旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

(07)小銭入れには850円。なのじゃ

2010年08月26日 00時43分41秒 | 4章-スターウォーズと夏の日の恋(仮)
目 次
〈1 章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2 章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から


さて、藤本はどう出る?

ワシは、この時の藤本の行動パターンまでは分からなかった。
棗田先輩がらみなので、藤本の思考回路が読めない。

出たとこ勝負で、息をのんで待ったセリフがこれであった。

「江本も行かないんじゃ、しょうがないなあ。
一人で行くのも寂しいし、今回は諦めるか!」

もっとゴネるかと思ったので、ちょっと拍子抜けである。

心配したのは、藤本に「チハルの映画代を出すよ」と言われる事だったのだ。
その時は電車代も無い!と言うつもりだった。たぶん、そこまで面倒みれないだろう。

福田先輩か藤本に映画代を出してもらうのは、どちらも同じ様に思えるが、
ワシとしては、やはり先輩に奢ってもらう方が気が楽だった。

一緒に映画を見るのは藤本達と見る方が、ずっと気が楽だったが…。

「あっ。そろそろホームルームだ」と言いながら江本は、
そそくさペロペロと自分の教室に戻り、
ネンもそれに釣られる様にして教室を出て行った。

それから二度と藤本やネンから、映画の話題が出ることは無かった。


あっという間に日曜日がやってきた。

今、ワシは最寄りの徳田駅のプラットホームで、福山行きの電車を待っている。
福田先輩との打ち合わせ通り、一番前の車両で落ちあう予定だ。

尻のポケットには布製の財布。というより小銭入れ。
中には850円。行き帰りの電車代と映画館内でのジュース代。
差し引くと小銭が少し余るという、ワシが数日間、考えに考えた金額なのじゃ。

金が無いと言っていながら、財布に何千円も入っていてはおかしいし、
かと言って電車賃以外、無一文では余りにも不自然な気がしたからだ。

電車が時刻通り、駅のホームに入ってきた。
次第に遅くなり、ワシの前で電車の扉が止まる。

扉の窓から車内の福田先輩を探したが、見当たらない。

扉が開く。あれほど探した福田先輩の顔がいきなり現れてから、こう言った。
「あれ?チハル。お前、制服で来たのか!」

私服姿の先輩を見るのは初めてだった。
だからドアの前に立っていたにも関わらず、気付かなかったのだ。

そう、ワシは制服だったのじゃ。

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