無人の道の中央を雉が歩いていた。5月9日付にも 路上の雉と題してニュータウンを歩く雉の画像を載せている。
背後からカメラのシャッターの音を響かせても、振り返りもせず逃 げもせず、横を向いただけだった。すぐに、鳥は横を向くだけで、背後が見えることに気がついた。27 日、印西市草深で撮す。
刻々と雉子歩むただ青の中 草田男
雉闊歩。
桜紅葉が鮮やかに始まったと思って眺めているうちに、凌霄の花だと気がついた。梅雨が長いせいか、老化現象か、季節感がくるってきたらしい。
画像は26日、印西市草深で撮す。
一樹ありて凌霄からむ浜の町 梅の門
夏の明るい海辺の光景。
先月に載せた「花石榴」は、早くも実石榴 に変わっていた。画像は25日、印西市草深で撮す。
ひやびやと日のさしてゐる石榴かな 敦
岩波国語辞典によると「ひやびや」の漢字は「冷や冷や」で、冷たい感じがするさま。
梅雨明けを思わせる24日、葛飾真間を訪ねた。地元の俳人N氏の案内という豪勢なぶらり行。
継橋
継橋のたもとに俳句ポストが立ってい た。特選三句のうちの一句は、
万葉の風を詠み継ぐ赤とんぼ 幸 江
継橋は赤とんぼのような鮮やかな色だった。
[追記]特選句に「継」の一字がさりげなく詠みこめられていることに、公開してから気がついた。
句碑
N氏がながいこと秋桜子の句碑に見入 っていた。崩し字のため読み通せなかったが、有名な、
連翹や真間の里びと垣を結はず 秋桜子
ではなかった。
菩薩
境内の一隅に坐像が安置されていた。 N氏が、
「濃艶菩薩というてな」
「まさか」
「違ったかな」
白日傘女房菩薩と歩もふよ 宇 人
「歩もふよ」は「歩こうよ」の万葉調と独断。
手児奈井
手児奈井の滑車は陶製だった。その昔 からそうだったのだろうか。
手児奈井を影のごとくに三十三才 京 子
歳時記によると、三十三才は野鳥のなかで最も小さい鳥のひとつだそうだ。
入水池
手児奈が入水したと伝えられている池 に、睡蓮が咲いていた、白花ばかりだった。
睡蓮の水は流るること知らず 博 美
作者は一句を詠むまでに、どのくらい睡蓮を見たのだろうか。
坂田ケ池をめぐる歩道で、鴨の一団と鉢合せした。路上における互譲精神を備えた鴨と、備えない鴨がいた。
手もとの歳時記には、夏鴨として「通し鴨」と「軽鴨」の二種類が載っているが、識別法は載っていなかった。画像は19日撮影。
鴨の陣どつちつかずのをるものよ 克 己
鴨にも性格があるらしい。
朝、雲が厚く無風、暑くも寒くもなかった。広大な池には蓮がぎっしりと生え、人影はまばらだった。
画像は19日、成田市の坂田ケ池で撮影。
舟
池の入口近くの蓮はまだ色づかず、青々としていた。舟が二艘浮かんでいた。
沼舟を二艘つないで蓮見舟 越央子
漱石に有名な蓮見舟の句があるが、画像の舟が何の舟かわからなかったので、引用を遠慮した。いつか載せたい。
蕾
まだ蓮は蕾が多かった。蕾のかたちはいろいろだった。
蓮いま開く気に満つ無音界 さぶろ
開きそうな蕾も散見されたが、それは翌朝のはず。
巻葉
生まれたての尖った巻葉、拳をひらきかけたような巻葉と、さまざまだった。あちこちの巻葉に蜻蛉が休んでいた。
巻葉より浮葉にこぼせ蓮の雨 杉 月
漏斗のかたちの巻葉もあった。
浮葉
夜来の雨に浮葉は大粒の雨を宿していた。歳時記によると、浮葉だけで蓮の浮葉のこと。
いつぺんに水のふえたる浮葉かな 晧 史
直接の雨と、巻葉を介した雨を受けて。
白華
白蓮は孤絶が多かった。
合掌を開いて蓮の白妙に 自 得
開いた花には、蕾の青味が消えていた。
紅華
白蓮より紅蓮が多かった。
紅蓮靄を払うてひらきけり 草 城
いつの日か、蓮の開花を見たいと思う。
散華
早くも散った花があった。
蓮散華美しきものまた壊る 多佳子
大きな葉の上に散った花弁は瑞々しかった。
バス停の屋根に黄色い花が咲いていた。花ぐるまさんに教わったキンケイソウに似ていると思い、歳時記で調べてみたが、季語としては載っていなかった。
画像は16日、印西市原で撮す。
バス停の人それぞれに緑蔭に タネ女
原のバス停は屋根に植物があるのだから、緑蔭と称するのは俳諧では許されるだろうか。牽強付会だとして一蹴されるだろうか。
引用句の場合は、公園前のバス停を想像する。
男女の高校生が語りあいながら、交叉点で信号待ちをしていた。青信号に変わっても、しばらく気がつかないようだった。
画像は17日、印西市原で撮す。
左手と右手むつまじ林檎むく 賢 治
一人の人間の左手と右手と思う。下五が「辻涼し」か「夏並木」であれば、画像にそぐうかもしれないが。
台風がかすめ去った後、農婦が西瓜畑を見回っていた。ビニールの覆いがどうかしてしまったのか、大きな西瓜がむき出しになっていた。
画像は16日、印西市結縁寺で撮す。
西瓜食ぶ大きな口と小さな口 友季子
河馬のような口と、おちょぼ口が思いうかぶ。