迷宮映画館

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酔いがさめたら、うちに帰ろう。

2011年04月14日 | や行 映画
監督の名前がやけに懐かしいなあ~と感じたのだが、タッチは結構イマ風。
西原さんと元夫の鴨志田さんのご夫婦の奮戦記。西原さんがブームらしく、彼女の原作が映画化されるが、旦那の方からの視点というのは思いもかけなかった。

今だと、戦場カメラマンという職業はかなりクローズアップされているが、とことん地味で、3Kのおまけに精神的重圧もかなりの職業だ。地獄を見、そこに住んでいる人々を目で追いかける。ずたずたになった心から何かに逃げたい、アルコール依存になる・・というのもわからないでもない。

しかし、先生にズバッといわれる。「それを見た!という人と、そこに暮らしてる!という人と、どっちが辛いですかね?」

そりゃそうなんだけど、同じものを見ても、ものすごく重く感じる人もいれば、なんともない人もいる。それは人それぞれということで、しようがない面もある。ただ、戦場とは生半可な気持ちで飛び込んではいけないのだ、という決意はなかったのでは、と想像する。

飲み屋に行っては倒れるまで飲み、家に帰れば子供のいる前で妻に暴言を吐く。抗酒剤を飲みながら、奈良漬を食って、焼酎を飲む。あきれるばかりだが、それがこの病気。アルコール依存のまさに症状。そしてこの病気の最大の困った点は、世の人々に病気と思われないこと。同情されないこと。自業自得と思われること。

このことも、利重先生にズバッといわれるのだが、この利重先生!いいなあ。最近、腹黒い役とか、すぐに消えちゃうような役が多くて、なんか残念・・と思っていたのだが、利重さんをうまく生かしてる。

もう最後の手段しかない、と精神病院に入って、徹底的に治すしかないところまで追い込まれる。この辺りから、入院体験記として非常に興味深く見た。

まず、入る病院は精神病院なんだ!なるほど。全部が全部、そうではないだろうが、へえ~。夢かうつつか幻か・・。この辺があいまいで、自分で自分を抑えられない。やばいのがカレーの匂い。あれは良くない。あの刺激的な香辛料の匂いは、来る。でもって食えないってのは、きつい。帰って、夕飯はカレーにしようって思ったくらい。あのカレーおあずけは、精神に悪そう・・。いや、我慢のしどころの見極めのためなんだろうか。

女性もいて、ちょっと華やかな精神病棟から、むさいおっさんばかりの加齢臭漂うアルコール病棟に移るときの悲哀もなかなか。ここでもカレー攻撃と、夢とうつつの区別のつかないおっさんたちの笑うに笑えないエピが満載だ。

ここの先生が、何とゲキ×シネの高田聖子さんではないか!ゲキ×シネでお目にかかると、元気いっぱい、はっちゃけキャラの印象深い曲者なのだが、笑顔が素敵な(でもどこか冷たい・・)頼りがいのある先生に豹変。なんだか妙にうれしかった。

「毎日かあさん」見たときに、うーん、病院の中の治療はどんなんだろう?治して行く仮定が見てみたい・・と思ったのだった。あっちはおかあちゃんの視点だから、当然病院の中のことはないのが当たり前なのだが、克服していく過程ってのは、実に興味深かった。

なんだろう。。気負って、西原さんの旦那の物語なんだと、看板背負ってみるより、一人男のアルコール依存からの奮闘記みたいに見れるのが良かった。依存に打ち勝って、残ったのは短い余命だったというのは、劇的過ぎるが、彼にとっては終わりよければすべてよし。。。の人生だったように見える。



どの役者さんも秀逸!主人公から少しだけの脇役まで、ベテランの練達者ばかりで映画としての作品の質を高めていたように思う。子役にやられた「毎日かあさん」に対して、大人の役者の安心して見れる一本という感じだった。でもお兄ちゃんが涙を誘ったよ。

◎◎◎○●

「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」

監督・脚本 東陽一
出演 浅野忠信 永作博美 市川実日子 利重剛 藤岡洋介 森くれあ 高田聖子 柊瑠美 甲本雅裕 渡辺真起子 堀部圭亮 西尾まり 大久保鷹 滝藤賢一 志賀廣太郎 北見敏之 螢雪次朗 光石研 香山美子


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8 コメント

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Unknown (KLY)
2011-04-14 20:54:08
>治して行く仮定が見てみたい・・

それなら原作を読むことをおススメします。
映画は物凄く端折ってるんで。というより、原作はそここそがメインでした。同じ病を抱えた者同士だけれど、本人含めてみんな普通じゃないので、実に興味深いです。案外薄い文庫本なんであっちゅーまに読み終わっちゃいますけど。^^;
『毎日かあさん』も良いけどこっちも好き。役者さんは私はどっちも甲乙つけがたいほど良いと思ってます。
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良かったね♪ (mezzotint)
2011-04-15 09:38:43
sakuraiさま

見逃すことなく、ご覧になれて良かったです。
そうこちらの方は、病院の中の様子がリアルに
描かれていました。鴨志田さん目線なので、
実体験が上手く出ているようですね。
浅野さん、永作さん、素晴らしかった!
「毎日かあさん」は漫画家・西原さんらしい
コメディタッチ、あれもなかなか良かったですが、、、、。
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>KLYさま (sakurai)
2011-04-20 22:21:05
はーい、原作探してみます。
今、KLYさんの嫌いな「わたしを離さないで」読んでます。なかなか行けます、はい。
主人公の二人は、どっちもよかったんですが、脇役陣のうまさがこっちは光ってたと思います。
主婦のお友達群があっちはちょっとねええ。
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>mezzotintさま (sakurai)
2011-04-20 22:29:03
ほんとに!タッチの差で見逃すところでした。
DVDでもいいんですが、ここは映画館で見たかったのでした。
当然、目線が違うのですから、「毎日かあさん」で、病院の場面がないのは当たり前なのですが、ものすごく興味深かったです。
なんか、みんな可愛いなあって感じで。
見る前に浅野の赤塚不二夫の予告を見たのですが、彼もよくやりますねえ。
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こんにちは。 (kimion20002000)
2011-05-23 14:01:15
東陽一というのも不思議な監督さんです。
「橋のない川」なんかもとりながら、こういう小品もすくいあげるんですね。
鴨ちゃん、いい役者さんに演じてもらいましたね。
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>kimion20002000さま (sakurai)
2011-05-23 20:39:25
そういや、「橋のない川」なんてのもありましたね。
いろんなジャンルを、わだかまりなく撮れる監督さんなんだなあと。
とっても気持ちのわかる、しみる映画でした。
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Unknown (Nakaji)
2011-06-01 15:54:04
こんにちは♪
やっと富山でも見れましたww

んーーーたんたんと描かれている姿がよかったような気がします。
彼が劇的すぎるんですよね。無念というか早すぎましたよね。
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>Nakajiさま (sakurai)
2011-06-01 20:03:51
よかったですねえ。
わたしも、つい見逃すとこでした。
こういうのは、映画館で見てしまわないと!!

なるほど!彼が劇的すぎるか!!
うまいこと言いますね。
浅野君は、見事に鴨志田さんを体現してたと思いました。
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