのか？」
「えっ？ワシ、上手くなってるのか！？」ワシには自覚がない。
「うん。八守先輩も他の先輩もびっくりしてるよ。
いったい福田先輩に何を教わったんだ？」
福田先輩には集中しろ！としか言われなかった事は黙っておいた。
「意識を集中して、ゆっくりと時間をかけて弾くのじゃ。
前屈みになるのは、集中する箇所を寄り目になるくらい見つめておるのじゃ」
「ワシはこの寄り目がポイントじゃと思う」ちょっとアドリブを入れてみた。
とりあえず2人で8分音符を3秒かけて弾いてみる。1小節24秒だ。
「もっと、顔を指に近付けるのじゃ。意識を指先に。
自分の脳みそが指先にあるようなイメージで！」
4小節。1分経過。
ぷはー。江本が大きく息を吐いた。
「チハル。これ、どえらく疲れるぞ。ほんとにこんなことで上手くなれるのか？」
「うーん、わからん。だからワシも福田先輩も、最近やってない」
「なんだよ。真面目にやった俺がバカみたいじゃないか！」
嘘だ。
確かに極端な前屈みはやってないが、今でも意識を集中して、
ゆっくりと確実に弾いている。今、確信が持てた。この練習は有効であると。
「やっぱり、チハルは福田先輩と一緒で練習量が違うからなあ」
「うん、ワシも練習量が多いからだと思う」これも間違いない事だ。
このクラブに入部して、2ヶ月。過ぎてしまえばあっという間だった。
短い期間の割にはいろいろな事が起こり、今までにない経験をした。
こんなに頑張った時間を過ごしたのも初めてだった。
でも、頑張れば頑張る程、もっと頑張れたのでは？とも思う。
一生懸命に頑張ったと思って上を見れば、もっとやっている人がいる。福田先輩だ。
今まで、適当な時間を過ごしていたから、上を見る事もなかった。
「おい、チハル。こんな所にいたのか」
藤本がワシらを見つけると、足早に近付いて来た。
深刻な顔をしてワシと江本に声をひそめて囁く。
「知ってるか。八守先輩と福田先輩がケンカしているのを！！」
遅いわ！
藤本はいつだって藤本だ。
棗田先輩と一緒に大阪へ行けると言って喜んでいる。
棗田先輩が、かつて八守先輩と付合っていたのは黙っておく事にした。
別に親切心からではない。
先輩がワシの兄貴に惚れるてるのが分った時の、藤本の顔が見物である。
うっしっし。今から楽しみなのじゃ。
ただ一つ気掛かりがある。こいつ、気付かないかもしれない。
頑張ればいつか、この藤本にも追いつけるだろうか？
最初は無理だと思ってた江本にも頑張って追い付いたのだから、
可能性はあるんじゃないか？
この2ヶ月で得た教訓その1。
その気で頑張れば、なんとかなるんじゃない？という事じゃ。
ワシは福田先輩『以上』に頑張って、なんとかするつもりじゃ。
いや、せねばならん。
とりあえず、ギターは福田先輩並みに頑張る！
さらに、プラスアルファで彼女を探すのじゃ。（この部分が以上）
藤本はギターも上手いし、本人は無自覚だがけっこうモテル。（許せん）
福田先輩みたいに、ギターだけの高校生活はどう考えても、空しいのじゃ。
そういう意味では八守先輩は上手くやっていると言わざるを得ない。
ワシの理想は軸足は福田先輩で、ちょっと反対の足を八守先輩に引っ掛ける！
というイメージなのじゃ。
女子高なみの商業高校にせっかく入学したのじゃから、
この地の利をいかして棗田先輩のような優しい彼女を見つけねばならん。
ワシはクールな外見を保ちつつ、密かに彼女募集のフラッグを立てた。
頑張れば、なんとかなるんじゃない！
今週梅雨入りをした。次の土曜日はいよいよ大阪大会に向かうのじゃ。
雨は落ちてないが天気は悪い。
（3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争）終わり。
なのじゃ。
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〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福（ハチフク）代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から
『必殺、音抜き』「これは、早いパッセージの所に有効な技だ」
他に『秘技、譜面さがし』『最終兵器、チューニング』とかいう技を習った。
なんだか後ろ向きな技だと思ったが、せっかく八守先輩が教えてくれたのだ、
完璧にマスターせねばならん。
福田には見つかるなと言われたので、こっそり江本と2人で練習することにした。
しかし江本は前からずっと聞きたかったのか2人きりになると、せかすように聞いてきた。
「なあ、チハル。急に上手くなったのは何か特別な練習でもしたのか？
時々、福田先輩やチハルが前屈みで練習してるだろ。あれに関係してるのか？」
「えっ？ワシ、上手くなってるのか！？」ワシには自覚がない。
「うん。八守先輩も他の先輩もびっくりしてるよ。
いったい福田先輩に何を教わったんだ？」
福田先輩には集中しろ！としか言われなかった事は黙っておいた。
「意識を集中して、ゆっくりと時間をかけて弾くのじゃ。
前屈みになるのは、集中する箇所を寄り目になるくらい見つめておるのじゃ」
「ワシはこの寄り目がポイントじゃと思う」ちょっとアドリブを入れてみた。
とりあえず2人で8分音符を3秒かけて弾いてみる。1小節24秒だ。
「もっと、顔を指に近付けるのじゃ。意識を指先に。
自分の脳みそが指先にあるようなイメージで！」
4小節。1分経過。
ぷはー。江本が大きく息を吐いた。
「チハル。これ、どえらく疲れるぞ。ほんとにこんなことで上手くなれるのか？」
「うーん、わからん。だからワシも福田先輩も、最近やってない」
「なんだよ。真面目にやった俺がバカみたいじゃないか！」
嘘だ。
確かに極端な前屈みはやってないが、今でも意識を集中して、
ゆっくりと確実に弾いている。今、確信が持てた。この練習は有効であると。
「やっぱり、チハルは福田先輩と一緒で練習量が違うからなあ」
「うん、ワシも練習量が多いからだと思う」これも間違いない事だ。
このクラブに入部して、2ヶ月。過ぎてしまえばあっという間だった。
短い期間の割にはいろいろな事が起こり、今までにない経験をした。
こんなに頑張った時間を過ごしたのも初めてだった。
でも、頑張れば頑張る程、もっと頑張れたのでは？とも思う。
一生懸命に頑張ったと思って上を見れば、もっとやっている人がいる。福田先輩だ。
今まで、適当な時間を過ごしていたから、上を見る事もなかった。
「おい、チハル。こんな所にいたのか」
藤本がワシらを見つけると、足早に近付いて来た。
深刻な顔をしてワシと江本に声をひそめて囁く。
「知ってるか。八守先輩と福田先輩がケンカしているのを！！」
遅いわ！
藤本はいつだって藤本だ。
棗田先輩と一緒に大阪へ行けると言って喜んでいる。
棗田先輩が、かつて八守先輩と付合っていたのは黙っておく事にした。
別に親切心からではない。
先輩がワシの兄貴に惚れるてるのが分った時の、藤本の顔が見物である。
うっしっし。今から楽しみなのじゃ。
ただ一つ気掛かりがある。こいつ、気付かないかもしれない。
頑張ればいつか、この藤本にも追いつけるだろうか？
最初は無理だと思ってた江本にも頑張って追い付いたのだから、
可能性はあるんじゃないか？
この2ヶ月で得た教訓その1。
その気で頑張れば、なんとかなるんじゃない？という事じゃ。
ワシは福田先輩『以上』に頑張って、なんとかするつもりじゃ。
いや、せねばならん。
とりあえず、ギターは福田先輩並みに頑張る！
さらに、プラスアルファで彼女を探すのじゃ。（この部分が以上）
藤本はギターも上手いし、本人は無自覚だがけっこうモテル。（許せん）
福田先輩みたいに、ギターだけの高校生活はどう考えても、空しいのじゃ。
そういう意味では八守先輩は上手くやっていると言わざるを得ない。
ワシの理想は軸足は福田先輩で、ちょっと反対の足を八守先輩に引っ掛ける！
というイメージなのじゃ。
女子高なみの商業高校にせっかく入学したのじゃから、
この地の利をいかして棗田先輩のような優しい彼女を見つけねばならん。
ワシはクールな外見を保ちつつ、密かに彼女募集のフラッグを立てた。
頑張れば、なんとかなるんじゃない！
今週梅雨入りをした。次の土曜日はいよいよ大阪大会に向かうのじゃ。
雨は落ちてないが天気は悪い。
（3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争）終わり。
なのじゃ。
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