女の子になる方法、教えます!

性同一性障害になやむ若いMTF当事者に向けてのメッセージです

未来の幸福なかわいいMTF~今落ち込んでいるあなたへ

2020-05-31 21:32:48 | ブログについて
「ぶすが!」
15年くらい前、移行してすこしなれた頃、ある駅のホームですれ違いざまに男性から言われました。

 女性としての生活を始めたころの話です

 札幌のあるビルの女子トイレを使ったとき、私がトイレから出るまでずっとビルの従業員の方が不自然に洗面台を洗うそぶりを続けていました。男子トイレで「お姉ちゃんこっちちゃうで!」と言われたり、後から入ってきた男性が間違えたと勘違いして出て行くことを何度も経験した数年後です。

 立ちよったあるコンビニでバイトの若い女性が、おつりを私に渡すのに汚いものをわたすようにつまんで渡されました。

 歩いていると後ろから笑い声が聞こえてきました。

 電車で座っていたら横に座ってきた人が、車内が空いたわけでないのに急に立ち上がって別のところに移動しました。


 移行にかかわって

 「あんたは性同一性障害って言って受験したか?髪を伸ばして試験を受けたのか。違うだろ。」(上司から)
 「髪の毛切りなさい」(たくさんの顧客から)
 「こんな髪の男が○○(業務の名前)だから今の時代はだめなんだ」(近所の人が上司に)

 男性として勤務をしていた最後の数年間はずっとこんな感じでした。法的に、制度的に解雇できないからほとんど棄てられたように休職を打診されたときも。
 ほんと、今考えてもよくやったと思います。もし、今の精神力・体力だったら移行できてないかもしれません。時代は明らかに今の方がいいのですが。


 けれど、たくさんの人に支えられました。あのときの支えられたひとつひとつのエピソードや言葉が、今も宝物になっています。
 そして、運も確実にありました。
 また、何年もかけて移行する中で、上司や地域の上役の方々が、「自分とは考えは違うけれど」支えてくれたり、許してくれて受け入れてくれたりしました。本当に人に恵まれました。

 今移行して幸せそうに見える人は、決して順風満帆、周りから祝福されて移行した苦労知らずな幸運な人ではありません。

 ひどい言葉をかけられつづけ、それでもその人達をも包み込むくらいの気持ちで自分を作っていった人たちです。ブログやユーチューブでの動画では決して見せないつらい思いをたくさん経験しています。
 確かに、その結果が努力に比例するかどうかは分かりません。

 ここで、「努力すれば、あきらめなければ絶対移行は成功するよ」と、言い切ることはできません。成功した人はすべて努力や苦労をしてきたけれど、今つらい思いをしている人以上にしてきたかどうかは分かりません。今苦しんでいるあなたの方が、信念も強く、努力もつらい思いも私なんかよりいっぱいしてきたかもしれません。

 それが、事実なのです。
 移行して幸せになれる人がいる
 そして、社会の偏見、制度の不備でまだ幸せになれない人もいる
 それが事実で、私は「移行して幸せになれる人がいる」ということを伝えたくて書いています。

 私は、MTFが移行して幸福になれる。基本埋没で充実した毎日を過ごすことができる、というたった一つの例を示すことができるだけです。あるいは聞き及んだ成功例を紹介することもあります。
 私は、今ピア活動や社会運動をしていません。きっかけがないこともありますが、それ以上に、今私が(自称)埋没MTFとして、ふつうに生きることができてどこまで幸福に生きることができるか、ということを示すことがこれからの子に役に立つと思っているからです。活動をする時間よりも、仕事をしたり、友だちと楽しんだり、(もう年なので)休養したりすることの方が今は大切と感じるからです。
 社会や制度が変わった恩恵だけ受けた逃げ得かもしれません。ただ、まったく私と同じ環境で「制度や偏見が(あって移行が難しい)」と主張しているのを見聞きすると、「そればかりが事実ではない」と伝えたくなります。
 今後なにかきっかけがあってピアサポートなど活動を再開するかもしれませんが。

 こんな成功譚だけの上から目線のブログは意味あるの?
 私が子どもだったら、あるいは子どもを支援する立場だったら、絶対見たい、知りたい情報を書いています。


 私だって、私なりにどん底の時代がありました。学校に行けない時期もありました。「今死んでも誰も悲しまない」「努力できない私はくずだ」そう思っていた時期もありました。そこを誰もが乗り越えられるとは限りません。私はたまたまだったのかもしれません。

 
 あなたが、このブログを見て腹がたって、自分に絶望して悔しい気持ちを抱く、そのつらさが、あなたが乗り越えたときに、たくさんの周りの人に笑顔を、やさしさを、そして勇気や強さを分けてあげられる原動力になります。

 直接は一度も出会わないままのあなたが、幸せになって私を見返す時がくるのを

 待ってます!

埋没生活のパラドックス

2020-05-23 20:29:41 | 移行後の情景
 前回に引き続き、埋没生活についてのエントリです。
 埋没生活を目指すと言っても、様々な状態がありえます。どんな状態になりたいでしょうか?

 埋没を目指す人のイメージはこんな感じでしょうか。

 会社や家族、趣味の集まりなど日常一緒に生活する人が過去の性別を知らない状態。
 なおかつ、(当たり前ですが)外出時に完パスする。

 実は、この状態は、確かに埋没の「スタート」かもしれませんが、この状態を維持すると変なことが起きます。
 あなたは、これからたくさんの素晴らしい人、自分にとってかげがえのない人に出会います。また、医療や役所など、どうしても過去の性別を伝えなければいけない場面にも遭遇します。それらをすべて避けるとすると、

 誰にも心を許さないで、ひっそりと暮らす
 

 過去の性別を伝えているコミュニティ(あるいは人)のつきあいと、過去を知らない日常のコミュニティとの二重生活
 
かを選ばなければいけません。
 
 ひっそりと暮らすためには、目立ってはいけません。仕事で例えば営業成績トップになってしまったら、せっかく決別した過去の営業所の人にばれてしまいます。過去を隠してタレント活動をすると、売れてしまったら学生時代の同級生が雑誌に過去の情報を売り込むでしょう。

 「いやいや、私は仕事で自己実現しないしほどほどでよくて、家族や友だちと楽しく暮らしたい。だから、大丈夫。」
 そうですね。パートナーやお子さんなど家族は別として、ノンカムの友だちができ楽しく暮らせたらいいですね。悩み事を相談し合い励まし合い一緒に旅行にも行って、過去を隠して。できるの?

 「いやいやいや。だから親友は同じMTFや移行前からの友だちで」
 二重生活ですか?


 休職、転勤を挟んだ在職トランスを果たして復帰後の数年間、私はそんな感じでした。けれども、職場で仲良くなった友だちにカムしてしまい、もちろん関係は深まるけれど、それでいいのかな?私は埋没型じゃないかもしれない。そう感じていました。
 以前書いたのですが、転機が訪れました。仕事上のスキルアップのため、自分の仕事の仕方を職場外で発表することにしたのでした。男時代と同業種ですので、過去の私を知っている人がそのことで私のトランスを知り、不本意なリードがなされるかもしれません。私は、隠れたまま生きるのではなく仕事の向上を選びました。その結果、今同年代の同業者に比べて出世はしてないし給料も安いかもしれないけれど、経験の幅が異なり、後輩に教えていけることやサポートできることは多く自分なりの年齢相応のキャリアは積むことができているとうぬぼれています。
 私に限らず、移行したからこそ仕事や生き方に深みが出てくるはずです。生きるということは毎日自分の弱さとの真剣勝負です。過去を隠して自分の全力を出し尽くさないで幸福をつかめるでしょうか。

 今書いたことは仕事のことでした。必ずしも仕事で全力投球する人ばかりではないと思います。では、それ以外の面、例えば友だち関係を考えましょう。移行後、新たに親友や友人はできるでしょうか。

 移行後、何人もの友だちができました。その中には、結果的にカミングアウトしないままの友人もいます。尊敬する先輩でも、大切な後輩でも、カミングアウトしないまま(たぶんこのまま)親しい関係になる人はたくさんいます。それでも十分やっていくことができます。
 けれども、私は移行後、もっと深く関わりたい、自分を知ってもらいたいと思える友人、先輩に何人も出会いました。最初は、カミングアウトは、自分の知ってもらいたいというエゴに負けて相手にいらない負担を与えてしまうのではないかと申し訳ない気持ちもありましたし、自分の弱さに負けた感もありました。けれども、伝えた人とは、結果的には友人関係が長続きしています。
 人との関わりは、相互作用です。私が周りの人に影響されて成長していく分、周りの人は私に影響されます。友だちや親友が(ほぼ)すべてをさらけ出して、私が聞いてあげるだけ励ましてあげるだけ、一緒に悩んであげるだけなのは対等な関係なのでしょうか。私の過去や悩みも(もちろん全てではないにしても)打ち分け、聞いてもらうことが、解決にならなくても対等な関係になるのではないでしょうか。

 私は、完全ノンカムを捨てて、人間関係が深まる方を選びました。
 過去を完全に言わない生活よりも、今の方が性別から自由です。

 自分を出した方が精神的に埋没できるというパラドックスがそこにあります。


補足
 投稿して読み返すと、過去に書いた
幸福なカミングアウト生活
 と同じ内容でした。以前の方が切れ味がシャープですが、微妙にニュアンスが変化しているので、このまま残します。